「急性リンパ性白血病の再発率」はどれくらい?再発した場合の症状も解説!
急性リンパ性白血病(ALL)は、血液のがんといわれる白血病の一種です。白血病のなかでも病状の進行が早いのが、急性リンパ性白血病の特徴です。
進行が早いため、治療を受けずに数ヵ月が経過すると命を落とすこともあります。治療が難しいと思われがちですが、正しく治療すれば完治できる病気です。
しかし再発率が高いのも急性リンパ性白血病(ALL)の特徴で、治療が完了しても油断はできません。
当記事では、急性リンパ性白血病(ALL)の再発率や治療法について解説します。
監修医師:
山本 佳奈(ナビタスクリニック)
目次 -INDEX-
急性リンパ性白血病とは?
急性リンパ性白血病(ALL)は、血液中の血球のうちリンパ球になる前の細胞ががん化し増殖する病気です。リンパ球は白血球の一種で、がん化した細胞を白血病細胞または芽球といいます。
白血病細胞は骨髄で増殖し、正常な血液細胞がつくられなくなります。造血細胞移植学会ガイドライン第3版によると発症時の年齢の中央値は13歳で、小児に多い病気で成人に見られることは稀です。小児の急性リンパ性白血病(ALL)の長期生存率は70〜80%と高い数値ですが、成人の長期生存率は過去20年間で伸びていません。
5年生存率を見ると、15歳から60歳は30〜40%、60代以上は10%と低い水準です。再発率が高いのも急性リンパ性白血病の特徴です。
急性リンパ 性白血病の再発率
急性リンパ性白血病(ALL)の再発率は50%以上です。大人の場合、治療が完了しても半数以上が再発し、小児の場合も20%程度が再発します。
大人に比べて小児の患者さんは再発率も低く、完治する確率も高いです。小児の場合は約90%、20代以上で化学療法を受けた患者さんのうち10〜20%が治癒します。
再発する場合は2年以内が多く、抗がん剤治療が終了してから5年間再発が見られなかった場合は、治癒している可能性が高いと考えられています。5年間は体調の変化に気を付けて、不調を感じた場合は早めに医療機関で診断を受けるようにしましょう。
再発時の治療法
急性リンパ性白血病(ALL)が再発した場合、どのような治療が行われるのでしょうか。ここでは、急性リンパ性白血病(ALL)が再発したときの治療法を紹介します。
寛解導入療法
寛解導入療法は白血病細胞を減らし、症状の軽減を目的とした治療法です。一般的に複数の抗がん剤を組み合わせる多剤併用療法を行います。
急性リンパ性白血病(ALL)の寛解導入療法では、4種類の薬剤を4〜5週間程度投与するのが一般的です。多剤併用療法は一つの薬を投与するより、白血病細胞の増殖を抑制する効果が期待できます。
白血病細胞は血液を通じて全身に広がるため、脳と脊髄を保護する髄液にも浸潤する場合があります。白血病細胞の浸潤を予防するために、免疫抑制作用を持つ抗リウマチ薬を脳脊髄液に注射します。
救援化学療法
救援化学療法は、がんが再発したときや寛解導入療法で寛解が見られないときに行われる治療法です。複数の薬を組み合わせて行う薬物療法が主流ですが、病気によって治療内容は異なります。
急性リンパ性白血病(ALL)には、薬物療法のほかに抗体薬物複合体や免疫療法剤、免疫細胞療法があります。
同種造血幹細胞移植
造血幹細胞移植はHSCTとも呼ばれます。移植には同種と自家の2種類があり、ドナーから細胞を提供してもらう移植を同種造血幹細胞移植といいます。自家造血幹細胞移植は、患者さん本人の造血幹細胞を採取・保存して再び本人に移植する方法です。
- 染色体異常や遺伝子異常がある場合
- 初期の治療反応が悪い場合
上記の場合は再発リスクが高いと考えられ、同種造血幹細胞移植が検討されます。急性リンパ性白血病(ALL)の治療では、自家造血幹細胞移植ではなく、主に同種造血幹細胞移植が実施されます。
キメラ抗原受容体遺伝子改変T細胞療法(CAR-T)
キメラ抗原受容体遺伝子改変T細胞療法(CAR-T)はがん免疫療法の一種で、次世代のがん治療薬として期待されています。
化学療法に抵抗性がある方や造血細胞移植後の再発が見られた患者さんなどを対象にした治療では、完全・部分寛解の反応率が70〜90%あると結果が出ています。
放射線療法
放射線療法は、急性リンパ性白血病(ALL)の再発予防にも利用されています。この治療を予防的全脳照射といいます。
認知機能の低下や二次性がんなどのリスクや、心臓への影響があるため、慎重な検討が必要です。また化学療法への反応が遅い場合にも、放射線療法が行われます。
維持療法
維持療法は完全寛解後の状態を維持するための治療です。維持療法を受けることで白血病細胞を完全になくし、再発予防につながります。維持療法の期間は学校や仕事を含めて、通常の日常生活を過ごすことが可能です。
治療の流れは、まず寛解導入療法によって完全寛解を目指します。完全寛解後は、別の抗がん剤を使用して地固め治療を行い、維持治療に移行します。維持療法は、1~2年程続けられることが一般的です。
再発した場合の症状
急性リンパ性白血病は再発する恐れがあります。疲れやすさ・血が止まりにくい・感染症がなかなか治らない・頭痛・吐き気などの症状がある場合には、すぐに受診するようにしましょう。
疲れやすい
急性リンパ性白血病(ALL)は再発しやすいため、治療後も体調には注意が必要です。再発した際の症状に、疲れやすさがあります。急性リンパ性白血病が再発すると、血液中の細胞がうまく作れなくなり、貧血になります。
貧血になるとちょっとした運動でも疲れやすくなり、息切れや動悸を感じることも少なくありません。白血病の再発時に緊急で診察を受ける必要はありませんが、早めに診断を受けるようにしましょう。
血が止まりにくい
血が止まりにくくなるのも、急性リンパ性白血病(ALL)の再発症状の一つです。小さな傷でも大量に出血してしまったり、脳などの臓器に出血する場合があります。
白血病の影響で血小板が減り、出血しやすくなることが原因です。ほかにも鼻血が出やすくなったり、アザになりやすかったりします。
感染症が治りにくい
急性リンパ性白血病(ALL)の再発時には、以下の症状が現れます。
- 感染症にかかりやすい
- 感染症が治りにくい
これらは正常な白血球が減り、抵抗力が低下したことが原因で起こります。
頭痛がする
急性リンパ性白血病(ALL)の再発時に頭痛がする場合があります。白血病細胞が脳や脊髄の中枢神経に入り込んで、増殖するのが原因です。めまいが起こる場合もあります。
吐き気がする
頭痛の際と同じく、中枢神経に白血病細胞が入り込み増殖するため、吐き気がする場合もあります。急性リンパ性白血病の再発時にもみられる症状のため、続くようでしたら早めに検査を受けましょう。
リンパ性白血病の再発率についてよくある質問
ここまで急性リンパ性白血病の再発率について、症状や治療法などを紹介しました。ここでは「急性リンパ性白血病の再発率」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。
急性リンパ性白血病の再発は寛解後何年以内に起こりやすいですか?
山本 佳奈(医師)
急性リンパ性白血病の再発は、寛解後2年以内にみられることが多いです。そのため2年経っても症状が出ず、再発がみられない場合は、治ったと考えられます。5年経っても再発しなかった場合は、治癒している可能性が高いとされています。
再発した場合の生存率を教えてください。
山本 佳奈(医師)
急性リンパ性白血病が再発する確率は50%を超えており、再発した場合の長期生存率は30〜40%程度です。小児の場合も急性リンパ性白血病の再発率は約20%であるといわれています。
編集部まとめ
当記事では急性リンパ性白血病の再発率や治療法、現れる症状を解説してきました。この記事のポイントは次のとおりです。
- 急性リンパ性白血病の再発率は約半数を超える
- 再発時の治療法は数種類ある
- 再発時には疲れやすさや頭痛、吐き気などの症状が現れる
- 再発は2年以内に起こる可能性が高い
急性リンパ性白血病は治療をしないで放置すると、数ヵ月で命を失う可能性がある病気です。
早期に発見し治療を受けることで治る可能性がある病気のため、気になる症状がある場合は、早めに医師の診断を受けるようにしましょう。
急性リンパ性白血病と関連する病気
「急性リンパ性白血病」と関連する病気は3個程あります。
各病気の症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
関連する病気
- 急性骨髄性白血病
- 慢性骨髄性白血病
- 慢性リンパ性白血病
急速に進行するものは急性白血病に分類され、ゆっくり進行するものは慢性白血病に分類されます。また白血病細胞が増える細胞の種類がリンパ球でなく、骨髄球のものが骨髄性白血病です。
急性リンパ性白血病と関連する症状
「急性リンパ性白血病」と関連している、似ている症状は6個程あります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
関連する症状
- めまい
- 息切れ
- 貧血
- 感染症にかかりやすくなる
- 出血しやすくなる
- あざが増える
上記のような症状が見られた場合は、急性リンパ性白血病の可能性があります。症状も急に現れることが考えられるため、体調の変化には注意しましょう。