「子どもの悪性リンパ腫の初期症状」はご存知ですか?進行した場合の症状も解説!
小さな子どもは言葉で伝えることが難しいため、「子どもに何かあったら……」と不安を抱えている方も多いのではないでしょうか。
そのような方に本記事では、子どもの悪性リンパ腫の初期症状・悪性リンパ腫の種類・進行時の症状について詳しく解説します。
また結論からお伝えすると、子どもの悪性リンパ腫は小児がんの中でも、標準的な治療を行うことによって高い確率で治癒が見込める病気です。
子どもの症状で悩んでいる方は、ぜひ参考にしてください。
監修医師:
甲斐沼 孟(上場企業産業医)
目次 -INDEX-
悪性リンパ腫とは?
悪性リンパ腫は、血液細胞のリンパ球ががん化する病気です。人間の血液中には、さまざまな役割を持つ血液細胞があります。
- 細菌やウイルスから体を守る白血球
- 酸素を体の隅々まで運搬する赤血球
- ケガによる出血を止める血小板
悪性リンパ腫は、上記の細菌やウイルスから体を守る白血球の中に存在する、リンパ球ががん化したものです。リンパ球ががん化したものは「リンパ腫」と呼ばれています。
リンパ腫に変異する原因については、明らかになっていません。しかし、何らかの原因でリンパ球の中にある遺伝子が異常な状態となり、リンパ球の寿命や増え方が正常ではなくなることが一因と考えられています。
また、子どもがリンパ腫を発症する一因は、遺伝や免疫不全から起こる可能性が高いです。
白血球は全身をめぐる血液の中に存在している細胞であるため、全身のあらゆる部位で腫瘍が発生するため注意が必要です。
子どもの悪性リンパ腫の初期症状
悪性リンパ腫がどのような病気かを理解したうえで、子どもの悪性リンパ腫の初期症状について解説していきます。
リンパ節の腫れ・しこり
子どもの悪性リンパ腫は、⾵邪のようなリンパ節の腫れ・しこりといった症状や体の痛みが続くといった⼀般的なものが多い傾向にあります。
よくリンパ節の腫れ・しこりが見られるのは以下の部位です。
- 耳の後ろ
- 顎の下
- 足の付け根
- 太もも
- 手足
- 鼻
- 喉
- 生殖器
上記の耳の後ろから足の付け根まではリンパ管が集まるリンパ節の位置になります。さまざまなリンパ管から血液や体液が集まるため、細菌やウイルス感染にかかりやすい場所です。
また、血液の流れが滞ることで腫れることもあります。太ももから生殖器までは筋肉が集まる部位です。
筋肉が厚い部分にリンパ腫が発生するとしこりになります。腫れやしこりはできる場所によって異なるため、注意が必要です。
腫れやしこりは痛みを伴わないことが多い
腫れやしこりは痛みを伴わない傾向にあるため、悪性リンパ腫の判断には⽣検が必要になります。
⽣検とは、⼿術によって腫れているリンパ節の⼀部またはすべてを摘出し、がん細胞かを調べる病理組織診断です。
風邪のような症状で病院を受診すると悪性リンパ腫が見つかったというケースが多く報告されています。
悪性リンパ腫の種類
悪性リンパ腫は大きく4種類があり、骨髄の中にある造血幹細胞で作られた血液細胞は、骨髄系幹細胞とリンパ系幹細胞に分かれています。
白血球はこの骨髄系幹細胞とリンパ系幹細胞のどちらから分化したかによって種類が異なります。リンパ系幹細胞から作り出される白血球はリンパ球のみです。
ただし、そのリンパ球の中でも細胞の性質の違いによって、以下の3種類に分けられます。
- B細胞リンパ腫
- T細胞リンパ腫
- NK細胞リンパ腫
さらにホジキンリンパ腫と非ホジキンリンパ腫に分類され、上記の3つは日本人の90%以上に該当する非ホジキンリンパ腫に分類されます。では、それぞれの種類を解説しましょう。
B細胞リンパ腫
1つ目はB細胞リンパ腫です。
B細胞は細菌やウイルスの情報(抗原)を記憶し、細菌やウイルスに打ち勝つ免疫グロブリン(抗体)を産生します。そのため、免疫反応において重要な役割を担っている体液性免疫細胞です。
B細胞にリンパ腫が発生すると、生体自身の健常細胞や組織と細菌やウイルスの区別が曖昧な状態に陥ります。
最悪の場合には、生体自身の健常細胞や組織を敵と判断して攻撃し、免疫力が著しく低下してしまうのです。
T細胞リンパ腫
2つ目はT細胞リンパ腫です。T細胞は免疫性細胞で3種類あります。
- ヘルパーT細胞
- サプレッサーT細胞
- キラーT細胞
ヘルパーT細胞は、B細胞から形質細胞への分化とサイトカインの産生分泌を促す役割を持っています。
サプレッサーT細胞は、B細胞の分化を抑える役割を持つ細胞です。
キラーT細胞はウイルス感染細胞・移植細胞・腫瘍細胞などの異常な細胞を排除して死滅させる役割を持っています。ただし、キラーT細胞はヘルパーT細胞による抗原感作によって働きはじめるため常に機能しているわけではありません。
細菌やウイルスを攻撃しながら、ほかのリンパ球に働きかける役割をさまざまなT細胞が担っています。
大食細胞であるマクロファージへの抗体産生の促進と抑制も行いますが、リンパ腫が発生すると抗体産生の促進と抑制に異常が生じる可能性が高くなります。
NK細胞リンパ腫
3つ目はNK細胞リンパ腫です。
NK細胞はヘルパーT細胞による抗原感作がなくても、腫瘍やウイルス感染細胞を自然に認識して排除できます。いわば独立した免疫細胞です。
しかしNK細胞にリンパ腫が生じると、腫瘍やウイルス感染細胞を自然に認識できなくなったり、健常細胞や組織を敵と判断して攻撃したりします。
リンパ系幹細胞から作り出されるリンパ球にリンパ腫が生じると免疫不全を引き起こすため注意が必要です。
ホジキンリンパ腫
4つ目のホジキンリンパ腫は、白血球の中のリンパ球に発生するがんです。
腫瘍細胞が増える特徴を持っています。ホジキンリンパ腫は、悪性リンパ腫を発症した割合全体の約5%が該当するとされており、日本人にはあまり多くみられません。
非ホジキンリンパ腫と同様に発症原因はまだ不明な点も多く、これからの医療研究に期待が高まっています。
悪性リンパ腫の進行時の症状は?
次は、悪性リンパ腫の進行時の症状について説明します。進行時の症状を詳しくみていきましょう。
発熱
風邪の症状に似ている悪性リンパ腫は、発熱を引き起こすことがあります。ただし、40度以上の高熱といった体温の決まりはありません。
熱が下がった後に悪性リンパ腫が見つかるケースもあります。原因不明で長期間発熱が続くようであれば、医師に相談しましょう。
体重減少
風邪の症状でよくみられるリンパ節の腫れは喉や顎の下です。また、発熱を伴っている場合には食欲不振が多くみられます。
食欲不振や発熱による脱水症状から体重減少につながるケースが多いでしょう。体重の減少があまりにも顕著にみられる場合には、病院へ受診することが大切です。
寝汗
発熱しているわけでも夏場の暑い時期でもないのに、大量の寝汗をかいている場合には悪性リンパ腫が進行している可能性が高くなります。
寝汗に関しても、なぜ起こるのか原因はわかっていません。寝汗が増えたと感じたら、病院へ相談しましょう。
皮疹・皮膚の腫瘤
悪性リンパ腫が進行すると免疫力が著しく低下します。そのため、皮疹・皮膚の腫瘤がみられる場合があります。
皮疹・皮膚の腫瘤を発症していても、リンパ節に腫れやしこりなどの特徴的な症状が必ず出るわけではありません。
ほかの症状が全くない状態でもX線検査などで偶然悪性リンパ腫が見つかるケースも多くあります。違和感を覚えたら、病院へ受診するように留意してください。
子どもの悪性リンパ腫の初期症状についてよくある質問
ここまで 子どもの悪性リンパ腫の初期症状などを紹介しました。ここでは「 子どもの悪性リンパ腫の初期症状」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。
子どもの悪性リンパ腫を早期発見する方法を教えてください。
甲斐沼 孟(医師)
「悪性リンパ腫の進行時の症状は?」でも先述している通り、子どもの悪性リンパ腫は原因不明な症状を引き起こす傾向にあります。そのため、子どもの体調に違和感を覚えたら速やかに病院へ受診することが悪性リンパ腫の早期発見につながるでしょう。
子どもの悪性リンパ腫は進行が速いのですか?
甲斐沼 孟(医師)
症状の進行具合は、悪性リンパ腫の種類によって異なります。リンパ腫による症状が小さい悪性リンパ腫であれば慎重な経過観察が可能なこともあります。しかし、急激に症状が進行していくため早急な治療開始が必要なものまでさまざまです。悪性リンパ腫の進行具合を正しく判断するためにも、早期発見に努めることが求められています。
編集部まとめ
今回は子どもの悪性リンパ腫の初期症状・悪性リンパ腫の種類・進行時の症状について解説してきました。
悪性リンパ腫にはさまざまな種類があり、症状の進行具合も一概にはいえません。しかし、早期発見と標準的な治療を行うことで、高い確率で治癒が見込める病気です。
不安を抱えている方の参考になれれば幸いです。
悪性リンパ腫と関連する病気
「悪性リンパ腫」と関連する病気は6個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
関連する病気
- ウイルス感染症
- 細菌感染症
- 薬剤性リンパ節症
- 皮膚病性リンパ節症
- がん腫のリンパ節転移
- 白血病
悪性リンパ腫は全身のさまざまな箇所に発症するため、現れる症状も多種多様です。ほかの病気と同じような症状が現れる場合もあるため注意しましょう。体調に異変を感じたら、早めに医療機関を受診して検査を受けてください。
悪性リンパ腫と関連する症状
「悪性リンパ腫」と関連している、似ている症状は5個ほどあります。
各症状・原因・治療法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
悪性リンパ腫の特徴的な症状が「リンパ節の腫れ」です。そのほか、発熱や喉の違和感のような風邪に似た症状が現れることもあります。なかなか治らない症状がある場合には、決して自己判断せずに医療機関を受診しましょう。