「急性リンパ性白血病の原因」はご存知ですか?症状も解説!【医師監修】
急性リンパ性白血病とは子どもに多い血液のがんの一つで、大人が発症する例は稀です。大人の1年間の発症率は10万人に1人といわれています。
急性リンパ性白血病は原因不明で、骨髄の中で血液が作られる過程に問題が生じ、体にさまざまな問題を引き起こします。
正常な血液の機能が障害されるためさまざまな症状が生じますが、免疫力の低下により肺炎などの感染症状や貧血が主にみられるでしょう。
診断は血液検査や髄液検査により診断されることが多く、治療は抗がん剤を使った入院治療が主になりますが、良好な結果が得られない場合には骨髄移植なども考慮します。
今回は、急性リンパ性白血病について解説します。
監修医師:
甲斐沼 孟(上場企業産業医)
目次 -INDEX-
急性リンパ性白血病とは
急性リンパ性白血病(acute lymphoblastic leukemia: ALL)は血液のがんで、子どもに多く発症します。10万人あたりに年間1人程度発症するといわれています。
子どもでの発症は急性骨髄性白血病に次いで多く、治療をしなければ短期間で命の危険にさらされる病気です。
ヒトの体の中にある血液は、骨髄の中にある造血幹細胞と呼ばれるいわば血液のもとを作る細胞から分化して赤血球・白血球・血小板などが作られます。それぞれの血液細胞の主な働きは以下の通りです。
- 赤血球:主に酸素と結合して細胞に届ける
- 白血球:ウイルスや細菌などの病原体から身体を守る免疫の中枢
- 血小板:出血を止める機能がある
その製造過程である分化の途中で異常が発生し、成長が止まってしまい、正常な血液細胞が作られなくなってしまうのです。この急性リンパ性白血病は、リンパ球と呼ばれる血液細胞の分化途中であるリンパ球に異常が起こるためこのような名前になっています。
急性リンパ性白血病の原因は?
では急性リンパ性白血病の原因は一体どのようなものなのでしょうか。詳しく解説しましょう。
はっきりした原因は不明
血液を作る造血幹細胞やその前駆細胞に遺伝子異常を引き起こす原因としては、ウイルス感染・放射線治療・化学物質・抗がん剤を使用したことがあることなどが考えられていますが、詳しい原因ははっきりとせず、いまだに不明です。
ウイルス感染によるもの
急性リンパ性白血病の原因については明らかではありません。ただし原因として、血液を作る過程で血液細胞の染色体や遺伝子の異常が起こるためではないかと考えられています。
何かのウイルスに感染したことにより、血液細胞の遺伝子に影響が与えられてさまざまな異常が積み重なり、血液細胞の成長が滞って白血病の原因となる可能性があります。
抗癌剤や化学物質によるもの
抗がん剤の治療の影響で、将来的にがんの発症する確率は1〜3%上がるといわれています。そのため、過去に他の臓器に対する抗がん剤治療をおこなった場合にも、二次がんとして起こる可能性があります。
しかし、抗がん剤の使用は生命にも関わるため、二次がんを防ぐ選択として治療を弱めるということはとても難しいでしょう。
放射線治療によるもの
放射線治療により、周囲の組織も被曝し遺伝子異常を起こします。そのため、急性リンパ性白血病の発症以前に何らかの理由で放射線治療を受けた場合には、それらの影響も考えられます。
急性リンパ性白血病の症状
では急性リンパ性白血病の症状とは一体どのようなものなのでしょうか?
急性リンパ性白血病に犯された血液細胞は未熟な状態のため、これらの機能に異常が認められることでさまざまな症状が現れます。具体的にどのような症状が出るのか、解説しましょう。
ふらつきや身体のだるさ
急性リンパ性白血病は血液細胞が新しく作られる過程で障害が起こるものです。血液細胞のうち、赤血球の働きである臓器や細胞に酸素を運ぶという役割が障害されます。
そのため症状としては、ふらつきや身体のだるさといった貧血のような症状が現れることがあります。
貧血・出血が目立つ
前項でもお話ししたように、血液細胞のうち赤血球が作られる過程の障害により赤血球の通常の機能が損なわれます。そのため身体中が酸素不足になり貧血を起こしやすくなります。
また血液細胞の一種である血小板の機能が障害されることにより、出血を止める機能が低下します。そのため出血が止まらず、鼻血・歯肉出血・皮下出血などの出血が目立ちやすくなるのも特徴です。
リンパ節と内臓の腫れ
急性リンパ性白血病では、造血幹細胞という血液細胞のもととなる細胞から成長していく過程において、十分に成長できなかった白血病細胞という細胞ができます。その白血病細胞がリンパ節や内臓に蓄積することにより、腫れたり、しこりを感じることがあります。
またその白血病細胞が、骨髄内に蓄積すると骨に痛みを感じることもあるでしょう。
急性リンパ性白血病の診断について
ではここで、急性リンパ性白血病と診断されるにはどのような検査データが見られるのでしょうか?
例えば血液検査では、白血球の値が異常に多かったり少なかったりと両方の結果が認められます。同時に赤血球・血小板の数は減少していることがあるでしょう。そのため血液検査だけではなく、骨髄検査や染色体検査・遺伝子検査などを行い治療方針を決定します。
今回はこれらの検査について、そして白血病の分類方法についても解説しましょう。
骨髄中の芽球数で判断
診断する際に血液検査でははっきりとしない部分については、骨髄検査も行われます。主に2つの染色法で骨髄中の芽球数を調べます。
- メイギムザ染色法:細胞の形状を観察して未熟な細胞から成熟した細胞までを分類します。芽球数が20%以上だと急性白血病と診断されます。(WHO分類)
- ペルオキシターゼ染色:陽性と判断される芽球が3%未満である場合を急性リンパ性白血病・3%以上の場合に急性骨髄性白血病と診断されます。
急性と慢性・骨髄性とリンパ性では予後や治療法なども異なってくるため、骨髄検査は非常に重要です。
病名をさらに細かく分類することがある
治療方針を決めるため、血液検査と骨髄検査の他に、染色体検査・表面抗原マーカー・遺伝子検査によって細かく分類することがあります。
急性リンパ性白血病の場合には、23対の染色体のうち9番目と22番目の染色体の間で一部が入れ替わったものをフィラデルフィア染色体とよび、この染色体の有無を調べます。フィラデルフィア染色体が見られるかどうかにより、治療方法・予後が大きく変わるため、必要に応じて染色体検査や遺伝子検査などが行われるでしょう。
その他検査も並行して行われる
急性リンパ性白血病では、造血幹細胞から血液細胞への成長が不十分な白血病細胞が脊髄や脳などの中枢神経に蓄積されることがあります。
中枢神経の機能が不十分な場合、運動神経や感覚神経が麻痺してしまう可能性があるため、中枢神経への広がりを判断するために脳髄液検査を行います。脳髄液検査は、腰から脊髄に針を刺して脳脊髄液を採取して行う検査です。
急性リンパ性白血病の原因についてよくある質問
ここまで急性リンパ性白血病の原因・症状・診断などを紹介しました。ここでは「急性リンパ性白血病の原因」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。
急性リンパ性白血病が原因で他の疾患にかかりやすくなりますか
甲斐沼 孟(医師)
急性リンパ性白血病により、本来の白血球の機能である免疫機能がうまく働かず、ウイルスや細菌に感染しやすくなります。またウイルスや細菌に感染した後も、免疫機能が働かずに重症化し、肺炎や発熱などが長引くこともあるでしょう。他にも急性リンパ性白血病により、血液細胞が未熟なままの白血病細胞が神経や脳に蓄積される場合には、顔面神経麻痺や頭蓋内出血を引き起こす可能性も否めません。同様に、脾臓や肝臓などの臓器に蓄積すると機能障害を引き起こし、他の疾患にかかりやすくなります。
ストレスなどが原因でかかりやすくなることがありますか
甲斐沼 孟(医師)
現在、急性リンパ性白血病の原因は不明といわれていますが、生活の中で受けるさまざまなストレスにより遺伝子変異をきたす可能性があります。そのストレスにより造血幹細胞から血液細胞に成長する過程に影響を与え、白血病へと発展する可能性はゼロではありませんが、現在のところ不明であるといわざるをえません。
編集部まとめ
今回は急性リンパ性白血病の原因をはじめとして、その症状・診断などについて詳しく解説いたしました。
心当たりの症状がある場合には早急な対応が必要だということがご理解いただけたかと思います。
急性リンパ性白血病は血液のがんといわれています。そのため診断による早期発見や治療方針の決定がとても重要で、さまざまな検査には大きな意味があるのです。
また二次がんについても知っておくことで、いざとなったときに冷静に医師と相談できるでしょう。
ご自身もしくはご家族やお知り合いなど身の回りで同じような症状に悩まされているという方がいらっしゃったら、早めに医療機関への受診をおすすめします。
急性リンパ性白血病と関連する病気
「急性リンパ性白血病」と関連する病気は3個ほどあります。各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
関連する病気
- 急性骨髄性性白血病
- 慢性骨髄性白血病
- 慢性リンパ性白血病
急性リンパ性白血病は風邪や貧血などの原因を調べる際に見つかることがあるものの、血液のがんだとは自身の症状からは分かりにくいものです。しかし、長引く風邪の症状、貧血、だるさなどの際には医療機関を受診するようにしましょう。
急性リンパ性白血病と関連する症状
「急性リンパ性白血病」と関連している・似ている症状は3個ほどあります。各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
関連する症状
- ふらつきや身体のだるさ
- 貧血・出血
- リンパ節と内臓の腫れ
どの症状をとっても、風邪や疲労などとよく酷似しており、大きな病気が隠れているとわかりにくいものです。注目していただきたいのは頻度と症状の長さです。頻回に長引く場合には急性リンパ性白血病のような大きな病気が隠れている場合もありますので、早めに医療機関を受診しましょう。