「上喉頭がんの予後」は?5年生存率やなりやすい生活習慣についても解説!【医師監修】

上咽頭がんは聞きなれない病気かもしれません。しかし、がんといえば加齢に伴うものと思われているかもしれませんが、この上咽頭がんは若い世代でも発症することがあるがんとされています。本記事では上咽頭がんの基礎知識から予後、そしてよくあるさまざまな質問を解説します。

監修医師:
小島 敬史(国立病院機構 栃木医療センター)
目次 -INDEX-
がんの予後とは?
予後は、病気の経過や見通しのことを指し、がんの場合は治療後に病気がどう経過するか、生存できるかといった見込みを意味します。医療現場では、予後を判断する指標として生存率がよく使われます。例えば、5年生存率は、がんと診断されてから5年後に生存している方の割合を示した数字です。5年生存率が高いほど治療によって命を救える可能性が高く、低いほど治療が難しいことを意味します。
一般的に5年生存率は相対生存率といって、同じ年齢や性別構成の一般集団に比べて何%生存しているかで表します。これは年齢などほかの要因を調整して、がんそのものの影響を評価するためです。ただし、がんの予後は個人差が大きい点に注意が必要です。生存率の数値は過去のデータに基づく平均値であり、すべての患者さんに当てはまるわけではありません。特に医療技術が進歩するにつれて生存率は向上しているため、統計上の数字よりも現在は良い結果が期待できる場合もあります。したがって、生存率はあくまで目安であり、一人ひとりの予後は病状や治療内容、体調によって異なることを理解しておきましょう。
上咽頭がんとは
上咽頭がんは、鼻の奥の上咽頭と呼ばれる部分に発生するがんです。上咽頭は、鼻腔のさらに奥、喉の上部に位置し、空気や食べ物の通り道となる管状の器官です。この場所にできるがんはまれで、日本では年間約800人しか新たに診断されませんが、若い世代でも発症することがあることが特徴です。上咽頭がんの原因として知られているものに、EBウイルス感染や喫煙、飲酒があります。
上咽頭は鼻と喉の境目の奥にあり、自分では見えにくい場所のため、初期の上咽頭がんは自覚症状がないことも多いです。症状が出ても風邪などに似ており見逃されがちですが、次のような症状が続く場合は注意が必要です。
首のしこり
上咽頭がんは初期の小さな段階でも頸部のリンパ節へ転移しやすく、首のリンパ節が腫れてしこりとして触れることがあります
鼻づまり(鼻塞)、鼻血、鼻水に血液が混じる血性鼻漏
鼻の奥の腫瘍によって鼻腔が塞がれたり、腫瘍から出血したりするためです
耳が詰まった感じ(耳閉感)や聞こえにくい
上咽頭と耳をつなぐ耳管ががんで塞がれ、中耳に液体が溜まるためです
頭痛、神経症状
病状が進行すると、腫瘍が周囲の神経に影響を及ぼし、頭痛や複視(物が二重に見える)、顔面のしびれなど脳神経症状が現れる場合もあります
このような症状が2週間以上続く場合は、上咽頭がんなどの確認をしておくのが安心です。上咽頭がんは喉頭内視鏡などを使った検査が必要となるため、耳鼻咽喉科を受診するようにしましょう。
上咽頭がんの予後を病期別に解説
上咽頭がんの予後は病期(ステージ)によって大きく異なります。 病期とは、がんの進行度合いを示す分類で、一般にステージI(1期)~IV(4期)まで段階づけされています。ステージが早期(IやII)であるほど腫瘍の範囲が限局しており治療がしやすいため生存率は高くなります。逆に、ステージが進む(IIIやIV)ほど腫瘍が広がっていたり、遠隔転移があったりするため、生存率は低下します。
第Ⅰ期上咽頭がんの予後
上咽頭がんのなかで最も早期の段階です。腫瘍が上咽頭にとどまっており、リンパ節転移も遠隔転移もない状態と定義されます。予後は大変良好で、5年生存率は約80~90%に達します。日本のデータでは5年相対生存率が84%と報告されています。
第Ⅱ〜III期上咽頭がんの予後
第Ⅱ〜III期上咽頭がんは腫瘍が上咽頭を越えて局所に広がっていたり、頸部リンパ節に転移がある状態です。ただし遠隔転移はない段階です。5年生存率は約60~80%と中間的な値になります。早期がんに比べると生存率は下がりますが、それでも約2/3以上の患者さんが5年後に生存しています。
第Ⅳ期上咽頭がんの予後
第Ⅳ期上咽頭がんは上咽頭がんのなかで最も進行した段階です。ただし、IV期はさらに細かくA~Cに分類されます。IVA期・IVB期は腫瘍が頭蓋底や周囲の広範囲に及んだり、大小さまざまなリンパ節転移が多発している状態で、局所的には進行したがんを指します。IVC期は肺や肝臓、骨など遠隔臓器への転移がある状態で、いわゆる末期の状態です。IV期全体で見ると5年生存率は約50%前後と報告されています。つまり半数程度の患者さんが5年後に生存している計算ですが、裏を返せば半数は5年以内に残念ながら亡くなってしまうことを意味します。
上咽頭がんについてよくある質問
ここまで上咽頭がんを紹介しました。ここでは「上咽頭がん」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。
上咽頭がんになりやすい生活習慣は?
小島 敬史 医師
上咽頭がんのリスクを高める主な生活習慣には、喫煙と過度の飲酒が挙げられます。これらは上咽頭の粘膜に慢性的な刺激を与え、がん細胞の発生リスクを上昇させるとされています。そのため、上咽頭がんなどのがんの発症を予防するためには、禁煙と節酒が重要となります。
上咽頭がんと診断されたら気を付けるべきことは?
小島 敬史 医師
上咽頭がんと診断された場合、まずは早期治療を目指し、定期的な検査や画像診断を受けることが大切です。また、上咽頭がんの危険因子はなるべく減らせるよう、喫煙・飲酒の中止、バランスのとれた食事、十分な休息など生活習慣の改善を行うことが重要です。
上咽頭がんの治療法は?
小島 敬史 医師
上咽頭がんの治療は、がんの進行度や患者さんの全身状態に応じて選択されます。特に、上咽頭はその位置の手術が難しいため、Ⅰ期からⅣA期を通して放射線治療を主体とした治療が標準治療となります。進行例では化学放射線療法の併用が行われます。
編集部まとめ
上咽頭がんは、初期症状が見逃されやすいまれながんですが、生活習慣が発症する可能性を上げているかもしれません。上咽頭がんの初期症状がある場合は、放っておかず耳鼻咽喉科を受診するようにしましょう。本記事でご紹介した病期別の予後や治療法、そしてリスクを高める生活習慣の注意点が皆さんのお役に立てれば幸いです。
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