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「大腸がん手術後」の”合併症”は何がある?術後の大切にしたい生活習慣も医師が解説!

 公開日:2025/12/28
「大腸がん手術後」の”合併症”は何がある?術後の大切にしたい生活習慣も医師が解説!

白大腸は食べ物の吸収や消化に関わる大切な臓器です。大腸がんの手術では大腸を切除するため、これらの機能が低下する可能性があります。

大腸がんの手術で注意すべきポイントは、術後の生活だけではありません。

術後は縫合不全や感染症などの合併症のリスクがあり、これらを発症すると入院期間も延長してしまうでしょう。

また、手術が終わって順調に退院したとしても、普段どおり仕事などをして動き回ってもよいものなのか気になる方もいるのではないでしょうか。

今回は、そのような大腸がんの術後の食事などの生活について、術後に起こりやすい合併症に触れながら解説します。

本多 洋介

監修医師
本多 洋介(Myクリニック本多内科医院)

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群馬大学医学部卒業。その後、伊勢崎市民病院、群馬県立心臓血管センター、済生会横浜市東部病院で循環器内科医として経験を積む。現在は「Myクリニック本多内科医院」院長。日本内科学会総合内科専門医、日本循環器学会専門医、日本心血管インターベンション治療学会専門医。

大腸がんとは?

大腸がんは、大腸でできた腫瘍のなかでも悪性のもののことです。腫瘍は大腸表面の粘膜から発生し、進行すると粘膜表面から徐々に進行していき、大腸壁の奥深くまで進展します。
腫瘍のサイズが小さい間は自覚症状に乏しいですが、腫瘍が大きくなり便の通り道を塞いでしまうと痛みが発生するでしょう。また大腸は以下の部分に分類できます。

  • 盲腸
  • 上行結腸
  • 横行結腸
  • 下行結腸
  • S状結腸

大腸がんが上記の部分のどこに発生するかによっても、出現する症状が異なります。血便や排便習慣の変化など便に関わるものは要注意です。お腹の調子がいつもと違うなと感じたら、一度受診するようにしましょう。

大腸がんの手術後の生活で大切なこと

大腸がんの手術では、大腸を切除したことで便の形成や排出に影響を与えます。また、切除した部分が肛門に近い程、影響が大きくなります。
術後にどのような影響が出現する可能性があるのか、担当医師によく確認しておきましょう。結腸部分の手術では便の形成や排出に対する影響はあまりないといわれています。

規則正しい生活

大腸がんを手術によって摘出した後、原則食事制限はありませんが太ってしまう場合があります。そのため、腹7分~8分目くらいにしておくようにしましょう。食生活の面では、食物繊維の摂取が多いと腸閉塞を起こしてしまう可能性があります。
術後の経過によっては食物繊維の制限がない場合もあるため、退院前に医師に確認しておきましょう。

禁煙

喫煙は大腸がんの発生リスクを上げるという報告があるため、再発を防ぐ観点から禁煙しておいた方が無難でしょう。

節度のある飲酒

術後の飲酒は、節度のある飲み方を心がける必要があります。ビールは1缶・日本酒は1合程度です。
もう少し飲みたいという方は、主治医にどの程度までが許容範囲なのか確認しておきましょう。

適度な運動

術後はウォーキングやストレッチなど軽い運動から始めましょう。1~3ヵ月程度で術前の日常生活には戻れるようになります。
しかし、腹筋を使うような運動は傷口が開く可能性があります。どこまで運動してよいかは医師の判断になるので、医師に確認しておきましょう。

大腸がん手術後に起こりうる合併症

大腸がんの手術では、大腸の切除や縫合などさまざまな手技が行われます。
手技が行われる際には、出血や縫合不全などの合併症が起こるリスクもあるでしょう。ここでは、術後の合併症について解説していきます。

出血

どのような手術においても、臓器を傷つける以上出血は避けられません。そして、切除する範囲や場所によって出血のリスクは大きく変わってくるでしょう。
大腸がんの手術のなかで、骨盤内部の手術となると出血しやすい部位があるため、注意して手術を進めていく必要があります。1000ml以上の出血があった場合は、輸血が必要になるでしょう。

縫合不全

手術終了時に腸管を縫合しますが、うまく縫合できておらず便やガスなどが漏れてしまう合併症です。
漏れ出た内容物は腹膜炎の原因となり、救命のために一時的に人工肛門を作成することもあるでしょう。縫合不全の合併症は肛門に近い直腸がんで起こりやすいとされ、直腸がんの手術の場合はあらかじめ人工肛門を一時的に作成する場合もあります。

腹腔内膿瘍・腹腔内膿瘍

術後に腹腔内の細菌が感染を引き起こし、腹部に膿ができてしまう合併症です。腸管の内部は元々大腸菌などさまざまな細菌が生息しており、それらの細菌が原因となります。

イレウス

イレウスは手術によって腸管が麻痺することで腸管がむくんでしまい、腸管の動きが悪くなる合併症です。この状態になると食事を摂取しても嘔吐してしまうので、絶食になります。
一定の絶食期間を設けることで改善するでしょう。

腸閉塞

術後の腸管の癒着によって腸管の動きが悪くなり、腹痛や嘔吐などの症状が出現するでしょう。
腸閉塞は術後半年~2年後くらいの間に起こるとされていますが、何年も経過してから起こることもあります。

排尿障害

手術によって自律神経の働きが低下するため、排尿障害が起こることがあります。
がんの切除範囲によって自律神経が温存される場合と切除される場合があり、温存された場合は数ヵ月程度で回復するでしょう。切除された場合は、自己導尿やカテーテル留置が必要になる場合もあります。

大腸がん手術後の食事の注意点

大腸がんの手術では、あまり食事制限はありません。消化を行ううえで大腸に負担をかけないようにゆっくりよく噛んで食べるようにしましょう。ただし、食物繊維の摂取は腸閉塞のリスクがあります。医師によっては、食物繊維など食事に関する制限があるかもしれません。退院までに主治医に確認しておくようにしましょう。

大腸がんの手術後についてよくある質問

ここまで大腸がんの手術後について紹介しました。ここでは「大腸がんの手術後」についてよくある質問に、メディカルドック監修医がお答えします。

大腸がん検査後はどのくらいの頻度で経過観察が行われますか?

大腸がんの術後はがんが再発していないか、術後5年以内は定期的に検査する必要があります。頻度は術後3年までは3ヵ月に1回、3年以上は6ヵ月に1回です。検査内容は血液検査での腫瘍マーカー・CT・大腸内視鏡などです。一般的に術後の定期検査は5年ですが、病院によっては10年間検査するところもあり、対応が病院によって異なります。

手術後の入院期間はどのくらいですか?

標準的な大腸がんの手術では術前2~3日前から入院し、術後7~10日後に退院するため、全体で2週間程度入院する必要があります。侵襲性の高い開腹手術では、侵襲性の低い腹腔鏡手術よりも入院期間が長くなる可能性があるため、術式によって入院期間も異なるでしょう。術後に縫合不全などの合併症が起こった際は、さらに長期間の入院が必要です。

編集部まとめ

大腸がんの初期は自覚症状がほとんどなく、早期に発見することは困難です。

そのため、定期的な腹痛や排便習慣が変わったなどの症状が出現した場合は、早めに受診するようにしましょう。

早期に発見できれば、手術で取り切れる可能性もあるため、今後の予後に大きな影響を与えます。

術後の生活で大きな制限をかけられるものはあまりないので、術後3ヵ月もすれば入院前と同じような生活に戻ることも可能でしょう。

担当医によっては、禁煙など別途指導されるものもあります。退院前にどのような点に注意すべきなのか事前に主治医に確認することが大切です。

大腸がんと関連する病気

「大腸がん」と関連する病気は2個程あります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからメディカルドックの解説記事をご覧ください。

これらの病気はどちらも排便習慣に影響を与えるため、大腸がんで起こる症状と似たものがあります。下痢や便秘がひどくなると、普段の生活に影響を与えてしまう可能性もあるでしょう。排便習慣に異常を感じた場合は、早めに受診するようにしましょう。

大腸がんと関連する症状

「大腸がん」と関連している、似ている症状は6個程あります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからメディカルドックの解説記事をご覧ください。

関連する症状

  • 貧血
  • 便柱狭小化
  • 排便習慣の変化腫瘤蝕知

大腸がんではこれらの症状がありますが、がんが大腸のどの部分に発生しているかによって、症状は異なります。大腸がんは初期症状が乏しいため、上記の項目と似た症状を自覚した場合は、受診し調べてもらうことが大切です。

この記事の監修医師