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「肛門がんの初期症状」はご存知ですか?肛門がんと痔見分け方も解説!【医師監修】

 公開日:2025/01/08
「肛門がんの初期症状」はご存知ですか?肛門がんと痔見分け方も解説!【医師監修】

肛門がんは症例がとても少なく、希少がんと呼ばれています。

そのため肛門がんが発症しても気付かないケースや、痔と間違えて自己治療で済ませようとしてしまいがちです。

発見と治療が遅れると多くの時間と労力を費やすだけでなく、生命の危険にも関わります。

ここでは肛門がんの初期症状や検査方法、治療方法を解説します。皆さんの健康の一助となれば幸いです。

永井 恒志

監修永井 恒志

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医師、医学博士(東京大学)、東海大学大学院客員准教授。
平成15年金沢医科大学医学部卒。東京大学医学部附属病院内科研修医を経て東京大学大学
院医学系研究科教官時代に大型放射光施設SPring8を利用した多施設共同研究(国立循環器
病研究センター、東海大学ほか8研究機関)をリードし、多数の国際医学雑誌に論文を発表した。
特に免疫細胞であるM1マクロファージの画期的な機能の一端を解明した。現在は腫瘍免疫学の
理論に基づきがんの根絶を目指してがん免疫療法の開発と臨床応用を手掛けている。

肛門がんとは?

肛門がんとは大腸がんの一つで、お尻の出口の肛門部分に発生する珍しいがんです。肛門の長さ(肛門管)は日本人で男性平均3.2cm、女性平均2.9cmといわれています。この場所を中心に発生する腫瘍を肛門管がんといい、肛門周辺の組織に発生する場合も含めて肛門がんと総称します。全悪性腫瘍の0.1%しかなく、大腸がんのなかでも2%ほどです。
主に腺がんと扁平上皮がんに分けられ、日本では腺がんの症例が多く見られます。また、日本では女性が発症しやすいと報告されています。

肛門がんの初期症状

排便時の不快や痛み、出血などの症状があり痔と間違えるケースがほとんどです。そのため痔の薬を塗っても一向に症状が改善せず、病状が進行してからがんに気付く方もいます。
ここでは肛門がんの初期症状を解説します。

肛門周辺のしこりや腫れ

肛門がんの初期症状としてしこりや腫れがあります。肛門がんの場合、肛門周辺に硬いしこりができると一定の強い痛みが発生します。また肛門が炎症をおこし腫れを伴うのも症状の1つです。

排便時の痛みや不快感

排便時の痛みや不快感も肛門がんの初期症状です。排便時の痛みは裂肛の場合と肛門がんの場合で感じ方に違いがあります。裂肛の場合は鋭くピリッとした痛みが多くなるのに対し、肛門がんの場合は強く長い痛みが続くことが特徴です。
また肛門が狭くなり不快感を感じる場合もあります。

血便や肛門からの異常な出血

排便時に血が紙についている場合、状況により肛門がんの初期症状を疑う必要があります。一般的な痔による出血の場合、多量の鮮やかな赤色の血がポタポタと落ちたり便器を汚したりします。
一方で肛門がんの初期症状の場合は出血が少量です。出血の色も分泌液が混じるため赤黒くなり、下着を汚したり紙についたりする程度です。

肛門がんの検査方法

肛門がんの初期症状がある場合、すぐに検査を行う必要があります。肛門がんの診断にはまず大腸内視鏡検査で病変の所在を確認し、病理診断を行うことが一般的です。病理診断の結果をもとに、がんの有無だけでなくがんの種類を特定します。
また画像検査を行い病気の広がりを確認し、がんの進行状況を判断します。このほかに女性はHPV検査も必要です。ここでは各種の検査内容を詳しく解説します。

大腸内視鏡検査

大腸内視鏡検査とは腸管洗浄剤を服用して大腸を洗浄し、その後肛門から内視鏡を挿入して直腸から盲腸までの大腸全体を内側から検査する方法です。
検査によっては色素を追加したり拡大観察や特殊な光による観察を追加したりして、より詳細に診断をする場合があります。通常の大腸内視鏡検査は20分ほどで終わります。

病理診断

病理診断とはがんが疑われる組織の一部を採取し顕微鏡を用いて観察し、がんの有無を確認する方法です。がんの診断にはほとんどの場合で病理検査が必要です。
また、がんに含まれている蛋白質の種類や分布を調べる免疫染色と呼ばれる技術や、ある種のがんに特異的な遺伝子異常の有無を調べる遺伝子検査を合わせて行いがんの種類を詳しく特定します。
病理診断を細かに行った正確な診断が、その後の治療の成否に大きく影響します。

画像検査

画像検査とはがんを早期発見するうえで欠かせない要素になります。がんの性質や広がりを調べ適切な治療を行うための方針決めや予後の予測に重要です。
画像検査には超音波検査・レントゲン・CT・MRI・核医学検査などがあり、人体の輪切りの画像を作ったり造影剤の投与後の変化を調べ腫瘍の形や位置・広がりなどを調べます。

HPV検査

ヒトパピローマウイルス(HPV)はヒトにのみ感染するウイルスで、肛門がんにも関わりがあるといわれています。生涯でほとんどの女性が感染するとされ、感染が珍しい病気ではありません。また感染しても自覚症状がない場合がほとんどで、多くの場合身体の持つ免疫力によりウイルスが排除されます。
ただ、ごく一部の方はウイルスが排除できず感染が持続する場合があります。この場合なにかしらのがんに進行する危険性があり注意が必要です。HPV検査にはグループ検査と型判定検査の2種類があります。
HPVウイルスのなかでも子宮頸がんの発生に関連の深い14種類の有無を判定する方法をグループ検査といいます。そのなかでもどの型に感染しているかを調べるのが型判定検査です。
型判定検査の場合14種類のなかでもよりがん化しやすい型に感染しているかを調べるので、将来的ながんのリスクにも有効です。いずれの方法も子宮頸腟部から細胞を採取して検査を行います。

肛門がんの治療法

肛門がんの治療法は大きく3つに分けられ、また腺がんか肛門管扁平上皮がんかによって治療に対してのアプローチが変わります。このほかにも病状の進行具合による効果的な治療法の選択が大切です。
病状の進行具合は一般的にステージと呼ばれ0〜4期までありステージの数字が低いほど再発の可能性が少なく、5年生存率は上昇します。ここからは3つの治療法の内容とがんの種類・ステージによる選択を解説します。

手術療法による腫瘍の摘出

外科的切除によりがんのすべてを切り取る方法です。腫瘍の大きさや位置、進行度にあわせて患部全体を取り除きます。
腺がんの場合に主に行われる治療法で、0〜1期の一部の腺がんに対しては内視鏡を使った局所手術が可能です。
内視鏡手術の使用できない3期までの腺がんに対しては肛門括約筋を含む広範囲の切除が必要になり、人工肛門増設が必要になる場合もあります。

化学放射線療法

科学放射線療法とは放射線によりがん細胞を死滅させる放射線療法と、抗がん剤によってがんの抑制と転移を防ぐ化学療法を組み合わせたものです。
肛門管扁平上皮がんは化学放射線療法の感受性が高く、ステージ3期までは化学放射線療法を行うことが世界的な標準治療となっています。手術療法と同等の効果がありながら肛門を温存できるため、メリットの大きい治療法です。
ただし放射線による皮膚炎や疲労感、抗がん剤による脱毛や吐き気などのデメリットもあります。これらの副作用は一時的なものですが、なかには長期間持続するものもあります。

化学療法(抗がん剤)の適用

化学療法(抗がん剤)の適用には大きく3つの役割があります。
1つ目は再発抑制効果で手術前や手術後など使用するタイミングはさまざまです。
2つ目は根治効果で放射線療法と合わせて根治を目指して行います。
3つ目は症状緩和・延命効果です。ステージ4または再発の場合に対して、これ以上がんを転移・進行させないために使用します。症状をやわらげ普段の生活の質を保つことが主な用途です。

肛門がんについてよくある質問

ここまで多発性骨髄腫について紹介しました。ここでは「肛門がん」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。

肛門がんの初期症状と痔の違いをどう見分ければよいですか?

永井 恒志永井 恒志 医師

わかりやすいのは出血の内容です。痔の出血が鮮やかな赤色でサラサラしているのに対し、肛門がんの出血は分泌液の混じった赤黒い少量の血になります。

肛門がんの治療後に再発する可能性はどれくらいありますか?

永井 恒志永井 恒志 医師

横浜市立大学第2外科によると9年間で27件の肛門がんに対し2件の再発がありました。再発率でいうと7.4%になります。とはいえ肛門がんは大腸がんのなかでも2%ほどの割合しかなく症例が少ないため、目安ぐらいにしておくのがよいでしょう。

編集部まとめ

肛門がんは痔と間違えやすく早期の発見がとても難しい病気です。

また初期段階では2割ほどの方が無症状のまま病状が進行します。

腺がんの場合、悪化すると肛門括約筋まで切除し人工肛門の装着を余儀なくされるケースも少なくありません。

少しでも不安に感じたら定期的な検査を受けるようにしましょう。

肛門がんと関連する病気

肛門がんと関連する病気は2個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

関連する病気

肛門がんは消化器系のがんのなかでも症例が少なく、大腸がんのなかでも2%ほどです。また痔と症状が似ており、がんと気付かず受診までに時間がかかるケースが多くあります。肛門のがんのうち腺がんは直腸がんと治療方法も似ていますが、まったく異なる治療法の肛門管扁平上皮がんもあるため定期的な検診を行って早期発見・早期治療で寛解を目指しましょう。

肛門がんと関連する症状

肛門がんと関連している、似ている症状は4個ほどあります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

関連する症状

  • 排便時の違和感
  • 肛門の腫れ
  • 肛門の痛み

肛門がんの症状は痔と似ていて見過ごされやすいものです。痔の薬を塗ってもよくならず、症状が進行してから受診し発見が遅れるケースがあります。
いつもとどこか違う、またはこれらの症状が長引いていると感じたならぜひ早めに医療機関を受診しましょう。