15歳以下に多い「小児急性リンパ性白血病」とは?再発リスクや検査法を医師が解説!

小児急性リンパ性白血病はどのような病気かご存じでしょうか。 小児がかかるがんのうち多く見られる病気で、症状が急速に進行して、短期間で命を落とすことも少なくありません。 適切な治療を続ければ長期生存率は高く、正しい情報をもとに冷静に対処することが大切です。 本記事では、小児急性リンパ性白血病の治療のために知っておくべき以下の内容を解説します。
- 小児急性リンパ性白血病の特徴
- 小児急性リンパ性白血病の再発や治癒の確率
- 小児急性リンパ性白血病の検査・治療方法

監修医師:
山本 佳奈(ナビタスクリニック)
目次 -INDEX-
白血病について
白血病とは、血液中の血球細胞が正常に作られなくなり、異常な白血病細胞が増殖してしまう血液のがんです。造血幹細胞から血球が作られる過程で、未成熟の芽球のまま増殖して白血病細胞となります。血球は主に以下の3種類があり、不足すると生命の危機になることも少なくありません。- 白血球:不足すると感染しやすくなる
- 赤血球:不足すると貧血になる
- 血小板:不足すると血が止まらなくなる
小児急性リンパ性白血病とは?
小児急性リンパ性白血病は、Acute Lymphoblastic Leukemiaの頭文字でALLと呼ばれ、リンパ節を由来とする白血病細胞が急速に増殖する病気です。速やかに治療を開始しないと命に関わりますが、知見の蓄積に伴い、年々治療成績は向上しています。小児急性リンパ性白血病の特徴や、ほかの病気との違いを解説します。
小児急性リンパ性白血病の特徴
小児急性リンパ性白血病は、15歳以下の小児がかかるがんのうち一番多いがんで、年間400〜600人が発症すると報告されています。感染・貧血・出血などの症状が急速に進行するのが特徴です。感染症が治りにくさや、重度の貧血症状などで受診したことをきっかけに発見されることが少なくありません。
急性骨髄性白血病
白血病は、正常な白血球が作られず、異常な白血病細胞が増殖する病気です。白血球には骨髄性のものとリンパ性のものがあり、骨髄性の白血病細胞が増殖する病気は、骨髄性白血病細胞と呼ばれています。感染・貧血・出血などの症状は変わりませんが、白血病の種類によって治療方法が異なるため、識別は重要です。
前駆B細胞性・成熟B細胞性・T細胞性
リンパ性白血病は、異常細胞の由来によって前駆B細胞性・成熟B細胞性・T細胞性の3つに分類されています。白血病細胞の種類によって効果的な薬剤が異なるため、血液検査や骨髄検査で鑑別します。白血病は長らく不治の病とされてきましたが、白血病細胞の分類と効果的な薬剤がわかってきたことで、治療可能な病気となりました。
再発のリスク
小児急性リンパ性白血病の長期生存率は約80%と報告されています。残りの20%は、治療の副作用によるものが2〜3%で、それ以外は白血病の再発によるものです。再発した白血病は治療が難しく、予後不良となります。
小児急性リンパ性白血病の検査方法
小児急性リンパ性白血病の検査は、がんの診断だけでなく、治療方針の決定のためにも重要です。治療期間中にも、治療の効果を測定するために何度も検査を行うため、それぞれの役割を理解しておきましょう。小児リンパ性白血病で行われる、主な検査方法を解説します。
血液検査
小児急性リンパ性白血病は血液のがんであるため、血液検査を頻繁に行います。血液中の正常な血球細胞と異常な血球細胞を調べ、がんの進行度や治療効果を診断します。一般的には白血球の数値が異常な高値となりますが、逆に低値となることも少なくありません。
骨髄検査
小児急性リンパ性白血病の検査で、血液検査とともに重要なのが骨髄検査です。骨の中心部にある骨髄には、髄液と呼ばれる液体が流れています。髄液は脳までつながっており、白血病細胞は髄液にも侵入すると脳にまでがんが広がってしまいます。
骨髄検査では、局所麻酔をしてから腸骨や腰骨に穿刺を刺して髄液を採取し、白血病細胞の広がりを調べるのです。
遺伝子検査
血液検査や骨髄検査で採取した白血病細胞をより詳しく鑑別するために、遺伝子検査が行われます。特に小児急性リンパ性白血病では、フィラデルフィア染色体と呼ばれる異常遺伝子の有無が、治療方針を大きく左右します。
小児急性リンパ性白血病の治療法
小児急性リンパ性白血病は血液のがんであるため、ほかのがんのように手術によって腫瘍を切除できません。治療は薬剤による化学療法がほとんどですが、その内容は多岐にわたります。小児急性リンパ性白血病の主な治療方法を解説します。
多剤併用療法
小児急性リンパ性白血病で用いられる化学療法は、複数の薬剤を用いる多剤併用療法となることがほとんどです。一般的にはがん細胞の増殖を抑える抗がん剤と、異常白血病を殺す効果のあるステロイド薬が用いられます。フィラデルフィア染色体が陽性の場合は、分子標的薬や細胞障害性抗がん剤などを使用します。抗がん剤は正常な細胞の増殖も阻害するため、副作用を抑えるための薬も併用することが少なくありません。
臨床試験
小児急性リンパ性白血病の治療成績は年々向上していますが、さらなる改良のために新しい治療法の研究も進められています。患者さんの症状によっては、標準療法とは異なる、新たな治療法の臨床試験に参加できる場合もあります。
臨床試験のメリット・デメリットを比較して、参加希望することも検討してみてください。
- メリット:標準療法以上の治療効果を得られる可能性がある
- デメリット:期待した治療効果を得られない・想定外の副作用の可能性がある
造血幹細胞移植
造血幹細胞移植は、正常な血球を作るための造血幹細胞をドナーから移植する治療方法です。強力な抗がん剤は正常な造血幹細胞も殺してしまうため、強すぎる薬を使うと血液を作る力がなくなってしまいます。造血幹細胞移植は、強力な抗がん剤と放射線治療によって白血病細胞を正常細胞ごと死滅させ、その後に正常細胞を移植して回復を図ります。小児急性リンパ性白血病は化学療法が進化しているため、造血幹細胞移植の適応となることはまれです。
中心静脈カテーテル
中心静脈カテーテルとは、鎖骨下や首の静脈に人工の管(カテーテル)を挿入する治療法です。白血病の治療では血液検査を頻繁に行うため、そのたびに注射するのは患者さんに大きな負担となります。
中心静脈カテーテルを挿入することで、注射の回数を格段に減らし、薬剤の投与もカテーテルから行います。
小児急性リンパ性白血病についてよくある質問
ここまで小児急性リンパ性白血病の検査や治療方法などを紹介しました。ここでは「小児急性リンパ性白血病」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。
白血病は完治しますか?
白血病がどの段階で治ったとするかを判断する基準は、いまだ確立していません。小児急性リンパ性白血病は速やかな治療によって80〜90%は寛解しますが、寛解後も再発の可能性があります。寛解後に5年以上再発しない場合は、治った可能性が高いと判断されます。
治療後日常生活に影響は出ますか?
小児急性リンパ性白血病の治療終了後に、著しい影響が残ることは少ないと考えられています。退院直後は入院による筋力低下や、貧血が回復しきっていないことにより、激しい運動は避けた方がよいでしょう。また、白血球が回復していないと感染症にかかりやすくなるため、普段から感染対策を心がけてください。
編集部まとめ
小児急性リンパ性白血病の症状や治療方法を解説してきました。 15歳以下の小児のがんでは一番多く、速やかに治療開始しないと短期間で命を失う可能性もあります。 しかし、小児急性リンパ性白血病の治療成績は年々向上しており、80%以上の患者さんが長期生存しています。 症状の進行が急速な分、気付かないうちに悪化する可能性は低いため、早期発見しやすいがんです。 重度の貧血・発熱・出血などの症状があれば、早めに医療機関を受診しましょう。小児急性リンパ性白血病と関連する病気
「小児急性リンパ性白血病」と関連する病気は1個程あります。各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
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白血病になると正常な血球細胞が減少するため、白血球・赤血球・血小板の減少による症状が生じます。急性リンパ性白血病では、これらの症状が急速に進行しますので、異常を感じたら早めに受診してください。

