「子宮頸がんのステージ別・症状」はご存知ですか?治療法・予防法も解説!
子宮頸がんは20代後半から増加する、若い人にも多いがんです。初期では自覚症状がない点が特徴です。
では子宮頸がんが進行すると、どのステージでどのような症状が現れるのでしょうか。
女性であれば誰もが発症リスクを持つ病気です。正しい知識を持っておきましょう。
今回は子宮頸がんのステージごとの症状を中心に、治療方法や予防法まで解説します。
監修医師:
阿部 一也(医師)
目次 -INDEX-
子宮頸がんとは
子宮頸(しきゅうけい)がんは子宮の入口にできるがんで、高齢の患者さんよりも30〜40歳代の若い患者さんに多い特徴があります。
一生のうち、76人に1人程が子宮頸がんと診断され、2021年には年間2,894人が亡くなりました。子宮がんは女性特有のがんのなかで、乳房についで2番目に多く診断されているがんです。
子宮の入口にできるがん
子宮は入口を含む下から3分の1側を子宮頸部、それより上部の卵管や卵巣を含む部分を子宮体部と呼んで区別します。
子宮頸がんはこの子宮頸部に発生するがんです。子宮頸がんは特に子宮の入口、外子宮口の付近に発生するケースが多いといいます。
CIN(子宮頸部上皮内腫瘍)やAIS(上皮内腺がん)を経てから発症する
子宮頸がんには、異形成と呼ばれるがんの前段階(前がん病変)があります。異形成とは、子宮頸部でがんに進行する可能性がある細胞が増えている状態です。
異形成はCIN(子宮頸部上皮内腫瘍)とも呼ばれ、病変の程度が大きくなるとAIS(上皮内腺がん)になります。
子宮頸がんのステージによる症状
子宮頸がんはほかのがんと同じく、がんの進行程度をI〜IV期のステージで分類します。以下ではどのステージで、どのような症状が現れるのかを具体的に解説します。
初期は自覚症状に乏しい
子宮頸がん前段階のCINやAISの時期には、おりものの変化・痛み・出血といった初期症状はありません。
ステージI期初期の症状も一般的には無症状で、この段階で患者さん自身が子宮の異常に気がつくことは困難です。早期発見には定期的な検査が必要です。
帯下や生理日以外の不正出血
子宮頸がんがI期・II期・III期と進行すると、子宮から出るおりものや経血などに以下のような変化が現れます。
- 月経以外での不規則な出血がある(不正出血)
- おりもののにおいが強くなる
- おりものが濃い茶色になる
- 水っぽいおりものが出る
- 膿・大量の粘液が出る
通常の生理周期と異なる出血や、異常なおりものが見られる場合は早急に産婦人科を受診してください。
性行為時出血
子宮頸がんが進行すると、性行為時の出血が見られます。この症状はI期から報告される症状です。
妊娠を希望する場合、I期の初期段階で子宮頸がんを発見できれば、手術を受けることなく厳重管理下での経過観察という選択肢も出てきます。
子宮に違和感があったならば、早めに医師に相談しましょう。
下腹部の痛み
子宮頸部からがんが拡大すると、腹部に痛み・違和感・膨満感が現れます。がんに冒された部分が腫れ、周囲を圧迫するためです。
子宮頸がんでがん腫瘍が肥大し始めるのはI期後半、がんが子宮頸部を超えて拡がり始めるのはII期以降です。
この頃には尿道と周辺組織も圧迫され始めるため、排尿時の痛みや排尿しにくさなどの排尿異常も見られます。
子宮頸がんのステージごとの治療方法
子宮頸がんで選択される治療方法は大きく分けて以下の3種類です。
- 手術
- 放射線治療
- 薬物治療
医師は患者さんの希望・生活環境・年齢から総合的に判断して、治療法を決定します。特に子宮頸がんの治療で配慮すべきなのは妊娠の可能性、妊孕性(にんようせい)の問題です。
がんの進行状況によっては、妊孕性の温存が難しかったり、妊孕性温存治療を選択したりすることで患者さんのリスクが高まるケースもあります。
治療法は患者さん自身もよく勉強しながら、医師と相談して後悔の残らないよう決めましょう。
子宮頸部円錐切除術
子宮頸部の一部を円錐状に切除する手術です。病変の拡大を調べる場合と、前がん病変部分を完全に切除する場合に選択されます。子宮の入口のみを切除することになるため、妊孕性を残せるでしょう。
しかし子宮頸部が短くなることで、以下の問題が生じます。
- 早産リスクが上がる
- 妊娠しにくくなる
- 月経血が出にくくなる
子宮頸がんを定期検査などで初期に発見できた場合には、子宮頸部円錐切除術のみでの完治も目指せます。
広汎子宮頸部摘出術
がんが拡がっている子宮と周辺組織、周辺リンパ節、膣の一部を切除して根治を目指す手術です。がんを完全に切り取ることができる可能性が高まるメリットがありますが、以下のデメリットもあります。
- リンパ浮腫
- 排尿トラブル
- 性生活への影響
広汎子宮頸部摘出術よりも切除範囲を狭めた手術に準広汎子宮全摘出術、子宮のみを摘出する手術に単純子宮全摘出術もあります。いずれの場合も子宮を失うため、妊娠はできなくなります。
同時化学放射線治療
放射線治療と薬物治療を組み合わせた治療法です。細胞障害性抗がん薬で治療の効果を高めながら、高エネルギーのX線やガンマ線で細胞内のDNAを直接攻撃します。
放射線治療により卵巣の機能がほぼ失われるデメリットがあります。しかし手術よりも排尿機能や性生活への影響が少ないメリットが魅力です。
薬物治療
薬物治療は、進行が進みがんが全身に転移している、Ⅳ期末期の子宮頸がんに選択されます。治療目的は根治ではなく、QOLを保ちながら生存期間を延ばすことです。
子宮頸がんに使われる抗がん剤はシスプラチンという薬が中心です。さらに別の抗がん剤を組み合わせたり、ベバシズマブという分子標的薬を使ったりするケースもあります。
子宮頸がんにならないための予防法
子宮頸がんは初期症状から発見することは難しく、進行すれば初期から妊娠に影響する手術が必要になるがんです。
そのため、子宮頸がんになる前の予防が重要です。以下では若いうちから始めたい子宮頸がんの予防法を解説します。
ワクチン接種
子宮頸がんはワクチン接種で予防できる病気です。子宮頸がんは、主に性交渉で感染するHPV(ヒトパピローマウイルス)が原因です。
HPVには複数の種類がありますが、安全性と有効性が高い9価ワクチンを接種していれば、9割近くの感染を予防できます。
日本では小学6年生〜高校1年生相当の女子を対象に、患者さんの自己負担なしでワクチン定期接種が実施されています。詳細は自治体に確認してください。
子宮頸がん検診
子宮頸がんを予防、早期発見するために、20歳から2年に1回の頻度で子宮頸がん検診を受けましょう。
子宮頸がん検診は問診・視診・細胞診の3つの検査で完結します。検診はほとんど痛みもなく、短時間で終了します。自治体や職場の検診なら自己負担を抑えて検査ができるため、ぜひ活用してください。
子宮頸がんのステージ症状についてよくある質問
ここまで子宮頸がんの症状・治療方法・予防法などを紹介しました。ここでは「子宮頸がんのステージ症状」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。
子宮頸がん初期でも子宮ごと摘出することはありますか?
阿部 一也 医師
子宮頸がん初期の患者さんでも、子宮を残す希望がない患者さんには子宮を摘出する手術が提案されます。ただし患者さんが子宮温存を強く希望する場合は、がんの進行状況によっては妊孕性の温存も可能です。
ステージ症状は若い人の方が自覚しやすいですか?
阿部 一也 医師
年齢によって症状の出やすさに差は出ません。ただ子宮頸がんは若い年代が発症するAYA世代がん(Adolescents and Young Adults with Cancer)の代表格です。15〜39歳の学業・就職・結婚・子育てなどの人生の大きなイベントが続く時期に、がんと闘病することは人生設計に大きな影響をもたらします。若いうちからワクチンやがん検査で、リスク管理をしておくことが重要です。
編集部まとめ
子宮頸がんの初期で目立つ症状はありませんが、進行すると腹部の痛み・おりものの異常・不正出血などが現れます。
症状に気がついてからの治療では手術や放射線治療などで、妊娠できる可能性が失われるケースがあります。
子宮頸がんは若いうちからのワクチン接種で予防が可能です。また、定期検査で早く病変を発見できれば簡単な治療で根治も目指せます。
子宮頸がんと関連する病気
「子宮頸がん」と関連する病気は3個程あります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
関連する病気
- 子宮頸部上皮内腫瘍
- 上皮内腺がん
- 子宮体がん
子宮頸がんは子宮頸部上皮内腫瘍、上皮内腺がんと段階を踏んで進行して発症します。また子宮下部にできる子宮頸がんと、子宮上部にできる子宮体がんは明確に区別されます。子宮体がんは子宮内膜と深く関わるがんです。
子宮頸がんと関連する症状
「子宮頸がん」と関連している、似ている症状は5個程あります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
関連する症状
- 不正出血
- おりものの変化
- 腹部の痛み
- 腹部違和感
- 腹部膨満感
子宮頸がんで症状が現れるのは、がんが進行してからです。上記の症状が出ている際は早急に産婦人科で相談しましょう。