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「急性骨髄性白血病の死亡率」はご存じですか?進行して現れる症状も医師が解説!

 公開日:2025/12/26
「急性骨髄性白血病の死亡率」はご存じですか?進行して現れる症状も医師が解説!

白血病の病態に急性骨髄性白血病があります。急性骨髄性白血病は、急に症状が発生するうえ、進行が速いため早期発見・早期治療が必要な病気です。

白血病と聞くと不治の病を想像してしまいがちですが、医学の進歩で死亡率は年々減少傾向にあります。

最近疲れやすくなったと感じる場合や息切れや貧血症状が酷くなったと感じる場合は、医療機関を受診して検査を受けるようにしましょう。

急性骨髄性白血病の検査は骨髄穿刺が必要ですが、まずは血液検査で血液細胞に異常がないかを調べて白血病の有無を確認しましょう。

中路 幸之助

監修医師
中路 幸之助(医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター)

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1991年兵庫医科大学卒業。医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター所属。米国内科学会上席会員 日本内科学会総合内科専門医。日本消化器内視鏡学会学術評議員・指導医・専門医。日本消化器病学会本部評議員・指導医・専門医。

急性骨髄性白血病とは?

血液細胞(白血球・赤血球・血小板)は、骨髄で造血幹細胞から作られます。急性骨髄性白血病(AML)は、骨髄系前駆細胞(未成熟な血液細胞)ががん化して急速に増殖し骨髄や全身の血液に増える病気です。
白血病には、急性と慢性の白血病があり、急性白血病は白血病細胞が急激に増殖して発病します。慢性白血病はゆっくり進行する白血病です。

急性骨髄性白血病の原因や症状

白血病は、白血病細胞の種類によって骨髄性とリンパ性に分類されます。急性型のものは症状が急速に進行するので無治療では数ヵ月以内に命が危険になることがあります。
慢性型は年単位で進行するので症状が軽いのが特徴です。タイプにより治療が異なるため、血液検査や骨髄検査でタイプを確定し、治療方針を決めます。

原因

急性骨髄性白血病の原因は、遺伝子や染色体に傷がつき発症するといわれています。傷がつく原因は明らかになっていませんが、リスク因子のある人は注意が必要です。急性骨髄性白血病を発症するリスク因子を持っている人は以下の人です。

  • 男性
  • 喫煙者
  • ダウン症候群児
  • 放射線治療・抗がん剤治療歴がある
  • 小児急性リンパ芽球性白血病の治療歴がある
  • 原爆の放射能・化学物質ベンゼン曝露経験がある
  • 骨髄異形成症候群の既往歴がある

リスク因子があっても発症するとは限りませんが、発症率がゼロともいい切れないためリスク因子がある人は注意しましょう。
急性骨髄性白血病は遺伝はしないため、親が白血病を患っても子どもに遺伝することはありません。

症状

急性骨髄性白血病は急速にがん化が進行するので、症状は急にあらわれます。

  • 赤血球減少=貧血・動悸・息切れ・倦怠感
  • 白血球の減少=感染症・発熱
  • 血小板の減少=出血・鼻血が止まらない・出血斑
  • 肝臓や脾臓のの腫れ=腹部のハリ
  • 骨や髄膜への浸潤=腰痛・頭痛・関節痛

急性骨髄性白血病は進行が速いので放置すれば命に関わるため。早急に治療を開始する必要があります。

検査方法

急性骨髄性白血病は、血液検査と骨髄検査で診断します。血液検査は、赤血球・白血球・血小板の数や白血病細胞※の割合を確認する検査です。急性骨髄性白血病は、白血球数の異常(増えるまたは減る)・赤血球・血小板が減少します。
骨髄検査は、腸骨または胸骨に骨髄穿刺針を刺し、骨髄液や骨髄組織を採取する検査です。採取した検体は、顕微鏡検査で骨髄中の白血病細胞の数や種類、遺伝子異常・染色体異常の有無や種類を確認します。
遺伝子や染色体の検査は、急性骨髄性白血病の分類や予後を知ることができ、治療法の選択基準になるので重要です。また、CT検査や超音波検査で肝臓や脾臓異常や合併症の確認を行う場合があります。
※単球・好中球・リンパ球・好酸球・好塩基球

急性骨髄性白血病の死亡率

2022年のデータでがんで死亡する確率は男性では25.1%で4人に1人、女性は17.5%で6人に1人でした。
2021年度の全死因年齢調整死亡率は2020年より2.2%増加していますが、増加の要因は、コロナウイルス・老衰・循環器疾患(心疾患など)です。がんや肺炎で死亡する人は年々減少傾向にあります。

死亡率

白血病は、ほかのがんと比較すると罹患率、死亡率ともに低い値です。とはいえ、白血病と診断された人(2019年)の総数は14,318人で、死亡した人(2020年)の総数は8,983人です。人口10万人あたりでみると7.3人が白血病で亡くなったことになります。

年齢別の死亡率

2020年の年齢別データでは、白血病を0〜14歳までに発症する子どもが少なくありません。男性は40〜44歳頃から増加がみられ、50歳以降から急に増えます。女性は、35歳頃に徐々に増え始め55歳を過ぎると急激な増加傾向がみられます。
90歳時点の罹患率は女性は男性の半分程の数です。死亡率は男女ともに55歳を過ぎたあたりから急激に増加する傾向がみられます。女性は男性より罹患率が低いため、死亡率も男性の半分程です。

都道府県別の死亡率

都道府県別では、2005年度は青森県・大阪府・佐賀県で死亡率が高かったものの2020年度になると青森県・長崎県・秋田県に変わりました。
青森県は2010年度、2015年度でもほかの都道府県を抜いて死亡率1位ですが、全体的に年を追うごとに死亡率は大幅に減少しています。ちなみに死亡率が1番低い県は長崎県です。

急性骨髄性白血病の治療

WHO(世界保健機構)の基準に則り、急性骨髄性白血病は病型分類ではWHO分類とFAB分類に大別されます。WHO分類は、予後により7つのタイプに分類されます。FAB分類は以前から活用されてきた分類法で、急性白血病のタイプかを分類する方法です。FAB分類は、M0~M7まであります。WHO分類により治療法が異なります

治療方法

急性骨髄性白血病の治療は、年齢や体調により抗がん剤を用いた化学療法および造血幹細胞移植が行われます。一般的な治療は化学療法で、寛解導入療法(第1段階)と寛解後療法(第2段階)を行います。
寛解導入療法は、血液や骨髄中の白血病細胞を殺す方法です。強力化学療法が可能な場合は、アントラサイクリン系抗がん剤(ダウノルビシンまたはイダルビシン)および標準量のシタラビンを併用します。一方、高齢者や強力化学療法が非適応の人への寛解導入療法は確立されていません。
しかし、非交差耐性アントラサイクリン系薬剤を含む多剤併用が実施される場合が少なくありません。白血病細胞が10億個以下になると骨髄中の血液細胞が増加して、症状の改善がみられるようになりますが白血病細胞はまだ残っています。
寛解を得られたら寛解後療法に移行し白血病細胞をすべてなくす治療を行います。同種造血幹細胞移植が可能かどうか、必要か否かが寛解後療法の種類を選択する目安です。

治療の副作用

抗がん剤治療は大量の抗がん剤を投与するため、正常な血液細胞にも影響を及ぼし、さまざまな副作用が起こります。

  • 骨髄抑制=感染症・出血・貧血・吐き気・食欲低下・全身の倦怠感
  • アレルギー反応=血圧低下・呼吸困難
  • 血管外漏出=しこり・壊死
  • 脱毛
  • 肝機能障害・心筋障害
  • レチノイン酸症候群=呼吸困難・発熱・胸水貯留など

抗がん剤治療の副作用により命を落とす可能性があるので、高齢者や臓器障害の持病がある人は抗がん剤治療ができない場合があります。

治療期間中の注意点

急性骨髄性白血病の治療中は感染症を起こしやすく、貧血や出血などのリスクが上昇するので感染やケガなどに注意しましょう。急性前骨髄球性白血病(APL)ではオールトランス型レチノイン酸(ATRA)が有効とされていますが、ATRAはAPL分化症候群の副作用があります。
APL分化症候群は発熱・呼吸困難・手足のむくみなどの症状が起きるので特に注意が必要です。症状に変化がある場合はすぐに担当の医師に相談しましょう。

治療後の注意点

急性骨髄性白血病は、治療後3年以内に再発する傾向があります。再発した場合は、入院して再寛解導入療法や造血幹細胞移植による治療を行います。
再発は白血病細胞が残っていた場合に起こりますが、再寛解導入療法で完全に白血病細胞がなくなることもあるので、早期発見のため定期的な検診が必要です。

急性骨髄性白血病の死亡率についてよくある質問

ここまで急性骨髄性白血病の症状・原因・治療法などを紹介しました。ここでは「急性骨髄性白血病の死亡率」についてよくある質問に、メディカルドック監修医がお答えします。

急性骨髄性白血病を予防する方法を教えてください。

急性骨髄性白血病は骨髄の血液細胞異常が原因で起こるので予防は難しいでしょう。ただし、リスク因子のある人は禁煙をするなど、生活習慣の見直しで緩和されることがあります。健康診断の血液検査でみつかることもあるので、年に1回以上健康診断を受けるようにしましょう。

急性骨髄性白血病は早期発見できますか?

急性骨髄性白血病は、貧血や出血しやすいなどの症状が出現します。頻繁に貧血が起こる・ちょっとしたケガで出血しやすくなったなど普段と違うと感じたら医療機関を受診しましょう。白血病は、血液検査で白血球・赤血球・血小板の異常がでるので早期発見が可能です。

編集部まとめ

急性骨髄性白血病は、血液検査や骨髄穿刺で異常がみつかると診断が容易です。

治療薬も進歩して死亡率は年々減少しているので、急性期の治療も早期に開始できれば白血病細胞をゼロにできる病気です。

面倒がらずに健康診断を定期的に受けて、白血病を早く見つけるようにしましょう。

急性骨髄性白血病と関連する病気

「急性骨髄性白血病」と関連する病気は3個程あります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからメディカルドックの解説記事をご覧ください。

関連する病気

  • 慢性骨髄性白血病
  • 急性リンパ芽球白血病
  • 慢性リンパ芽球白血病

急性骨髄性白血病に関係する病気はほかにも多数あります。

急性骨髄性白血病と関連する症状

「急性骨髄性白血病」と関連している、似ている症状は4個程あります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからメディカルドックの解説記事をご覧ください。

関連する症状

  • 貧血
  • 全身倦怠感
  • 出血
  • 感染症

急性骨髄性白血病では貧血や出血などが急に症状としてでます。急性骨髄性白血病は治療の開始が早い程長期生存が可能です。いつもと違う症状に気付いたら早めに医療機関を受診しましょう。

この記事の監修医師