「急性骨髄性白血病の症状」はご存知ですか?検査・治療法も解説!【医師監修】
急性骨髄性白血病の症状を知っていますか?本記事では、急性骨髄性白血病の症状について以下の点を中心にご紹介します。
- ・急性骨髄性白血病とは
- ・急性骨髄性白血病の症状
- ・急性骨髄性白血病の検査について
急性骨髄性白血病の症状について理解するためにもご参考いただけますと幸いです。ぜひ最後までお読みください。
監修医師:
甲斐沼 孟(上場企業産業医)
目次 -INDEX-
急性骨髄性白血病とは?
急性骨髄性白血病(AML)は、骨髄の中で形成される若い血液細胞(幼若骨髄系細胞)に異常が起こる疾患です。人の血液細胞は骨髄で生成され、全ての細胞は造血幹細胞から成熟する過程を経て血液中に放出されます。しかし、AMLの場合、これらの幼若細胞が正常に成熟できず、以下の問題が生じます。
急性骨髄性白血病の症状
急性骨髄性白血病の症状について解説していきます。
症状
疲労感や倦怠感、体の脆弱性:体内の赤血球が減少すると、酸素を体中に運ぶ能力が低下し、これが疲労感や倦怠感、体の脆弱性を引き起こします。
感染症に対する抵抗力の低下:白血球の異常増加により、正常な白血球の数が減少し、これが感染症に対する抵抗力を低下させます。
出血や打撲:血小板の数が減少すると、出血や打撲が起こりやすくなります。これは鼻血や歯ぐきからの出血、皮膚の紫斑や打撲、重度の月経などとして現れることがあります。
体重減少:食欲不振や消化不良により体重が減少することもあります。
骨や関節の痛み:白血球が骨髄内で異常に増えると、骨や関節に圧力がかかり、痛みを引き起こすことがあります。
呼吸困難:白血球が肺に集まると呼吸困難を引き起こすことがあります。
以上のような症状がある場合は、医師に相談することをお勧めします。
異常細胞の増殖
幼若骨髄系細胞が正常に成熟できないため、同じ種類の異常な細胞(白血病細胞)が増加します。これにより、発熱やだるさなどの全身症状が現れ、さらに白血病細胞が各臓器で増えることで、臓器の機能が低下します。
正常な血液の生成障害
白血病細胞が増加することで、骨髄の中で正常な血液細胞の生成が妨げられるようになります。結果として、赤血球の減少による貧血、白血球の減少による感染への抵抗力低下、血小板の減少による出血のリスクが高まります。
急性骨髄性白血病の病型分類
急性骨髄性白血病の病型分類はどのようにされるのでしょうか?以下で解説していきます。
FAB分類
FAB分類(French-American-British classification)は、急性骨髄性白血病(AML)を8つの異なる病型に分類するための伝統的な方法です。この分類法は1970年代に導入され、染色を用いた顕微鏡的な観察に基づいています。FAB分類では、骨髄中の芽球(未熟な血液細胞)の比率が特に重要な指標とされており、通常、芽球の割合が30%以上である場合に急性白血病と診断されます。FAB分類は免疫学的・細胞学的な特徴に基づく現代の分類法に取って代わられつつありますが、依然として臨床診断に使用されることがあります。
WHO分類
WHO分類(World Health Organization classification)は、急性骨髄性白血病(AML)を分子遺伝学的な観点から新たに定義し、分類するための分類法です。FAB分類に代わる近代的な分類法で、2000年代に提唱されました。この分類法では、特定の染色体異常や遺伝子変異の存在を考慮して、AMLをさらに細かくカテゴリー分けしています。
急性骨髄性白血病の検査について
急性骨髄性白血病の検査はどのように行えるのでしょうか?以下で解説していきます。
血液検査
血液検査は非常に重要な一部分です。以下は急性骨髄性白血病の血液検査に関する詳細です。
白血球数(WBC)の測定: 白血球数は通常の範囲を超えて増加しており、これは白血病細胞(異常な骨髄系細胞)が増殖しているためです。通常の白血球数よりも高いことが急性白血病の典型的な特徴です。
ヘモグロビン濃度(Hb)の測定: ヘモグロビンは赤血球内に存在し、酸素を運搬する役割を果たします。急性骨髄性白血病患者さんは、正常な赤血球が減少し、貧血(低ヘモグロビン濃度)が発生することがあります。
血小板数の測定: 血小板は血液凝固に重要な役割を果たします。AML患者さんは、正常な血小板数よりも低い場合があり、出血傾向があります。
肝機能と腎機能の評価: これらの臓器の機能が白血病の進行に影響を及ぼすことがあるため、肝機能検査と腎機能検査が行われます。特に黄疸やビリルビンの異常があるかどうかを調べることが重要です。
凝固検査: 凝固検査は、血小板と協力して正常な止血過程を確保するために行われます。AML患者さんはしばしば出血のリスクが高いため、凝固検査の結果が詳細に確認されます。
これらの血液検査結果をもとに、急性骨髄性白血病の診断が確立され、さらに詳細な骨髄検査(骨髄穿刺および骨髄生検)が行われることがあります。骨髄検査は、骨髄内の細胞の異常を評価し、AMLの病型を特定するために行われます。
骨髄検査
急性骨髄性白血病(AML)の診断には、骨髄液および骨髄生検といった骨髄検査が不可欠です。以下は急性骨髄性白血病の骨髄検査に関する詳細です:
骨髄液の採取: 骨髄液は一般的に胸骨または腸骨から採取されます。局所麻酔を行った後、特別な針を使用して骨髄液を吸引します。骨髄液には、幼若な骨髄系細胞や異常な白血病細胞が含まれており、これらの細胞の形態や性質を評価するために顕微鏡で観察されます。
骨髄生検: 骨髄液の採取と同時に、同じ場所で骨髄生検も行われることがあります。これは骨髄組織の一部を摘出し、細胞の形態だけでなく、細胞の配置や骨髄内の線状構造も評価するためです。骨髄生検は、AMLのサブタイプや病態を特定する上で非常に重要です。
遺伝子変異・染色体異常の検査: 急性骨髄性白血病の発症には、遺伝子変異や染色体異常が関与することがあります。特に、特定の遺伝子変異や染色体異常がAMLの予後や治療法の選択に影響を与えることがあります。したがって、これらの異常を特定するための遺伝子検査や染色体解析も実施されます。
これらの検査結果に基づいて、AMLの病型、予後、および治療計画が立てられます。異常な骨髄細胞の特徴的な形態や遺伝子異常は、AMLの正確な診断および分類に役立ち、治療戦略のカスタマイズに貢献します。
その他
画像検査
培養検査
蛋白質および生化学的検査
急性骨髄性白血病の治療法
急性骨髄性白血病の治療法を知っていますか?以下で解説していきます。
化学療法
目的: ほぼすべての白血病細胞を破壊し、寛解(病状の改善)を達成することが目標です。
使用薬剤: 一般的に使用される薬剤には、シタラビン(アラシン、Cytosar-U)とダウノルビシン(ダウノビン、Cerubidine)などがあります。
投与方法: シタラビンは持続点滴で7日間、ダウノルビシンは静脈内投与を3日間行います。
効果: これらの薬剤は骨髄内の異常細胞を減少させ、寛解を達成します。
目的: 寛解導入化学療法の後、寛解状態を維持し、残存する白血病細胞を排除します。
使用薬剤: 寛解導入化学療法と同様の薬剤が使用されることがあります。
投与方法: 通常は、初回治療の数週間後からさらに化学療法を数コース追加します。
効果: 寛解状態を維持し、再発を防ぎます。
造血幹細胞移植
急性骨髄性白血病に対する造血幹細胞移植は、再発のリスクが高い場合や、他の治療法で効果が期待できない場合に行われます。
移植の主な目的は、患者さんの体内の異常な造血細胞を取り除き、新しい、健康な造血系を再構築することです。
移植に使用する幹細胞のドナーは、通常、HLA(ヒト白血球抗原)の適合度に基づいて選ばれます。兄弟姉妹がドナーの場合ですが、他の家族や非関連のドナーも考慮されることがあります。
急性骨髄性白血病の症状についてよくある質問
ここまで急性骨髄性白血病の症状を紹介しました。ここでは「急性骨髄性白血病の症状」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。
急性骨髄性白血病の主な症状を教えてください。
甲斐沼 孟(医師)
急性骨髄性白血病の主な症状は以下の通りです。
個別の症状として、息切れや動悸が現れることがあります。これは貧血により酸素供給が不足するためです。
鼻血や歯肉からの出血が止まりにくいことがあります。アザや点状斑(小さな出血性斑点)が皮膚に現れることがあります。これらの症状は正常な血小板の減少に関連しています。
高熱が出てなかなか下がらないことがあります。AMLの患者は通常、白血球が正常よりも少ないため、感染症に対する抵抗力が低下します。
腹部が張って食欲が低下したり、腹部にしこりや痛みが現れることがあります。これは脾臓や肝臓の腫れに関連しています。
歯肉の腫れや痛み:白血病細胞が歯肉に浸潤することがあります。
骨痛、腰痛、関節痛:骨髄内での異常な細胞の増殖によるものです。
頭痛:中枢神経への浸潤による神経症状
これらの症状は、AMLの病態や進行度によって異なることがあります。病気が進行するにつれて、これらの症状が顕著になることが一般的です。したがって、これらの症状が現れた場合、早期の医療評価と診断が重要です。
急性骨髄性白血病の早期発見のために注意すべき症状や兆候は何ですか?
甲斐沼 孟(医師)
急性骨髄性白血病(AML)の早期発見のために注意すべき主な症状や兆候は以下の通りです。
発熱、頭痛、発汗など、かぜをひいたような症状が持続することがあります。
動悸、息切れ、立ちくらみ、めまい。顔色が蒼白になることがあります。
歯茎からの出血や鼻血が止まらなかったり、皮膚に紫斑(点状の出血性斑点)が現れることがあります。
感染が繰り返し発生し、高熱や発熱が持続することがあります。
肝臓や脾臓が腫れることでお腹が張って、食欲が低下することがあります。
歯茎が腫れて痛むことがあります。
頭痛が続いたり、骨痛、腰痛、関節痛が現れることがあります。
編集部まとめ
ここまで急性骨髄性白血病の症状についてお伝えしてきました。
急性骨髄性白血病の症状の要点をまとめると以下の通りです。
⚫︎まとめ
- ・急性骨髄性白血病は赤血球の減少による貧血、白血球の減少による感染への抵抗力低下、血小板の減少による出血のリスクが高まる。
- ・急性骨髄性白血病の症状全身的な不調、突然の倦怠感やだるさ。
- ・急性骨髄性白血病の検査は血液検査や骨髄検査がある。
これらの情報が少しでも皆さまのお役に立てば幸いです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
「急性骨髄性白血病」と関連する病気
「急性骨髄性白血病」と関連する病気は4個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
血液内科の病気
- 骨髄異形成症候群(MDS)
- 前骨髄球性白血病(APL)
- 慢性骨髄性白血病(CML)
- 骨髄病変
具体的な症状や治療法については、医師に相談することをお勧めします。
「急性骨髄性白血病」と関連する症状
「急性骨髄性白血病」と関連している、似ている症状は8個ほどあります。
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関連する症状
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- 出血症状
- 感染症状
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- 腹部の症状
- 骨痛と関節痛
- 頭痛
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これらの症状が急速に現れることが多く、早期の診断と治療が重要です。
または新たに現れた場合、医師の診察を受けることが大切です。