「胃がんステージ3」の症状・余命はご存知ですか?医師が徹底解説!
Medical DOC監修医が胃がんのステージ3の症状や余命・生存率・検査法・治療法や何科へ受診すべきかなどを解説します。気になる症状がある場合は迷わず病院を受診してください。
監修医師:
烏山 司(医師)
目次 -INDEX-
「胃がん」とは?
胃がんとは、胃壁の内側の細胞が何らかの原因によりがん化(無秩序に増殖する状態)したものです。胃がんはがんの深さ、リンパ節への転移、遠隔転移の有無によりステージが分類されます。ステージ分類をすることで、適切な治療方針を選択することが可能になるのです。
今回の記事では、ステージ3の病期に絞って解説します。ステージ3とは、「おおむね固有筋層よりがんが深く入り込んでいるが、遠隔転移はない状態」と考えることができます。
臨床分類
ステージ | がんの深達度 | リンパ節転移 | 遠隔転移 |
---|---|---|---|
ステージ3a | 固有筋層までにとどまる | 15個まで | なし |
固有筋層を超えて漿膜下層に浸潤している | 6個まで | ||
漿膜を超えて胃の表面に出ている | 6個まで | ||
ステージ3b | 粘膜下層までにとどまる | 16個以上 | |
固有筋層までにとどまる | 16個以上 | ||
固有筋層を超えて漿膜下層に浸潤する | 15個まで | ||
漿膜を超えて胃の表面に出ている | 6個まで | ||
ステージ3c | 固有筋層を超えて漿膜下層に浸潤する | 16個以上 | |
漿膜を超えて胃の表面に出ている | 16個以上 | ||
胃の表面に出て、他の臓器にも広がる | 6個まで | ||
胃の表面に出て、他の臓器にも広がる | 7個以上 |
胃がんステージ3の症状
胃がんは、初期では自覚症状がほとんどないことが多いです。かなり進行しても症状がないこともあります。ここでは、胃がんの代表的な症状を解説します。
胃の痛み
胃がんが進行すると、みぞおち周囲の痛みが出ます。痛みまでいかずとも、不快感や違和感を感じる方もいます。これらの症状は胃がん以外の胃炎や胃潰瘍などでもみられる症状です。胃の痛みなどの症状が認められた時には、早めに消化器内科を受診しましょう。
吐き気・食欲不振
胃がんによって消化管の内腔が狭くなり、食物の通過障害が起こることで吐き気が出たり、胃の重い感じが続いたりします。吐き気が持続することで食欲がなくなり、次第に食べられなくなる場合もあります。吐き気などの症状が持続する場合には、早めに消化器内科を受診して相談をした方が良いでしょう。
貧血・黒い便
胃からの出血がある場合、少量ずつの出血では貧血がゆっくりと進行し、自覚症状が出にくい場合があります。採血検査などで、貧血の進行がみられた場合や、めまいやふらつきが頻繁にみられるようになった場合には注意が必要です。また、胃から出血している場合、黒っぽい便が出ることがあります。黒っぽい便が出た場合には早急に消化器内科を受診して検査を行う必要があります。
体重減少
胃がんに伴う、胃痛、吐き気、食欲不振などが持続すると食べられなくなり、体重が減少することがあります。また、食事がとれていてもがんによってエネルギーが消費されてしまうために、体重が減少することもあります。急激な体重減少がみられる場合には至急内科を受診しましょう。
胃がんステージ3の余命・生存率
がんの治療成績を考える指標として、生存率があります。がんと診断されてから一定期間たった時点でどのぐらいの患者さんが生存しているかを示す割合です。一般的に5年生存率を用いてがんの治療成績を評価することが多いです。生存率の中でも、純粋にがんが死因となる状況を仮定して計算した生存率をネット・サバイバルといいます。胃がんステージ3の5年ネット・サバイバルは41.3%と報告されています。
胃がんステージ3の検査法
胃がんの進行具合を確認し、今後の治療方針を決めるためにさまざまな検査を行います。
バリウム検査
バリウムを飲み、食道、胃、十二指腸の撮影をする検査です。発泡剤とバリウムを飲んでから検査台に乗り、仰向けやうつ伏せなどいろいろな体位を変えながら撮影をします。この検査では、胃の形やがんの大きさ、病変の部位と大体の位置や範囲について知ることができます。
上部消化管内視鏡検査
口から内視鏡を挿入し、食道・胃・十二指腸の観察をする検査です。まず、がんの確定診断をつけるために病変の一部を採取し、病理診断をする生検を行うこともあります。がんが確定していれば、場所や大きさなどが確認できます。
CT検査
CTなどの画像検査は、腫瘍の場所や大きさ、周りの臓器への浸潤、離れた臓器への遠隔転移の有無、周囲のリンパ節転移の有無などを調べるために行います。CTはX線を使用して体の断面を撮影します。これらの検査での遠隔転移の有無や周囲への浸潤などの情報が術前のステージを決める重要な情報となります。
PET検査
PET検査はPositron Emission Tomographyの略称です。この検査では、細胞の糖代謝などから病気を発見します。リンパ節や他の臓器への転移の有無などを調べる目的で行われることが多いです。PET検査では、静脈からFDG(放射性フッ素を付加したブドウ糖)を注入し、がん細胞に取り込まれたブドウ糖の分布が画像で映し出されます。CT検査と組み合わせることで、がんの有無やリンパ節転移の有無などをより正確に診断することができる様になります。
胃がんステージ3の治療法
胃がんステージ3の治療は、手術でがんが取り切れると判断された場合には、外科的手術が基本です。ただし、リンパ節転移の有無、またリンパ節転移の場所や大きさなどを総合的に判断し、その結果から、手術をする前に化学療法を行う場合もあります。また、術後に補助化学療法を追加することもあります。
これらの治療法は、患者さんの状態などにより異なります。必ず主治医の説明をしっかり聞くようにしてください。
外科手術
胃がん手術における胃の切除範囲や詳細な術式に関しては、胃がんのできた部位や深さ、周囲への浸潤の有無などにより大きく異なります。主治医にどのような手術となるのかをしっかり聞いて確認をしましょう。
化学療法
ステージ3の胃がんでは、リンパ節転移の部位や大きさの点でそのまま切除が難しい時などに行う「術前補助化学療法」と手術後の再発予防を目的とする「術後補助化学療法」を行うことがあります。化学療法には、主に「細胞障害性抗がん薬」「分子標的薬」「免疫チェックポイント阻害薬」といった種類の薬を使うことがあります。それぞれの薬の特徴についてはとても難しい内容ですのでここでは詳細は述べませんが、これらの使い分けについてはがんの性質やその他の状況により、個々で異なります。外科手術同様、がんの治療については個々で異なりますので、必ず主治医の先生からしっかり話を聞くようにしてください。
「胃がんステージ3」についてよくある質問
ここまで胃がんステージ3の症状や余命・生存率・検査法・治療法などを紹介しました。ここでは「胃がんステージ3」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。
胃がんステージ3は手術で完治しますか?
烏山 司 医師
胃がんのステージ3の5年ネット・サバイバルは41.3%と報告されています。完治するかどうかは発見時の状態などによってさまざまであり、治療前に明言するのはとても難しいため、治療方針や今後の経過については、主治医の先生に聞いて頂くのが確実です。
胃がんステージ3と診断された場合、治療費はおおよそどのくらいかかりますか?
烏山 司 医師
全日本病院協会が発表している統計では2022年度におけるステージ3胃がんでの平均医療費は1入院あたり1412218円、1日当たり86733円となっています。この医療費はあくまで平均であり、どのような治療をしたかや使える制度や保険などにより実際の支払額とは大きく変動します。ご自身の治療費の見込みについては主治医や病院のスタッフ、加入している保険会社などに必ず確認をしましょう。
まとめ 胃がんの症状を知って早期に病院を受診しよう!
ステージ3まで胃がんが進行すると、胃痛や胃のむかつきや吐き気、食思不振などの症状が出やすくなります。しかし、この時期でも自覚症状がほとんどないこともあります。ちょっとしたご自身の不調に気づき、早めに医療機関を受診しましょう。また、定期的ながん検診も有効です。
ステージ3の胃がんでは5年ネット・サバイバルが41.3%となっています。以前と比較すると治療成績は良くなっていますが、やはり早期で胃がんを発見し治療することが重要です。しかし、ステージ3の胃がんと診断されたとしても、薬物療法の種類や副作用を出にくくする薬剤など治療が進歩しています。主治医よりしっかり話を聞き、ご自身にとって一番良いとされる治療を受けられることが勧められます。疑問点などは、ご自身の体を一番よく知る主治医に相談することが大切です。
「胃がんステージ3」と関連する病気
「胃がんステージ3」と関連する病気は4個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
胃がんの症状は他の消化器系の病気と区別がつきづらいです。しかし、症状が持続する場合には何かしらの病気が隠れています。早めに消化器内科を受診しましょう。
「胃がんステージ3」と関連する症状
「胃がんステージ3」と関連している、似ている症状は7個ほどあります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
関連する症状
- めまい
- ふらつき
- 胃痛
- 嘔気
- 食欲不振
- 黒い便
- 体重減少
上記のような症状は、消化器系の病気や、貧血などが強い場合、がんなどの症状でよくみられます。症状だけでは区別がつきづらいです。黒い便は消化管出血が起こっていると考えられ、早めに消化器内科を受診しましょう。そのほかの症状の場合にも、内科もしくは消化器内科を受診し相談しましょう。
参考文献