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「咽頭がん」とは?症状・原因・治療についても解説!【医師監修】

 更新日:2023/07/13
「咽頭がん」とは?症状・原因・治療についても解説!【医師監修】

咽頭がんは、咽頭にできるがんで、発症した部位により上咽頭がんや中咽頭がん、下咽頭がんに分けられます。

咽頭がんの発症原因は過度の飲酒、喫煙で、上咽頭がんではEBウイルスの感染、中咽頭がんではパピローマウイルス(HPV)の感染も発症原因の一つとなっています。また、飲酒については、飲酒により顔が赤くなるフラッシャーの人が継続的に飲酒することにより、発がん率を高めています。

今回は咽頭がんの症状や検査・診断方法、治療法について解説します。

中路 幸之助

監修医師
中路 幸之助(医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター)

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1991年兵庫医科大学卒業。医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター所属。米国内科学会上席会員 日本内科学会総合内科専門医。日本消化器内視鏡学会学術評議員・指導医・専門医。日本消化器病学会本部評議員・指導医・専門医。

咽頭がんとは

咽頭がんとは、どんな病気ですか?

咽頭とは、鼻の奥から食道に至るまでの食物や空気の通り道を指します。空気は、咽頭→喉頭→気管→肺へ流れ、食物は咽頭→食道→胃へと流れます。
咽頭は、上から上咽頭、中咽頭、下咽頭に分かれるのですが、各部位にがんができるとそれぞれ上咽頭がん、中咽頭がん、下咽頭がんという診断をします。
咽頭がんの症状は、食事が飲み込みにくい、呼吸が困難になる、言葉がわかりにくい、耳が詰まった感じなど、多種多様です。

咽頭がんの症状

咽頭がんとは?

咽頭がんの症状はどのようなものですか?

咽頭がんの症状は、発症初期ではのどの違和感や軽い痛み程度で、強い症状がないことは少なくありませんが、がんが大きくなるのに伴い食事の通りにくさや息苦しさといった症状が現れます。また頸部のリンパ節への転位による首のしこりで、初めて自覚する場合もあります。

上咽頭がんの症状

上咽頭がんの症状はどのようなものですか?

上咽頭がんの症状は、上咽頭から鼻腔の奥の鼻口までがんが進行すると鼻づまりや鼻血、上咽頭にある中耳の圧を調節する耳管周囲にがんが進行すると耳管が閉塞し耳が詰まった感じや難聴、難治性の中耳炎を引き起こします。
頭蓋底の骨が融けて眼球を動かす神経までがんが進行すると物が二重に見える複視や視力低下、顔面の感覚障害や痛みなどの脳神経症状などです。

中咽頭がんの症状

中咽頭がんの症状とはどのようなものですか?

中咽頭がんの症状は、飲み込み時の違和感や発声する言葉のわかりにくさ、咽頭痛、血痰などが現れます。

下咽頭がんの症状

下咽頭がんの症状とはどのようなものですか?

下咽頭がんでも、咽頭の違和感、声がれ、咽頭痛、血痰などの症状が現れ、進行すると嚥下(えんげ)障害や呼吸困難も見られます。
がんが進行するまで受診しないことが多く、発見が遅れがちですので、初期症状が見られた場合は、早めに耳鼻咽喉科を受診することが必要です。

咽頭がんの原因

咽頭がんの原因

咽頭がんの原因はどのようなものですか?

咽頭がんの誘発は、お酒や喫煙に大きな影響を受けます。咽頭は食べ物や空気の通り道であるために、発がん性のあるお酒とたばこの煙に直接接触することにより、咽頭にがんが誘発されます。
お酒やたばこの煙は食道も通るので、咽頭がんの診断時には食道がんを合併していることもまれではありません。ヒトパピローマウイルスも中咽頭がんの原因とされ、中咽頭はリンパ組織が発達している部位でありウイルスに感染することから、発がんに繋がっているのではないかと推測されています。

咽頭がんの検査・診断

咽頭がんの検査・診断

咽頭がんの検査と診断はどのようにしますか?

咽頭がんの診断は、視診や触診が重要です。見えにくい部分はファイバースコープを用いくまなく観察します。その上で性質の検査である組織検査と広がりの検査である画像検査を行います。
性質の検査は、局所の細胞を採取し病理学的な検査をもとにがん細胞であるか否かを調べます。広がりの検査では、超音波検査やレントゲン写真、CT、MRIといった画像検査を行い腫瘍の範囲やリンパ節転移の有無を調べます。
また、咽頭がんでは胃がんや食道がんなど消化器系のがんを合併していることがまれではないため、上部消化管内視鏡検査を行い、合併の有無を確認します。
これらの検査結果をもとにがんの進行度を確認します。がんの進行度は第Ⅰ期~Ⅳ期の4段階に分けられ、通常第Ⅰ期・Ⅱ期を早期がん、第Ⅲ期・Ⅳ期を進行がんとします。病期は咽頭がんの腫瘍の大きさ頸部リンパ節転移の大きさや数、肺や骨などの遠隔転移の有無により決定します。

咽頭がんの治療

咽頭がんの治療はどのようなものですか?

咽頭がんは、鎖骨より上、脳より下の頭頸部に生じるがんとして頭頸部がんに分類されます。頭頸部は喋る、物を飲み込むなど日常生活に不可欠な機能や外見にも関わることから、頭頸部がんの治療では、患者さんの生活の質、いわゆるQuality of life=QOLの担保が重要です。
また、頭頸部は各種器官が相互に密接な関係にあるために、がんを切除するだけで治療が完結しません。咽頭がんの治療は悪い部分を切除してつなぐということが容易にできない領域であり、特に進行がんの場合広範囲に及んでいることが多いので、切除すら難しい領域です。
このことから、咽頭がんの手術では部位によって、手術による再建、化学療法、放射線療法を適切に組み合わせて、治療方針を決定します。化学療法と放射線療法を組み合わせる場合にも、同時に治療を行わず、段階に分けて実施します。化学放射線療法はⅡ期以降、導入化学療法は主にⅣ期、再発や遠隔転移に対しては薬物療法を選択します。
また、病変が限局しており、リンパ節転移がない場合は内視鏡によるEMR・ESDが行われる場合があります。

上咽頭がんの治療

上咽頭がんの治療はどのようなものですか?

上咽頭がんの治療は、頭蓋底にある脳神経にも近いため手術が難しいとされています。上咽頭がんの特徴として放射線治療に反応が良い腫瘍が多く、化学療法や放射線治療を中心に行います。症状が進行している場合は、化学放射線療法を行います。
Ⅳ期はこれまで治療成績が悪かったため、強力な抗がん剤による導入化学療法→化学放射線治療→補助化学療法を実施します。

中咽頭がん、下咽頭がんの治療

中咽頭がん、下咽頭がんの治療はどのようなものですか?

中咽頭がんは、早期であれば手術切除や放射線療法による根治が可能で、機能障害もほとんど見られません。一般的にHPV(ヒトパピローマウイルス)感染がある場合は、化学放射線療法の効果が高いと言われており、腫瘍の進行やHPVの状態によって手術や化学放射線治療を検討します。
中咽頭がんや下咽頭がんは早期の場合には、放射線治療(化学療法併用)や経口腔的内視鏡切除を実施することが多く、進行がんでは化学放射線治療、あるいは遊離皮弁を用いた再建手術を実施します。進行した下咽頭がんでは喉頭に近いために、発声機能を失ったとしても喉頭まで切除せざるを得ない場合もあります。
遊離皮弁として小腸の一部を移植し、呼吸のために気管の穴を首に作ります。
下咽頭がんでは、早期であれば喉頭を温存した下咽頭部分切除術や放射線治療、化学療法により根治を目指しますが、進行して喉頭の切除が余儀なくされる場合には、下咽頭喉頭全摘出と、遊離空腸移植による再建術を行います。
下咽頭部分切除術は、腫瘍がある下咽頭の一部のみを切除して、喉頭を温存します。術後の発声が可能で、切除範囲に応じて切除部をそのまま縫い閉じる一期縫縮か再建手術を行います。
下喉頭全摘出術は、腫瘍のある下咽頭、喉頭を切除し空腸を移植し咽頭の再建を行います。喉頭摘出により声が出ない失声となりますが、気管食道シャント法により、代用音声の獲得が可能となる場合もあります。その他、電気喉頭や食道発声法もあり、患者さんやご家族の希望、術後の創部の状況に応じて対応します。
どの治療を選択しても必ず副作用があり、放射線治療では口腔乾燥や味覚低下、粘膜炎などがあります。また手術では切除範囲に応じた機能低下があり、遊離皮弁を用いた再建手術により機能低下を最低限に抑えます。

編集部まとめ

咽頭がんは、その患者数の95%以上が喫煙者とも言われているがんです。このことから、禁煙によって予防しやすいがんとも言えるでしょう。また、飲酒により顔が赤くなるフラッシャーの人は、継続的に飲酒することは避けましょう。

咽頭がんの初期症状では、のどの違和感、軽い痛み、首のしこりで、強い症状のないことが少なくありません。咽頭の違和感など、ご紹介した咽頭がんに見られる初期症状を感じた際は、早い段階で耳鼻咽喉科が診療科となっている病院で、診察を受けることが重要です。

参考文献

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