FOLLOW US

目次 -INDEX-

  1. Medical DOCTOP
  2. 医科TOP
  3. 三大疾病
  4. がん
  5. 「爪にできるがん・メラノーマの初期症状」はご存知ですか?特徴についても解説!

「爪にできるがん・メラノーマの初期症状」はご存知ですか?特徴についても解説!

 公開日:2024/02/15
「爪にできるがん・メラノーマの初期症状」はご存知ですか?特徴についても解説!

爪のメラノーマとは?初期に現れる症状は何でしょうか?本記事では爪のメラノーマの初期症状について以下の点を中心にご紹介します。

  • ・爪のメラノーマとは
  • ・爪のメラノーマの初期症状
  • ・爪のメラノーマの治療方法

爪のメラノーマの初期症状について理解するためにもご参考いただけますと幸いです。ぜひ最後までお読みください。

高藤 円香

監修医師
高藤 円香(医師)

プロフィールをもっと見る
防衛医科大学校卒業 / 現在は自衛隊阪神病院勤務 / 専門は皮膚科

爪のメラノーマ(悪性黒色腫)は末端黒子型黒色腫

悪性黒色腫は皮膚がんの一種であり、その中でも特に危険性が高いとされています。
このがんはメラニンを生成する細胞であるメラノサイトが異常増殖することによって発生します。悪性黒色腫にはいくつかのタイプがありますが、その中でも「末端黒子型黒色腫」は、足の裏や手のひら、そして爪に発生することが知られています。
爪のメラノーマは日本人に多く見られる病型であり、特に60歳代以降の人に多く発生する傾向にありますが、中には40〜50歳代で発生することもあります。

末端黒子型黒色腫の初期症状

末端黒子型黒色腫の爪における初期症状は爪に縦方向に現れる黒褐色の線が特徴的で、この線は時間が経つにつれて太くなり、色の濃さが増していきます。また、色の不均一性や色むらも出現することがあります。
進行すると爪の構造に変化が生じ、割れや変形が見られるようになり、黒色の色素が爪の範囲を超えて指先に広がることもあります。これは病状が進んでいる可能性を示唆しており、特に爪を超えて指先に色素が広がった場合は、悪性黒色腫の進行を疑うべき重要な兆候です。

メラノーマについて

ここからは、メラノーマのタイプや早期発見・予防について解説します。

メラノーマのタイプ

メラノーマ(悪性黒色腫)は、その発生部位や外観に基づいて、いくつかの異なるタイプに分類されます。

1.末端黒子型黒色腫: 日本人の悪性黒色腫の約40〜50%を占める主要なタイプです。このタイプは、足の裏、手のひら、爪などの末端部に発生しやすく、初期には褐色や黒褐色の平坦な色素斑として現れます。進行すると色むらが出現し、しこりや潰瘍が生じる可能性があります。

2.表在拡大型黒色腫: 白人に多く見られるタイプで、日本人の間でも増加傾向にあります。このタイプは、体幹に発生することが多く、初期には境界が不鮮明な、盛り上がったシミとして現れます。色調は濃淡が混じったまだら状になり、成長は比較的ゆるやかです。

3.結節型黒色腫: 全身のあらゆる部位に発生する可能性があるタイプで、他のタイプに比べ進行が早く、転移しやすいとされています。黒色または濃淡の混じった結節が特徴で、40〜50歳代に多く発見されます。

4.悪性黒子型黒色腫: 日本人には少ない病型で、主に高齢者の顔面に発生します。境界が不鮮明なまだら状の平らなシミとして現れ、長期にわたって拡大していきます。

5.粘膜部黒色腫: 口腔、鼻腔、膣、外陰部、直腸、肛門などの粘膜に発生します。日本人では白人に比べ発生率が高いとされています。

早期発見のためのABCDE基準

悪性黒色腫は、その進行が速く、早期に発見することが非常に重要です。そのために役立つのが、ABCDE基準と呼ばれる5つの観察ポイントです。以下に、それぞれの特徴を簡潔に説明します。

非対称性 (Asymmetry):健康な皮膚の斑点は通常対称的ですが、悪性黒色腫の病変は左右非対称であることが多いです。この非対称性は、病変が正常な皮膚細胞とは異なる方法で成長していることを示しています。

境界の不規則性 (Border irregularity):悪性黒色腫の病変の端はギザギザしており、周囲の健康な皮膚との境界が不鮮明です。これは、病変が周囲の組織に浸透している可能性があることを意味します。

色の多様性 (Color variegation):悪性黒色腫は、黒褐色が主ですが、青、赤、白などの異なる色が混在することがあります。この色の多様性は、病変内のメラニンの分布が不均一であることを示しています。

直径の拡大 (Diameter enlargement):悪性黒色腫の病変は、しばしば直径6mm以上に成長します。この大きさは、病変が深い皮膚層にまで達している可能性があります。

変化の進行 (Evolving lesions):悪性黒色腫の病変は、大きさ、形、色、表面の状態に変化が見られます。この変化は、病変が活発に成長していることを示しており、注意が必要です。

これらのABCDE基準を定期的にチェックすることで、悪性黒色腫の早期発見につながります。皮膚に新しい斑点が現れたり、既存の斑点に変化が見られる場合は、速やかに専門の医師の診断を受けることが推奨されます。早期発見と治療が、悪性黒色腫の予後に大きく影響します。

メラノーマの予防方法

メラノーマは、遺伝的要素と環境要素が複合的に関与して発生するとされています。その中でも、紫外線への曝露は重要な環境要素となります。メラノーマの予防策として基本的なのは、紫外線から肌を守る行動をとることです。特に、日光が直接当たる部位への紫外線対策は重要で、日焼け止めクリームの使用や適切な日陰での保護などを行いましょう。
しかし日本人の場合、メラノーマは日光があまり当たらない足の裏や手のひら、爪などにも発生します。これらの部位は物理的な刺激を受けやすいため、皮膚への刺激がメラノーマの発症にどの程度影響を及ぼすかは、まだ完全には解明されていません。

メラノーマの検査方法

メラノーマの判断と適切な治療をするためには、しっかりと検査を行うことが重要です。ここでは、検査方法について解説します。

ダーモスコピー

ダーモスコピー検査は、皮膚の色素病変を詳細に観察するための特殊な拡大鏡を用いた非侵襲的な診療方法です。皮膚の表面を拡大し、色素の分布やパターンを詳しく調べることで、メラノーマや色素性良性疾患(ほくろ、しみ、血まめなど)の診断が可能となります。
ダーモスコピー検査は、痛みを伴わず、健康保険も適用されます。さらに、デジタル画像を保存し、後で比較ができるので、メラノーマの早期発見・早期治療に役立ちます。メラノーマの疑いがある場合や、色素斑の経過観察が必要とされる場合には、定期的にダーモスコピー検査を受け、色素斑の変化を詳しく確認します。
ただし、ダーモスコピー検査は、皮膚科医が勤務するすべての医療機関で行われているわけではありません。そのため、受診する前に、その医療機関でダーモスコピー検査が可能かどうかを確認することが重要です。また、すべての皮膚病変をダーモスコピーだけで診断することはできないので、確定診断のためには生検が必要となることもあります。

生検

メラノーマの診断は、まず視診とダーモスコピーによる検査から始まります。しかし、ダーモスコピーだけでは診断が確定しない場合、生検が必要となることがあります。
生検は、病変部位の一部または全体を切り取り、顕微鏡で詳しく調べることで診断を確定する手段です。以前は、メラノーマの部分生検が転移を促進する可能性があると懸念されていましたが、最近の研究ではそのリスクはほぼ否定されています。
生検によりメラノーマと診断された場合、次にCTやMRIを用いてリンパ節や内臓への転移の有無を調べます。これらの検査は、メラノーマの診断と治療計画の策定に不可欠です。ただし、全ての病変に対して生検が行われるわけではありません。特に日本では、病変の外観やダーモスコピーの結果から明らかにメラノーマであると判断できる場合、生検は省かれることも多いです。

センチネルリンパ節生検

センチネルリンパ節生検は、特殊な医学用の放射性物質や色素を使用して、がん細胞が最初に流れ込むリンパ節(センチネルリンパ節)を特定し、そのリンパ節を検査する方法です。
センチネルリンパ節への転移の有無は、生存期間に大きな影響を及ぼすことが知られています。そのため、原発巣の厚さが0.8mm以上でCTによりリンパ節腫大が確認されていないメラノーマの場合、センチネルリンパ節生検が推奨されています。この検査により早期の転移を発見し、正確な病期を決定することが可能となります。
また、センチネルリンパ節生検によりセンチネルリンパ節に転移がないことが確認された場合、リンパ節郭清(リンパ節の全摘出)を行う必要がないと判断されます。

メラノーマのステージごとの治療法

メラノーマは、TNM分類によって4つのステージに分類され、そのステージごとに治療法が異なっています。以下、ステージごとの治療法を解説します。

ステージⅠ

ステージⅠのメラノーマの治療方法は、腫瘍とその周辺1〜2cmの皮膚を含めて切除し、必要に応じてセンチネルリンパ節生検を行うこともあります。リンパ節転移が陽性の場合は、更なる治療が必要となる場合があります。

ステージⅡ

ステージⅡのメラノーマの治療方法は、腫瘍周辺2cmの範囲での広範な切除が必要となります。場合によっては植皮が必要になることもあります。また、ステージIと同様にセンチネルリンパ節生検を実施し、リンパ節転移が陽性であれば、更なる治療が検討されます。

ステージⅢ

ステージⅢのメラノーマの治療方法は、リンパ節転移の陽性、明確な地域リンパ節の関与、衛星転移やin-transit転移の存在などに基づき、治療方針が詳細に決定されます。通常は広範な切除が行われ、リンパ節陽性の場合は定期的な検査や、必要に応じてリンパ節郭清術や薬物療法が検討されます。また、地域リンパ節の関与が明らかな場合は放射線治療や薬物療法が検討されることもあります。

ステージⅣ

ステージⅣのメラノーマは、がんが他の部位、例えば脳、肺、肝臓、消化管、骨などに転移している状態を示します。この段階では、がんの厚さや潰瘍(組織が傷つき欠損している状態)の有無、リンパ節への転移の有無は考慮されません。
ステージⅣのメラノーマの治療では、主に薬物療法が第一選択となります。遺伝子検査でBRAF遺伝子変異が確認された場合、分子標的薬の使用が一般的に推奨されます。それ以外の場合では、免疫チェックポイント阻害薬の使用が考慮されます。

メラノーマの転移

転移とはがん細胞が体内を移動し、新たな場所で増殖する現象を指し、メラノーマの転移には、「リンパ行性転移」と「血行性転移」の2つのタイプがあります。以下、詳しく解説します。

リンパ行性転移

リンパ行性転移はがん細胞がリンパ管を通じて転移するもので、メラノーマでは比較的早い段階から発生することが知られています。具体的には、腫瘍組織の近くにあるリンパ節に転移する可能性が高く、患者さんの約4分の1にリンパ節転移が見られます。例えば、足のつま先から発生したメラノーマの場合、リンパ行性転移は足の付け根(鼠径部)のリンパ節に流れ込むことが一般的です。

血行性転移

血行性転移とはがん細胞が血流に乗って体内を移動し、腫瘍組織から離れた別の臓器に到達し、そこで増殖する現象を指します。メラノーマの場合、特に脳、肺、肝臓、消化管などへの転移がよく見られます。これは遠隔転移とも呼ばれ、がんの進行を示す重要な指標となります。

爪のメラノーマについてよくある質問

ここまで爪のメラノーマを紹介しました。ここでは爪のメラノーマについてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。

爪にできるメラノーマの特徴はなんですか?

高藤 円香医師

爪にメラノーマが発生した場合、爪が茶色く透けて見え、さらに、爪の縦の線に沿って黒褐色の筋が現れ、徐々に筋の幅が広がり、色が濃くなり、色むらも出てきます。進行すると、爪が割れたり変形が見られる場合、黒色の色素が爪から外側に広がることもあります。特に、爪を越えて指先に色素が広がった場合は、注意が必要です。これらの症状が見られた場合は、専門の医師の診察を受けることをおすすめします。

爪のメラノーマはどの年齢層に多いですか?

高藤 円香医師

爪のメラノーマはさまざまな年齢層で発生しますが、一般的には40〜50歳の間に最も頻繁に発生します。しかし、日本人のメラノーマの死亡数は過去40年間で約4倍に増加しており、これは紫外線の影響と高齢化が一因とされています。メラノーマの発症は30〜50歳代と60〜70歳代の2つのピークがあります。メラノーマは若年層でも発症することが特徴的です。

まとめ

ここまで爪のメラノーマの初期症状についてお伝えしてきました。爪のメラノーマについての要点をまとめると以下のとおりです。

⚫︎まとめ

  • ・悪性黒色腫にはいくつかのタイプがあり、その中でも「末端黒子型黒色腫」は、足の裏や手のひら、そして爪に発生する
  • ・爪のメラノーマの初期症状は、爪に縦方向に現れる黒褐色の線が特徴的で、この線は時間が経つにつれて太くなり、色の濃さが増していく
  • ・爪のメラノーマは、TNM分類によって4つのステージに分類され、そのステージごとに治療法が異なる

メラノーマと関連する病気

メラノーマと関連する病気は2個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法などの詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

具体的な症状や治療法については、担当の医師と相談しましょう。

メラノーマと関連する症状

メラノーマと関連している、似ている症状は6個ほどあります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

関連する症状

  • 黒色調の色素斑
  • 色素斑が左右非対称の不規則な形状
  • 色素斑の色調の濃淡不整
  • 色素斑の境界の不均一性
  • 隆起性病変
  • 潰瘍性病変

これらの症状が持続する場合、または新たにあらわれた場合、医師の診察を受けることが大切です。

この記事の監修医師