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「直腸がん」は何歳から発症率が増える?検査についても解説!【医師監修】

 更新日:2025/09/17
「直腸がん」は何歳から発症率が増える?検査についても解説!【医師監修】
直腸がんという病名を聞いたことがあるでしょうか。大腸がんというと聞いたことがあるかもしれません。直腸がんも大腸に発生するがんの一種です。本記事では、そんな直腸がんの基本的な特徴や症状、原因、検査、治療までわかりやすく解説します。
井林雄太

監修医師
井林雄太(井林眼科・内科クリニック/福岡ハートネット病院)

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大分大学医学部卒業後、救急含む総合病院を中心に初期研修を終了。内分泌代謝/糖尿病の臨床に加え栄養学/アンチエイジング学が専門。大手医学出版社の医師向け専門書執筆の傍ら、医師ライターとして多数の記事作成・監修を行っている。ホルモンや血糖関連だけでなく予防医学の一環として、ワクチンの最新情報、東洋医学(漢方)、健康食品、美容領域に関しても企業と連携し情報発信を行い、正しい医療知識の普及・啓蒙に努めている。また、後進の育成事業として、専門医の知見が、医療を変えるヒントになると信じており、総合内科専門医(内科専門医含む)としては1200名、日本最大の専門医コミュニティを運営。各サブスぺ専門医、マイナー科専門医育成のコミュニティも仲間と運営しており、総勢2000名以上在籍。診療科目は総合内科、内分泌代謝内科、糖尿病内科、皮膚科、耳鼻咽喉科、精神科、整形外科、形成外科。日本内科学会認定医、日本内分泌学会専門医、日本糖尿病学会専門医。

直腸がんとは

まずは直腸がんの全体像を理解するため、本章で直腸がんの特徴や症状、原因について解説します。

直腸がんの特徴

直腸がんは、大腸のうち肛門に近い直腸にできるがんです。大腸は盲腸から始まり結腸と直腸に分かれます。大腸がんは腺腫という良性のポリープ(大腸ポリープ)ががん化して発生する場合と、正常な粘膜から直接発生する場合があります。日本人では特にS状結腸と直腸に大腸がんができやすいことが知られています。

直腸がんの症状

早期の直腸がんは自覚症状がほとんどありませんが、がんが大きくなるとさまざまな症状が現れます。代表的な症状は血便や下血で、痔など良性の病気でもみられるため見過ごされがちです。直腸がんが進行すると、下痢と便秘を繰り返す、便が細くなる、残便感のように排便習慣が変化することがあります。また、慢性的な出血により貧血の症状が出たり、腸管が狭くなることで腹部のハリや腹痛を生じることもあります。

直腸がんの原因

直腸がんの明確な発生メカニズムは完全には解明されていませんが、いくつかの危険因子が知られています。食生活では肉類や脂肪分の多い食事の摂取が直腸がんのリスクを高めると考えられています。特に動物性脂肪や赤身肉の過剰摂取は発がんリスクとの関連が指摘されており、欧米型の高脂肪食への食生活の変化が日本で大腸がんが増えている原因と考えられています。

一方、野菜や食物繊維の不足も大腸がんリスクを高める可能性があり、バランスのよい食事が予防に重要です。また、肥満や運動不足、飲酒も大腸がんのリスク因子として報告されています。加えて、直腸がんの発症には遺伝的要因や基礎疾患も関与します。家族に大腸がん患者さんがいる場合や、家族性大腸腺腫症、リンチ症候群といった遺伝性疾患がある場合、若い年齢でも大腸がんを発症しやすくなります。

直腸がんの年齢別罹患率

直腸がんを含む大腸がんは高齢になるほど発症しやすく、40歳代から患者数が増え始め、60~70歳代でピークに達します。また、男性の罹患率は女性より高いことがわかっています。実際、日本では男性の大腸がん(結腸・直腸がん)は罹患数で肺がん・胃がんに次ぐ3位ですが、女性では大腸がんが罹患数1位となっており、中高年の女性で増加傾向が見られます。若年層(20~30歳代)で直腸がんになるケースはまれですが、家族性の要因や遺伝性疾患がある場合は若い年代でも発症することがあるため注意が必要です。

直腸がんの生存率と年齢の関係

直腸がんの生存率は病気の進行度(ステージ)によって大きく左右されます。早期発見および治療された場合、5年生存率は高くなりますが、進行がんや転移がある場合は生存率が低下します。年齢も生存率に影響を与える要因の一つです。高齢者では手術や抗がん剤治療に耐えうる体力や臓器予備能の問題、ほかの持病の影響で十分な治療が行えない場合があることが、生存率に反映されていると考えられます。

直腸がんの検査方法

直腸がんの診断や治療方針決定のためにさまざまな検査を行います。本章では、直腸がんに関係する検査について解説します。

直腸指診

直腸指診は、肛門から直腸内に医師が指を挿入して行う検査です。直腸内の壁を直接触れて、しこりや腫れ、硬さなどの異常の有無を調べます。直腸がんの多くは肛門から指が届く範囲に発生するため、指診で発見できる場合があります。痛みはそれほど強くなく短時間で終了します。

直腸造影検査

直腸造影検査は、造影剤と空気を肛門から注入して大腸をX線撮影する検査です。大腸の形を写し出すことでがんの正確な位置や大きさ、形状、腸管の狭窄の程度などを調べることができます。撮影ではX線透視下で大腸全体に造影剤を行き渡らせ、必要に応じて体位を変えながら連続写真を撮ります。直腸がんがある場合、造影像に腫瘤による欠損や狭くなった部分として写ります。

大腸内視鏡検査

大腸内視鏡検査は、先端に小型カメラが付いた細長い管状の内視鏡を肛門から挿入して、大腸の内部を直接観察する検査です。ポリープや腫瘍が見つかった場合、その場で一部組織を採取する生検を行い、病理組織検査で良性、悪性の診断を確定します。場合によっては小さなポリープであれば内視鏡で切除することも可能です。検査自体は通常20~30分程度かかります。直腸がんの診断には内視鏡検査が特に有効で、がんの表面の状態や出血の有無、範囲を直接観察できます。

CT検査、MRI検査

CT検査とMRI検査は、体内の断面画像を得るための画像診断です。直腸がんと診断された後、がんの進行度を評価するためにCTやMRIが行われます。具体的には、がんが直腸の壁を破って膀胱や子宮、前立腺などに広がっていないか、リンパ節や肝臓・肺など遠隔臓器に転移がないかを調べます。

PET検査

PET検査は、がん細胞は正常細胞よりブドウ糖を多く消費する性質を利用して、全身のがん細胞の分布を画像化する検査です。直腸がんの診断では、ほかの検査で転移の有無が判断しづらい場合にPET検査が行われることがあります。ただし、PET検査はすべての小さながんを発見できるわけではなく、限界もあります。そのため、CTやMRIなどほかの検査結果と総合的に判断し、必要に応じてPET検査の情報を加味する形になります。

直腸がんの治療方法

直腸がんはその病期や患者さんの状態に応じて、治療方法が選択されます。本章では、直腸がんで行われる主な治療について解説します。

手術

手術は、直腸がんの治療の中心となる方法です。内視鏡で完全に切除することが難しい場合、外科手術によって腫瘍を取り除きます。手術ではがんがある腸管部分だけでなく、周囲のリンパ節もまとめて切除し、必要に応じて近くの臓器まで切除します。直腸がんの手術法には、腫瘍の位置に応じていくつかの種類があります。上部直腸がんでは腹部から直腸を切除して腸をつなぐ高位前方切除術、下部直腸がんでは肛門に近い直腸を切除してつなぐ低位前方切除術などがあります。

内視鏡治療

内視鏡治療は、大腸内視鏡を使って腫瘍を身体の中から切除する低侵襲の治療法です。主に早期の直腸がんで、がんが粘膜下層までにとどまりリンパ節への転移リスクが極めて低いと判断される場合に適応となります。内視鏡治療の代表的な方法には、ポリペクトミー(内視鏡的ポリープ切除術)、EMR(内視鏡的粘膜切除術)、ESD(内視鏡的粘膜下層剥離術)があります。これらは腫瘍の大きさや形態、広がりに応じて使い分けられます。

薬物療法

薬物療法とは抗がん剤など薬を使った治療のことで、直腸がんでは主に化学療法(抗がん剤治療)や分子標的療法、免疫療法が行われます。薬物療法には大きく2つの目的があります。1つは手術後の再発リスクを下げるために行う補助化学療法、もう1つは手術でがんを取り切れない進行・再発例に対して延命や症状緩和を目的に行う治癒切除不能進行あるいは再発直腸がんに対する薬物療法です。薬物療法のみで直腸がんを完治させることは難しいですが、行わない場合に比べ生存期間の延長や生活の質(QOL)の維持・向上が期待できます。

放射線治療

放射線治療は、高エネルギーの放射線を照射してがん細胞を死滅させる治療法です。直腸がんでは特に術前放射線療法が行われることがあります。直腸は骨盤内の限られた空間にあり、進行直腸がんでは骨盤内にごく小さな転移が広がっている場合があります。手術前に放射線を照射しておくと、肉眼では見えないこうした微小転移巣を抑え込む効果があり、術後の局所再発率を下げるのに大変有効であることがわかっています。手術後に残存腫瘍が疑われる場合や再発防止のために術後放射線治療を行うケースもあります。さらに、遠隔転移がある場合でも、症状緩和目的で転移部位に対する放射線照射が行われることがあります。

まとめ

直腸がんは大腸がんの一部であり、中高年以降で発症率が高まる病気です。初期には自覚症状が乏しいものの、血便や便通の変化などの症状が現れた場合には早めに検査を受けることが大切です。日頃からバランスのよい食事や適度な運動を心がけ、便に血が混じるなど気になる症状があれば放置せず専門医を受診しましょう。

関連する病気

大腸がんと似た症状を示す、または同時に発生する可能性のある病気には以下のようなものがあります。

  • 潰瘍性大腸炎
  • クローン病
  • 大腸ポリープ
  • 憩室炎
  • 痔核
  • 過敏性腸症候群(IBS)

関連する症状

大腸がんに関連する症状は以下のような症状が挙げられます。これらの変化を正しく把握することが鑑別に役立ちます。

  • 血便
  • 便通の変化
  • 腹痛・腹部不快感
  • 体重減少
  • 貧血
  • 疲労感

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