「乳がん」を発症すると「見た目」にどんな変化が現れる?医師が徹底解説!
乳がんを発症すると乳房にどんな見た目の変化がある?Medical DOC監修医が乳がんの見た目の変化や・症状・初期症状・原因・検査・治療法やセルフチェック法などを解説します。気になる症状がある場合は迷わず病院を受診してください。
監修医師:
山田 美紀(医師)
目次 -INDEX-
「乳がん」とは?
乳がんとは乳腺にできる悪性腫瘍です。乳腺は乳管と小葉から成り立っており、乳がんの多くは乳管から発生します。乳がんは検診や乳房のしこりなどの症状で発見されます。
乳がんを発症すると乳房にどんな見た目の変化がある?
ここでは、乳がんを発症した際に、見た目でわかるような変化にはどのようなものがあるかを解説しましょう。
乳房の左右差
乳がんのしこりが大きい場合や皮膚の近くにしこりがある場合、乳房の左右差に気が付くことがあります。しこりのある部分が盛り上がり、左右差が生じます。
乳房のくぼみ
乳がんが皮膚の近くにある場合、乳がんが周りの組織に浸潤してひきつれを起こします。見た目はえくぼのような皮膚のくぼみができます。乳頭の真下にしこりがあり場合は、陥没乳頭になることがあります。
皮膚の赤み
乳がんが皮膚に顔を出すと、皮膚に赤いしこりができます。また、炎症性乳がんという特殊な乳がんの場合は、乳房の皮膚が広範囲に赤くなります。
乳頭乳輪のただれ
乳がんの中でも乳房パジェット病の場合、乳頭乳輪の皮膚が赤くただれます。
乳頭から血が垂れる
乳頭から赤や茶色の分泌物が垂れることがあります。乳管内にあるしこりから分泌されたものが乳管を通り、乳頭から出てきます。
乳がんの代表的な症状
乳房のしこり
乳房を触ることで、乳房のしこりを自覚することがあります。乳房のしこりは乳腺線維腺腫などの良性の乳腺腫瘍でもよくみられる症状です。がんによるしこりは硬く、動きにくいという特徴があります。乳房のしこりに気が付いた場合は、早めに乳腺科を受診しましょう。
血性乳頭分泌
乳頭をつまむと乳頭から赤や茶色の血性分泌物が出てくることがあります。血性乳頭分泌は一つの穴から出てくることが多いです。乳管内乳頭腫などの良性の乳腺腫瘍でも同じ症状があります。乳がんの可能性もあるため、必ず乳腺科を受診しましょう。
乳房の変形
しこりが大きい場合やしこりが皮膚に近い場合に、乳房の盛り上がりやくぼみが生じることがあります。乳房の変形が生じた場合は、乳がんの可能性が高いので早めに乳腺科を受診しましょう。
乳がんの前兆となる初期症状
しこりを触れる
乳がんの症状として最も多い症状が乳房のしこりです。セルフチェックの習慣があると、1cm程度の初期の段階で気が付く可能性があります。乳がんのしこりは痛みを伴わないことがほとんどです。症状がある場合は、早めに乳腺科を受診しましょう。
乳頭をつまむと血が出る
セルフチェックで乳頭をつまむと乳頭から液体が出ることがあります。透明や乳汁様の分泌物は問題ないことが多いです。赤や茶色の血性分泌物がある場合は要注意です。症状がある場合は、早めに乳腺科を受診しましょう。
乳房の変形がある
セルフチェックで乳房の変形がないか見てみましょう。左右を比べて、乳房の盛り上がりやくぼみがある場合があります。たまに乳房を観察することで早めに変化に気が付くことができます。症状がある場合は、早めに乳腺科を受診しましょう。
乳がんの主な原因
エストロゲンが出ている期間が長い
乳がんの発症には女性ホルモンであるエストロゲンが関わっています。エストロゲンに暴露されている期間が長い場合、乳がんになるリスクが高くなります。月経のある期間が長い、出産歴や授乳歴がないなどがリスクとして考えられます。
肥満
閉経後の肥満が乳がんになるリスクであることが分かっています。肥満細胞からエストロゲンが分泌されることが乳がん発症リスクを高めると考えられています。肥満にならないような生活習慣を心がけましょう。
遺伝
乳がんの5~10%が遺伝性であるといわれています。血のつながった家族に乳がんや卵巣がんの患者さんがいる場合、乳がんの発症リスクが高くなります。遺伝性の可能性がある方は、乳がん検診をしっかりと行うことが大切です。
乳がんの検査法
マンモグラフィ
乳がんの検査はまず乳腺科でマンモグラフィを行います。乳房を圧迫しておしひろげ、X線で撮影します。マンモグラフィによって腫瘤(しこり)や石灰化を確認することができます。数分で終わる検査であり、入院は必要ありません。
乳腺超音波検査
超音波検査は乳房にしこりがあるかどうかを確認するのに有用な検査です。乳腺の密度が高い場合、マンモグラフィではしこりがわかりづらいことがあります。そのようなしこりを、超音波検査で見つけることができます。乳腺科で行います。20分程度の検査で、入院は必要ありません。
組織診
マンモグラフィや超音波検査で悪性の可能性がある病変を認めた場合、乳腺科で組織診を行います。超音波やマンモグラフィで病変の位置を確認しながら、局所麻酔を行い、太めの針を刺して組織を採取します。採取した組織を顕微鏡で確認し、ほとんどの場合で確定診断を行うことができます。20分程度の検査で、入院は必要ありません。
乳がんの主な治療法
手術
手術可能な乳がんは乳腺科に入院して、手術を行います。乳がんの手術は大きく乳房部分切除術と乳房全切除術に分けられます。乳房部分切除術の場合は3~4日の入院、乳房全切除術の場合は1週間程度の入院です。乳房全切除術と同時に乳房再建を行う場合は、入院期間が長くなることがあります。
放射線治療
乳房部分切除術を行った場合や、リンパ節転移がある場合は手術後に放射線治療を行います。手術後、1か月半程度で治療を開始します。約4~5週間放射線科に通院して行います。
薬物治療
乳がんは手術などの局所治療と薬物による全身治療を組み合わせて行います。乳がんのサブタイプや進行度によって治療内容はさまざまです。化学療法(いわゆる抗がん剤)は全てのタイプの乳がんに有効です。ホルモン受容体陽性乳がんでは内分泌治療、HER2(ハーツー)陽性乳がんでは抗HER2療法を行います。トリプルネガティブ乳がんでは免疫チェックポイント阻害剤も使用されます。また、BRCA遺伝子に病的バリアントがある遺伝性乳がんの場合は、PARP阻害剤が使用されることがあります。いずれの治療も乳腺科に通院して行います。
乳がんのセルフチェック法
今は「自己触診」ではなく、自分の乳房を意識して生活する「ブレスト・アウェアネス」がすすめられています。
見る
着替えや入浴の際に、乳房を気軽に観察します。乳房を見る習慣があると、左右差はないか、くぼみはないか、ただれや変色はないかに気が付くことがあります。
さわる
着替えの際などに、座った状態や寝た状態で乳房に触れてみましょう。指の腹で触れるとよいでしょう。しこりを探そうとせずに、日常的に気軽に触れるようにしましょう。
乳頭をつまむ
乳頭をつまみ、乳頭から液体が出てくるか見てみましょう。分泌物がある場合、下着に汚れが付着していることがあります。赤や茶色の分泌物がある場合は要注意です。
「乳がんの見た目」についてよくある質問
ここまで乳がんの見た目などを紹介しました。ここでは「乳がんの見た目」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。
乳がんを発症すると乳首にどんな症状が現れますか?
山田 美紀 医師
乳頭から血性の分泌物がある場合があります。また、乳がんのなかでも乳房パジェット病の場合、乳頭乳輪のただれの症状があります。
乳がんは触ったり、つまんだりすることで気付くことはできますか?
山田 美紀 医師
乳房を触ることでご自身で乳房のしこりに気が付く場合があります。また、乳頭をつまむことで、乳頭分泌があるかどうか確認することができます。しこりや乳頭分泌は乳がんでも良性腫瘍でも認められるため、乳腺科を受診しましょう。
乳がんを発症すると、かゆみなどの症状は現れますか?
山田 美紀 医師
乳頭分泌がある場合に、乳頭乳輪がかぶれてかゆみの症状が出ることがあります。
編集部まとめ
乳がんの見た目の変化についてご紹介しました。定期的な乳がん検診とあわせてご自身の乳房の状態を観察する習慣をつけましょう。普段の乳房の状態を知ることで、早めに変化に気が付く可能性があります。症状がある場合は、早めに乳腺科を受診することをおすすめします。
「乳がん」と関連する病気
「乳がん」と関連する病気は1個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
婦人科の病気
- 卵巣がん(遺伝性乳がん卵巣がん症候群の場合)
遺伝性乳がん卵巣がん症候群の場合は、乳がんになるリスクが高いです。予防的乳房切除術を行うことができます。
「乳がん」と関連する症状
「乳がん」と関連している、似ている症状は6個ほどあります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
関連する症状
- 乳房のしこり
- 血性乳頭分泌
- 乳房の左右差
- 乳頭乳輪のただれ
- 乳房の赤み
- 乳房のくぼみ
乳がんによってこれらの症状がみられることがあります。定期的なセルフチェックで早期発見できる可能性があります。