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”悪性化”しやすい「胃ポリープの見た目」は?進行時の症状も医師が解説!

 公開日:2025/12/23
”悪性化”しやすい「胃ポリープの見た目」は?進行時の症状も医師が解説!

胃ポリープは基本的には良性の病変です。3つの種類に分類され、ほとんど治療の必要がない胃底腺ポリープ、悪性化リスクがある過形成ポリープや危険な腺腫ポリープがあります。

初期の胃ポリープには症状はありません。ただ、萎縮性胃炎を伴うポリープは、胃炎による症状が特徴的です。大きくなればポリープからの出血による症状もあります。
この記事では3種類の胃ポリープの悪性度・見た目の違い・症状を解説します。胃の調子が気になる方は参考にしてください。

中路 幸之助

監修医師
中路 幸之助(医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター)

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1991年兵庫医科大学卒業。医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター所属。米国内科学会上席会員 日本内科学会総合内科専門医。日本消化器内視鏡学会学術評議員・指導医・専門医。日本消化器病学会本部評議員・指導医・専門医。

胃ポリープとは?

胃ポリープは胃粘膜上にできる、腫瘍とは違う良性の盛り上がった病変を指します。胃ポリープは以下のとおり3種類に分類されます。

  • 胃底腺ポリープ
  • 過形成ポリープ
  • 腺腫性ポリープ

胃ポリープのうち、ほとんどの症例が胃底腺ポリープか過形成ポリープです。ほかには、悪性化リスクの高い腺腫性ポリープがあります。
多くは無症状ですが、出血が続くと貧血に関連する症状が見られることがあります。
また、巨大化して胃の入口や出口が狭くなると、現れるのが吐き気・食欲不振などの症状です。
治療が不要なポリープもあるなかで、良性でも悪性化する可能性が高いもの、食物の通過障害をおこすものは切除が必要です。
ポリープの見た目や粘膜の状態から、胃がんリスクを高めるヘリコバクターやピロリ菌の関与が疑われる場合は、感染確認と除菌治療が行われます。

胃ポリープの悪性化する確率や見た目

胃ポリープの多くはあまり深刻なものではなく、治療が不要なものもあります。しかし、悪性化の可能性があるポリープでは対応が必要なので、種類の見極めが大切です。
種類ごとに悪性化する確率・見た目などを見ていきます。

胃底腺ポリープ

胃底腺ポリープは胃の上部にできやすい性質があり、直径は5mm以下です。女性に多く複数個できるのが特徴で、周囲の健康な粘膜と色調は変わりません。ツルツルした球状の見た目で、内視鏡で簡単に判別できます。
この種類は悪性化(=がん化)しないとされていて、特に治療の必要はありません
このポリープができるのは、ヘリコバクターやピロリ菌がいない=萎縮性胃炎がない健全な粘膜上です。
ただし、極めてまれに胃底腺ポリープががん化した例はあります。したがって経過観察が必要です。

過形成ポリープ

過形成ポリープは、萎縮性胃炎をおこした胃粘膜に発生しやすい腫瘤です。炎症の傷を修復する際に、組織が過剰に作られてポリープになるといわれます。
見た目は炎症のために濃い赤色で表面には凹凸が見られ、ときに出血して貧血症状が見られることもあります。
萎縮性胃炎は胃がんリスクを高めるピロリ菌との関係が深く、そこから発生した過形成ポリープが認められた場合は、ピロリ菌の有無を確認する検査を行うべきです。除菌治療を行うと、約80%の患者さんでポリープの縮小・消失が見られることが明らかです。
なお、直径10mm超の過形成ポリープからは、約2%の頻度で胃がんが発生するとされます。直径が20mm以上・除菌しても大きくなる・出血が継続するなどの場合は、内視鏡による切除が考慮されます。

腺腫性ポリープ

腺腫は主に胃の中部から下部にかけてよく発生するポリープです。高度に進行した萎縮性胃炎の粘膜に発生しますが、見た目は過形成ポリープとは違い灰白色で扁平な形をしています。
多くのポリープが良性と悪性の境目の前がん状態とされ、組織を顕微鏡で検査して良性と判断されたものが腺腫です。
ただし判定は難しく、サイズが大きいものや陥凹しているものはがん化している疑いが強いため、切除が推奨されます。

胃ポリープの症状

胃ポリープは胃の粘膜面に局所的に隆起した病変で、初期には特別な症状はありません。
しかし大きくなるにつれて影響が出る場合があり、慢性の萎縮性胃炎が背景にあるポリープでは、胃炎の影響による症状がおこります。
主な症状を解説します。

胃もたれ・胃の不快感

ポリープのうち過形成ポリープや腺腫性ポリープでは、直径数cmにまで大きくなることがあります。
大きくなったポリープが胃の入口や出口を狭め、食物が動きにくくなって胃もたれや胃の不快感などの症状が表れます。

胃やみぞおちの痛み

胃ポリープには過形成ポリープや腺腫性ポリープのように、ピロリ菌の感染による慢性の萎縮性胃炎を伴うものがあります。
こうしたタイプでは胃炎による症状として、胃やみぞおちの痛みがみられます。

食欲不振

食欲不振も萎縮性胃炎では普遍的な症状です。萎縮性胃炎では胃液の分泌機能が大きく低下して胃液が十分に分泌されず、食べた物が消化されにくいために空腹を感じにくくなります。
また、ポリープが大きくなって胃の出入り口が狭くなることも、食欲不振がおこる原因の一つです。

胃の膨満感

胃の膨満感も、食欲不振や胃もたれと同様に、慢性の萎縮性胃炎からおこる症状です。
胃の粘膜が薄くなり組織が脆弱化して萎縮し、胃酸や胃液の産生能力が低下するために食べ物を消化しにくくなります。
そうなると食べ物が胃に長時間留まり、お腹のハリ・膨満感がおこりやすくなるわけです。

貧血

胃ポリープの症状では貧血も見られます。症状がほとんどないとされる胃底腺ポリープでも大きくなると出血しやすくなり、過形成ポリープや腺腫でも表面からの出血が見られます。
貧血の症状は出血量が多くなったためで、血液の流れをよくする薬を服用したり、血液透析を受けていたりする方によく見られる症状です。
出血が止まりにくいため、意識しないうちに出血が続いて貧血に至ります。

タール便

タール便は真っ黒で光沢があり、重油のような粘り気のある便です。血液中のヘモグロビンが胃液で酸化されて黒くなります。
便が黒くなるのは胃や食道から多量の出血があったことを示し、多くはめまいや立ちくらみなど貧血の症状を伴います。
タール便が出たら早急に、内視鏡検査ができる消化器内科を受診してください。

胃ポリープの検査方法

胃のポリープはかなり大きくならないと自覚症状がないため、ほとんどが健診で見つかります。
現在の健診はX線検査と内視鏡検査が主体ですが、それぞれ機能により特徴があります。個別に見て行きましょう。

バリウム検査

この検査は造影剤を飲んでX線を照射し、胃粘膜に付着した造影剤の影によって病変の形を描き出す検査です。胃全体の形や内面の凹凸が白黒画像で描写されます。
胃ポリープのような隆起した病変では、位置・形・大きさなどが正確に把握できる検査です。
ただし、見た目・悪性度・色あいなどはわかりません。確定診断は内視鏡による生検に委ねます。

上部消化管内視鏡検査

一般的に胃カメラと呼ばれる上部消化管内視鏡では、細いチューブの先端に付けたカメラでポリープを直接目視しながら検査します。色調や表面の様子など、見た目で種類の判別ができ、組織を採って悪性化やピロリ菌感染の診断も可能です。
特殊な光源によりわずかな色調の違いから平坦な病巣を発見したり、拡大機能でごく小さな隆起や凹み・微小な病変を見つけたりできるなど、得られる情報量が大きな検査ができます。

胃ポリープの悪性・見た目についてよくある質問

ここまで胃ポリープの悪性・見た目などを紹介しました。ここでは「胃ポリープの悪性」についてよくある質問に、メディカルドック監修医がお答えします。

悪性と良性の胃ポリープを区別する方法を教えてください。

胃ポリープには3種類あります。見た目で扁平・灰白色のポリープは腺腫で、悪性化する可能性があります。赤くて表面に凹凸がある過形成ポリープは良性ですが、悪性化するリスクがあります。粘膜と同色でツルツルの胃底腺ポリープは良性で、悪性化の可能性はほぼゼロです。いずれも見た目の判断で、確定診断は組織を採って調べる生検で行います。

胃ポリープの治療はどのように行いますか?

腺腫の場合は前がん状態なので、多くは内視鏡による切除が推奨されます。過形成ポリープは2cm以上の大きさや増大傾向が見られた場合は切除し、小さいものは経過観察です。胃底腺ポリープの場合は治療せず、経過観察が一般的です。

編集部まとめ

胃のポリープには種類があり、ピロリ菌が関係しない胃底腺ポリープであれば深刻になることはなさそうです。

しかし、ピロリ菌の感染がある方は要注意です。悪性度が低い過形成ポリープでもがん化する可能性があり、腺腫ではさらに悪性化リスクが増大します。

胃が気になる方はまずピロリ菌の感染検査を受けましょう。陽性なら悪性リスクがあるので胃カメラの検査が必要です。両方の検査が一度にできるABC検査の受診をおすすめします。

胃ポリープと関連する病気

「胃ポリープ」と関連する病気は2個程あります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからメディカルドックの解説記事をご覧ください。

関連する病気

胃ポリープのうち胃底腺ポリープ以外はピロリ菌に感染した萎縮性胃炎の粘膜に限って発生します。
過形成ポリープ・腺腫とも悪性化するリスクがあり、特に腺腫はすでに前がん状態で切除が推奨されるポリープです。

胃ポリープと関連する症状

「胃ポリープ」と関連している、似ている症状は6個程あります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからメディカルドックの解説記事をご覧ください。

関連する症状

  • 胃もたれ・胃の不快感
  • 胃やみぞおちの痛み
  • 食欲不振
  • 胃の膨満感
  • 貧血
  • タール便

これらの症状は大きくなった胃ポリープの症状ですが、進行した胃・十二指腸潰瘍や胃がん・食道がんの症状でもあります。
どの病気であっても治療が必要な症状なので、早急に消化器内科を受診してください。

この記事の監修医師