「声帯ポリープ手術後の食事」は何が良いかご存じですか?【医師監修】


監修医師:
小島 敬史(国立病院機構 栃木医療センター)
目次 -INDEX-
声帯ポリープの手術とは
声帯ポリープ切除術は、発声方法の管理や薬物療法による保存的治療で改善しない声帯ポリープに対して行われます。口から喉頭鏡という器械を入れ、顕微鏡で声帯を拡大しながらポリープを切除します。手術は局所麻酔あるいは全身麻酔下で行われ、手術時間は通常1時間程度で終了します。術後の入院期間は長くても1週間程度で、症状や病院の方針によっては日帰り手術や1~2泊の短期入院で対応できる場合もあります。
術後の経過が良好ならば声も改善し、日常生活に早期に復帰できる見込みです。ただし、手術後の声帯のケアや生活習慣の改善が再発予防のために大変重要となります。
声帯ポリープの手術までの流れと過ごし方
声帯ポリープの手術は、術前検査と十分な準備を経て進められます。検査でポリープの状態を確認し、医師から手術内容や注意点の説明を受けたうえで、手術前日は喉を休めるための食事制限や安静が求められます。本章では、手術までの流れと前日の過ごし方を解説します。
術前検査
声帯ポリープの手術に先立ち、まず耳鼻咽喉科で詳細な検査を行います。ファイバースコープ(内視鏡)による喉頭検査でポリープの位置・大きさや声帯の状態を観察し、必要に応じてポリープの一部を採取して病理検査(生検)を行い、ポリープが良性であることを確認します。 また、手術に耐えられる体調であるか確認するために術前の全身検査も実施されます。具体的には血液検査や心電図、胸部レントゲンなど一般的な術前チェックを行い、特に全身麻酔を安全に行うための評価が行われます。既往症や内服薬の確認も重要で、必要に応じて内科や麻酔科と連携して検査を進めます。手術内容の説明
術前検査が終わると、担当医から手術の内容やリスク、術後の注意点に関する詳しい説明があります。声帯ポリープ手術ではどのようにポリープを除去するか、局所麻酔か全身麻酔という麻酔の方法、そして術後に声を出せない期間があることなどが説明されます。 「術後は〇日間声を出さないようにする」「一定期間、飲食に注意が必要」などの注意事項もこの時点で説明があります。特に術後しばらく会話ができないため、あらかじめ紙とペンやホワイトボードなど筆談の準備をしておくよう指示されることがあります。不安な点や質問があれば、この術前説明の場で遠慮なく医師に相談しましょう。 患者さんやご家族は手術の目的と内容、起こりうる合併症などを十分に理解したうえで手術に臨むことが大切です。声帯ポリープ手術前日の過ごし方
手術前日は体調を整えるために安静に過ごすよう心がけます。入院予定のある場合は病院で指示がありますが、自宅で過ごす場合でも十分な睡眠をとり、喉に負担をかける大声や長時間の会話を避けて喉を休ませておきましょう。また、飲食の制限にも注意が必要です。これは麻酔中の誤嚥を防ぐためで、前夜の夕食は消化の良いものを早めの時間に摂り、深夜以降は何も口にしないようにします。アルコールも手術前日は控えましょう。喫煙者の方も、手術前日は喉のコンディションを良く保つため可能な限り禁煙してください。声帯ポリープ手術当日の流れ
看護師らから当日の流れの説明を受け、手術着に着替え、点滴のルート確保(腕に針を留置して点滴を準備)などの準備が行われます。手術室で麻酔薬を行い、上向きに寝た姿勢で喉頭鏡と顕微鏡を用いた声帯ポリープの切除手術が開始されます。ポリープは声帯表面から切除され、必要に応じて止血や患部の処置がなされます。手術自体の所要時間はおよそ1時間以内と短く、全身麻酔であえれば導入から覚醒まで含めても数時間程度です。
声帯ポリープの手術後1週間の生活
手術後1週間は、声帯の傷をしっかりと治すための大切な期間です。初日は誤嚥や傷口への刺激を避けるために食事を控え、翌日以降は喉に負担の少ない軟らかい食事から徐々に再開していく必要があります。ここでは、術後1週間の生活で守るべきポイントと、食事の注意点を解説します。
手術当日は食事禁止が原則
手術当日は基本的に食事は原則禁止です。特に麻酔から完全に覚めて間もないうちは誤嚥しやすく、また喉頭を切除した部位に食べ物が触れると刺激となりかねないため、食事は控えます。 声帯の傷口は大変小さいものですが、手術直後は傷口からの軽い出血や腫れが生じている可能性があります。飲み込む動作や食べ物の刺激で出血が悪化したり、喉に痛みを感じたりする恐れがあります。食事は翌日から再開するのが安全です。翌日以降は喉に負担のない食事を
手術の翌日からは徐々に食事を再開できますが、喉に優しい軟らかい食事を心がけましょう。術後1週間程度は声帯の傷が完治しておらず、粘膜もデリケートな状態です。刺激の強い食事は避け、のど越しの良いやわらかい食べ物を中心にとりましょう。具体的には、下記のようなものが挙げられます。- おかゆ
- 雑炊
- スープ、味噌汁
- ゼリー
- 豆腐
- 卵料理
- やわらかい麺類
声帯ポリープ手術の食事で気を付けること
術後の食事では、喉に負担をかけないことと同時に、適切な栄養と水分を摂ることも大切です。軟らかい食事ばかりにするとどうしても栄養が偏りがちですので、タンパク質やビタミンを意識して摂取しましょう。例えば、肉や魚はミンチにしてスープに入れる、豆腐や卵でたんぱく質を補う、野菜はポタージュやスムージーにするなど工夫してバランスを取ります。食欲があまりない場合でも、水分と最低限のカロリーは確保するよう心がけてください。市販の栄養補助食品(エネルギーゼリー飲料や栄養ドリンク)を活用してもよいでしょう。
また、ゆっくりよく噛んで食べることも喉への負担軽減につながります。大きな塊のまま飲み込もうとすると喉に引っかかり刺激となるので、一口ごとにしっかり噛み砕いてから飲み込みます。手術直後は喉の動きがぎこちないこともありますから、最初のうちは一度に飲み込む量を少なめにして慎重に嚥下してください。
さらに、刺激物や嗜好品の制限を守ることが重要です。辛い物、酸っぱい物、アルコール、カフェインなどの刺激は術後の喉に負担になるのでやめてください。適量の範囲であっても、術後しばらくは控えることが望ましいです。主治医から「〇週間は禁酒するように」など具体的な指示があれば必ずしたがってください。飲酒再開のタイミングは症状によって異なるため、迷う場合は担当医に確認しましょう。
声帯ポリープについてよくある質問
ここまで声帯ポリープの手術について紹介しました。ここでは「声帯ポリープの手術」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。
声帯ポリープの手術で声がでなくなることはある?
小島 敬史 医師
ほとんどの場合、声が出なくなる心配はありません。声帯ポリープの切除手術自体で声帯そのものを損傷するリスクは極めて低く、適切に行われれば手術によって声が出せなくなることはまずありません。ただし、手術前後のポリープや声帯の状態によっては、術後しばらく声が思うように出しづらい、以前とは声の質が違うように感じるといったことはありえます。また、まれなケースとして、声帯ポリープが両側にあり両方の声帯を手術した場合や、術後管理が不十分で声帯に瘢痕組織ができてしまった場合などには、声質が変わったり高音が出しにくくなったりする場合があります。
声帯ポリープの手術後どの程度たったら普通の食事に戻れる?
小島 敬史 医師
目安として、術後1週間ほどで通常の食事に戻れるケースが多いです。術後約1週間はやわらかく喉に優しい食事が推奨されます。この期間を過ぎ、特に問題がなければ徐々に普段の食事内容に戻していくことになります。もちろん個人差があるので、主治医の許可を得てから段階的に戻しましょう。
スポーツ観戦やカラオケ、ライブなど大声はいつから出せる?
小島 敬史 医師
大声を出す行為は、術後少なくとも数週間から1ヶ月程度は控えるとよいでしょう。術後は声帯粘膜が完全に元の状態に回復するまで時間がかかります。その間に無理に大声を出すと、傷ついた声帯に強い衝撃を与え、ポリープの再発や新たな声帯障害を招くおそれがあります。
まとめ
声帯ポリープの手術に至るまでの流れや、術前の準備、手術当日の流れ、そして術後1週間の食事や生活上の注意点を詳しく解説しました。声帯ポリープの手術は、正確な診断と十分な準備のもとで行われるため、適切なケアを守ることで安全に治療が進められます。術後は、喉に負担をかけない食事や生活習慣を心がけ、早期の回復を目指しましょう。手術に関する不安や疑問は、担当医や医療スタッフに遠慮なく相談し、治療に臨むことが大切です。
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