「悪性リンパ腫が再発」したらどんな検査法・治療法を行う?【医師監修】
悪性リンパ腫は、症例によっては約4割が再発し、治療が必要になる傾向があります。
この記事では、悪性リンパ腫が再発した場合の検査法や治療法、費用を詳しく解説します。
末尾には、再発治療中に日常生活で気をつけるポイントもまとめました。ぜひ最後までご覧ください。
監修医師:
山本 佳奈(ナビタスクリニック)
目次 -INDEX-
悪性リンパ腫とは?
悪性リンパ腫は、リンパ球のがんです。人の体にはリンパ管が張り巡らされており、そのリンパ管をつなぐ300~600個のリンパ節が存在します。
悪性リンパ腫とは、そこに存在するリンパ球ががん細胞化する病気です。人口の高齢化とともに増加していますが、がん全体でみると罹患率は高くありません。悪性リンパ腫には多くの種類があり、そのほとんどが原因不明です。
びまん性大細胞型B細胞リンパ腫
びまん性大細胞型B細胞リンパ腫は、B型リンパ球ががん化して発症します。悪性リンパ腫のなかでも発症率の高い病気です。治療後の再発率は4割と高く、再発した場合は病気の進行が早い傾向にあります。初期ではリンパ節に腫れやしこりがあらわれ、進行するにつれて発熱や体重減少、大量の寝汗がみられます。これらはB症状と呼ばれる、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫の特徴です。
その他、がんが発生した部位により、あらわれる症状は異なります。腫れやしこりにより気管や脊髄などの重要な臓器が圧迫された場合は、緊急性が高く早急な治療が必要です。
非ホジキンリンパ腫
日本人が罹る悪性リンパ腫のうち、90%以上が非ホジキンリンパ腫です。一部の進行が早いものはウイルスが起因するエビデンスもあります。しかしほとんどの非ホジキンリンパ腫の原因は不明です。非ホジキンリンパ腫は多くの種類に分類されます。
非ホジキンリンパ腫はホジキンリンパ腫に比べ全身に広がりやすい性質があり、発生する場所やがん化するリンパ球の種類によって症状が異なります。いずれの場合も再発リスクが高いのが特徴です。100種類近いタイプがあるといわれていますが、大別するとB細胞リンパ腫・T細胞リンパ腫・NK細胞リンパ腫に分類されます。
悪性リンパ腫が再発したときの検査法
悪性リンパ腫は再発する可能性があります。リンパ管が全身を巡っていることから、がん細胞が全身に広がり転移しやすいのが特徴です。悪性リンパ腫が再発したときの検査法を解説します。
CT・PET検査
CT・PET検査は特殊な装置でがん細胞がどこにあるのかを検査します。CT検査は体の一部分に注目して、臓器のかたちの異常を確認します。
一方ブドウ糖代謝の機能から全身を一度に確認できるのがPET検査です。どちらもがんの広がり、転移を調べるために行われる精密検査です。
生検検査
生検検査は、再発が疑われるリンパ節の一部を採取し顕微鏡で調べる検査です。リンパ腫の診断や病型を確定するために必須となります。局所麻酔・または全身麻酔で行い、最終診断までは期間を要します。
血液検査
主に肝臓や腎臓の機能を確認するために行われます。血液に含まれる赤血球や白血球などの数値を確認し、異常な増減がないかで再発の兆候をとらえられます。そのなかでも特にsIL2₋R(可溶性インターロイキン2受容体)は、悪性リンパ腫の影響で値が上昇することがあるため、増加していないか検査が行われます。
骨髄検査
悪性リンパ腫が骨髄に転移していないかを確認します。腰の骨から骨髄液を採取して、がん細胞の有無を検査します。局所麻酔を行い、所要時間15分程度です。痛みを伴います。
悪性リンパ腫が再発したときの治療法
悪性リンパ腫が再発したときには、初回とは異なる治療法が用いられます。再発したときの治療法を紹介します。
CAR-T細胞療法
患者さん自身のT細胞を取り出し、がんと闘えるよう変革して体内に戻す治療法です。具体的には、がんに直接的に作用していると考えられているT細胞にCARを取り付け、がん細胞に積極的にアプローチできるよう改良します。強い副作用が懸念されるため、CAR-T細胞投与後は状態が安定するまで入院が必要です。
CAR-T細胞療法は、国内で保険診療として受けられる唯一のエフェクターT細胞療法です。
自家造血幹細胞移植併用大量化学療法
通常よりも大量の化学療法の投与を可能にする治療法です。大量の抗がん剤を投与する前に、患者さん自身の造血幹細胞を採取し避難させます。大量化学療法施行後に患者さんにその造血幹細胞をもどすことで、抗がん剤に暴露されていない造血幹細胞から新たな血液がつくられます。悪性リンパ腫の完治を目指して行われます。
救援化学療法
がんが再発したときに行われる治療をまとめて救援化学療法と呼びます。悪性リンパ腫の場合は、この救援療法が数多くあり、初回治療とは異なる抗がん剤を組み合わせた化学療法を行います。初回治療では見られなかった副作用が現れる可能性があります。
放射線治療
悪性リンパ腫が局所的な場合に、高エネルギーのX線を当てがん細胞を死滅させる治療法です。通常、1日1回の照射を3~5週間続けて行います。限られた範囲の悪性リンパ腫の場合、放射線療法だけで治療できる可能性もあります。
緩和ケア
緩和ケアは、患者さんの生活の質を向上させることを目的に行われます。がんという生命を脅かす病に直面した不安や、からだの痛みを緩和し人生に前向きになれるようサポートします。医師だけでなく、心理士やケアマネジャー、ソーシャルワーカーがそれぞれの得意分野で緩和ケアにあたります。
悪性リンパ腫の再発時にかかる治療費用
悪性リンパ腫は症状がさまざまで、受ける治療法によって費用も異なります。治療費用以外にも、差額ベッド代も必要です。高額になる治療法も多く、CAR-T細胞療法は保険適用の場合でも7000,000〜1,200,000の費用負担があります。公的支援制度を活用し、治療費の負担を軽減しましょう。
悪性リンパ腫の再発についてよくある質問
ここまで悪性リンパ腫が再発した場合の検査法や治療法を紹介しました。ここでは「悪性リンパ腫の再発」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。
再発は何年以内に起こりやすいですか?
山本 佳奈(医師)
悪性リンパ腫の再発リスクが高いのは、治療後2年以内です。再発した患者さんの約9割が2年以内に再発しています。再発の可能性がゼロになることはむずかしいですが、治療完了から4年以上経過した場合の再発率は1%以下に低下します。
再発後治療中の生活で気を付けることはありますか?
山本 佳奈(医師)
悪性リンパ腫の治療中には白血球が減少するため、細菌に感染しやすくなります。主に感染症に気を付けて過ごしましょう。また、抗がん剤の副作用による心身の不調も深刻になりやすいです。特に口内炎に悩まされる人が少なくありません。可能であれば適度な運動などを取り入れ、ストレス緩和に努めましょう。
編集部まとめ
悪性リンパ腫はリンパ球のがんで、発症するカ所によりさまざまな種類があります。日本人がかかる悪性リンパ腫は90%以上が非ホジキンリンパ腫です。
悪性リンパ腫の種類によっては約4割が2年以内に再発する傾向があります。
再発時には多くの検査・治療方法があります。早期発見のために、治療後も定期的に検診を行いましょう。
悪性リンパ腫と関連する病気
「悪性リンパ腫」と関連する病気は4個程あります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
代表的な悪性リンパ腫として、上記のようなものがあります。また、白血病は悪性リンパ腫と同様に血液のがんです。
悪性リンパ腫と関連する症状
「悪性リンパ腫」と関連している、似ている症状は5個程あります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
関連する症状
- リンパ節の腫れや圧迫感
- 原因不明の発熱
- 倦怠感
- 体重減少
- 大量の寝汗
悪性リンパ腫では、特に発熱・体重減少・大量の寝汗が特徴的です。これらはB症状と呼ばれます。気になる症状があれば早急に受診し、検査を行いましょう。