【胃がん治療法】”切らずに治る”分かれ目はなに?早期発見に有効な検査も医師が解説!

胃がんの治療方法は内視鏡・手術・薬物(化学)療法・免疫療法などがあり、状況により適切な治療法方法を選択・組み合わせて治療されます。
治療のためには検査が欠かせません。がんを発見し、治療方法を決め治療の成果を確認するためにさまざまな機器を使った検査が行われます。
この記事では胃がんの治療方法と検査・予防法を解説します。胃が気になる方に参考にしていただければ幸いです。

監修医師:
本多 洋介(Myクリニック本多内科医院)
目次 -INDEX-
胃がんとは?
胃がんは何らかの原因でがん化した胃粘膜の細胞が、無秩序に増殖したものです。
がんの成長につれ、胃の内側の粘膜から外側の粘膜下層・固有筋層・漿膜下層へと広がります。外側の漿膜に達した胃がんは、近隣のリンパ節や肝臓などの臓器にも浸みるように(浸潤=しんじゅん)広がります。
また、腹腔内を覆う腹膜上にがん細胞が散らばるのが、腹膜播種(はしゅ)と呼ばれる転移の形態です。さらに、がん細胞がリンパ液や血液に乗って、離れた場所の肺・脳などにも転移する場合があります。
胃がんの治療方法
胃がんの治療方法には内視鏡・手術・薬物・免疫療法などがあります。進行度(ステージ)に応じた標準治療が基本になり、病状・年齢・本人の希望などを考慮して総合的に判断するのが一般的です。それぞれの治療方法を解説しましょう。
内視鏡治療
内視鏡治療は、がん病巣が内側の粘膜にとどまっている場合に選択されます。転移の可能性が少なく、一度ですべて取り切れると判断できるときに行うのが原則です。
胃カメラで目視しながら切除でき、胃の機能を損なわないので身体への影響を小さくできます。
治療方法は2種類あり、腫瘍が小さい場合は輪状のワイヤをかけ高周波で焼き切る方法で、大きい場合は高周波メスで切除する方法です。
術後は病理検査が行われ、結果により経過観察・再治療・手術などの処置が行われます。
手術
離れた臓器に転移がなく、内視鏡では切除しにくい場合は外科手術で根治を目指します。
手術は開腹手術・腹腔鏡下手術・ロボット支援腹腔鏡下手術があり、負担が少ない腹腔鏡はできる施設が限定的です。
手術では腫瘍と胃の一部、またはすべてを切除したうえ、周囲のリンパ節もすべて取り切る郭清を行います。
切除後は食物の通り道を整える消化管再建が行われ、近隣臓器への浸潤があればそれも切除する合併切除が行われます。
薬物療法
薬物療法は化学療法ともいい、抗がん剤でがん細胞を攻撃して増殖を抑えます。薬物療法が選択されるのは、進行がん・再発がんで手術では腫瘍を取り切れない場合です。
また、外科手術後に再発防止目的で行ったり、手術前に腫瘍を縮小させる目的で行ったりする場合もあります。
薬物には細胞障害性抗がん薬・分子標的薬・免疫チェックポイント阻害薬があり、症状や目的に応じて単独・または組み合わせて使用されます。
胃がんの検査
胃がんの検査で行われる内視鏡や消化管造影検査は、早期発見に有効な手段です。また、治療開始の前後にも進行度や転移巣の有無を確認するために検査が行われます。胃がんの主な検査方法を紹介していきましょう。
内視鏡検査
内視鏡検査は主に胃がんが疑われる場合に行われます。胃内壁の状態を観察し、疑わしい病変の位置・形状・色調などを調べる検査です。
疑わしい部分をつまみ取り、病理検査を行ってがんの確定診断に使ったり、がんの性質・種類を調べたりする場合もあります。
近年は拡大内視鏡やNBIシステムが導入され、特殊な光を使った拡大画像でより正確で詳細な病巣の把握が可能です。
消化管造影検査
消化管造影検査では、造影剤と胃を膨らませる発泡剤を飲んでX線で撮影します。胃壁についた造影剤の像によって、胃の形や内壁の状態を観察する検査です。
得られる画像からは粘膜の凹凸がわかり、その形でがんの疑いを判断します。ただ、X線の画像だけではがんの診断はできません。疑わしい影が見つかったら、内視鏡・生検で確定診断になります。
生検・病理検査
胃がんの疑いがある病変の組織を採取(=生検)して、顕微鏡などで調べる検査(=病理検査)では、病理医が病変を詳しく調べて診断します。
悪性度を調べて胃がんと診断されれば、治療のための病期診断が必要です。がんの到達深度・転移状況をCTなどの機器を使って病期診断を行って治療方針が決まります。
画像診断
胃がんの検査ではCT・MRI・PETなどの画像が診断に大きな力を発揮します。
CTはX線と造影剤を使った断層撮影で、周囲臓器への浸潤や遠隔転移巣の発見に効果的です。
MRIでは磁気を使った画像で転移巣を探します。CTでは転移が確認できない場合に使われ、特に肝臓への転移の有無確認に有用です。
PET検査はがんに糖が集まりやすい性質を利用してがんを探します。
注腸検査・大腸内視鏡検査
注腸検査は大腸に造影剤を注入してX線画像でがんを探し、大腸内視鏡検査は内視鏡を使って目視でがんを探す検査です。
胃がんが腹膜に転移する腹膜播種では、しばしば大腸の内径が狭くなる大腸狭窄が見られます。
X線で狭い部分の有無を調べ、また大腸内側の粘膜の病変を内視鏡を使って調べる検査です。
審査腹腔鏡
胃がんが進行して、腹膜播種が疑われる場合に行うのが審査腹腔鏡検査です。全身麻酔で腹部に小さな穴を開け、腹腔鏡を入れて腹膜の状態を目視で観察します。
また、疑わしい部分の組織や腹水を採取して、病理検査で腹膜播種の有無を確認します。腹膜播種はCTなどでは見えにくいため、正確な病期診断を行うのが目的の検査です。
腫瘍マーカー検査
腫瘍マーカーは、がん細胞やがん細胞の影響を受けた細胞が作るたんぱく質です。がんの種類ごとに特有の特徴があり、診断の補助として利用されるほか、診断後の経過や治療効果の確認に使われます。
ただ、マーカーの数値はがん以外の要因でも変動するため、単独ではがんの有無や進行状態は判断できません。ほかの検査結果とも併せて総合的に判断されます。
胃がんの予防法
胃がんの原因は特定されてはいません。ただ、胃がんにつながる可能性が高いリスク要因として、多量の食塩摂取・喫煙・ピロリ菌感染が挙げられています。
これらの要因が胃がんになるリスクを高めるとされ、予防にはこれらの要因を遠ざけることが有効と考えられます。
具体的には塩分・塩蔵食品はできるだけ減らし、タバコは禁煙のうえ受動喫煙を避けてください。また、ピロリ菌の感染検査を受け、感染していれば除菌が必要です。
胃がんの治療についてよくある質問
ここまで胃がんの治療方法・検査・予防法などを紹介しました。ここでは「胃がんの治療」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。
内視鏡治療で合併症が起こることはありますか?
胃がんの内視鏡治療時の合併症では、出血や穿孔(切除部に穴が開く)の可能性があります。手術中の出血はわずかですが、術後に出血・穿孔が起こると吐き気や嘔吐の症状が出ます。腹痛やめまいが出ることもあり、術後に何か体調の変化があればすぐに看護師に伝えてください。対応の多くは内視鏡で止血や穴をふさぐ治療で治まりますが、稀に手術もあり得ます。
支持療法とはどのような治療ですか?
胃がんではがんによる痛みや吐き気のほか、治療中には副作用・合併症・後遺症などの苦痛も伴います。これらに対する予防措置や症状の緩和・ケアが支持療法です。身体的な苦痛に加え、がん特有の精神的・社会的な苦痛に対する緩和ケアも含めて対応します。一例を挙げると、胃がんの進行で詰った食物の通路にステントを入れ、食事ができるようにする治療があります。
編集部まとめ
胃がんの治療では、基本が内視鏡・手術・薬物なのは変わりませんが、内容はロボット導入や新薬開発など進化を続けます。
検査方法もPETが普及するなど多彩になり、胃がんの早期発見や病期など症状の把握がより正確にできるようになりました。
早いうちに胃がんが見つかれば、内視鏡で簡単に治療できます。胃がんリスクの排除で予防するとともに、定期健診で早期発見・早期治療につなげてください。
胃がんと関連する病気
「胃がん」と関連する病気は4個程あります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからメディカルドックの解説記事をご覧ください。
ピロリ菌に感染すると、胃がんの発症リスクが高まるとの報告があります。胃にできる良性疾患の胃潰瘍では痛みや出血、胃炎では不快感や胸やけなど胃がんと似た症状です。繰り返すようなら胃がん検診を受けましょう。
胃がんと関連する症状
「胃がん」と関連している、似ている症状は7個程あります。
各症状・原因・治療方法など詳細はリンクからメディカルドックの解説記事をご覧ください。
関連する症状
- 胃の痛み
- 不快感
- 胸やけ
- 吐き気
- 食欲不振
- 貧血
- 黒い便(血便)
いずれも胃がんの代表的な症状ですが、胃潰瘍・胃炎でも見られる症状です。長引くようなら近隣の内科・消化器内科を受診してください。貧血・血便は至急総合病院へ行きましょう。



