「皮膚がんの初期症状」はご存知ですか?原因・治療法も解説!【医師監修】
日本人がかかるがんの中で、皮膚がん患者さんの数は上位10位以下で希少がんに該当します。
多く知られていないため軽視している方も多いかもしれませんが、転移などがあれば3年生存率が50%を下回ることもある注意が必要な病気です。
この記事では、皮膚がんの初期症状から原因・治療方法を解説していきます。早期発見のメリットも併せて紹介しますので、参考にしてみてください。
監修医師:
高藤 円香(医師)
目次 -INDEX-
皮膚がんの初期症状
皮膚にできる悪性腫瘍のことを皮膚がんと呼び、その種類も様々です。
皮膚がんの種類によって表れる初期症状も違うため、ここでは皮膚がんの中でも多くみられる基底細胞がん・有棘細胞がん・悪性黒色腫・乳房外パジェット病の初期症状を紹介していきます。
有棘細胞がんの場合
有棘細胞がんは、表皮にある有棘層の細胞にできるがんです。紫外線が原因の一つと考えられていて顔や頭皮といった日光がよく当たる部分に多くできます。
初期症状は、肌の色が赤く変色して皮膚がかさつき表面が硬くなることです。他に、まだらに盛り上がる・しこりができるといった症状も表れます。
肌の色が変わり皮膚がかさつくことで、湿疹のようにみえることが特徴です。もし湿疹の症状があり、保湿剤やステロイド剤を使用しても治らない場合は、有棘細胞がんの可能性が考えられます。
悪性黒色腫の場合
悪性黒色腫は、メラノーマとも呼ばれるメラニン色素を生み出すメラノサイトという細胞にできるがんです。
初めは茶色もしくは黒色のシミとして皮膚に表れ、盛り上がりがほとんどないためほくろやシミのようにみえます。ほくろとの違いは、形が左右対称ではなく輪郭がギザギザしていること・色のむらがあること・色や形、大きさが変化することなどが特徴です。
基底細胞がんの場合
基底細胞がんは、表皮の一番深い層にある基底細胞や毛包などの細胞にできるがんで、世界で一番多い皮膚がんです。初期は直径1〜2mmほどのほくろのような小さな黒い点が表れます。
一つのタイプの特徴として、初めはわずかに盛り上がっている程度ですが、症状が進むとその盛り上がりがどんどん大きくなることが挙げられます。さらに悪化すると黒い点の中心部がへこんで潰瘍になります。
乳房外パジェット病の場合
乳房外パジェット病は、アポクリン汗腺という汗を出す汗腺の細胞が変化してできるがんといわれています。アポクリン汗腺の多い部位にできやすいため、外陰部・肛門の周り・脇の下・腋窩などにできることが多いです。
また、アポクリン汗腺は乳頭や乳輪にも多いため乳房にできることもあり、その場合は乳房パジェット病と呼び乳がんの一種となります。初めは赤い色素斑もしくは茶色・白色の色素斑として表れて、年月をかけて少しずつ大きくなっていきます。
皮膚がんの原因
皮膚がんの主な原因は、紫外線です。紫外線は細胞の遺伝子を傷つけるため、がんの発生が促されます。
紫外線以外の原因として挙げられるものは、放射線・ウイルス感染・ヒ素などの化学物質です。さらに、喫煙や慢性的な刺激も皮膚がんの原因となるため、日常生活でも注意してください。
皮膚がんの治療方法
皮膚がんの主な治療法は、薬物療法・放射線治療・手術です。皮膚がんもがんの一種のため一般的ながんの治療法と同じく、手術で腫瘍を取り除くことで根治を目指します。
他にも薬物治療や放射線療法は、手術での根治が難しい場合や再発防止のために行います。ここからは、それぞれの治療法についてみていきましょう。
薬物療法
がん治療における薬物療法は、がんを治す・がんの進行を抑える・がんによる身体症状を緩和するために行います。皮膚がんでは、次の3つの薬物療法を用いて治療を進めます。
- 化学療法
- 免疫チェックポイント阻害薬
- 分子標的薬
一般的によく耳にする化学療法は抗がん剤を使用する治療法で、有棘細胞がん・血管肉腫の治療に適しています。続いて免疫チェックポイント阻害薬は、自分の免疫細胞ががんを攻撃しやすくするための薬です。
代表的なものとしては悪性黒色腫の治療に使われます。他の治療薬より効果が表れるのは遅いですが、効果の持続期間が長いことが免疫チェックポイント阻害薬の特徴です。また、分子標的薬は、悪性黒色腫と皮膚悪性リンパ腫の治療に使われる薬となります。
放射線治療
放射線治療は、高エネルギーの放射線を照射してがん細胞をなくす治療法です。
年齢や合併症などの理由で手術が難しい場合に行うことや、手術後の再発防止のために放射線治療を行います。放射線治療では照射した場所に皮膚炎・脱毛・結膜炎を起こす可能性があるので、事前に理解しておきましょう。
手術
皮膚がんの治療は、手術をして腫瘍を取り除くことが重要です。
腫瘍の大きさによって局所麻酔・全身麻酔をして腫瘍を切除します。腫瘍を切除したあとは、皮膚が欠損するため皮膚を覆う再建術も必要です。
切除した部位やがんの進行度などによって、欠損した部分を縫い合わせる手術や、近くの皮膚を移植する手術など、その方に適した再建方法を選択して行います。
さらに、リンパ節への転移の疑いがある場合は手術のときにセンチネルリンパ節という最初にがんが転移するリンパ節を摘出し、がん細胞があるかの検査が必要です。
早期発見が重要な理由は?
皮膚がんは、目にみえる場所に表れるため早期発見・早期治療がしやすいがんといえるでしょう。そして、皮膚がんを早期発見できれば高い確率で治療が可能です。
しかし、皮膚がんは初期の場合、ほくろ・シミ・湿疹などの肌トラブルと間違うことも多く、進行してから皮膚がんと診断されることも少なくありません。
皮膚がんは進行すると切除が不可能になったり転移してしまったりと様々なリスクがあります。ここからは、なぜ皮膚がんの早期発見が重要なのかその理由をご確認ください。
治療時の負担が減る
皮膚がんは進行するとどんどん広がり大きくなるため、手術の範囲も広くなります。
切除範囲が広くなると身体機能への影響が大きくなるだけではなく、切除した部分の再建のための皮膚移植など身体への負担も増えるでしょう。皮膚がんを早期に発見することは、治療時の身体への負担が減ることに繋がります。
死亡率の低下
皮膚がんは進行が進むほど生存率が低くなります。例えば有棘細胞がんの場合、腫瘍の直径が2cm以下で転移がなければ5年生存率はほぼ100%です。
しかし、直径2cmを超えると約85%に下がり、遠隔転移があった場合は3年生存率が約45%まで下がるとされています。このことからわかるように、皮膚がんは進行する前に治療をしないと5年以内の死亡率は高くなるため早期発見・早期治療が大切です。
治療と仕事の両立が可能
皮膚がんの治療は手術で腫瘍を切除することが主体で、局所麻酔で済む大きさで皮膚移植の必要がない単純縫合の場合は、日帰り手術も可能です。
腫瘍が大きくなると切除した欠損部も大きくなり皮膚移植が必要となるため1週間〜10日、それ以上の入院が必要となる場合もあります。皮膚がんは腫瘍が大きくなる前に手術を行えば、仕事を長く休むことなく治療が可能です。仕事で忙しい方ほど、早期発見が重要といえるでしょう。
皮膚がんの初期症状についてよくある質問
ここまで皮膚がんの初期症状・原因・治療方法・早期発見のメリットなどを紹介しました。ここでは「皮膚がんの初期症状」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。
皮膚がんとほくろの違いは何ですか?
高藤 円香医師
- 直径が6mmより大きい
- 形が左右対称ではない
- 輪郭がギザギザしている
- 色・形・大きさが変化する
- 色むらがある
皮膚がんの早期発見の方法について教えてください
高藤 円香医師
皮膚がんの早期発見のために、これまでになかったできものが皮膚にできた場合、早めに医療機関を受診してください。皮膚がんには、ほくろのようにみえる悪性黒色腫・基底細胞がんから、湿疹を疑う有棘細胞がん・乳房外パジェット病まで症状は様々です。少しでも皮膚に異常を感じたときに、医療機関で症状を細かく伝えて早めに検査してもらうと良いでしょう。
編集部まとめ
今回は、皮膚がんの初期症状から原因・治療法・早期発見のメリットまで解説してきました。
皮膚がんは早期に発見し治療すれば根治が可能な病気です。「ほくろが大きくなってきた」「湿疹が治らない」などと感じたら早めに医療機関を受診しましょう。
また、皮膚がんは紫外線・喫煙・慢性的な刺激などの原因が考えられるため、自身で対策することも大切です。
皮膚がんと関連する病気
「皮膚がん」と関連する病気は11個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
これらの病気は皮膚がんと違って良性の腫瘍ですが、自然に治ることはありません。みた目に影響するだけではなく、中には深刻な病気が潜んでいるものもあるため、皮膚にトラブルがある場合は早めに受診し正しい治療を受けることがおすすめです。
皮膚がんと関連する症状
「皮膚がん」と関連している、似ている症状は3個ほどあります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
関連する症状
- 湿疹(皮膚炎)
- ほくろ
- あざ
皮膚がんは、皮膚トラブルと似ていることから発見が遅れることが多いです。かゆみ・かさつきがある湿疹が処方された薬で治らない場合や、ほくろ・あざが濃くなったり大きくなったりする場合は、皮膚がんの可能性が考えられます。皮膚の状態で気になることがあったら医療機関を受診してください。