「乳がん手術の入院期間」はどれくらい?仕事復帰の目安や日常生活の注意点も解説!
早期乳がんと診断されると、入院を伴う手術が必要になるケースがほとんどです。
入院が決まると、入院中に日常生活でやるべきことや仕事が滞るのではと心配になる患者さんもいるでしょう。
不安感を抑えて手術を受けられるように、乳がんの一般的な入院期間や仕事復帰の目安、退院後の注意点を確認しましょう。
乳房部分切除術の場合や乳房全切除術の場合、乳房再建を行う場合などに分けて細かく解説します。
監修医師:
小坂 泰二郎(医師)
順天堂大学附属順天堂医院 卒業 (同大学で学位取得)/ 現在は佐久総合病院、佐久医療センター勤務 / 専門は乳腺外科、手術および薬物治療に従事 / 前職場であった愛媛県四国中央市HITO病院で外来業務に従事している
【資格】
日本乳癌学会 専門医
日本臨床腫瘍学会 専門医・指導医
ASUISHI 2期修了
目次 -INDEX-
乳がんとは?
乳がんは乳腺の組織に発生するがんで、進行すると乳房全体に広がり、近くのリンパ節・骨・肝臓・肺・脳などに転移します。
患者さんが自覚できる症状は、乳房のしこりやくぼみ、乳頭と乳輪のただれなどです。
年間約10,000人が乳がんで亡くなっており、一生のうちおよそ9人に1人が乳がんと診断されています。検査での早期発見と、適切な治療の早期開始が重要です。
乳がん手術の入院期間はどのくらい?
乳がんの治療では、早期がんであっても乳房を部分的、あるいは片方の乳房全体を摘出する外科手術が必要となります。
また患者さんが乳房の再建を希望する場合は、乳房再建手術も可能です。
乳房再建手術は乳がんの切除手術と同時に行う一次再建と、再建手術のみ数ヵ月から数年後に別に行う二次再建の2種類があります。
一次再建を選択すると1度の手術で済むメリットがありますが、その分身体への負担も大きくなり、入院期間が長引く傾向にある点がデメリットです。
以下では具体的な入院期間を解説します。
乳房部分切除術の場合
乳房部分切除術を受ける場合の入院期間は、一般的に4〜5日間程度です。
乳房部分切除術とは乳房温存手術とも呼ばれる治療法で、がんから1〜2cm離れた周辺組織まで含めてがん細胞を切除します。
乳房の形をある程度残せるメリットがありますが、乳がんが広範囲に広がっている場合は選択できません。
また、手術後にがん細胞が残っていないか検査を行ったり、追加で切除手術や放射線治療が必要になったりするケースもあります。
乳房全切除術の場合
乳房全切除術を受ける場合の入院期間は、一般的に6〜7日間程度です。乳房全切除術とは、乳がんが広がっている乳房全体を切除する治療法です。
乳がんが乳房内で広がっている場合や、乳房内の離れた場所に複数広がっている場合に選択されます。
早期の乳がんであっても、がんの広がり方によっては乳房全切除術が推奨されるケースがあると知っておきましょう。
乳房再建を行う場合
乳房再建を行う場合の入院期間は、一般的に2〜3週間程度です。乳房の再建には、自家組織か人工物のいずれかを用います。
自家組織とは患者さん自身の身体の組織であり、乳房再建には患者さんのおなかや背中の組織を採取します。人工物を選択した場合に使われる素材は、最終的にシリコンが一般的です。
術後の仕事復帰の目安
明確な制限はありませんが、術後2〜4週間程度で徐々に職場復帰される患者さんが多い傾向です。
乳がん手術後には絶対安静のような行動制限はつかないため、リハビリのスケジュールなどを加味しながら、医師や職場の上司などに相談するとよいでしょう。
退院後の日常生活の注意点は?
乳がん手術を終え退院したら、どのような点に注意して生活すればよいでしょうか。退院後は病院で経過観察を受けながら、規則正しい生活を送ることが重要です。
具体的な注意点を解説しますので、参考にしてください。
バランスのよい食事を心がける
乳がんの再発を防止するために、バランスのよい食事を心がけましょう。肥満は再発のリスク因子となるためです。
バランスのよい食事を取るには、厚生労働省と農林水産省が共同で策定した、食事バランスガイドを参考にするのがおすすめです。
適度な運動を行う
肥満を避け、再発リスクを抑えるためにも適度な運動は有効です。傷のつっぱり感や痛みが出るときは無理をせず、様子を見ながら徐々に負荷を上げるようにしましょう。ただし放射線治療中は創部を清潔に保ちましょう。
またプールの塩素が皮膚の刺激になるため、プールでの運動は避けてください。
喫煙を避ける
乳がん治療後は禁煙をおすすめします。たばこの煙には発がん性物質が含まれているためです。
また科学的知見は不十分ながらも、受動喫煙が乳がんなどの発症に関わっているとの見解もあります。患者さんと、周囲の協力で乳がんの再発リスクを抑えましょう。
リンパ浮腫の予防を心がける
乳がん治療でリンパ節の郭清(リンパ節の切除)や放射線治療をした後は、腕や手がむくむリンパ浮腫になるリスクが上がります。
以下のような工夫で予防を心がけましょう。
- リンパ浮腫の早期発見
- 手術側の適度な運動
- 適度な運動
- 保湿などのスキンケア
- 肥満の予防
- 身体に負担をかけない
リンパ浮腫は一度起きると治りづらい病気です。医師のアドバイスを受けながら、しっかり予防しましょう。
ゆったりした下着を身に着ける
乳がんの手術直後は以下のような下着を選び、傷への負担を抑えましょう。
- ゆったりしたもの
- 前開き
- ノンワイヤー
- 専用補正下着
また乳房を切除した影響で、乳房の形が気になるなどの悩みが生じる場合があります。その場合はパッドなどで調整するとよいでしょう。
腕や肩が動かしにくい場合は運動を取り入れる
広がった(局所進行)乳がんを切除するためにリンパ節・脂肪組織・皮膚・筋肉などを切り取ると、身体の手術した側に以下のような症状が現れる場合があります。
- 腕があがりにくい
- 腕を回しにくい
- 腕がだるい
- 腕が痛む
- 腕がしびれる
- わきの皮膚が突っ張る
手術後1週間以内の早期からリハビリテーションを行い、手や腕の可動域を確認しながら、無理のない範囲でトレーニングをすると改善が期待できます。
段階的に行うことが重要なので、必ず医師に相談したうえで行うようにしてください。
乳がんの入院期間についてよくある質問
ここまで乳がんの入院期間・退院後の日常生活の注意点などを紹介しました。ここでは「乳がんの入院期間」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。
手術の何日前くらいから入院する必要がありますか?
小坂 泰二郎(医師)
乳がんの入院は、手術日の1日前からするのが一般的です。手術に向けて検査や診察、説明などを受けるためです。詳細は入院する医療機関で確認してください。
退院後はどのくらいの間隔で通院が必要ですか?
小坂 泰二郎(医師)
乳がん手術の退院後、どの頻度で通院するかは手術後の期間によって異なります。一般的な通院は初期治療終了後の3年間は3〜6ヵ月に1回、4〜5年目は6〜12ヵ月に1回、5年目以降は年に1回の頻度で行います。通院で行うのは、問診や視触診、マンモグラフィ検査、超音波検査などです。
編集部まとめ
乳がん手術の入院期間は4〜7日間程度、再建手術も同時に行う場合は2〜3週間程度となるのが一般的です。
入院中に受ける乳がん治療は、病変に対しての部分切除、または乳房切除が主な治療法となり、早期でも乳房全摘出を行う可能性があります。
入院後の生活では規則正しい生活の中で体重が増えないようにすることや禁煙に努め、がんの再発リスクを下げるよう心がけましょう。
傷の状態に気をつけながら、適度な運動を取り入れるのも再発予防に効果的です。
また、リンパ浮腫を予防するために、術後の早期からリハビリテーションに取り組みましょう。
定期的な検診で医師に生活のアドバイスを受けると、体調回復や再発リスク管理に役立ちます。
治療後の乳房の状態を受け入れられない、不安感がある患者さんは看護師や医師に相談してみましょう。
乳がんと関連する病気
「乳がん」と鑑別が必要な病気は以下のようなものがあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
乳房のしこりが症状として表れる病気には、乳がん以外にも以上のようにさまざまな病気があります。いずれの場合も乳がんのリスクを疑い、早めに医療期間へ受診しましょう。
乳がんと関連する症状
「乳がん」と鑑別が必要な病気は以下のようなものがあります。
各症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
関連する症状
- 乳房のしこり
- 乳房のくぼみ
- 乳頭や乳輪のただれ
- 左右の乳房の形が非対称
乳がんの症状には痛みが伴わないケースが多い傾向です。40歳以上の患者さんには、2年に1度は乳がん検診の受診をおすすめします。