「メラノーマの治療法」はご存知ですか?ほくろとの見分けやステージ分類も解説!
メラノーマ(悪性黒色腫)は皮膚がんの一種です。あまり耳慣れない病名かもしれませんが、ほくろのがんという名前では知られているでしょう。
メラノーマはほくろと見分けがつかない場合があります。また、ほくろの状態に違和感を覚えても、がんに進行している認識がない場合もあるでしょう。
特に、がんだと知らない場合は対処が遅れがちで、治療のタイミングを逃してしまう可能性があります。
そこで本記事ではメラノーマについて解説するとともに、治療法・ステージ分類・ほくろとの見分け方について説明します。
監修医師:
高藤 円香(医師)
目次 -INDEX-
メラノーマとは?
メラノーマは皮膚の色素であるメラノサイトが悪性化し、がんになったものです。メラノサイトは皮膚の中の表皮にある細胞です。
メラノーマは、紫外線や外的刺激の影響を受けて発生することがあるといわれています。症状が現れる部位は、足の裏・手のひら・顔・体など、全身が対象部位になります。なお、日本人は手足に現れる傾向が高いようです。
メラノーマの現れ方は、症状の進行度合いによって異なりますが、黒い薄いシミ・盛り上がった大きなほくろのようなものが挙げられます。初期段階では色も薄く大きさも目立ちにくいです。
しかし、年月をかけて拡大していく傾向があるため、徐々に色が濃くなり膨らみや面積が広がっていきます。メラノーマは発症部位・見た目・予後から4つの病型に分けられます。
- 悪性黒子型(高齢者に発症しやすい・顔面に現れる・10年以上かけて拡大する)
- 表在拡大型(あらゆる年代で発症の可能性がある・下腿に現れることが多い)
- 結節型(あらゆる部位に発症の可能性がある・色素斑はなくしこりのような塊が大きくなる)
- 末端黒子型(壮年期以降に発症しやすい・足の裏や手のひらに現れる・日本人が発症しやすい)
日本人に多く発症するのが末端黒子型です。年月をかけて大きくなり、一定の時期をすぎるとシミが塊やしこりに変化します。結節型はしこりが段々大きくなっていきますが、色素斑は伴わない場合がほとんどです。この病型は予後がよくないとされています。
メラノーマのステージ分類
メラノーマは皮膚がんのなかでも悪性度が高いです。初期症状は一見するとほくろのようで、あまり注意を払わないかもしれません。しかし、進行が早く、転移しやすい病気です。
メラノーマは病状の進行度合いをステージで分類でき、ステージは腫瘍の厚み・潰瘍の有無・症状・転移などで区別されます。そこで、ここからはメラノーマのステージ分類について解説します。
ステージI
ステージIは腫瘍の厚みが2ミリメートル以下の場合です。潰瘍の有無は問われません。リンパ節やほかの臓器への転移がない限り、手術で腫瘍を取り除きます。手術で切除する範囲は、メラノーマの辺縁から1センチ程度になります。
ステージIIA・IIB・IIC
ステージIIは腫瘍の厚さでさらに3段階に分類され、潰瘍の有無も分類の基準になります。区分は次のとおりです。
- ステージIIA:潰瘍あり・腫瘍の厚さ1〜2ミリメートル、潰瘍なし・腫瘍の厚さ2〜4ミリメートル
- ステージIIB 潰瘍あり・腫瘍の厚さ2〜4ミリメートル、潰瘍なし・腫瘍の厚さ4ミリメートル以上
- ステージIIC 潰瘍あり・腫瘍の厚さ4ミリメートル以上
ステージIIも基本は手術で回復を目指します。しかし、IIBやIICで進行度合いや転移が見られる場合は、薬物療法を取り入れるケースもあります。
ステージIII
ステージIIIは腫瘍の厚みに関係がなく、リンパ節や皮膚に転移が見られる状態です。ステージIIIではがんを手術で切除するだけでなく、転移も見られる状態のため、薬物療法も併用されます。
ステージIV
ステージIVは腫瘍の厚みに関係なく、内臓に転移が見られる状態です。手術での治療が難しいケースも多く、その場合は薬物療法や放射線療法が取り入れられます。
メラノーマの治療方法は?
メラノーマは症状が出る部位が、顔や体の見える部分である可能性が高いため、治療方法が気になるところです。主な治療方法は次のとおりです。
- 手術
- 薬物療法
- 放射線治療
治療方法はメラノーマのステージや症状の度合いによって異なります。ここからは、3つの違いについて詳しく解説します。
手術
臓器に転移していない場合は手術が行われます。手術では病変をしっかりと切除します。これは、手術時にまだ転移が見られないステージであっても、メラノーマはリンパ節やほかの臓器に転移するスピードが速いためです。
切除方法は病変の厚みによっても違いがあります。のちにメラノーマがほかの部位へ転移するのを防ぐために、適切な切除方法が選択されるのです。一般的に、病期が進んでいない程、切除箇所は小さいとされています。
薬物療法
薬物療法は、病変が切除不可能な状態だったり、ほかの臓器に転移していたりする場合に選択される治療方法です。また、手術で病変を切除した場合、再発や転移を防ぐために取り入れられます。
薬物療法では、従来使用されていた抗がん剤ではなく、免疫療法・分子標的療法から開発された薬の使用が主流となっています。
放射線治療
放射線療法も薬物療法と同様に、病変が切除不可能な状態だったり、ほかの臓器に転移していたりする場合に選択される治療方法です。
メラノーマは放射線療法に適していない病気です。しかし、転移した部位に痛みが生じたり、脳に転移したりする場合は取り入れられます。
メラノーマとほくろの見分け方
メラノーマはほくろと混同されやすく、特に初期段階は膨らみもなくシミのように見える場合もあるでしょう。また、突然できた良性のほくろを、メラノーマではないかと不安を抱く方もいるかもしれません。
そこで、ここからはメラノーマとほくろの見分け方を説明します。
境界が丸くなくギザギザしている
メラノーマは境目が丸くなくギザギザしています。一方、ほくろは円や楕円のはっきりとした形で整っています。
色の濃淡がある
メラノーマは色に濃淡があります。また、色も単色ではなく、茶褐色や黒色など複数の色が混ざっている可能性が高いです。ほくろは黒や茶色がよく見られる色ですが、混ざり合うことはなくほとんど単色です。
左右非対称
メラノーマは左右非対称がほとんどです。先に説明したように、良性のほくろは円や楕円形で整っていることがほとんどです。メラノーマは形が整っていなく、左右非対称になる点が特徴として挙げられます。
6ミリメートル以上ある
メラノーマの大きさは6ミリメートル以上あります。一方、良性のほくろのほとんどが6ミリメートル以下です。
メラノーマは徐々に大きくなっていく性質があります。最初はほくろと間違えるかもしれませんが、6ミリメートル以上になってきた場合は注意が必要です。
メラノーマの治療についてよくある質問
ここまでメラノーマの特徴・ステージ分類・治療方法などを紹介しました。ここでは「メラノーマの治療」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。
治療方法はどのように決定されるのですか?
高藤 円香医師
病院での診断の流れは次のとおりです。
・視診・触診
・ダーモスコピー
・CT・MRI・PET-CT
ダーモスコピーは、視診や触診よりも詳細にメラノーマかどうかを確認できる機器です。ダーモスコピーの検査の結果、発症の疑いがあったり判別がつかなかったりする場合は、病変の一部を切除して病理検査にだします。メラノーマと診断されると、CT・MRI・PET-CTなどを使用して、がんの進行状態や転移がないかを確認します。その結果、ステージに合った治療方法が決定されるのです。
治療を行う病院の選び方を教えてください。
高藤 円香医師
近年罹患率が増加傾向にあるとはいえ、メラノーマはほかの皮膚がんと同様に、まだ希少な病気として位置付けられています。
治療方法は専門性が高いため、適切な診断・治療を行える皮膚がん専門の医師に相談できる病院を選ぶとよいでしょう。また、専用の治療機器が十分に備わっている大学病院や専門病院での受診をおすすめします。
編集部まとめ
メラノーマは悪性度が高く、進行が速い皮膚がんです。発症は紫外線や外部刺激が原因とされ、日常生活の何気ない行動が原因になる可能性があります。
しかし、初期段階で適切に治療を受けることで、重症化は防げます。違和感を覚えたら、すぐに専門の医師に相談してください。
メラノーマと関連する病気
メラノーマと関連する病気は1個あります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
関連する病気
- 基底細胞癌
上記の病気はメラノーマと同様に皮膚がんです。症状として、黒色のほくろのような大きく盛り上がったできものが現れます。メラノーマと症状は似ているものの、がんの発生場所が異なります。メラノーマはメラノサイトが発生起源であるのに対し、基底細胞癌の場合は表皮の最下層にある基底細胞を構成する細胞が発生源です。
メラノーマと関連する症状
メラノーマと関連する症状は3個程あります。各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
関連する症状
- ほくろ
- シミ
- できもの
メラノーマの症状は上記のものと似ています。特にほくろは良性のほくろのケースもあります。本記事でほくろとメラノーマの見分け方について解説しましたので、参考にしてみてください。また、シミやできものも油断大敵です。メラノーマの初期症状は膨らみがあまりなく、シミと間違える場合もあるでしょう。上記の症状が現れ、違和感を覚えるようであれば、一度専門の医師に相談することをおすすめします。