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「抗がん剤にはどんな種類」があるかご存知ですか?副作用の強い抗がん剤も医師が解説!

 公開日:2024/03/12
「抗がん剤にはどんな種類」があるかご存知ですか?副作用の強い抗がん剤も医師が解説!

抗がん剤の種類とは?Medical DOC監修医が抗がん剤の種類・副作用の強い抗がん剤・投与する疾患などを解説します。

甲斐沼 孟

監修医師
甲斐沼 孟(上場企業産業医)

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大阪市立大学(現・大阪公立大学)医学部医学科卒業。大阪急性期・総合医療センター外科後期臨床研修医、大阪労災病院心臓血管外科後期臨床研修医、国立病院機構大阪医療センター心臓血管外科医員、大阪大学医学部附属病院心臓血管外科非常勤医師、大手前病院救急科医長。上場企業産業医。日本外科学会専門医、日本病院総合診療医学会認定医など。著書は「都市部二次救急1病院における高齢者救急医療の現状と今後の展望」「高齢化社会における大阪市中心部の二次救急1病院での救急医療の現状」「播種性血管内凝固症候群を合併した急性壊死性胆嚢炎に対してrTM投与および腹腔鏡下胆嚢摘出術を施行し良好な経過を得た一例」など。

「抗がん剤」とは?

抗がん剤とは、がん細胞の増殖過程に働きかけて、主にがん細胞の進行や増殖を妨げる役割を有する薬剤であり、がん細胞の死滅を促進する目的で作られた薬剤です。

抗がん剤の種類

飲み薬

薬物療法には、飲み薬として大腸がんなどを対象に単独の薬剤で治療する場合があります。
また、数種類を組み合わせて治療する場合もあり、作用の異なる抗がん剤を組み合わせることで相乗的に抗がん剤による治療効果を高めることが期待されます。
抗がん剤は、作用の仕方などによって、いくつかの種類に分類されていて、化学物質によってがんの増殖を抑えて、がん細胞を死滅、あるいは破壊する治療を「化学療法」と呼んでいます。
あるいは、がん細胞だけが所有している特徴を分子レベルでとらえて、その特性を標的にした「分子標的薬」を活用して実施する治療を「分子標的治療」と呼称しています。
さらに、乳がん患者などにおいて、がん細胞の増殖に関連する体内のホルモンを調節して、がん細胞が増殖するのを抑える「ホルモン療法(内分泌療法)」も知られています。
飲み薬の抗がん剤に伴う副作用には、吐き気、倦怠感、食欲低下、下痢、手足のしびれなどの自覚症状があります。
また、肝臓・腎臓・骨髄への影響など血液検査でわかる臓器障害なども副作用として挙げられます。
それぞれ副作用が起こる時期も、治療開始後数日以内、1~2週間後、それ以降(1ヵ月以上後)に起こるなど、内容によって異なります。

点滴・注射

血管から点滴や注射によって抗がん剤を投与する場合には、腕の血管など細い静脈に点滴の管を介して入れる方法があります。
また、太い静脈である中心静脈に挿入されたカテーテルを介して投与する方法もあれば、中心静脈に「ポート」という装置を埋め込んで、必要な場合に体外から薬剤を注入できる方法があります。
肝臓がんなどに対しては、特定の臓器に流れる動脈にカテーテルを留置して、血流に乗ってその臓器に集中的に抗がん剤治療を実践する「動注療法」という手段が用いられることもあります。
それ以外にも、治療によっては、悪性胸膜中皮腫などに対して胸腔(肺の周りの空間)内に投与する方法、脳腫瘍や脊髄腫瘍に対して脳脊髄液(脳や脊髄の周りにある液体)に抗がん剤を直接注入することもあります。
実際の治療の方法は、がんの種類や進行の度合い、病期、患者さんの状態などを考慮して検討されます。
特に注射や点滴による抗がん剤治療を行う場合には、“治療の日”と“治療を行わない日”を組み合わせた1~2週間程度の周期を設定して治療を行い、一連の治療として数回繰り返して行われることがあります。
点滴での投与も内服の場合と同様に、抗がん剤投与の途中で治療効果と副作用の有無を評価しながら継続するかどうか判断します。

坐薬

抗がん剤の坐薬の一例としては、テガフール(製品名:フトラフール坐剤)が知られていて、がん細胞をおさえる坐薬であり、主に胃がんや大腸がんなど消化器がんに広く用いられるほか、乳がんや膀胱がんに対する治療に用います。
作用としては、細胞の遺伝情報を持つ核酸(DNA、RNA)の合成を阻害して、がん細胞の増殖をおさえます。
担当医師の判断で各種のがん治療に応用されていて、手術後の補助療法として、再発予防目的に用いることもあります。
直腸粘膜から体内に吸収されたあと、徐々に抗腫瘍作用をもつフルオロウラシル(5FU)に変換されて、抗腫瘍効果を発揮します。
がん細胞の代謝を阻害する作用から広く「代謝拮抗薬」と呼ばれています。
副作用としては、嘔気や便秘などが考えられます。

軟膏

フルオロウラシル軟膏は、皮膚悪性腫瘍(有棘細胞癌、基底細胞癌、皮膚附属器癌、皮膚転移癌、ボーエン病、パジェット病、放射線角化腫、老人性角化腫、紅色肥厚症、皮膚細網症、悪性リンパ腫の皮膚転移)などに対して用いられます。
適量を1日1~2回患部に塗布して、使用します。
重大な副作用としては、皮膚塗布部の激しい疼痛があり、皮膚塗布部の激しい疼痛が認められた場合にはステロイド軟膏を併用するか抗がん剤軟膏の使用を中止することが重要です。

副作用が強い抗がん剤の種類

シクロホスファミド、イホスファミド、ブルスファンなど

正常細胞でも、血液をつくる骨髄の造血細胞や口腔粘膜、消化管粘膜、毛根細胞などは頻繁に細胞分裂をしているため、抗がん剤の作用を受けやすくなります。
造血細胞が傷ついて充分に分裂・増殖できなくなると、赤血球や白血球、血小板などが作られなくなり、貧血や深刻な感染症、出血などを引き起こしやすくなります。
特に、アルキル化剤であるシクロホスファミド、イホスファミド、ブルスファンによるものが高頻度で重篤なものが多いといわれています。
これらの製品は、膀胱毒性、薬剤性出血膀胱炎の原因薬剤及びその代謝産物が腎から尿中に排出されるため、尿中に濃縮されたこれらの物質と膀胱上皮は直接に長時間接することになり、毒性を受けやすいとされています。
それ以外にも、抗がん剤に伴って起こりやすい副作用は吐き気、脱毛、白血球の減少などが挙げられますが、実際の副作用の頻度や重症度は抗がん剤の種類によって違いますし、個人差もあります。
また、傷ついた正常細胞が毛根細胞であれば、抗がん剤による脱毛(抜け毛)、口腔粘膜なら口内炎、消化管粘膜なら吐き気や嘔吐、下痢といった副作用が現れます。
抗がん剤の多くは、その効果を得るためにどうしても副作用が避けられないことがあるため、副作用に関連する適正な情報を得ておくことが重要になります。

イレッサやアフィニトール

多くの分子標的薬で見られる副作用として「間質性肺炎」があります。
間質性肺炎とは、一般的な細菌感染によって引き起こされる肺炎と異なり、原因不明なため特効薬が存在せず、命に直結することがあります。
肺がんに承認された分子標的薬「イレッサ」(一般名:ゲフィチニブ)はその代表例ですし、腎臓がんに承認された「アフィニトール」(一般名:エベロリムス)は、強力な免疫抑制作用があるため、B型肝炎を活性化させるという副作用があります。
分子標的薬でも特徴的な副作用がありますので、副作用とその対策に精通した専門医による処方が望まれます。

抗がん剤を投与する疾患

乳がん

乳がんにおける初期治療における抗がん薬治療は、再発率・死亡率を低下させるために行い、遠隔転移治療における抗がん薬治療は、延命効果を得る、あるいは症状を緩和することでQOL(生活の質)を向上させるために行います。
また乳がん手術後の抗がん薬治療によって再発率、死亡率が低下します。
術後治療では抗がん薬を何種類か同時に使用することで、治療効果が最大になることが臨床研究で明らかになっています。
例えば、アンスラサイクリン系薬剤を含むAC療法(ドキソルビシン+シクロホスファミド)やFEC療法(フルオロウラシル+エピルビシン+シクロホスファミド)などは再発抑制効果が確認されている標準治療の一つです。
ほかにも、タキサン系薬剤(パクリタキセルまたはドセタキセル)を追加することによりさらに再発予防効果が上乗せされますし、TC療法(ドセタキセル+シクロホスファミド)もよく使用されています。
副作用としては、気分不良、嘔気、脱毛などが考えられます。
術後に抗がん薬治療を行うかどうかは、乳がんの性質と再発リスクなど主治医と患者さんが共有して、相談後に決定されます。

肺がん

非小細胞肺がんでは病期に応じて手術や放射線療法と組み合わせて、あるいは単独で薬物療法を行う一方で、小細胞肺がんでは、抗がん剤、免疫チェックポイント阻害薬による治療が中心となります。
抗がん剤を用いて増殖しているがん細胞を直接攻撃する治療では、がん細胞だけを攻撃するだけではなく、正常な細胞にも影響を及ぼすため、抗がん剤の量を増やすと攻撃する力は増しますが、正常な細胞への影響(副作用)も強くなります。
多くは注射薬ですが、一部、経口のお薬もあります。
また、分子標的薬による治療は、ドライバー遺伝子(がん細胞の発生・増殖に直接的に関与する遺伝子)変異を持つがん細胞に狙いを定めて攻撃する治療であり、近年開発が盛んに行われており、国内において使用可能なお薬が増えてきています。
従来では、小細胞がんは抗がん剤で効果が得られやすいのに対して、非小細胞がんはその効果があらわれにくいとされてきましたが、分子標的薬や免疫チェックポイント阻害薬の登場により、非小細胞がんに対する薬物療法の選択肢が大きく広がっています。
免疫チェックポイント阻害薬による治療とは、免疫本来の力を回復させることで、がんを治療する方法です。
「免疫チェックポイント」とは、免疫細胞が暴走して自己免疫疾患やアレルギーを引き起こさないように、免疫細胞が自らを抑制するという仕組みで、がん細胞に対する攻撃を回復させるという作用を有する薬剤です。
免疫チェックポイント阻害薬には、主に免疫細胞の表面にあるPD-1というタンパク質に結合するPD-1抗体阻害薬、あるいはがん細胞の表面にあるタンパク質に結合するPD-L1抗体阻害薬、CTLA-4というタンパク質に結合するCTLA-4抗体阻害薬があります。

「抗がん剤の種類」についてよくある質問

ここまで抗がん剤の種類を紹介しました。ここでは「抗がん剤の種類」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。

乳がんを発症した場合、どのような抗がん剤を投与しますか?

甲斐沼孟医師甲斐沼 孟(医師)

乳がんを発症して、万が一骨転移がある場合には、ゾレドロン酸(製品名:ゾメタ)などのビスホスホネート製剤やデノスマブ(商品名 ランマーク)をホルモン療法薬または抗がん薬と同時に用いることがあります。骨転移に伴う痛みや骨折などの頻度を減少させて、さまざまな症状の進行を遅らせることが期待できます。

抗がん剤の効果が期待できるがんについて教えてください。

甲斐沼孟医師甲斐沼 孟(医師)

抗がん剤治療がよく効くがんもあれば、ほとんど効果を示さないがんもあります。 抗がん剤治療によって、治癒が期待できるがんの種類は、肺がんや乳がん、白血病や悪性リンパ腫など血液のがんが挙げられます。

編集部まとめ

抗がん剤は、悪性腫瘍を薬物で治療する方法です。
抗がん剤は錠剤などの飲み薬、注射(点滴)薬、坐薬、軟膏に大きく分類されます。
これらの薬剤は化学療法の方法や治療方針などによって選択され、患者さんにとって最適なかたちで投与が行われます。
飲み薬や注射薬などいずれの場合においても、一定程度の副作用が出現する可能性が考えられます。
抗がん剤治療では悪性腫瘍だけにとどまらず、健常な細胞にも影響を与えることで心臓などさまざまな臓器の障害を認めることが知られています。
最も代表的な副作用としては、嘔吐症状、脱毛所見、慢性的に続く疲労感などが挙げられます。
抗がん剤の副作用が認められる際はつらいものですが、がん細胞を破壊するという意味合いの治療効果とのバランスを上手に維持することが重要な観点となります。
したがって、抗がん剤の治療を行う際には、治療の効果や抗がん剤に伴う副作用などを含めて遠慮せずに主治医や専門医に相談するように心がけましょう。
今回の情報が参考になれば幸いです。

「抗がん剤の種類」と関連する病気

「抗がん剤の種類」と関連する病気は4個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

消化器科の病気

婦人科の病気

呼吸器科の病気

今回抗がん剤の種類に関連して解説した疾患は上記になります。抗がん剤は非常に種類が多く、またその使用方法なども専門的な知識が必要です。主治医とよく相談しながら治療にあたりましょう。

「抗がん剤の種類」と関連する症状

「抗がん剤の種類」と関連している、似ている症状は4個ほどあります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

関連する症状

  • 嘔気
  • 手足のしびれ
  • 抜け毛
  • 造血抑制

抗がん剤の副作用として代表的なものとして上記が挙げられます。副作用の程度と治療効果を見ながら抗がん剤治療を進めていくことになるので、どのような症状が出ているか、主治医と相談しながら治療を進めてくださいね。

この記事の監修医師