「多発性骨髄腫(血液のがん)の治療方法」はご存知ですか?原因・症状も解説!
多発性骨髄腫(たはつせいこつずいしゅ)とは、骨髄に存在する形質細胞とよばれる血液細胞の1つが、悪性に変化して増殖する病気です。
増殖した悪性の形質細胞が腫瘍化、いわゆるがん化していくと、骨が溶けることに伴って骨痛が生じたり骨折しやすくなったりします。
多発性骨髄腫には骨病変だけでなく、貧血や腎機能の低下などがみられる場合もあります。加齢に伴って発症リスクが高くなる、この多発性骨髄腫の発症原因や症状は一体どのようなものがあるのでしょうか。
本記事では、多発性骨髄腫の原因・症状・治療方法について詳しく解説していきますので、ぜひ参考にしてください。
監修医師:
甲斐沼 孟(上場企業産業医)
目次 -INDEX-
多発性骨髄腫の原因
多発性骨髄腫はどのような原因で発症するリスクが高まるのでしょうか。実は、多発性骨髄腫の正確な原因は未知の領域にあります。
- 遺伝
- 年齢
- 性別
- 免疫異常
- 生活環境
上記は、多発性骨髄腫の発症リスクを高める可能性として挙げられるものです。
1つ目は遺伝です。多発性骨髄腫が家系で発症しているケースもあるため、遺伝が発症リスクを高めているのではと考えられています。加齢に伴って発症率が高いことも報告されているため、年齢も発症原因に含まれるといえるでしょう。
ほかにも、男性は発症リスクが高いことも示唆されています。多発性骨髄腫の発症リスクを高める可能性として挙げられている5つは、発症率の統計をみても原因として有意であると考えられるでしょう。
多発性骨髄腫の症状
多発性骨髄腫は、健康診断をきっかけとして発見されるケースも少なくありません。さらに、多発性骨髄腫と診断された方の多くは、60歳以上です。些細な症状にもいち早く気づけるよう、ぜひ参考にしてみてください。
息切れ
少し動いただけで息切れする方、要注意です。高齢の方になると、筋力が衰えていることによる息切れだと認識してしまう傾向にあります。すぐに息切れすることが増えたと感じた場合には、速やかに病院へ受診しましょう。
動悸
貧血から引き起こされる動悸は、多発性骨髄腫をすでに発症している可能性が高いといえます。実際に多発性骨髄腫と診断された方のうち、20〜30%が動悸を感じていたことが判明しています。
- めまい
- 立ちくらみ
- 疲れやすい
上記の症状と動悸が一定期間で起こる場合には、病院へ受診することをおすすめします。
歯茎からの出血・鼻血
多発性骨髄腫は、出血が症状としてみられます。
理由としては、血小板の減少によって小さな傷でも出血しやすい傾向にあるからです。また、出血をとめる役割の血小板が減少することから、青あざができやすくなったり出血が止まらなかったりすることがあります。
発熱・倦怠感
血液に異常をきたす多発性骨髄腫は、免疫力を低下させることが示唆されています。そのため、発熱や倦怠感を引き起こす可能性が高いでしょう。体調不良が続く場合には、かかりつけ医に相談することをおすすめします。
多発性骨髄腫の治療方法
では多発性骨髄腫を発症した場合に、どのような治療方法を行うのかについてお伝えしていきましょう。
- 化学療法
- 放射線療法
- 自家末梢血幹細胞移植療法
- 支持療法
上記4つの治療方法が存在します。それぞれの治療方法の特徴を知ったうえで、かかりつけ医と治療方針を相談してみましょう。
化学療法
化学療法は薬物療法ともよばれており、医療の研究によって多発性骨髄腫に効果的とされる薬剤が増えてきています。近年では、主に5種類の特徴で分類されています。
- プロテアソーム阻害薬
- 免疫調整薬
- 抗体薬
- アルキル化剤
- ステロイド薬
上記の5種類は、大きな薬剤の特徴として分類されているものであって、薬剤そのものではありません。たとえば細胞内の酵素の働きを抑える分子標的薬であるプロテアソーム阻害薬の場合、ボルテゾミブ・カルフィルゾミブ・キサゾミブなどが主な薬剤となります。
これらは皮下注射・点滴投与・内服で使用すると認識しておいてください。5種類にはそれぞれ特徴があるため、治療の状況に応じて薬剤を変更することもあると留意しておきましょう。
放射線療法
悪性腫瘍やがんといえば、放射線療法を思い浮かべる方も多いのではないでしょうか。そのイメージの通り、悪性腫瘍において放射線療法は一般的な治療方法です。
放射線療法では、主に腫瘍の縮小と痛み緩和のために使用されます。放射線は骨髄腫細胞に高いパフォーマンスを発揮するため、少ない範囲の骨病変には少量の放射線照射でも効果が期待できるでしょう。
しかし、増殖した悪性の形質細胞が広範囲な場合には、化学療法と並行して治療を行う可能性が高いといえます。
自家造血幹細胞移植療法
自家造血幹細胞移植療法の名前ともなっている「造血幹細胞」とは、細胞分裂して自ら血球を増殖と維持する働きとして骨髄の中に存在している細胞です。
基本的には骨髄の中に存在している造血幹細胞は、白血球の増加を促す薬を投与するなどの特殊な状況において、骨髄だけでなく全身の血液中に流れる傾向にあります。そのため、患者さんの血液中に流れている造血幹細胞を摂取し、大量化学療法を用いて造血幹細胞を増殖させます。
増殖した造血幹細胞を再び患者さんに投与することで、造血機能を回復させるための治療方法です。ただし、自家造血幹細胞移植療法にはいくつかの注意点があります。
- 化学療法や全身の放射線治療など移植前処置が必要であること
- 通常の治療方法よりも非常に強い副作用や合併症を生じる可能性が高いこと
- 65歳未満であること
- 重い感染症がないこと
- 肝・腎・心機能に障害などの問題がないこと
上記の注意点を踏まえたうえで、複数の化学療法や放射線療法を組み合わせた導入療法を、3〜4コース受ける必要があることも心にとめておいてください。1コースは約3週間とされているため、自家造血幹細胞移植療法を受けるには3か月ほどの期間が必要となります。かかりつけ医と相談したうえで、ご検討ください。
支持療法
支持療法は、多発性骨髄腫よりも治療を優先する必要のある合併症がみられた場合に行われる治療方法です。
- 腎障害
- 過粘稠度症候群
- 感染症
- 骨病変
- 高カルシウム血症
上記の合併症が確認されると、さまざまな症状が現れます。そのような症状と多発性骨髄腫の範囲を広げないことを目的とした治療方法であると認識しておいてください。
治療後のアプローチ
これまで治療方法や原因についてお伝えしていきましたが、治療後のアプローチについても紹介していきましょう。
副作用の対応
新薬が開発され、副作用の発症リスクが収まってきているとされていますが、完全に取り除くことは難しいです。
そのため、副作用を和らげる化学療法を用いる傾向にあります。どのような副作用が出ているのか、副作用が出る頻度などかかりつけ医と相談しながら副作用への対応を検討してください。
定期的な検査・診断
多発性骨髄腫は再発リスクが高い病気であるとされています。そのため、定期的な検査や診断は欠かせません。もし、治療が完了していても身体に違和感を覚えた時点で、定期検査の日ではなくとも病院へ足を運ぶよう心がけてください。
多発性骨髄腫についてよくある質問
ここまで多発性骨髄腫について紹介しました。ここでは「多発性骨髄腫の治療」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。
多発性骨髄腫の治療にかかる期間はどれくらいですか?
甲斐沼 孟(医師)
多発性骨髄腫の進行具合によって治療期間は変化します。ですが、3か月〜5年はかかると留意しておきましょう。5年はがんの再発率が低下する年数とされています。治療後から5年間は定期的な検査を受ける必要があることも認識しておいてください。
多発性骨髄腫の治療で完治は期待できますか?
甲斐沼 孟(医師)
早期発見と早期治療につなげられれば、完治する可能性も高いといえるでしょう。確実に完治へつなげられるかどうかは、多発性骨髄腫の進行度や合併症を伴っていないかが重要なポイントとなります。違和感を覚えた時点で病院へ受診することを心がけて、治療方針についてはしっかりかかりつけ医と相談することをおすすめします。
編集部まとめ
多発性骨髄腫の治療方法・原因・症状について紹介していきました。まだまだ解明されていない病気ではありますが、治療方法は医学の進歩によって新薬も開発されています。
治療と予後を良好にするためにも、早期発見と早期治療に努めることが大切です。
多発性骨髄腫と関連する病気
「多発性骨髄腫」と関連する病気は6個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
めまいや立ちくらみを引き起こす貧血は自覚しやすい症状です。違和感を覚えたら、まずはかかりつけ医に受診しましょう。
多発性骨髄腫と関連する症状
「多発性骨髄腫」と関連する症状は5個ほどあります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
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- ふらつき
- 骨痛
- 食欲不振
- 口の中の渇き
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疲れているときによくみられる症状が多いため、疲れがなかなかとれない場合には病院を受診しましょう。いつ頃から疲れがとれないのか、どのような症状が出ているのかをかかりつけ医に伝えるようにしてください。