目次 -INDEX-

  1. Medical DOCTOP
  2. 医科TOP
  3. 三大疾病
  4. がん
  5. 「舌がんの初期症状」はご存知ですか?受診の目安やなりやすい人の特徴も解説!

「舌がんの初期症状」はご存知ですか?受診の目安やなりやすい人の特徴も解説!

 公開日:2024/06/10
「舌がんの初期症状」はご存知ですか?受診の目安やなりやすい人の特徴も解説!

舌がんは舌の側面にできやすく、鏡を使って自分で確認できる場所のため早期に発見される傾向があります。

しかし、初期の舌がんは痛みをともなうとは限らず、見た目は口内炎に似ています。そのため、病院を受診するほどではないと判断してしまうこともあるでしょう。

この記事では舌がんの初期症状について、発症しやすい人の特徴・治療方法と併せて解説します。病院の受診目安も紹介しているので参考にしてみてください。

熊谷 靖司

監修歯科医師
熊谷 靖司(歯科医師)

プロフィールをもっと見る
熊谷歯科医院 院長

舌がんとは

舌がんとは口腔がんの一種で、主に舌の細胞ががん化することで発症する疾患です。
口腔がんのなかで最も発生率の高いのが舌がんであり、口腔がん全体の過半数以上を占めるといわれています。
舌がんを含む口腔がんの発症率は1〜2%程度と極めて少なく、日本では希少がんに分類されます。そのため、認知度の低さから早期発見・治療が遅れることも少なくありません。
まずは、舌がんについて正しく理解するために疾患の概要を解説します。

症状

舌がんの症状には硬いしこり・ただれ・口内炎などがあります。
また、白い斑状のザラザラした「白板症」という病変が現れることもあり、この病変ががん化することも珍しくありません。
舌がんの早期では自覚症状に乏しく、がんの進行に伴い痛み・出血・口内悪臭・口内潰瘍などが主な症状として現れます。
これらの症状により、開口障害・舌の運動障害により飲食に支障をきたすこともあるでしょう。

患者数と好発年齢

舌がんは国内では非常に稀ながんであり、2019年時点での患者数は年間約5,700人です。対して、国内に多い胃がんの患者数は年間約120,000人に上ります。
舌がんの発症は男性に多く、好発年齢は50歳〜60歳以降と報告されています。
しかし、近年の高齢化を考えると実際はもう少し発症年齢が高くなっているかもしれません。

生存率

舌がんのステージは、腫瘍の大きさ・リンパ節転移の状態・他臓器転移の有無などに基づき4つのステージ(病期)に分類されます。
2021年の全国がんセンター協議会の調査報告によると、舌がん治療を受けた患者さんのステージ別5年生存率は次のとおりです。

  • ステージ1:約90%
  • ステージ2:約80%
  • ステージ3:約70%
  • ステージ4:約50%

この統計から、早期発見が極めて重要であることは明らかです。一般的に、がんのステージが進行すると生存率は低下します。
特にステージ4の進行がんになると5年生存率の低下は著しく見られますが、個別の治療アプローチにより改善が見込まれるケースもあります。
進行がんであっても、必ずしも手遅れとは限らないことを理解しておきましょう。

舌がんの初期症状

舌がんの典型的な症状は舌側面の硬いしこりです。しかし、初期の舌がんは痛み・出血などの自覚症状に乏しく、見逃してしまうことも珍しくありません。
ここで紹介する舌がんの初期症状の特徴を参考に、舌がんの前兆を意識的に察知することが大切です。

できやすい部位

舌がんの90%以上が舌縁(舌の両側)部分に発生し、次いで、舌下面・舌尖・舌根・舌背の順に発生するといわれています。
幸い、舌は鏡で観察できる場所のため、舌がんの前兆をセルフチェックで発見することは難しくありません。
特に、舌がんの発生率が高まる50歳以降は、毎月1回舌全体を注意深く観察することをおすすめします。

痛みは少ないことが多い

早期の舌がんでは痛みなどの感覚異常をともなわず、がんの前兆に気がつかないことも少なくありません。
明らかな痛み・出血・口内悪臭などを自覚する場合、がんが進行している可能性が高いといえます。
舌がんは急速に進行することもあるため、異変に気付いたら早急に耳鼻咽喉科・歯科口腔外科を受診しましょう。

口内炎に似ているケースも

初期の舌がんは口内炎と見た目が似ており、ただの口内炎と勘違いして受診が遅れることがあります。
舌がんと口内炎を見分けるために、以下の舌がん特有の症状をよく観察してみましょう。

  • 治りの悪い口内炎がある
  • ほとんど痛くない舌の口内炎がある
  • 口内炎の周囲に硬いしこり・できものがある
  • 口内炎が白斑状でザラザラしている

これらの症状が見られる場合、口内炎ではなく舌がんの可能性が考えられます。
ただし、見た目だけで判断するのは難しいため、早めに医療機関を受診することが望ましいです。
耳鼻咽喉科・歯科口腔外科などの専門の医師による精密検査を受けましょう。

舌がんの病院の受診目安は?

舌がんを疑う症状がある方でも、病院に行くほどの重症ではないと感じる場合があります。
受診に迷う方は、次の項目を病院の受診目安にしてください。

  • 2週間以上治らない口内炎がある
  • 粘膜が赤くなったり白くなったりしている部分がある
  • 食べ物が飲み込みにくくなったと感じる

それぞれの症状について詳しく見ていきましょう。

2週間以上治らない口内炎がある

通常の口内炎は一過性であり、多くは数日から10日程度で自然治癒します。
しかし、口内炎が2週間以上改善しない場合、一度耳鼻咽喉科・歯科口腔外科を受診するのが望ましいといえます。
ただし、2週間以上治らない口内炎が必ずしも舌がんや悪性腫瘍の兆候とは限りません。
口内炎と似た症状の疾患は複数存在するため、まずは2週間を目安に、専門の医師に相談することが大切です。

粘膜が赤くなったり白くなったりしている部分がある

舌・歯茎・頬などの口腔粘膜に、白いザラザラした病変である白板症が見られることがあります。
特に舌の白板症は発生頻度が高く、発見された場合は発がん予防のために切除手術が行われることが大半です。
また、ビロード状で鮮やかな赤色の病変を特徴とした紅板症にも注意が必要です。
紅板症の悪性化率は50%前後と高く、一部の症例では既にがん化しているケースもあります。

食べ物が飲み込みにくくなったと感じる

舌は嚥下機能において重要な役割を果たしています。そのため、がんの進行にともない舌の運動機能が低下し、飲食に支障をきたすことがあります。
舌がんの病変が舌根周辺に位置する場合、物理的な障害による飲み込みにくさを感じるかもしれません。

舌がんを発症しやすい人の特徴

舌がんの原因は未解明な部分も多く残されています。
しかし、これまでに明らかになっている発症しやすい人の主な特徴は次のとおりです。

  • 飲酒・喫煙の習慣がある
  • 自分の歯や義歯などが常に舌に当たっている

これらの特徴について詳しく見ていきましょう。

飲酒・喫煙の習慣がある

舌がんを含む口腔がんの主な原因は喫煙・飲酒です。特に喫煙は発症リスクを高める要因であり、口腔がんの約8割が喫煙と関連しています。
タバコに含まれる成分が歯周病やう蝕の原因菌の病原性を強めるため、感染リスクが増加します。
喫煙がさまざまな疾患を引き起こすと知られていますが、特に口腔内への悪影響は顕著です。

自分の歯や義歯などが常に舌に当たっている

舌がんの原因には舌への慢性的な物理接触との関連が指摘されています。
例えば、歯並び・むし歯・義歯などにより、舌の同じ部分に継続的な接触が生じるなどのケースです。
舌の組織が損傷・修復を繰り返すことで遺伝子に異変が生じ、がん細胞が形成される可能性があると考えられています。

舌がんの治療方法

舌は構音・摂食・嚥下などの重要な機能を担っています。そのため、舌がんの治療では病気の根治だけでなく、舌の機能を温存することも重要です。
主に舌がんの治療は病変部分を切除する手術療法が中心ですが、症例によっては放射線治療・化学療法との併用も検討されます。
手術による切除範囲が大きい場合は再建手術が行われることもあります。再建手術は患者さん自身の太もも・腹部などから組織を移植して、舌の欠損部分を補うことが一般的です。
基本的な治療方針は舌がんの病期に応じて検討されますが、最終的には患者さんの病状・希望などから総合的に決定されます。

舌がんの初期症状についてよくある質問

ここまで舌がんの初期症状・生存率・治療方法などを紹介しました。ここでは「舌がんの初期症状」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。

舌がんと口内炎を見分ける方法はありますか?

熊谷 靖司医師熊谷 靖司(医師)

舌がんと口内炎の見た目は似ていますが、舌がんには硬いしこり・白斑など特徴があります。これらの特徴は見分ける目安になりますが、実際には見た目だけで判断することはできないといえます。しかし、2週間以上治らない口内炎の場合、舌がんの初期症状の疑いがあるため注意が必要です。いずれにせよ、自己判断により舌がんの発見が遅れる可能性もあるため、口内に気になる症状がある場合には一度専門の医師に相談しましょう。

舌がんを早期発見する方法を教えてください。

熊谷 靖司医師熊谷 靖司(医師)

舌は自分で見ることができる場所のため、早期に発見しやすいといえます。普段から歯磨きの際などに舌全体を鏡で確認したり、定期的に歯科医院を受診することが早期発見につながります。舌がんには進行が速いタイプもあるため、不安な症状があれば迷わず耳鼻咽喉科・口腔外科を受診することが重要です。

編集部まとめ

舌は発声・食事など、生活に密接に関わる重要な器官です。舌がんの早期発見・治療は生存率だけでなく、治療後の生活の質にも大きく影響します。

舌がんの主な危険因子は、喫煙・飲酒・口腔トラブルであることが明らかになっています。

舌がんの発症率が高まる50歳以降の方はこれらの危険因子を避け、口内のセルフチェック・定期検診を受けるようにしましょう。

舌がんと関連する病気

「舌がん」と関連する病気は6個程あります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

関連する病気

  • 口腔底(口底)がん
  • 頬粘膜がん
  • 下歯肉(下顎歯肉)がん
  • 上歯肉(上顎歯肉)がん
  • 硬口蓋がん

口腔がんのなかで舌がんは発生頻度が多く、舌の側面(側縁部)にがんが発生しやすい部位といわれています。舌に異常を感じた場合、経過を注意深く観察することが重要です。

舌がんと関連する症状

「舌がん」と関連している、似ている症状は10個程あります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

関連する症状

  • しこり
  • 白い斑点
  • 赤い斑点
  • 痛み
  • 出血
  • ただれ
  • 開口障害
  • 舌の運動障害

初期の舌がんは痛みをともなわないことが多いため、がんの前兆が見過ごされやすいです。しかし、明らかな痛み・出血など複数の症状が認められる場合、舌がんが進行している可能性が疑われます。これらの症状が長引く際は早めに医療機関を受診してください。

この記事の監修歯科医師