「舌がんのステージ4」の症状・余命・生存率はご存知ですか?医師が徹底解説!
Medical DOC監修医が舌がんのステージ4の症状(末期症状)や余命・生存率・検査法・治療法や何科へ受診すべきかなどを解説します。気になる症状がある場合は迷わず病院を受診してください。
監修歯科医師:
五島 志織(歯科医師)
目次 -INDEX-
「舌がん」とは?
口腔内にできる癌を総称して口腔がんといいます。
口腔がん中で一番多いのは、舌がんであり、全体の40パーセントをしめます。
舌がんの男女比は2:1で、ほかの口腔がんに比べ、平均年齢も低く、20~40代の罹患もしばしばみられ、後発部位は、舌縁、あるいは舌下面です。舌背、舌尖にはほとんどみられません。
初期にはびらん、小潰瘍(少しえぐれた状態)、小結節あるいは表面がざらざらしていたりぼつぼつしたものがみられ、しばしば白斑(白い斑点)や紅斑(赤み)が混在します。
さらに進行すると、潰瘍と硬結(硬いしこり)を伴う腫瘍を形成します。
舌がんの治療は主に3つで、外科的療法(手術)、放射線療法、化学療法(抗がん剤治療)で、1つだけでなく複数を採用することも多いです。
がんの治癒の目安としての5年生存率は70~80%ほどです。
受診時には、いつから見られたか、または、がんが遺伝性のものもあるので、家族にがんの既往がある場合は、医師に伝えたほうが良いです。
また、がんが生活習慣病の一種なので、生活歴特に、たばこや酒などの嗜好品も伝えると良いです。がんは早期発見早期治療が一番治癒につながるので、少しでも疑いがある場合は早めの受診をお勧めします。
舌がんステージ4の症状(末期症状)
舌癌のステージ4は最も進行したがんとなります。病期分類で見るとステージⅠが21.7%、ステージⅡが32.5%、ステージⅢが18.2%、ステージⅣが27.6%となります。
(日本頭頸部癌学会編.頭頸部癌取扱い規約 第6版補訂版 2019年 金原出版.より引用)
上記のようにがんは、原発巣の大きさ、リンパ節転移の有無、遠隔転移の有無でステージが分類されていきます。
また、ステージⅣであってもステージⅣA、ステージⅣB、ステージⅣCの3つに分類されます。
遠隔転移がある場合は原発巣の大きさ、リンパ節転移の有無に関係なくステージⅣCとなります。ステージⅣA、ステージⅣBは上記の方法で決まっていきます。
すぐに治療が必要となるので、すぐに歯科、口腔外科、耳鼻咽喉科の受診をお勧めします。ステージⅣになると、舌機能は著しく機能の低下がみられ、嚥下(飲み込むこと)や会話が困難になります。また、痛みが現れることもあります。首や顎の腫れも見られることもあります。
舌がんステージ4の余命・生存率
舌がんのステージⅣの5年生存率は40~50%です。
ちなみに、ステージⅠでは85~95%、ステージⅡでは80~85%、ステージⅢでは、60~75%となります。
このことから、より早く発見することができると、治癒する可能性が高いです。
しかし、進行した状態で見つかったとしても手遅れではなく、適切な治療を受けることで、長く生きられる場合もあります。
舌がんステージ4の検査法
舌がんステージ4に特化した検査法があるわけではないのでここでは舌がんに対する検査法をお示しします。
視診
医師が口の中に光をあてながら舌を直接観察して、がんが疑われる部分の大きさや形を確かめます。このとき、粘膜が白く変化する白板症などの異常の有無、虫歯やインプラント、かぶせ物の状態なども確認します。
触診
医師が口の中に指を入れてがんがあると疑われる部分に直接触れ、大きさや硬さ、広がりなどを調べます。さらに、首をさわって、リンパ節の腫れがあるかも確かめます。
超音波(エコー)検査
超音波を体の表面にあて、臓器から返ってくる反射の様子を画像にする検査です。舌がんの深さや広がりにくわえ、頸部リンパ節への転移の有無を確認します。
細胞診
病変の一部を採取し、顕微鏡で詳しく観察する検査です。ブラシや綿棒などで舌の表面をこすって細胞をとる「細胞診」と、鉗子などの器械で組織の一部を採取する「組織診」があります。がん細胞の有無や、どのような種類の細胞で構成されているか(組織型)、検査した細胞が正常な細胞とどのくらい異なっているか(異型度)などを調べます。
CT検査
体の周囲からX線をあてて撮影することで、体の断面を画像として見ることができる検査です。がんの大きさ、深さや広がり、リンパ節、他の臓器への転移の有無を調べるときに行われます。造影剤を注射して撮影すると、がんの広がりやがんが周りの臓器に浸潤しているかなど、詳しく確認することができます。主にステージ(病期)診断に用いられます。
MRI検査
強力な磁石と電波を使用して撮影することで、体のさまざまな断面を画像として見ることができます。CT検査と組み合わせることで、がんの広がりや深さ、他の臓器やリンパ節への転移についてより正確に把握できるようになります。CT検査と同様に、造影剤を注射して撮影することで、より詳しく検査をすることができます。
PETーCT検査
PET検査は、放射性物質を付加したブドウ糖液を注射し、がん細胞に取り込まれた放射性物質の分布を撮影することで全身のがんの有無や広がりを検出する検査です。一般的にはCT検査を併用したPET-CT検査を行います。重複がんの有無の確認や、正確なステージ(病期)の確定のために行うことがありますが、がんの種類や大きさによって、診断の精度が異なります。
舌がんステージ4の治療法
外科的療法
外科的療法は、手術を伴うため、入院が必要となります。最も有効で確実な治療法となります。入院期間は、症状により異なってきます。
がんが比較的限定された場所で留まっている場合は、安全域を含めた原発巣の切除のみでいいので、1~2週間ほどの入院になりますが、切除範囲が広くなると、切り取った臓器や器官を新たにつくり直す手術(再建手術)が必要になります。その場合は、手術時間も長く、丸1日かかることもあります。
また、再建した場合は、リハビリ期間も長くなることから、入院期間が1か月もしくは1か月を超えることもあります。
手術が主な治療であるため、患者さんに対しての負担は大きくなりますが、うまくいけば根治には近いため、よく使われる方法です。
化学療法
化学療法は、かつては外科的療法の術前、術後の療法としての補助療法として使われることがほとんどでした。しかし、近年は、口腔機能が維持された状態を目指して、化学療法と放射線療法を組み合わせた治療による根治的治療法としても用いられるようになってきています。
経口薬もありますが、ほとんどが、静脈内投与(点滴)となります。そのため、近年は、入院よりは外来で行うことが増えてきました。
しかし、化学療法には、有害事象があるため、注意が必要となります。
薬によって有害事象は異なりますが、共通するものとして、骨髄抑制があげられ、好中球減少症、血小板減少症、貧血などが問題となります。
放射線療法
放射線療法は、がんの発生した部位に放射線をあてる治療法です。
これは、がん細胞が正常細胞よりも放射線感受性が高く、障害を受けやすいという性質を利用しています。
放射線によって、正常組織がダメージを受けない程度の範囲に抑えながら、がん細胞を死滅、あるいは少なくとも増殖できない程度にまで制御しようとしている治療です。外科的療法と併用して術前照射、術後照射が多かったのですが、先述したように、化学療法との併用件数も増えてきました。有害事象としては、照射局所の粘膜炎、味覚障害、唾液分泌障害、咽頭痛や嚥下時痛などがあります。
「舌がんステージ4」についてよくある質問
ここまで舌がんステージ4の症状や余命・生存率・検査法・治療法などを紹介しました。ここでは「舌がんステージ4」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。
舌がんステージ4と診断された場合、完治するのでしょうか?
五島 志織 医師
がんは術後5年間再発がなければ完治したと言われます。なので、完治したかは5年生存率を見れば明白です。
ちなみに上記に示したように舌がんステージⅣの5年生存率は、40~50%なので、半数弱で完治が見込めます。
あきらめずに専門医に相談し、適切な治療を受けましょう。
編集部まとめ
がんは日本の死因の1位になる病気です。そのため怖いイメージを持っている人も多数見受けられます。
ましてや、ステージⅣとなると末期といわれるものになるので、あきらめてしまいがちですが、あきらめる必要はありません。
自暴自棄にならず、きちんとした治療を受けることが大切です。
また、がんは舌がんだけでなく、早期発見のほう、治療効果が高いと言われています。
舌がんには有効な腫瘍マーカーは今の所ないため、検査法には加えませんでしたが、PET-CT検査などは人間ドックでも使われる方法なので、定期的な検査を受け、早めに発見できると幸いです。
また、何かおかしいなと感じた場合は早めに、歯科、口腔外科または耳鼻咽喉科の受診をお勧めします。
「舌がん」と関連する病気
「舌がん」と関連する病気は4個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
内科の病気
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「舌がん」と関連している、似ている症状は3個ほどあります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
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参考文献