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「喉頭がんはお酒」を飲むとリスクが高まる?初期症状も解説!【医師監修】

 更新日:2025/05/21
「喉頭がんはお酒」を飲むとリスクが高まる?初期症状も解説!【医師監修】
喉頭がんは喉の一部である喉頭にできるがんです。近年、アルコールを飲む習慣との関連が注目されています。本記事では、喉頭がんの基礎知識から、飲酒によって喉頭がんのリスクがどのように高まるのか、そのメカニズムやほかのリスク要因を解説します。また、日常的にお酒を飲む方がリスクを下げる方法や、喉頭がんになりにくいお酒との付き合い方、そして予防のための生活習慣改善のポイントも解説します。
小島 敬史

監修医師
小島 敬史(国立病院機構 栃木医療センター)

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慶應義塾大学医学部卒。医師、医学博士。専門は耳科、聴覚。大学病院および地域の基幹病院で耳鼻咽喉科医として15年以上勤務。2年間米国で基礎研究に従事の経験あり。耳鼻咽喉科一般の臨床に従事し、専門の耳科のみならず広く鼻科、喉頭、および頭頸部腫瘍疾患の診療を行っている。日本耳鼻咽喉科学会専門医、指導医。日本耳科学会、日本聴覚医学会、日本耳鼻咽喉科臨床学会の各種会員。補聴器適合判定医、補聴器相談医。

喉頭がんとは?

お酒と喉頭がんの関係を解説する前に、まずは喉頭がんの概要を解説します。

喉頭がんの種類

喉頭がんは頭頸部がんの一種で、声帯やその周辺の喉頭に発生する悪性腫瘍です。ほとんどは喉頭の粘膜から発生する扁平上皮がんというタイプのがんで、大きく3つの部位に分類されます。

声門がん

声帯にできるがんで、喉頭がんの約70%を占め最も多くみられます。

声門上部がん

声帯より上の喉頭蓋や喉の奥にできるがんで、全体の約25%を占めます。

声門下部がん

声帯より下にできるがんで、約5%とまれです。

このように発生部位によって喉頭がんはいくつかの種類に分けられます。

喉頭がんの初期症状

喉頭がんでは、がんのできる場所によって初期症状が異なることが知られています。主な部位ごとの症状は以下のとおりです。

声門がん

早期から声のかすれ(嗄声)が起こるのが特徴です。声帯に腫瘍ができると、低くしゃがれた声や息漏れのある声になることが多く、がんが大きくなるほどひどくなります。初期段階で声の異常が現れるため、早期発見につながりやすいがんです。

声門上部がん

初期にはのどの違和感やヒリヒリ感、飲み込み時の痛みなど、風邪に似た症状が現れることがあります。初期症状が風邪と紛らわしいため発見が遅れがちです。

声門下部がん

初期にはほとんど症状が出ず、腫瘍が大きく進行してから嗄声や呼吸困難などの症状が現れることが多いです。そのため自覚できず受診が遅れ、発見が遅くなることがあります。

喉頭がんの治療法

喉頭がんの治療法はがんの進行度(ステージ)や場所、患者さんの希望によって異なります。

早期の喉頭がん(0期~I期、II期)では、できるだけ声を温存することを目指し、放射線治療または喉頭を部分的に切除する手術のいずれかで喉頭を残す治療が行われます。

進行した喉頭がん(III期以上)では、喉頭を残せるかどうかが大きなポイントになります。選択肢は、化学放射線療法(放射線と抗がん剤の併用)によって喉頭を温存しながら治療を行う方法と、喉頭全摘出術(声帯を含め喉頭をすべて取り除く手術)があります。

喉頭全摘出を行うと声を失いますが、命を守るために必要な場合があります。一方、化学放射線療法であれば声を残せる可能性がありますが、効果が不十分な場合は追加で手術が必要になることもあります。遠隔転移がある場合(最も進行したIV期Cなど)は、手術や放射線では治癒が望めないため薬物療法が検討されます。 そして、治療後は声のリハビリや、場合によっては食事や呼吸のリハビリが必要になることもあります。

喉頭がんの予後

喉頭がんは頭頸部がんのほかのがんと比べて予後が良いがんとされています。日本人のデータでは、2009~2011年にがんと診断された方の5年相対生存率は全がん平均で64.1%ですが、喉頭がんは約71%と報告されています。特に早期の喉頭がんは治癒率が高く、ステージI(Ⅰ期)では5年生存率が90~95%以上とも言われます。 一方、進行した喉頭がんになると5年生存率は低下し、ステージIV(Ⅳ期)では50%前後まで下がるとされています。

喉頭がんの発生リスクとお酒の関係

喉頭がんの発生リスクとしてお酒や喫煙などさまざまな危険因子が知られています。そこで、本章では、どの程度のお酒が発生リスクを上げてしまうのか、またその理由、お酒以外の危険因子を解説します。

飲酒で喉頭がんの発生リスクが2.6倍に

お酒を飲む方は、飲まない方に比べて喉頭がんになるリスクが高いことがわかっています。2017年に米国臨床腫瘍学会(ASCO)が発表した声明によれば、大量飲酒者の喉頭がん発生リスクは、非飲酒者の約2.6倍にも上ります。適度な飲酒量であってもリスクはゼロではなく、中程度の飲酒者でも喉頭がんリスクが約1.4倍に高まると報告されています。

日本人の研究でも、週に1回以上お酒を飲む習慣がある男性は、まったく飲まない男性に比べて口腔や咽頭がんのリスクが1.8倍に増加し、さらにエタノール換算で週300g以上(日本酒換算で1日2合以上)の大量飲酒をする男性ではリスクが3.2倍に上昇したとのデータがあります。

このように、お酒を飲む量や頻度が多いほど喉頭だけでなく喉全体のがんリスクが高まる傾向が確認されています。

飲酒で喉頭がんにかかりやすくなる理由

では、なぜお酒を飲むと喉や声帯のがんになりやすくなるのでしょうか?その背景には、アルコールの体内での分解過程と、それに伴う発がん性物質の産生があります。

私たちが飲んだアルコールは、肝臓やお口の中でアルコール脱水素酵素(ADH)という酵素によって分解され、アセトアルデヒドという物質に変わります。このアセトアルデヒドは毒性が強く、発がん性を持つ物質として知られています。アセトアルデヒドはDNAやタンパク質を傷つけ、細胞に突然変異を引き起こすことで発がんにつながる恐れがあります。 さらに、アルコールそのものの作用で喉や食道の粘膜が傷つきやすくなることも指摘されています。アルコール飲料は粘膜を刺激します。その結果、タバコなどのほかの発がん物質が組織に影響しやすくなり、喉の細胞がダメージを受けやすくなると考えられています。

飲酒以外にも喉頭がんのリスクを高める生活習慣

喉頭がんの主な原因として強く関連しているのは喫煙であり、次いで飲酒がリスク要因になります。特に喉頭はタバコの影響を受けやすいとされています。実際、喉頭がん患者さんの多くは長年の喫煙者であり、タバコを吸わない方に喉頭がんはまれです。特に、飲酒者で喫煙もする方では前述のようにリスクが高まる恐れがあります。

また、食生活もリスクを高める可能性があります。野菜や果物に含まれるビタミン、抗酸化物質には発がんを抑える働きがあると考えられています。アルコールをたくさん飲む方ほど食事が偏ったり野菜不足しがちな傾向があります。そのため、飲酒習慣のある方は意識して緑黄色野菜や果物を摂取し、栄養バランスを整えることが大切です。

喉頭がんについてよくある質問

ここまで喉頭がんの、お酒を飲んだ際のリスクやその他のリスクを解説しました。本章では、喉頭がんのお酒に関するよくある質問を、Medical DOC監修医がお答えします。

毎日お酒を飲んでいる人が喉頭がんのリスクを下げるにはどうすれば?

小島 敬史小島 敬史 医師

まずお酒の量や頻度を減らすことが効果的です。節度ある適度な飲酒の目安は、1日あたり純アルコールで約20g(ビール中瓶1本や日本酒1合相当)とされています。毎日それ以上の量を飲んでいる方は、まずこの範囲まで減らすことを目標にするとよいでしょう。
また、喫煙者がお酒も飲む場合、喉頭がんのみならず多くのがんのリスクが飛躍的に上昇します。たとえお酒の量を減らせなくても、禁煙するだけでリスクは大幅に下げることができます。
さらに、食生活にも気を配ることも重要です。野菜や果物、タンパク質をしっかり摂り、ビタミン類が不足しないことが大切です。特に大量飲酒を続けているとビタミンB群や葉酸不足に陥りやすいため、意識的に補給しましょう。

喉頭がんとお酒の種類は関係がある?

小島 敬史小島 敬史 医師

お酒の種類による喉頭がんリスクの違いはほとんどありません。大切なのはアルコールの総摂取量です。アルコール度数や量が同じであれば、どの種類でもリスクは同等と考えられます。どのお酒でも飲み過ぎれば同じだけのアルコールを摂取することになり、結果的に喉頭がんのリスクも高まってしまいます。

喉頭がんになりにくいお酒との付き合い方は?

小島 敬史小島 敬史 医師

喉頭がんになりにくいお酒との付き合い方のポイントは、まず先述したようにできるだけ適量にとどめることです。次に週に数日はお酒を飲まない日を作ることです。例えば「月・水・金は飲まない」などマイルールを決めてみるとよいでしょう。 そして、飲みながらタバコを吸わないことです。お酒の席ではつい喫煙本数が増えてしまう方もいますが、喉頭へのダメージを抑えるためには禁煙あるいは少なくとも飲酒時の喫煙を控えることが不可欠です。

まとめ

本記事でご紹介した喉頭がんの概要や、飲酒をはじめとする生活習慣が及ぼす影響、そしてリスク軽減のための具体策が、皆様の健康管理に役立つことを願っています。正しい情報と日常生活での工夫で、喉頭がんの早期発見と予防につながれば幸いです。

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  • 声帯結節
  • 慢性喉頭炎
  • 逆流性食道炎
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  • 咽頭がん

関連する症状

  • 嗄声
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  • 喉の違和感
  • 息苦しさ
  • 痰に血が混じる

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