目次 -INDEX-

  1. Medical DOCTOP
  2. 医科TOP
  3. 三大疾病
  4. がん
  5. 「肺がんの末期症状」はご存知ですか?初期症状や余命も解説!【医師監修】

「肺がんの末期症状」はご存知ですか?初期症状や余命も解説!【医師監修】

 公開日:2024/04/03
「肺がんの末期症状」はご存知ですか?初期症状や余命も解説!【医師監修】

肺がんは早期で発見される場合もあれば、症状が出現し始めたときにはすでに肺がん末期の状態で発見されることもあります。

末期になると手術のような外科的な治療ができません。そのため、化学療法や放射線療法で治療を行います。

この記事では、肺がん末期の症状・治療法について解説します。肺がんについて知りたい方は、ぜひ参考にしてください。

甲斐沼 孟

監修医師
甲斐沼 孟(上場企業産業医)

プロフィールをもっと見る
大阪市立大学(現・大阪公立大学)医学部医学科卒業。大阪急性期・総合医療センター外科後期臨床研修医、大阪労災病院心臓血管外科後期臨床研修医、国立病院機構大阪医療センター心臓血管外科医員、大阪大学医学部附属病院心臓血管外科非常勤医師、大手前病院救急科医長。上場企業産業医。日本外科学会専門医、日本病院総合診療医学会認定医など。著書は「都市部二次救急1病院における高齢者救急医療の現状と今後の展望」「高齢化社会における大阪市中心部の二次救急1病院での救急医療の現状」「播種性血管内凝固症候群を合併した急性壊死性胆嚢炎に対してrTM投与および腹腔鏡下胆嚢摘出術を施行し良好な経過を得た一例」など。

肺がんとは?

肺がんとは、肺に発症したがんの総称です。日本でも罹患する方は年々増加しています。肺がんの種類は大きく2種類に分けられます。

  • 非小細胞肺がん:腺がん・扁平上皮がん・大細胞がん
  • 小細胞肺がん:小細胞がん

なかでも、腺がんは肺がんと診断された方の半数以上を占めています。肺がんの原因について完全に判明していませんが、喫煙や受動喫煙による発がんリスクは一般的にも知られているでしょう。
ほかにも、大気汚染・仕事で放射線に被ばくする方・近親者に肺がんを発症している方も肺がんを発症するリスクが高いため、定期的な検診は大切です。リスクを下げるには禁煙はもちろん、生活習慣を整えることが効果的といわれています。

肺がんの初期症状

肺は呼吸を行う働きがあります。がんにより肺の機能が低下すると、咳や息苦しさのような呼吸に伴う症状が多く出現します。具体的にみていきましょう。

咳・痰

健康な方でも、日常生活において咳や痰が出現することがあります。気道のなかに異物が入ってきたと身体が認識すると、身体の外に排出しようと咳や痰がでます。
咳や痰は、身体を守る防御反応でありますが、明らかに症状の出現頻度が増える場合は注意が必要です。
がんの発症により肺の防御機能が低下すると、1回では十分に異物を排出できず、必然的に咳や痰の回数が増えます
2週間以上長引く咳や痰が出ていたり、痰に血液がまじっていたりする場合は医療機関に相談しましょう。
ただし、肺がんになったからといって咳や痰がでるとは限りません。

息苦しさ

十分に酸素が吸えない、または二酸化炭素が排出できなくなると息苦しさが出現します。
肺がんができると、気道が狭くなるため息苦しさを感じやすいでしょう。
また、長年にわたり喫煙をしていた方は、肺胞と呼ばれる場所に有害物質が蓄積し、呼吸に影響を及ぼします。
ほかにも、肺がんの末期になると胸に水が溜まるため、十分に肺が膨らまず呼吸のしにくさにつながります。

発熱

がんの進行に伴い気管支を塞いでしまうことで、閉塞性肺炎と呼ばれる肺炎を引き起こす可能性があります。
病院に受診すると、肺炎は発症しているものの、原因は肺がんであったと判明する方も少なくありません。
発熱が5日間以上続いたり、咳や痰などの呼吸に関する症状も見られたりする方は、医療機関を受診しましょう。

肺がんの末期症状

肺がんの末期になると、がん細胞は肺以外に転移していることが多く、全身へ症状が出現するようになります。

脳転移による頭痛・吐き気

がん細胞が脳に転移すると、脳腫瘍の周囲の組織が大きく腫脹します。
脳の周囲には頭蓋骨があり、体積が決まっているため腫脹すると周りの脳細胞を圧迫します。
そのため、頭蓋骨の内部にかかる圧力が上昇し、頭痛や吐き気などの症状が出現するでしょう。圧力が上昇する症状は、頭蓋内圧亢進症状と呼ばれます。
がんが転移した場所によっては、麻痺や言語障害などを引き起こします。

骨転移による腰・胸などの痛み

肺がんから骨に転移すると、腰や胸などに痛みが生じます
骨転移は約80%の方に症状が出現しますが、がんの大きさや重症度との相関性が必ずあるとはいえません。
一過性の痛みである突発痛と、12時間以上続く持続痛があり、持続痛には放射線治療や鎮痛剤でコントロールが可能なことが特徴です。
一方で突発痛では、現代の治療では十分に疼痛をコントロールすることが困難になります。

呼吸不全

肺がんの末期の状態になると、75〜87%の方に呼吸が困難な感覚が生じます。
なかでも、呼吸不全は低酸素血症と呼ばれる状態であることを意味します。
検査で体内の酸素濃度を検査する客観的な病態です。呼吸が困難な感覚があることは、呼吸不全になっているとは一概にはいえません。
原因はさまざまあり、胸水・気道の狭窄など肺がんによる症状の場合や、抗がん剤などの治療による影響の場合もあります。

全身状態の悪化

がん末期の状態になると、がんの影響は全身におよびます。脳や骨の転移については先述しましたが、消化や排泄に関わる臓器に転移することも少なくありません。
がん細胞は増殖に多くのエネルギーを消費するため、ほかの生命維持に必要な細胞は十分なエネルギーを確保できなくなります。
そのため、栄養を十分に吸収できなくなったり、身体の毒素を排出できなくなったりするでしょう。
徐々に体重の減少や倦怠感の増強など、全身状態の悪化につながります。

肺がん末期の治療法

肺がん末期の方は、化学療法や放射線療法などの治療を行います。
初期の肺がんであれば手術による切除ができますが、末期の状態になると手術でがんを取り除くことは不可能です。
また、治療により必要以上に体力を失う可能性もあるため、治療法は患者さんの状態により変化していきます。

化学療法

化学療法(抗がん剤治療)とは、がん細胞を直接攻撃できる薬剤を用いた治療法です。
服用したり、注射したりして抗がん剤を血液のなかに入れていきます。血流に乗って全身のがん細胞に効果を発揮することが可能です。
ですが、化学療法は末期の肺がんの方のなかでも、全身状態が良好で問題となるような合併症がない方に限られます。

放射線療法

放射線療法とは、がん細胞にピンポイントで放射線を照射する治療法です。
治療効果も高く、副作用も少ないことが特徴です。肺がんから脳転移したがん細胞でも治療ができます。
積極的な治療のような使い方とは異なり、肺がんの症状を緩和したり、予防したりする目的で使用することもあります。

標的療法

標的療法とは、がん細胞だけが持っている生存や増殖に関する物質を標的にする薬物療法です。
精密医療とも呼ばれています。肺がんでは、以下のような遺伝子異常が発見されています。

  • EGFR
  • ALK
  • K-RAS など

遺伝子異常を調べ、異常に合わせて治療することで、より高い効果をえられるでしょう。

免疫療法

免疫療法とは、先述した治療法とは異なり、患者さん自身の免疫が正常にがん細胞に働くようにする治療法です。
がん細胞は免疫細胞に攻撃されないように、がん細胞に対する攻撃を抑え込んでいます。
しかし、免疫治療薬を使用することで、体内の免疫が正常に働けるように手助けすることが可能です。

肺がんの末期症状についてよくある質問

ここまで前立腺がんの特徴・症状・放射線治療などを紹介しました。ここでは「肺がんの末期症状」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。

肺がん末期から完治する可能性はありますか?

甲斐沼孟医師甲斐沼 孟(医師)

肺がん末期の状態から完治する可能性はゼロではありませんが、難しいのが現状です。末期の状態の肺がんはステージ4に分類され、肺がん全体の5年生存率は7.4%です。ほかの部位にも転移が見られており、がんの進行速度や患者さん自身の状態に左右されるでしょう。

肺がん末期の余命はどのくらいですか?

甲斐沼孟医師甲斐沼 孟(医師)

肺がん末期の余命については、断言はできません。治療の有無や患者さん自身の体力などにより変化します。しかし、息が途絶える1ヵ月程前から、倦怠感・食欲不振・呼吸困難などの症状が増悪します。2週間前頃よりせん妄が増加し、数日前になると呼吸時にゴロゴロと音がしたり、不穏になったりすることを覚えておくことが大切です。

編集部まとめ

肺がんを発症すると、呼吸に関する症状が出現することが少なくないでしょう。

早期発見できれば生存率が上がりますが、症状が出現した時にはがんが進行し、末期であることもあります。

咳や痰のような症状が長引く場合は、一度、近隣の医療機関へ受診しましょう。また、肺炎のリスクを減らすには禁煙も重要です。

肺がん末期の症状は呼吸を始め、全身状態は徐々に悪くなってきます。定期的にがん検診を行うなど、早期発見に努めることが大切です。

肺がんと関連する病気

「肺がん」と関連する病気は2個程あります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

関連する病気

  • 慢性閉塞性肺疾患(COPD)
  • 間質性肺炎

慢性閉塞性肺疾患とは、従来には慢性気管支炎や肺気腫と呼ばれていた病気の総称です。長期的な喫煙生活が大きく影響して発症した、肺の炎症疾患です。また、間質性肺炎も喫煙との関りがあり、間質と呼ばれる肺胞の壁が損傷・炎症する病気になります。

肺がんと関連する症状

「肺がん」と関連している、似ている症状は4個程あります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

関連する症状

  • 呼吸困難感
  • 息切れ

呼吸に関する症状が出現し、症状が増悪すると体内の酸素が少なくなる低酸素血症を合併するリスクがあります。2週間以上の咳・痰や、呼吸困難感が出現し始めた方は、早めに近隣の医療機関への受診をおすすめします。

この記事の監修医師