「大腸がん」を発症するとどんな「血便」が出る?初期症状も医師が徹底解説!
大腸がんを発症するとどんな血便が出る?Medical DOC監修医が大腸がんと痔の違い・初期症状・原因・検査法や何科へ受診すべきかなどを解説します。気になる症状がある場合は迷わず病院を受診してください。
監修医師:
和田 蔵人(わだ内科・胃と腸クリニック)
目次 -INDEX-
「大腸がん」とは?
大腸(結腸・直腸)に発生した腫瘍のことを指します。進行すると周囲の組織に浸潤や転移をきたすこともあります。大腸がんには、腺腫という良性のポリープが悪性化して発生する場合と、大腸の粘膜から直接がんが発生する場合の2通りあります。ポリープから発生したがんの割合が多いです。
「大腸がん」と「痔」の違い
大腸がんと痔は、ともに出血をすることがあり鑑別が必要となります。
「痔」は、大きく分けて3つに分けられます。いぼ痔(痔核)、切れ痔(裂肛)、痔瘻の3つに分けられ、いぼ痔と切れ痔は出血を伴いやすいです。痔は大腸がんと違い、良性の病気です。症状がなければ、何も治療をしないで経過を見ることも多いですが、痛みや出血、感染を繰り返したりする場合には治療が必要となります。
大腸がんを発症するとどんな血便が出る?
大腸がんからの出血した場合の血便の性状について、詳しく解説いたします。
見た目ではわからない出血
大腸がんは、初期では少量ずつ出血することが多いため、気が付かないことも多いです。便潜血検査で陽性となり、初めて気が付くことも少なくありません。見た目ではわからないような出血でも、便潜血検査で陽性となった場合には早めに消化器内科を受診しましょう。
鮮血便(明るい赤色の血便)
大腸がんが直腸にある場合には、出血した血液がすぐに肛門から排泄されるため、明るい赤色の血便がみられます。痔からの出血も同様に鮮血便がみられることもあり、区別がつきづらいこともあります。自己判断せず、消化器内科もしくは、消化器外科を受診しましょう。
暗赤色便
結腸に発生する大腸がんでは、出血した血液が腸管内に留まる時間が長いと黒っぽい赤色の血便として見られることもあります。血便以外に症状がないこともありますが、がんが大きくなると腸が狭くなり、便の通りが悪くなると腹部の膨満感などの症状を伴うこともあります。
痔を発症するとどんな血便が出る?
痔から出血する場合には、いぼ痔(痔核)と切れ痔(裂肛)の場合が多いです。
いぼ痔(痔核)からの出血
いぼ痔とは、肛門の周囲にある動脈、静脈の血管が網目状にある待なった部分がうっ血して大きくなったものです。このいぼ痔ができる部位によって、直腸と肛門の境目より内側にある「内痔核」と外側にある「外痔核」に分けられます。「内痔核」の方が約8割と頻度が高いです。
「内痔核」ができるのは直腸の表面であり、痛覚がないため痛みがないことが多いです。排便時の出血で気が付く方もいます。少量の出血から便器が血で染まるぐらいの多量の出血まで出血量はさまざまです。
「外痔核」の中でも血栓(血の塊)ができたものを「血栓性外痔核」といい、突然肛門周囲に硬いしこりができ、激しい痛みが起こり破れると出血することがあります。
切れ痔(裂肛)からの出血
切れ痔は硬い便で傷ついたり、下痢の刺激で肛門の皮膚が切れたり裂けたりした状態です。肛門に傷ができているため、排便時に激しい痛みを伴います。痛みは強いですが、出血の量はそれほど多くなく、トイレットペーパーに付着する程度~少量流れる程度でとどまることが多いです。
大腸がんを発症し血便も伴う場合のステージ分類とは?
大腸がんに血便が認められていても、どのステージであるかはわかりません。また、血便のみで大腸がんが確定できるわけでもありません。痔など他の病気でも血便がみられることがあるからです。しかし、血便がある場合には何らかの腸管の病気がある可能性が高く、早めの消化器内科の受診をお勧めします。
大腸がんの前兆となる初期症状
大腸がんは早期では自覚症状がないことが多いです。ここでは、大腸がんでみられることが多い症状について解説いたします。
血便
便が腸管を通過する際に、大腸がんの表面から出血することがあります。しかし、初期では出血量が少なく気が付かないことも少なくありません。この場合、血液検査で貧血の進行に気がついたり、便潜血検査で陽性と言われたりして初めて気が付く方も多いです。見た目では血便とわからなくとも、便潜血で陽性となった場合には早めに消化器内科を受診しましょう。
便通異常
大腸がんが大きくなり、腸管が狭窄すると便秘や下痢、便が細くなる、便が残っている感じがするなどの症状が出ることがあります。これらの症状は、大腸がんのみで起こるわけではありませんが、便通異常が続く場合には消化器内科で相談をしてみましょう。
腹痛
大腸がんが進行して腸管の狭窄が強くなると、便の通りが悪くなりおなかの張りや腹痛、嘔吐などの症状が起こるようになります。腹痛の頻度が多い、便通異常や血便などの症状が起こった場合には放置せずに消化器内科を受診しましょう。
大腸がんの主な原因
大腸がんの発生の原因は①遺伝(家族歴)、②生活習慣、③加齢が影響していると考えられています。
遺伝
大腸がんの患者さんの約5%が生まれながらに持っている遺伝子の異常が原因であると言われています。家族性大腸腺腫症やリンチ症候群などです。また、20~30%は何らかの遺伝的素因の関与が疑われ、血縁者に大腸がんを認めます。このように血縁者で大腸がんがみられる場合には、若い時から大腸がんに注意をして内視鏡検査を定期的に受けることが勧められます。
生活習慣の乱れ
大腸がんの発生には、大量な飲酒、喫煙、肥満、運動不足が影響しているといわれています。また、食事の面でも赤肉・加工肉の過剰摂取や食物繊維の摂取不足も大腸がんに関与していると報告されており、バランスの良い食事を摂取することが非常に大切です。
加齢
年齢が上昇すると大腸がんの発症率は上昇します。40代ごろより大腸がんの発症が増加していくため、定期的に大腸がん検診を受け、予防する必要があります。
特に家族歴がある場合には注意が必要です。若い時から、大腸内視鏡検査を行いましょう。
大腸がんの検査法
大腸がんを疑った場合、がんを確定するための検査、その後の治療方針を決めるための検査を行います。
大腸内視鏡検査
検査前日より検査食や下剤の内服を行い、当日にも多量の腸管洗浄液を飲み、腸管内の便をすべて排泄することが必要です。腸管内の便が排泄されたことを確認後、肛門から内視鏡を挿入し、直腸から盲腸までの大腸全体を調べます。直接病変を観察することができ、ポリープなどの病変が見つかった場合には、病変全体もしくは一部の組織を採取して病理診断を行います。これにより、病理診断でがんが見つかると大腸がんの診断がつきます。
注腸造影検査
大腸内視鏡検査と同様に前処置をして腸管内の便を排泄させ、バリウムと空気を肛門から注入してレントゲンで撮影をします。この検査で病変の正確な位置や大きさ、形、腸管の狭窄の有無などを詳しく調べます。
CT検査・MRI検査
CT検査やMRI検査を行うことで、大腸がんの周囲への浸潤の有無、遠隔転移の有無を調べます。これにより、大腸がんのステージを決定することができ、今後の治療方針が決まります。
「大腸がんと血便」についてよくある質問
ここまで大腸がんと血便の関係性などを紹介しました。ここでは「大腸がんと血便」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。
大腸がんを発症すると何色の血便が出ますか?
和田 蔵人 医師
大腸がんの部位により血便の色は異なります。肛門からの距離が近い直腸の大腸がんでは、明るい赤色の血便(潜血便)がみられることが多いです。しかし、肛門からの距離が遠くなると、出血した血液が腸管内に留まる時間が長くなり、暗赤色の血便となります。
また、大腸がんからの出血量が少ないと血便に気が付かないこともあります。
編集部まとめ 血便に気がついたら、早めに消化器内科へ!
大腸がんの初期症状はわかりづらく、症状がないことが多いです。症状として、最も多い血便に関しても、少量ずつの出血では見た目でわからないことも多く、便潜血検査で陽性と言われて初めて気が付く方も多いです。この時に、痔からの出血ではないかと考え放置をせず、必ず消化器内科を受診しましょう。大腸がんは早期の発見、治療であれば完治できる可能性が高くなります。異常があった時に早めに受診する事が大切です。
「大腸がん」と関連する病気
「大腸がん」と関連する病気は5個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
血便がみられた場合、大腸がん以外にもいろいろな病気の可能性があります。血便以外に症状がなくとも、精密検査をお勧めします。大腸がんの場合、早めの発見、治療が大切です。消化器内科を受診しましょう。
「大腸がん」と関連する症状
「大腸がん」と関連している、似ている症状は6個ほどあります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
関連する症状
- 血の混ざった便
- お腹の張り
- 腹痛
- 嘔気、嘔吐
- 便秘・下痢
- 食欲低下
大腸がんの症状としては、上のようなものが挙げられますが、初期では症状がないことも多いです。気になる症状がある場合には、消化器内科を受診して相談しましょう。