「良性のほくろとメラノーマ」の見分け方はご存知ですか?発症しやすい部位も解説!
良性のほくろとメラノーマについてご存じですか?
本記事では、良性のほくろとメラノーマについて以下の点を中心にご紹介します!
- ・良性のほくろとメラノーマの見分け方
- ・メラノーマと診断するために必要な検査
- ・メラノーマの治療法
良性のほくろとメラノーマについて理解するためにもご参考いただけると幸いです。
ぜひ最後までお読みください。
監修医師:
高藤 円香(医師)
目次 -INDEX-
ほくろとメラノーマ(悪性黒色腫)について
ほくろとメラノーマ(悪性黒色腫)は、見た目が似ている場合がありますが、全く違うものです。ほくろは皮膚の色素細胞が集まってできた良性の斑点で、メラノーマは色素細胞ががん化した悪性腫瘍であり、非常に悪性度の高いがんであるため早期発見・早期治療が重要です。
メラノーマの特徴は、以下の「ABCDE」という基準に則って見分けられます。
A(Asymmetry):対称性を意味します。
B(Border):境界が明瞭であるか、あるいは不規則でぼんやりしているかを判断します。
C(Color):色が均一か、あるいは均一でなく様々な色が混ざっているか見比べます。
D(Diameter):大きさを意味します。直径が6mm以上が判断のポイントとなります。
E(Evolution):形や色、大きさなどの変化を意味します。
良性のほくろとメラノーマの見分け方
上述の「ABCDE」の基準に則って、良性のほくろとメラノーマの見分け方について解説します。
良性のほくろの特徴
良性のほくろの特徴は以下のとおりです。
A(Asymmetry):ほくろは左右対称の形をしています。
B(Border):ほくろは周囲の皮膚との境界が明瞭であり、はっきりと区別できます。
C(Color):ほくろは均一な色をしています。
D(Diameter):ほくろは直径6mm以下のものがほとんどです。
E(Evolution):ほくろの形や色、大きさはあまり変化しません。
メラノーマの特徴
皮膚がんの一つであるメラノーマの特徴は以下のとおりです。
A(Asymmetry):メラノーマは左右非対称でいびつな形をしています。
B(Border):メラノーマは境界不明瞭であったり、ギザギザしていたりします。
C(Color):メラノーマは色ムラがあり、黒や茶色だけでなく、赤や青、白などの色が混ざっています。
D(Diameter):メラノーマは直径6mm以上になることが多く、時間とともに大きくなります。
E(Evolution):メラノーマは形や色、大きさなどが変化します。また、出血や痛み、かゆみなどの症状が出ることもあります。
メラノーマは、早期から他の臓器に転移することがあります。転移すると、以下のような症状が出ることがあります。
体重の減少や食欲不振などの全身症状
転移した臓器の機能障害による症状(例:肺に転移すると咳や呼吸困難、肝臓に転移すると黄疸や腹水など)
転移した部位にしこりや痛みが出る
メラノーマと診断するために必要な検査
一見似ている良性のほくろとメラノーマですが、どのような検査でメラノーマと診断されるのでしょうか。
ダーモスコピー
メラノーマと診断するために必要な検査の一つがダーモスコピーです。
ダーモスコピーとは、ダーモスコープという特殊な拡大鏡を使って皮膚の病変部を詳しく観察する方法です。ダーモスコープはエコージェルや偏光レンズで光の乱反射を抑えて、病変部を10〜30倍に拡大して見られます。この検査は痛みを伴わない簡単なもので、病変部の色素沈着や血管の状態などをチェックできます。
ダーモスコピーでメラノーマかどうかを見分けるポイントは、指紋の部分に色素があるかどうかです。ほくろは指紋の溝に沿って色素がありますが、メラノーマは指紋の盛り上がった部分に色素があります。このように、ダーモスコピーはほくろやシミとメラノーマを区別するのに役立ちます。
ダーモスコープには、以下のような種類があります。
ポラライズドダーモスコープ:偏光レンズを使って、皮膚の深部まで観察できるタイプです。エコージェルを使わなくてもよいので、手軽に使えます。
ノンポラライズドダーモスコープ:偏光レンズを使わないタイプです。エコージェルを使って皮膚に密着させる必要がありますが、皮膚表面の色素沈着や血管の状態をより鮮明に見られます。
デジタルダーモスコープ:画像をデジタル化して、パソコンやスマートフォンなどで見られるタイプです。画像を保存したり、拡大したり、色調を変えたりできます。
皮膚生検
メラノーマと診断するために必要な検査の一つが皮膚生検です。皮膚生検とは、病変部の一部または全部を切り取って顕微鏡で調べる検査です。この検査によって、メラノーマの確定診断や腫瘍の厚さを把握できます。皮膚生検は、ダーモスコピー検査でメラノーマが疑われる場合や、診断が明らかでない場合に行われます。病変全体を切除する計画が立っている上での生検が推奨されています。
これは、メラノーマの転移を防ぐためや、治療方針を決めるために必要だからです。
皮膚生検で切除した組織は、病理組織学的な検討をし、顕微鏡で詳しく観察されます。病理医は、色素細胞の形や分布、腫瘍の厚さや潰瘍の有無、リンパ管や血管への浸潤などをチェックします。これらの情報は、メラノーマの病期や予後、治療選択に重要な役割を果たします。
皮膚生検には、以下のような種類があります。
全切除生検:病変部全体を切除して調べる方法です。全体を一度でぬいよせられる場合に行われます。
部分切除生検:病変部の一部を切除して調べる方法です。病変部が大きく、全切除が困難な場合や、切除による傷跡が気になる場合に行われます。部分切除生検を行った場合は、メラノーマと診断されたらできるだけ早く全切除を行う必要があります。
パンチ生検:円筒状の刃物で病変部の一部を切り取って調べる方法です。病変部が平坦で、部分切除が困難な場合に行われます。パンチ生検を行った場合も、メラノーマと診断されたらできるだけ早く全切除を行う必要があります。
画像検査
メラノーマと診断するために必要な検査の一つが画像検査です。
画像検査とは、X線や磁気、超音波などを使って体内の状態を画像で見る検査です。画像検査は、メラノーマが他の部位に転移していないかどうかを調べるために行われます。転移の有無はメラノーマの病期や予後、治療選択に影響します。
画像検査は以下から適切なものが選択されます。
超音波検査:体に超音波を当てて、その反響で体内の状態を調べる方法です。主に、腹部や首のリンパ節の転移を調べるのに用いられます。
CT検査:X線を使って、体の断面を撮影する方法です。全身の転移を調べるのに用いられます。造影剤を使うこともあります。
MRI検査:磁気を使って、体の断面を撮影する方法です。脳や脊髄の転移を調べるのに用いられます。
PET検査:検査薬を体内に注射し、がん細胞に目印をつけて撮影する方法です。全身の転移を調べるのに用いられます。
画像検査は、通常は病院で行われます。検査の前には飲食や服用薬の制限などがあるため、医師の指示に従ってください。検査の際には金属製のアクセサリーや歯科用の装置などを外す必要があります。検査の時間は検査の種類や目的によって異なりますが、数分から数時間かかる場合があります。
メラノーマの治療法
メラノーマの治療法にはどのようなものがあるかご存知ですか?メラノーマの病期に応じて治療法が選択されます。以下に詳しく解説します。
外科手術
外科手術とは、メラノーマの病変部を切り取る方法です。この方法は、メラノーマが他の臓器に転移していない場合や、転移巣が少なくて切除可能な場合に行われます。
外科手術の目的は、メラノーマの病変部をできるだけ広く切除して、再発や転移を防ぐことです。しかし、メラノーマは周囲に目に見えない小さな転移があることが多いため、病変部だけでなく、その周辺の正常な皮膚も一緒に切除します。切除範囲や深さは、メラノーマの厚さや部位によって異なりますが、一般的には病変部の端から約1〜2cm外側までが切除されます。
外科手術では、メラノーマが最初に転移するリンパ節にも注意が必要です。このリンパ節をセンチネルリンパ節と呼び、センチネルリンパ節に転移があるとその先のリンパ節にも転移している可能性が高くなります。そのため、センチネルリンパ節生検という検査を行って、転移の有無を調べます。この検査は検査薬を病変部に注射して、最初に流れ込むリンパ節を特定し、そのリンパ節を切り取って顕微鏡で調べる方法です。
センチネルリンパ節生検で転移が見つかった場合は、その領域のリンパ節を広範囲に切除するリンパ節郭清という手術が行われることがあります。リンパ節郭清は転移を防ぐと考えられていますが、手足にむくみやしびれが起こる副作用もあります。
薬物療法
薬物療法とは、薬を使ってがん細胞の増殖や転移を阻止する方法です。薬物療法は、手術ができない場合や手術後に転移や再発を予防する場合に行われます。
薬物療法には、以下のような種類があります。
免疫チェックポイント阻害薬:免疫システムのブレーキを外して、がん細胞に対する攻撃力を高める薬です。点滴で投与されます。メラノーマに対しては、抗PD-1抗体や抗CTLA-4抗体と呼ばれる薬が使われます。単剤療法や併用療法があります。
分子標的薬:がん細胞の増殖に関わるタンパク質や遺伝子をターゲットに攻撃する薬です。経口で服用します。メラノーマに対しては、BRAF遺伝子変異がある場合に、BRAF阻害薬やMEK阻害薬と呼ばれる薬が使われます。そして、併用療法のみとなります。
抗がん剤:細胞分裂を阻害することで、がん細胞の増殖を抑える薬です。点滴や経口で投与されます。メラノーマに対しては、ダカルバジンやナブパクリタキセルと呼ばれる薬が使われます。単剤療法や併用療法があります。
インターフェロン:免疫システムを活性化することで、がん細胞の増殖を抑える薬です。皮下注射や筋肉注射で投与されます。メラノーマに対しては、インターフェロンαと呼ばれる薬が使われます。単剤療法があります。
放射線療法
放射線療法とは、放射線を使ってがん細胞を破壊する方法です。放射線療法はメラノーマに対しては感受性が低いとされているため、一般的には手術や薬物療法による経過が望ましくない場合や、手術ができない場合に使われます。
放射線療法には、以下のような種類があります。
X線や電子線:一般的に行われる放射線療法で、外部からX線や電子線を照射する方法です。メラノーマに対しては、骨転移や脳転移などで使われることが多く、痛みを緩和する効果が見込まれます。
速中性子線や陽子線、重粒子線:先進医療として限られた施設で実施されている放射線療法で、特殊な放射線を照射する方法です。メラノーマに対しては、X線や電子線よりも影響力が大きいとされていますが、現状は保険適用外です。
ガンマナイフやサイバーナイフ:定位放射線治療と呼ばれる放射線療法で、脳に転移したメラノーマに対して、高精度に放射線を照射する方法です。メラノーマに対しては、よく用いられ、予後を延長する可能性が示されています。
メラノーマを予防するために
メラノーマを予防するためには、以下のようなことに注意しましょう。
紫外線対策をする:メラノーマの原因の一つが紫外線です。紫外線は、皮膚の色素細胞(メラノサイト)にダメージを与えて、がん化を促進します。紫外線対策としては、日焼け止めクリームを塗る、長袖や帽子などで皮膚の露出を避ける、日傘やサングラスを使うなどがあります。特に、日差しが強い昼間の時間帯は、屋外に出るのを控えるのが望ましいです。
ほくろやシミの変化に注意する:メラノーマは、ほくろやシミから発生することがあります。ほくろやシミに、上述で紹介した「ABCDE(左右非対称になる、輪郭がギザギザになる、色むらがある、大きさが6mm以上になる、大きさや色・形・硬さなどが変化する)」の変化があった場合は、メラノーマの可能性があるため、早めに皮膚科を受診してください。
定期的に検診を受ける:メラノーマは、早期発見すれば治癒率が高いです。定期的に皮膚の自己チェックを行うことが大切ですが、自分では見えない部位や見落としもありますので、皮膚科での検診もおすすめします。ダーモスコピー検査という方法で、皮膚の状態を詳しく観察できます。メラノーマのリスクが高い方(白人や色白の方、ほくろが多い方、家族にメラノーマの方がいる方など)は、特に定期的な検診を受けるようにしましょう。
メラノーマについてよくある質問
ここまでメラノーマを紹介しました。ここではメラノーマについてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。
ほくろがメラノーマに変わることはありますか?
高藤 円香医師
ほくろとメラノーマは、ともに色素細胞が関係しているため、見た目が似ていることがあります。しかし、ほくろがメラノーマに変わることはありません。ほくろは、色素細胞が増える良性のできものです。メラノーマは、色素細胞が悪性化した悪性のできものです。
ほくろは生まれつきのものや子供のときに生じるもの、大人になってから生じるものがあります。ほくろの数や大きさは、遺伝や紫外線の影響などによって変化することがありますが、ほくろ自体は安定しています。メラノーマは、ほくろの中や周辺から発生することもありますが、ほくろとは別の部位から発生することも多くあります。メラノーマは、急速に増殖や転移をすることがあり、早期発見・早期治療が重要です。
メラノーマができやすい部位はどこですか?
高藤 円香医師
メラノーマは全身のどこにでも発生する可能性がありますが、できやすい部位は人種や性別によって異なります。一般的には、以下のような傾向があります。
白人:紫外線による影響が大きいと考えられており、直射日光がよく当たる場所にメラノーマができやすいです。男性では背中や胸、女性では下肢に多く発生します。
日本人:紫外線に当たりにくい部位にメラノーマができやすいようです。特に、足の裏に発生することが最も多く、約30%が足の裏に発生します。そのほか、手のひらや爪、顔や体幹にも発生します。
粘膜:メラノーマは、数%の頻度で粘膜に生じることがあります。粘膜とは、眼球や鼻や口の中、肛門部などの内側を覆っている薄い組織です。粘膜型メラノーマは、症状が現れて初めて診断されるので進行していることが多いとされています。
編集部まとめ
ここまで良性のほくろとメラノーマについてお伝えしてきました。
良性のほくろとメラノーマの要点をまとめると以下の通りです。
⚫︎まとめ
- ・良性のほくろとメラノーマを見分ける際にはA(Asymmetry):左右非対称になる、B(Border):輪郭がギザギザになる、C(Color):色むらがある、D(Diameter):大きさが6mm以上になる、E(Evolution):大きさや色・形・硬さなどが変化するを意味するABCDEがポイントとなる
- ・メラノーマと診断する際にダーモスコピー、皮膚生検、画像検査などを用いることが多い
- ・メラノーマは病期に応じて外科手術、薬物療法、放射線治療などから治療法が選択される
メラノーマと関連する病気
メラノーマと関連する病気は1個あります。
各病気の症状・原因・治療方法などの詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
皮膚科の病気
- 基底細胞癌
具体的な症状や治療法については、担当の医師と相談しましょう。
メラノーマと関連する症状
メラノーマと関連している、似ている症状は6個ほどあります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
関連する症状
- 形が非対称である
- 色にむらがありまだらである
- 大きさが6mmを超えて大きくなる
- 縁がギザギザで形が崩れている
- 黒い斑が浮いてきたり硬くなったり潰瘍ができたりする
- 形や大きさ、色調が変化している
これらの症状が持続する場合、または新たにあらわれた場合、医師の診察を受けることが大切です。