「皮膚がん手術の入院期間」はどれくらいかご存知ですか?費用も医師が解説!

湿疹が治らなかったりほくろが大きくなってきたりする場合は、皮膚がんの可能性があります。
皮膚がんは、手術で腫瘍を取り除くことで治療が可能です。しかし、転移のスピードが早い場合もあるため、早期発見・治療が大切になります。
今回は、皮膚がん手術での入院期間の具体的な日数・費用・診療内容を解説するので、ぜひ参考にしてください。

監修医師:
高藤 円香(医師)
目次 -INDEX-
皮膚がんとは?
皮膚がんとは一つの病気の名前ではなく、皮膚にできるさまざまながんの総称で、主に皮膚に起こる悪性腫瘍のことをいいます。
メラノーマ・基底細胞がんなどを耳にしたことがあるかと思いますが、これらが病気の名前です。まずは、特徴・原因・発症しやすい人について詳しく見ていきましょう。
特徴
皮膚がんは、内臓がんと違って目に見える場所に発生するため、早期発見が可能なことが特徴です。一般的に皮膚が盛り上がるデキモノのようなものと湿疹・水虫に見えるものとして皮膚に現れます。
しかし初期の場合、単純な皮膚のトラブルと診断されることも少なくありません。軟膏などが処方されても効果が見られず、進行してから皮膚がんが発覚することもあります。
軟膏治療が効果がない場合・拡大していく場合などは、早めに皮膚がんを疑うとよいでしょう。皮膚がんは進行すると、ほかのがんと同様に別の場所に転移してしまうので、不安な場合は皮膚科専門の医師の診断を受けることがおすすめです。
原因
皮膚がんの原因は明確になっていません。また、種類によっても原因は異なります。しかし、そのなかでもより影響を与えていると推測されているのが紫外線です。
その他には、放射線・ウイルス感染・喫煙・ヒソなどの化学物質・慢性的な刺激なども原因とされています。
発症しやすい人
皮膚疾患の病変が皮膚がんとして発症することがあるため、次のような人は発症しやすいです。
- 火傷などの大きな傷跡
- 骨髄炎の傷跡
- お尻の慢性感染病巣
- 特有の慢性皮膚炎症(アトピー・蕁麻疹など)
また、皮膚がんは紫外線が当たる場所に発症することが多いため、紫外線を浴びる機会が多い人も注意が必要です。屋外で働く人・屋外のスポーツをする人などは、紫外線対策を行いましょう。
皮膚がんの手術方法と入院期間の日数の目安
多くの皮膚がんは、手術での治療が選択されます。ほかの臓器への転移がなく根治切除が可能と判断された場合は、手術のみで治療を完了するケースもあります。ここでは、具体的な手術方法や入院期間の目安についてみていきましょう。
手術方法
腫瘍が皮膚の浅い場所にある場合は、腫瘍と腫瘍が広がっている可能性がある周辺の皮膚を切除します。範囲が広くなければ、切除後は単純に縫い縮めて傷を閉じることが可能です。
切除した範囲が広ければ周辺の皮膚を移動させたり、太もも・鼠径部など、切除する皮膚に合わせた部位の皮膚を移植したりする方法で傷口を塞ぎます。見た目・機能性に問題がないように切除した部分を埋める再建術を行うので安心してください。
入院日数の目安
皮膚がんの手術の場合、日帰りで終わるものから3週間以上の入院など、手術方法によって入院日数に差があります。切除範囲が狭く単純縫合で済む場合は、日帰り〜3泊程度です。
周辺の皮膚を切除部位に移動させる皮弁形成を行う場合は3日〜1週間程度、ほかの場所から皮膚を移植する植皮術を行う場合は2〜3週間程度を複数回必要とする場合などがあります。
さらに大がかりな手術になると入院期間は伸びるため、進行具合・手術方法などを医師とよく相談してください。
皮膚がんの手術・入院にかかる費用
皮膚がんの手術は基本的に保険診療となりますが、手術内容によって費用が異なります。例えば、入院の必要がない手術の場合は4万円前後です。
皮弁形成などが必要となり入院となる場合は、10万円前後となるでしょう。さらに、食事・ベッド代などを踏まえると総額で約15万円〜25万円が手術・入院費用の相場となります。
皮膚がんの種類別にみる診療内容
皮膚がんはその種類によって診療内容が異なります。基本的な治療は腫瘍を取り除く手術です。しかし、皮膚がんの種類により適した診療内容が異なります。ここではそれぞれの診療内容を見ていきましょう。
悪性黒色腫(メラノーマ)
悪性黒色腫は、ほくろのがんとも呼ばれている皮膚がんのなかでも代表的なものです。悪性黒色腫はメラノサイトが癌化した腫瘍であり、早期から転移する力があります。そのため、早期に発見し初回治療の手術で切除することが大切です。
がんが表皮の中にとどまっていれば切除だけで治療が完了します。リンパ節などに転移がある場合は、手術後に補助療法を行います。
有棘細胞がん
有棘細胞がんは、表皮の中間層の有棘層の細胞が癌化したものです。初期は湿疹のように見えますが、進行すると盛り上がって出血したり膿がたまり悪臭を放つこともあります。有棘細胞がんは、表皮の中にとどまっていれば転移の可能性は低いです。
しかし、表皮から真皮にがんが広がるとリンパ節に転移しやすくなり、ほかの臓器にまで転移します。表皮の中にとどまっているうちに手術で切除すれば治療は完了です。しかし、有棘がんは周囲の組織を囲むようにリンパ節転移をする特徴があるため手術で取り切ることが難しい場合もあります。
その場合は、手術前に放射線・化学療法を行います。
基底細胞がん
基底細胞がんは表皮で発生します。転移する可能性は低く、表皮の中にとどまっている場合は手術による切除のみで治療が可能です。ただし、再発のリスクが高い特徴もあります。
そのため手術では取り残しがないよう注意しますが、顔に発生することが多いため、見た目・機能性に考慮した再建術が必要です。また、取り残しを避けるために病理検査を行うため、切除と再建を分けて行うこともあります。(もちろん、ほかのがんに関しても大きさなどを考慮し分けて行われることがあります)
1回目の手術でがん細胞が取り切れていれば2回目の手術で再建しますが、1回目の手術で取り残しがあれば2回目の手術で切除を行います。
乳房外パジェット病
乳房外パジェット病は、汗腺のひとつのアポクリン腺から発生するがんです。主に外陰部・肛門周辺・脇の下などに発生します。初期は湿疹のように見え、かゆみ・痛みなどの症状もないため、発見が遅れやすいことが特徴です。
さらに、外陰部にできることが多いため気付きにくいことに加え、受診をためらうことも発見が遅れてしまう要素となります。乳房外パジェット病は、がんが表皮の中にとどまっている場合・真皮まで広がっていてもリンパ節転移がない場合は手術が可能です。
しかし、高齢者に多い疾患で合併症のため手術ができない場合や見た目・機能性を考慮して切除が望ましくない場合があります。その場合は放射線治療が選択され、遠隔転移があれば化学療法が用いられます。
血管肉腫
血管肉腫は、血管の内側の細胞ががん化したもので、まれな病気です。しかし、血管肉腫は進行が早く、1967〜1982年の調査で5年生存率が6.1%と報告されました。
また、症例数も少ないため治療が標準化されていません。そのため、医療機関によって治療方針が異なります。血管肉腫の治療は、基本的に生存期間を伸ばすことが目的です。放射線治療と化学療法を組み合わせて、がんが血管から全身に広がることを防ぎます。
放射線治療と同時に抗がん剤を投与する治療法がよい成績を出していますが、すべての医療機関で受けられるわけではありません。血管肉腫の治療の場合、どのような方針で治療を行うのか医師に確認することが大切です。
皮膚がん手術の入院期間についてよくある質問
ここまで、皮膚がんの手術の入院期間の目安・日数・費用・診療内容などを紹介しました。ここでは「皮膚がん手術の入院期間」についてよくある質問に、メディカルドック監修医がお答えします。
入院期間中に考えられる手術の後遺症について教えてください。
皮膚がんの手術でがん組織の周辺のリンパ節を切除するリンパ節郭清を行った場合、リンパの流れが悪くなるため浮腫やしびれなどの後遺症が起こる可能性があります。症状がよくなるまでに数ヵ月〜数年かかることもあるため、入院期間中にも起こります。
治療費の負担を軽くする方法はありますか?
皮膚がんは主に公的医療保険制度が適用となるため1〜3割の負担で治療を受けることが可能です。また、1ヵ月での支払いが一定額を超えた場合は高額療養費制度が適用されます。高額になることが事前にわかっている場合は、治療前に手続きを行うことで、支払額自体を初めから上限額までに抑えることが可能です。
編集部まとめ
皮膚がんは、がんの種類・進行具合によって手術方法が変わり、入院日数も日帰りから数週間までさまざまです。
早期に発見し、手術ができると入院日数も短くなり費用を抑えることもできます。
気になる皮膚トラブルがある場合や皮膚疾患がなかなか治らない場合は、セカンドオピニオンなども利用して正しい診断を受けてください。
皮膚がんと関連する病気
「皮膚がん」と関連する病気は10個程あります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからメディカルドックの解説記事をご覧ください。
皮膚がんは悪性の腫瘍ですが、これらの病気は良性の腫瘍です。しかし、自然に治ることはなく深刻な病気が潜んでいる場合もあります。皮膚に違和感を覚えたら、楽観視せずに早めに医療機関を受診してください。
皮膚がんと関連する症状
「皮膚がん」と関連している、似ている症状は3個程あります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからメディカルドックの解説記事をご覧ください。
関連する症状
- 湿疹(皮膚炎)
- ほくろ
- あざ
皮膚がんは、見た目に現れるため内臓がんと違って早期に発見しやすいです。しかし、湿疹・ほくろ・あざに見えるため意外と発見が遅れます。処方された軟膏では皮膚トラブルが治らない場合やほくろ・あざが大きくなる場合などは、皮膚がんを疑ってみてください。




