「乳がんのステージ1」の症状・治療法はご存知ですか?医師が監修!
ほかのがんと同じように、乳がんも進行度によりステージが分かれる病気です。そのなかで、今回の記事では、ステージ1の乳がんの症状・治療方法をまとめました。
また、記事の後半では乳がんをステージ1で早期発見する方法のほか、ステージ1の乳がんについてよくある質問にも答えていきます。
早期乳がんのことを知りたい方や、乳がんの検診・治療に対して不安に感じている方などは、ぜひ参考にしてください。
目次 -INDEX-
乳がんステージ1の症状
乳がんのうち、ステージ0とは乳房内の乳管・小葉などの器官にできたがんが周囲の組織に浸潤せず器官内にとどまっている状態です。
今回のテーマであるステージ1は、乳管や小葉から周囲の組織に浸潤しているものの、リンパ節・他臓器などへの転移はみられない状態で2cm以下のものをいいます。
では、ステージ1の乳がんではどのような症状を自覚する方が多いのでしょうか。
しこり
乳がんの自覚症状として、しこりをイメージする方も多いかもしれません。しかし、生活のなかで偶然触れて自覚できるしこりは、2cm以上とされています。
そのため、2cm以下であるステージ1のしこりに気付くには、意識的にセルフチェックを習慣づけることが大切です。
セルフチェックに慣れてくると、1cmのしこりもわかるようになるといわれています。
乳房の腫れ・変形
乳がんの浸潤が進むと乳房の外見が変化する場合があります。
主な外見の変化としては、一部が引きつれて左右差が現れたり、乳房の一部がえくぼのように凹んだりするケースが多いでしょう。また、乳がんのなかには炎症性乳がんと呼ばれ、腫れ・熱感を伴う乳がんもあります。
一般的な乳がんでは腫れがみられることは少ないため、症状から「乳がんではないかもしれない」と感じるかもしれませんが、乳房に異常があればまずは乳腺科への受診をおすすめします。
乳頭からの分泌物
乳汁の分泌に関わる乳管・小葉などの組織にがんが広がることで、乳頭から分泌物がみられることがあります。
分泌物は乳汁以外の液体で、血性(血が混ざった液体)であることが多いです。
セルフチェックの場合は、乳首を軽くつまむようにすると血液などの分泌物の確認ができます。
痛み
一般的に、乳がんのしこりは痛みを伴わないことが多いとされます。しかし、前述のような炎症性乳がんもあるため「痛みがあるから、がんではないかもしれない」と自己判断するのは危険です。
医療機関では乳がん以外の症状に対しても治療を行えるため、痛みがある場合にも受診して原因を確認するようにしましょう。
乳がんステージ1の治療法
上記のような症状や検診で乳がんが発見された場合、ステージ1の乳がんに対してはどのような治療が行われるのでしょうか。
手術
ステージ1は転移がない状態のため、標準的な治療方針では手術が第一選択となります。
手術では乳房を部分切除または全切除するほか、周囲のリンパ節に転移している可能性があればリンパ節郭清が必要です。
リンパ節を郭清するかどうかを検討するために、現在の状況で転移しやすい場所にあるリンパ節(センチネルリンパ節)で生検を行う場合があります。
放射線療法
放射線療法は、高エネルギーの放射線を照射することでがんの縮小・死滅を図る治療法です。
ステージ1の乳がんの場合は、術後に残存した乳房に対して照射して再発を防いだり、リンパ節転移が疑われる場合に周辺のリンパ節に対して照射したりするケースが多いでしょう。
化学療法
化学療法は、がん細胞を攻撃する薬物を投与することでがんの縮小・死滅を図る治療法です。
ステージ1の乳がんに対しては、手術をした後にがんのタイプ・異形度などを調べて、再発リスクが高い場合に追加で化学療法を行うことがあります。
ホルモン療法
一部の乳がん・女性器のがんなど、がんの増殖にホルモンが関わっているタイプのがんでは、ホルモン療法も治療の選択肢となります。
ホルモン受容体がある乳がんの増殖に関わっているのは、女性ホルモンであるエストロゲンです。そのため、乳がんの治療ではエストロゲンの分泌を抑える薬・がん細胞がエストロゲンを取り込む力を抑制する薬などを使用します。
乳がんステージ1の5年生存率は?
ステージ1の乳がんでは、5年生存率は98.9%となっています。なお、これ以降の5年生存率は下記のとおりです。
- ステージ2:94.6%
- ステージ3:80.6%
- ステージ4:39.8%
ここからもわかるように、進行するほど5年生存率は大きく低下します。そのため、乳がんの予後を良くするためには、早期発見が重要です。
乳がんを早期発見する方法
乳がんの5年生存率には、早期発見・治療が大きく関わります。では、乳がんを早期発見するためにはどうすればよいのでしょうか。
今回は、セルフチェック・がん検診の2つの方法を紹介します。
月に1度セルフチェックを行う
乳がんは、セルフチェック(自己触診)する方法があります。
異常のないときからセルフチェックを習慣化することで、小さな変化にも気付きやすくなるでしょう。推奨されるセルフチェックの頻度は月に1度です。
月経前には胸が張ってしこりがわかりにくい場合があるため、月経がある方は月経終わってから4〜7日後に行いましょう。
セルフチェックでは、まず鏡で正面から乳房を見て、引きつれ・くぼみなどの左右差をチェックします。また、指の腹で乳房に触れてしこりの有無を確認します。
自己触診では、立位・仰向けの2パターンの姿勢で行うことでしこりに気付きやすくなるはずです。最後に、乳頭を軽くつまんで分泌物がないかを観察しましょう。セルフチェックで異常を感じたら、乳腺科への早期受診をおすすめします。
2年に1回は乳がん検診を受ける
乳がんのなかには、しこりができないタイプ・わかりにくい場所のしこりなどもあります。
そのため、セルフチェックをしっかりしている場合でも乳がん検診を受けることが大切です。乳がん検診では、主に医師による問診とマンモグラフィを行います。
乳がん検診は40歳以上になったら2年に1度は受けることが推奨されています。
ステージ1の乳がんについてよくある質問
ここまでステージ1に分類される乳がんの症状・治療方法・早期発見の方法などを紹介しました。ここでは「ステージ1の乳がんについて」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。
ステージ1の乳がんはセルフチェックで簡単に見つけられますか?
甲斐沼 孟(医師)
ステージ1の乳がんは2cm以下です。そのため、がんができた場所によってはわかりにくく、セルフチェックに慣れていない方は気付かない可能性があります。しかし、定期的にセルフチェックを行うことで自己触診に慣れてくれば、小さな異常にも気付きやすくなるでしょう。なお、乳がん検診を行っている医療機関では、しこりの感触を体験するために作られた乳房の模型(触診モデル)が置いてある場合があります。機会があれば、どのような感触か体験してみましょう。
ステージ1の乳がんはどのように進行するのでしょうか。
甲斐沼 孟(医師)
ステージ1の乳がんは、前述のとおり乳がんの発生源である乳管・小葉などの器官から周囲の組織へがんが浸潤している段階です。次の段階であるステージ2では、しこりの大きさに変化がなくても、他臓器・リンパ節への転移が起こります。転移の有無によって治療法の選択肢・治療期間・予後は変化するため、検診で異常を指摘されたり自分で異常に気付いたりしたら、まずは早期に受診することが大切です。
編集部まとめ
ステージ1の乳がんは早期に分類され、5年生存率も98.9%となっています。
乳がんのセルフチェックには少しコツが必要ですが、慣れてくるとステージ1に分類される2cm以下のしこりでも気付けるようになるはずです。
可能な限り早い段階で乳がんを発見することが良好な予後につながるため、ぜひ年に一度の検診を受けるとともに、セルフチェックも行ってみましょう。
乳がんと関連する病気
「乳がん」と関連する病気は3個程あります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
いずれも乳房にしこりができる可能性のある病気です。乳腺症・線維腺腫は基本的に治療は必要ないとされる良性疾患ですが、症状が強い場合には治療を行う場合があります。また、葉状腫瘍は悪性のものもあるため注意が必要な病気です。
乳がんと関連する症状
「乳がん」と関連している、似ている症状は3個程あります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
関連する症状
- 胸のしこり
- 乳頭(乳首)からの分泌物
- 乳頭周辺のただれ
ただし、これらの症状は乳がん以外の乳腺疾患でもみられることがあります。気になる症状があれば、まずは医療機関を受診して症状の原因を調べることをおすすめします。