「胃カメラで食道がんを発見」できる？初期症状についても解説！【医師監修】

　更新日:2025/07/18

食道がんは、日本人では喫煙や飲酒が主な原因とされるがんです。早期の食道がんは自覚症状がほとんどなく進行するため、症状に気付いたときには病状が進んでいることも少なくありません。では、健康診断などで行われる胃カメラで食道がんを早期発見することはできるのでしょうか。本記事では、食道がんの初期症状や検査方法（胃カメラを含む各種検査）、胃カメラでの見落としの可能性、そして治療法をわかりやすく解説します。

監修医師：
井林雄太（井林眼科・内科クリニック/福岡ハートネット病院）

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大分大学医学部卒業後、救急含む総合病院を中心に初期研修を終了。内分泌代謝/糖尿病の臨床に加え栄養学/アンチエイジング学が専門。大手医学出版社の医師向け専門書執筆の傍ら、医師ライターとして多数の記事作成・監修を行っている。ホルモンや血糖関連だけでなく予防医学の一環として、ワクチンの最新情報、東洋医学（漢方）、健康食品、美容領域に関しても企業と連携し情報発信を行い、正しい医療知識の普及・啓蒙に努めている。また、後進の育成事業として、専門医の知見が、医療を変えるヒントになると信じており、総合内科専門医（内科専門医含む）としては1200名、日本最大の専門医コミュニティを運営。各サブスぺ専門医、マイナー科専門医育成のコミュニティも仲間と運営しており、総勢2000名以上在籍。診療科目は総合内科、内分泌代謝内科、糖尿病内科、皮膚科、耳鼻咽喉科、精神科、整形外科、形成外科。日本内科学会認定医、日本内分泌学会専門医、日本糖尿病学会専門医。

目次 -INDEX-

食道がんの初期症状とは？
食道がんの検査方法
胃カメラで食道がんが見落とされる可能性はある？
- 食道がんの治療法
まとめ
- 関連する病気
- 関連する症状

食道がんは初期には目立った症状がないことがほとんどです。がんが小さいうちは痛みや不調を感じにくく、症状が現れるのは腫瘍がある程度大きくなって食道を狭くしてからです。初期のわずかな症状として、食べ物や飲み物を飲み込んだときに胸の奥がチクチクと刺す痛みを感じたり、熱い飲み物がしみるように感じたりすることがあります。

これらは一時的に現れて消えることもあり、見逃されやすい症状です。がんが進行して食道が狭くなると、固形物はもちろん徐々に水ですら飲み込みにくくなり、食べ物がつかえるような感じを覚えます。その結果、食事量が減って体重減少が起こることもあります。

さらに進行すると、胸や背中の痛み、長引く咳、嗄声（させい）などが現れる場合があります。特に嗄声や咳は、がんが声帯を動かす神経や気管に影響を及ぼした可能性を示す症状です。また、胸の痛みや咳、声がかすれる症状は心臓病や肺の病気でも起こりうるため、そうした症状がある場合には心肺の検査だけでなく食道の検査も受けることが大切です。

食道がんの検査方法

食道がんが疑われる場合、確定診断のためにまず胃カメラ（上部消化管内視鏡検査）や上部消化管造影検査を行います。その他にも食道がんではさまざまな検査が行われます。

胃カメラ（上部消化管内視鏡検査）

胃カメラは先端に小型カメラの付いた細い管（内視鏡）を、口や鼻から食道に挿入して内部を直接観察する検査です。食道の粘膜の色調変化やわずかな隆起・凹みまでも詳細に観察でき、がんが疑われる部分から組織を採取して顕微鏡で調べる生検を行うことで、がん細胞の有無や種類を確認して確定診断します。

内視鏡では病変の位置や大きさ、広がり具合も評価できます。特に胃カメラは、レントゲンによる上部消化管造影検査では見つけにくいような無症状の初期食道がんを発見できる検査法です。より正確に病変の範囲や深さを判断するために、必要に応じて粘膜に特殊な染色液を吹きかけたり、特殊光（NBI: Narrow Band Imagingなど）で観察したり、内視鏡画像を拡大したりすることもあります。

上部消化管造影検査

上部消化管造影検査は造影剤を飲み、それが食道を通過する様子を連続的にX線撮影する検査です。食道内を造影剤が流れる過程を画像化することで、食道の形態異常を調べます。これにより、食道の全体像やがんによる狭窄の程度、病変の位置や大まかな大きさを把握できます。身体への負担が少ない検査ですが、平坦で小さな早期がんは画像に写りにくいため、異常が疑われた場合には追加で内視鏡検査を行って詳しく調べることが推奨されます。

CT検査、MRI検査

CT検査はX線を、MRI検査は強い磁気を利用して、身体の内部を輪切り状の画像で描出する検査です。いずれも体内のがんの広がり具合を調べるために用いられ、食道周辺の臓器（気管や大動脈など）への浸潤や、リンパ節への転移、遠く離れた肺や肝臓への転移の有無を確認します。

超音波（エコー）検査

超音波検査は、体表から超音波プローブを当てて体内の臓器を描出する検査です。超音波が臓器に当たって跳ね返るエコーを画像化し、転移の有無などを調べます。食道がんでは、腹部のエコーで肝臓への転移や腹部リンパ節転移がないか確認し、首（頸部）のエコーで頸部リンパ節への転移がないかを調べます。特に頸部食道がんの場合は、エコー検査によって気管、甲状腺、頸動脈など周囲の臓器との関係も評価します。超音波検査は放射線被曝がなく苦痛も少ないため、転移のスクリーニングに広く行われています。

超音波内視鏡検査

超音波内視鏡検査は、先端に超音波装置が付いた内視鏡を挿入して行う検査です。通常の胃カメラでは直接観察できるのは食道の表面だけですが、超音波内視鏡では食道壁の内部構造や周囲臓器まで詳しく描出できます。これにより、がんが食道壁のどの層まで深く達しているか（深達度）、食道の外側にあるリンパ節への転移があるかどうかといった情報が得られ、病期診断の精度が高まります。主に治療方針決定のための詳細な評価として行われる検査です。

PET検査

PET検査は、がん細胞の性質を利用して全身のがんの広がりを調べる画像検査です。がん細胞は正常細胞よりも盛んにブドウ糖を取り込んで増殖する性質がありますが、PET検査では微量の放射性ブドウ糖（FDG）を体内に注射し、その集まり具合を画像化することでがんの存在を映し出します。全身の臓器や骨への転移の有無を一度に確認でき、食道がんの遠隔転移検索や再発の評価にも用いられます。近年ではPETとCTを組み合わせたPET-CT検査も普及しており、より詳細な画像情報が得られるようになっています。

血液検査

食道がんそのものを直接発見できる特異的な血液検査はありませんが、補助的にがんがあるときに血液中で高値を示す物質（腫瘍マーカー）を測定することがあります。食道がんでは、扁平上皮がんの場合にSCCやCEAといった腫瘍マーカーを検査し、腺がんの場合は主にCEAを測定します。ただし、腫瘍マーカーはあくまで目安であり、その値だけでがんの有無や進行度を判断はできません。実際、がんがあっても値があまり上昇しない場合や、逆にほかの要因で高くなる場合もあります。腫瘍マーカー検査は診断の補助や治療経過の観察目的で用いられ、最終的な診断は画像検査や内視鏡検査の結果を総合して行います。

胃カメラで食道がんが見落とされる可能性はある？

胃カメラは食道がん発見のための有用な検査ですが、絶対に見落としが起きないとはいい切れません。早期の食道がんは粘膜のわずかな色の違い程度しか示さないこともあり、観察が不十分だと病変を見逃してしまう可能性があります。実際、ある研究では上部消化管内視鏡検査（胃カメラ）の観察時間が短い医師ほど食道の腫瘍発見率が低く、特に早期の食道病変は十分な時間をかけないと見逃してしまう恐れが指摘されています。

逆にいえば、経験豊富な内視鏡医が時間をかけて丁寧に観察すれば、小さな病変も発見できる確率が高まります。見落としリスクを減らすため、検査時には食道全域と咽頭までしっかり観察することが重要です。咽頭や食道の入口部も胃カメラで検査できますが、嘔吐反射を避けようとしてこの部分の観察が疎かになると、上部食道や咽頭の病変を見落とす可能性があります。近年はNBI（狭帯域光観察）など特殊光による観察や、ルゴール染色といった手法を内視鏡検査に取り入れることで、微細な早期がんの発見率が向上しています。

食道がんの治療法

食道がんの治療には、内視鏡的切除、手術（外科治療）、放射線治療、薬物療法（化学療法や抗がん剤治療）、化学放射線療法（放射線と抗がん剤の併用）などがあります。患者さんの病状や全身状態に応じて適切な治療法が選択されます。また、診断された時点から痛みや嚥下障害などつらい症状を和らげる緩和ケアを並行して受けることも可能です。

まとめ

食道がんは早期には症状が出にくい病気ですが、胃カメラ検査によって初期の病変を発見できる可能性があります。飲酒・喫煙習慣のある方や、食道がんのリスクが高い方は、症状がなくても定期的に上部消化管内視鏡検査を受けることで早期発見と早期治療につなげることができます。早期発見できれば内視鏡治療で済む場合もあり、進行がんでも適切な治療で完治や長期生存が期待できます。少しでも気になる症状があれば早めに消化器科を受診し、専門医に相談しましょう。