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「大腸がんの手術内容」はご存知ですか?術後の合併症や入院期間も医師が解説!

 公開日:2024/07/12
「大腸がんの手術内容」はご存知ですか?術後の合併症や入院期間も医師が解説!

大腸がんの手術内容とは?Medical DOC監修医が大腸がんの主な手術内容・合併症・ステージ別の治療法などを解説します。

齋藤 雄佑

監修医師
齋藤 雄佑(医師)

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日本大学医学部を卒業。消化器外科を専門とし、現在は一般外科、消化管内視鏡検査、生活習慣病を中心に診療を行っている。現在は岩切病院、高砂内科・消化器科クリニックに勤務。
日本外科学会外科専門医。日本医師会認定産業医。

「大腸がん」とは?

大腸がんは、大腸の内壁を覆う粘膜に発生する悪性腫瘍で、進行性の疾患です。腺腫という良性ポリープががん化して発生するものと、正常粘膜から直接発生するものとの2パターンがあります。適切な検査と治療を行うことで、病気の進行を抑え生存率を高めることが期待できます。この記事では大腸がんの手術やその合併症、ステージ別の治療について解説します。

大腸がんの主な手術内容

がんのステージ、位置、手術を受ける方の健康状態によって大腸がんの最適な手術法が選択されます。大腸がんの手術療法には主に以下のような手術方法があります。それぞれの特徴を理解しましょう。

内視鏡的手術

初期の大腸がんに用いられる技術で、内視鏡を用いてがんを切除します。手術は比較的短時間で終わるので、日帰りまたはごく短期間の入院で行うことが多いです。大腸の壁の一部を切除する手術であるため、病変の深さや切除したものの病理結果次第では、別の手術を追加で行う必要が出る場合があります。

開腹手術

開腹手術はお腹を大きく切開して、執刀医が直視下で行う手術です。進行がんや大きな腫瘍に対して行われることが多い手術です。腹部の傷が大きいため、術後の痛みが強く、手術後の回復に時間がかかる場合がありますが、がんの広がりや病状によって必要な場合があります。

腹腔鏡手術

腹腔鏡手術は小さな切開をして、腹腔鏡と呼ばれるカメラを用いて手術をします。お腹の小切開を用いて、病変部の切除や吻合は直視下で行う場合もあります。従来の開腹手術に比べ、手術創が小さく、痛みが少ないため術後早期の回復が期待できる手術です。

ロボット手術

ロボット手術とは、ダヴィンチと呼ばれる手術支援ロボットを用いて手術を行う方法です。ロボット手術では大腸がん、とくに直腸がんで多く用いられる術式で、狭い場所での制限のない動きが可能であったり、手術者の手ブレをなくしたりする機能を持っています。より低侵襲かつ繊細な手術が期待されます。

大腸がん手術後の合併症

大腸がんの手術は、時に合併症を引き起こすことがあります。ここでは大腸がんの手術の主な合併症を解説します。大腸がん手術の主な合併症について理解を深めましょう。

出血・血便

手術中に出血をすることがあります。ほとんどの場合は輸血を要するような大量出血を招くことはありません。手術後、まれに手術のつなぎ目の部分から出血をすることがあり、腸の内側からの出血であれば、血便が出る場合があります。通常、経過観察で症状が消失することが多い症状なので、過度な心配は不要です。

排便異常・麻痺性イレウス

手術や全身麻酔の影響で、腸の動きが通常通りにならないために、下痢や便秘などの排便異常が起こることがあります。さらに消化管運動が障害され、腸管が拡張することで腹痛やお腹のはり、吐き気がでてしまう状態を麻痺性イレウスといいます。排便異常の治療には原因に応じて内服の調整や歩行などの運動も効果的です。麻痺性イレウスの場合は消化管の安静のため、食事摂取を中止し、点滴や内服などで症状が改善するのを待ちます。

手術創部の感染

手術部位の感染が創部に起こると、創部の痛みや発赤、腫れなどが起こります。手術創部の感染は一般的には重症な状態にはなりにくく、適切に洗浄などで創部の清潔を保つことで改善します。

縫合不全

手術後、最も重症になりやすい合併症に縫合不全があります。縫合不全とは様々な理由で手術をした大腸のつなぎ目がうまくくっつかずに、便がお腹の中にばらまかれてしまう状態です。便には大腸菌などの多くの細菌が存在するため、縫合不全を起こした場合には激しい発熱や腹痛などの症状が出現します。大腸がんの手術で縫合不全が起こってしまった場合は、再手術や人工肛門を造設する手術が必要になる場合があります。

廃用症候群

廃用症候群とは、手術前後で体を動かせない状態が続くことで生じる症状の総称です。具体的には筋力の低下や関節の拘縮(こうしゅく)、心肺機能低下などを指します。手術後の安静の期間が終われば積極的に歩行練習などを行い、早期の日常生活の復帰を目指しましょう。

大腸がんのステージ別・治療法

大腸の壁の層構造は内側から、粘膜層、粘膜下層、粘膜固有層、漿膜下層、漿膜、外膜の5層構造をしています。大腸がんは粘膜層にでき、徐々に外側に成長する性質があります。大腸がんはがんの深さを示す深達度やリンパ節転移や遠隔転移の有無によって、ステージが決まります。決まったステージと患者さんの健康状態を考慮して治療法を選択します。

大腸がん・ステージ0とステージ1(T1a)の治療法

ステージ0とは大腸がんが粘膜内にとどまるものです(Tis)。ステージ1(T1a)とは大腸がんが固有筋層までにとどまるステージ1のうち、がんが粘膜下層までにとどまり、浸潤距離が1mm未満のものです。ステージ0とステージ1の一部(T1a)の治療では、内視鏡的治療を行います。治療を担当するのは内視鏡治療の専門病院の消化器内科医が行います。入院期間は短期であるケースが多いです。手術後も定期的な内視鏡検査が勧められます。

大腸がん・ステージ1(T1b)とステージ2の治療法

ステージ1(T1b)とはがんが固有筋層までにとどまるステージ1のうち、がんが粘膜下層までにとどまり、浸潤距離が1mm以上のものです。ステージ2とはがんが固有筋層を超えて浸潤するもののうち、リンパ節転移がないものです。
大腸がんステージ1(T1b)とステージ2では、がんを含む腸管と、転移の可能性があるリンパ節を、外科手術で同時に切除します。開腹手術や腹腔鏡下手術、ロボット手術が選択されるケースが多いです。麻酔科やICUなど体制が整った大きな病院の消化器外科医が手術を担当します。手術後は定期的な通院による経過観察を行います。

大腸がん・ステージ3の治療法

ステージ3とは、がんの深達度は問わず、リンパ節転移があるものです。大腸がんステージ3の場合も、がんを含む腸管と、転移の可能性があるリンパ節を、外科手術で同時に切除します。担当の消化器外科医が開腹・腹腔鏡下・ロボット手術のいずれかを選択します。手術後は補助化学療法といって、再発を防ぐための抗がん剤治療を行います。抗がん剤治療のため定期的な通院が必要です。

大腸がん・ステージ4の治療法

大腸がんステージ4は、他臓器に転移があるものです。転移した病変が切除可能であれば、転移病変と原発病変の根治手術を行います。転移した病変が切除不能であれば、抗がん剤治療を行います。手術は消化器外科医が行いますが、はじめから抗がん剤治療が選択される場合は腫瘍内科医が抗がん剤治療に当たることも多いです。抗がん剤治療のため定期的な通院が必要です。

「大腸がんの手術」についてよくある質問

ここまで大腸がんの手術を紹介しました。ここでは「大腸がんの手術」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。

大腸がんの手術後は、どれくらいの入院期間が必要ですか?

齋藤 雄佑齋藤 雄佑 医師

何も問題ない経過であれば2週間以内の入院期間が最低限必要です。合併症が起こったり、もともと既存症をお抱えの方はもっと期間を要することもあります。

大腸がんの手術後、何年経過すると完治となりますか?

齋藤 雄佑齋藤 雄佑 医師

手術後の経過観察期間は通常5年です。5年間再発がなければ、完治として外来を終了するケースが多いです。

大腸がんの手術時間は平均でどれくらいかかりますか?

齋藤 雄佑齋藤 雄佑 医師

内視鏡的切除は大腸がんの個数にもよりますが、1時間程度で終了するケースが多いです。外科的手術も症例や大腸がんの場所や手術方法の選択で大きく異なります。平均すると3-5時間程度が多いと考えます。

編集部まとめ

大腸がんは適切な検査と治療を行うことで、病気の進行を抑え生存率を高めることが期待できます。内視鏡的切除では、ほとんど苦痛を伴うことなく早期の大腸がんを切除することができます。しかし、発見されたときに進行がんであったというケースもあります。進行した大腸がんでも外科手術によって根治が狙えるケースも多く、手術が大腸がんの高い5年生存率に大きく寄与しています。大腸がんのステージごとの治療法や手術の方法、その合併症について理解を深めましょう。

「大腸がんの手術」と関連する病気

「大腸がんの手術」と関連する病気は6個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

消化器科の病気

  • 消化管出血
  • 腸閉塞
  • 麻痺性イレウス
  • 縫合不全
  • 廃用症候群

大腸がんの手術後に腹痛や発熱など今までにない症状が出現した場合は、主治医に相談しましょう。

「大腸がんの手術」と関連する症状

「大腸がんの手術」と関連している、似ている症状は5個ほどあります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

関連する症状

気になる症状があれば、大腸がん検診を受けましょう。定期的な検査により大腸がんの早期発見を目指しましょう。

この記事の監修医師