「胆管がんの症状」はご存知ですか?検査法・治療法も解説!【医師監修】
胆管がんの症状を知っていますか?本記事では、胆管がんの検査方法や治療法について以下の点を中心にご紹介します。
- ・胆管がんとは
- ・胆管がんの症状
- ・胆管がんの進行した後の症状
胆管がんの検査方法や治療法について理解するためにもご参考いただけますと幸いです。ぜひ最後までお読みください。
監修医師:
甲斐沼 孟(上場企業産業医)
目次 -INDEX-
胆管がんとは?
胆道がんは、胆道(肝臓と小腸をつなぐ管)に発生する悪性腫瘍の総称です。
胆道がんは、がんが発生した場所によって分類されます。
具体的には、肝内胆管がんと肝外胆管がんの2つの主要なタイプがあります。
胆道がんは、周囲のリンパ節や肝臓、肺などへ転移したり、膵臓などの周囲の臓器に浸潤(がん細胞が周囲の組織に広がること)したりすることがあります。
これらの特性により、胆道がんの診断と治療は困難であり、早期発見と適切な治療戦略が重要です。
胆管がんの原因
肝内胆管がんは、肝臓内の胆管から発生します。
これは原発性肝がんの一種であり、肝細胞がんとは異なる性質を持っています。
そのため、このタイプのがんはしばしば「胆管細胞がん」とも呼ばれます。
一方、肝外胆管がんは、肝臓外の胆管から発生します。
これはさらに、発生した部位によって肝門部領域胆管がんと遠位胆管がんに分けられます。
胆管がんの症状
胆管がんの症状にはどのようなものがあるのでしょうか?
黄疸
胆道がんの一般的な症状の一つに黄疸があります。
黄疸は、目や皮膚が黄色く見える状態で、これは血液中のビリルビン(胆汁の成分)の量が増えることによって引き起こされます。
胆道がんでは、がん細胞が胆汁の流れを妨げ、ビリルビンが体内に蓄積するため、黄疸が発生します。
また、黄疸に伴い、尿が褐色になることもあります。これは、ビリルビンが尿とともに体外に排出されるためです。
発熱
特に発熱は、胆管がんによって胆管が閉塞し、胆汁の逆流が起こることで生じます。
この胆汁の逆流による細菌感染で胆管炎を引き起こすことがあります。
この胆管炎が発熱の原因となります。
ビリルビン尿
ビリルビンが体内で過剰になると、血液中のビリルビン濃度も上昇し、これを「黄疸」と呼びます。
黄疸は、皮膚や目の白部が黄色くなることで表れます。
さらに、ビリルビンが多くなると尿中にも排泄されるようになります。
その結果、尿の色が濃くなったり茶色っぽくなったりすることがあります。
このような尿の変化は、特に胆管がんの初期症状として認識されることが多いとされています。
白色便
胆管がんが進行して胆道が閉塞し、胆汁の流れが妨げられると、ビリルビンが十二指腸に届かなくなります。
この結果、ビリルビンによる色付けがなされないため、便の色が白くなることがあります。
この白色便は、胆管がんの典型的な症状の一つとして知られています。
白色便が出る場合、それは胆汁の正常な流れが妨げられている可能性を示唆しているため、早急に医師の診察を受けることが勧められます。
かゆみ
胆管がんの進行に伴い、胆道の閉塞やその他の原因で胆汁の排泄が適切に行われない場合、血液中の胆汁酸濃度が上昇します。
この胆汁酸の増加は、皮膚への刺激となり、痒み(掻痒感)を引き起こすことが知られています。
疼痛
胆管がんの進行に伴って、がん細胞が近隣の組織や神経へ侵入することで、疼痛が発生する場合があります。
特にがんが周辺の神経に影響を及ぼすと、激しい痛みが生じることが知られています。
さらに、胆管がんが進行し骨への転移が生じた場合、骨の痛みや圧迫感を感じることがあります。
胆道がんの検査について
胆道がんの検査方法について以下に6つの方法を紹介します。
血液検査
胆管がんの診断や進行状況を調べる際、血液検査は非常に役立つツールの一つです。
特に、胆汁の色素であるビリルビンや、肝臓や胆道の機能に関連する酵素、ALPやγ-GTPの量を調査します。
胆管が狭窄すると胆汁の流れが妨げられるため、これらの指標の値が上昇することが一般的です。
上昇した数値は胆汁の流れの障害や胆道、肝臓の機能異常を示唆しており、胆管がんの可能性を探る上で重要な情報となります。
腫瘍マーカー検査
胆管がんの診断において、腫瘍マーカーというがん特有の物質を検出する血液検査が用いられることがあります。
胆道がんの場合、特にCA19-9やCEAというマーカーの値が注目されます。
ただし、この腫瘍マーカー検査だけではがんの存在を100%確認することはできません。
一部の患者さんでは、胆管がんが進行していても腫瘍マーカーの値が通常の範囲内の場合もあれば、逆にがんの兆候がないのに腫瘍マーカーの数値が上昇している場合もあります。
したがって、腫瘍マーカー検査は他の検査と組み合わせて診断を進める重要な指標の一つとして用いられます。
腹部超音波(エコー)検査
胆管がんの診断において、腹部超音波(エコー)検査は非常に役立つツールとなります。
この検査は、体の内部の臓器形状や状態、血流の様子を音波で可視化します。
胆道がんの場合、胆管内の狭窄や胆汁の滞留が超音波画像上で確認できることが期待されます。
エコー検査は、超音波プローブを患者さんの腹部に当てて行うため、放射線のリスクはなく、非侵襲的で痛みも伴いません。
また、即座に画像が得られるため、リアルタイムで臓器の状態を評価できます。
さらに、生検や細胞診を行う際のガイドとしても使用されることがあるので、疑わしい部位から適切に組織を採取する際の支援としても利用されます。
CT検査
CT検査は、がんの存在や拡大を詳しく調べるための放射線を用いた画像診断法です。
この検査により、体の内部の断面画像を高解像度で得られます。
特に、胆管がんの場合、胆管の拡張部分やその程度、さらにはリンパ節や他の臓器への転移の有無も確認することが期待されます。
CT検査は、X線を患者さんの体に当てながら、ディテクタでX線の吸収を計測し、そのデータから体の断面画像を生成します。
このプロセスにより、がんの正確な位置や形状、そして隣接する組織や臓器との関係を詳細に確認できます。
MRI検査
MRI(磁気共鳴画像診断)は、磁気を利用して体内の画像を得る非侵襲的な診断方法です。
この検査によって、体の各部分の詳細な断面画像を複数の角度から得られます。
特に、ソフトティッシュ(例:筋肉、腫瘍、神経組織)の構造や状態を非常に鮮明に捉えられるため、がんと正常な組織の区別がしやすくなります。
内視鏡を使う検査
上部消化管内視鏡検査
通常「胃カメラ」として知られる手法。
口から内視鏡を通して、十二指腸や胃を直接観察する。
病変が疑われる場合、組織サンプルを採取し、詳細な調査のための生検を実施できる。
超音波内視鏡検査(EUS)
内視鏡の先端に超音波プローブが装着されており、消化管内からの超音波による観察を可能にする。
腫瘍の位置や深さ、広がりなどを詳しく観察できる。
普通の超音波検査よりも詳細な画像が得られるのが特徴。
内視鏡的逆行性胆管膵管造影検査(ERCP)
胆汁の流れや胆管の状態を確認するための検査。
特定のカテーテルを通して、胆管や膵管に造影剤を注入し、X線での撮影を行う。
管腔内超音波検査(IDUS)
胆管内部の詳細な状態や腫瘍の深さを観察するための手法。
超音波プローブを胆管内に挿入し、詳しい画像を得る。
通常、ERCPの後に実施される。
経口胆道鏡検査(POCS)
胆管内の状態を直接観察するための手法。
細い内視鏡カメラを使い、胆管内を直接確認。
病変の確認や組織の採取も可能。
胆管がんの治療法
胆管がんの治療方法について以下に4つ紹介します。
外科治療
胆管がんの外科手術は、がんの進行状況や大きさに応じて行われる治療の一つです。
この手術の主な目的は、がんを完全に取り除くことです。
しかし、胆道がんの手術は一般的に広範な切除が必要とされるため、体への負担が増すことも少なくありません。
手術のメリットは、早期発見・治療の場合、がんを根治的に取り除くことが期待される点です。
これにより、再発のリスクを低減し、生存率を向上させることが可能となります。
一方で、リスクとしては、大掛かりな手術が必要になるため、術後の合併症のリスクや長期の入院が必要となることも考慮される必要があります。
化学療法
胆管がんの治療において、化学療法が一つの選択肢として考えられます。以下は、主な化学療法についての概要です。
ゲムシタビン+シスプラチン併用療法
この治療は、2種類の抗がん剤を組み合わせて使用します。
患者さんは、毎週一度、約3時間半の点滴を2週間受け、その後1週間の休薬期間をとります。
ゲムシタビン単剤療法
この治療法では、ゲムシタビンのみを使用します。
毎週一度、約30分間の点滴を3週連続で受け、続いて1週間の休薬期間をとります。
S-1療法
S-1は、口から取る形の抗がん剤です。
患者さんは、毎日2回、食後に薬を服用します。これを28日間続け、14日間の休薬期間をとります。
放射線治療
胆管がんの放射線治療は、確固たる根拠がまだ十分に確立されていないため、治療の適応は注意深く判断されるべきです。
放射線治療が考慮される主な目的は、患者さんの生命の質を向上させるための疼痛の軽減、黄疸の軽減、そしてステントの機能維持のための期間を延長することです。
特に、一部の患者さんでは手術や化学療法が適切ではない場合、例えば全身の健康状態や他の合併症が理由で、放射線治療が選択肢として考慮されることがあります。
この治療は、外来での施行も可能で、患者さんの状態や治療の必要性に応じて実施されます。
黄疸の治療
胆管がんでの黄疸の症状は、胆汁の排出を促進することで対処する必要があります。
黄疸の治療の主な方法としては、内視鏡的減黄術と経皮経肝的ドレナージが挙げられます。
内視鏡的減黄術では、特別な内視鏡を使用して、胆管内にステントを挿入します。
このステントは、プラスチック製または金属製のものがあり、胆汁の流れを助ける役割を果たします。
金属製のステントは持続性が高く、対照的にプラスチック製のステントは定期的に交換が必要となることがあります。
この方法の大きな利点は、体外にチューブが出ていないため、日常生活において大きな制限がない点です。
一方、経皮経肝的ドレナージ(PTCD)は、通常、内視鏡的な方法が適用できない場合に採用されます。
この方法では、エコーを使用して胆管を特定し、その胆管に針を刺してチューブを挿入します。
このチューブが留置される間は、胆汁を収集するバッグを持ち歩く必要があります。
しかし、胆管内にステントが確実に留置されれば、このチューブは取り外せます。
胆管がんの症状についてよくある質問
ここまで胆管がんについて紹介しました。ここでは「胆管がん」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。
胆管がんの主な症状は何ですか?
甲斐沼 孟(医師)
胆管がんは、がんの成長によって胆汁の流れが妨げられることで特定の症状を引き起こします。
最も一般的に観察される症状は黄疸で、これは皮膚や眼の白部が黄色く変色する現象です。
胆のうがんより、胆管がんの方が黄疸の発生がより顕著です。
胆汁の排出不良により、便は通常よりも白っぽくなり、反対に尿は濃い茶色になることがあります。
また、胆汁の蓄積は体全体でのかゆみを引き起こす可能性があります。
さらに、がんが進行していくと、腹部の痛みや食欲減退、体重の減少などの一般的な症状が出現することが多くなります。
胆管がんの早期発見方法はありますか?
甲斐沼 孟(医師)
定期的な健康診断:定期的な健康診断により、黄疸や肝機能の異常などの早期の徴候をキャッチできます。
超音波検査:腹部の超音波検査は、肝臓や胆のう、胆管の異常を早期に発見するのに役立つことがあります。
リスクファクターの管理:一部の疾患や状態、例えば原発性硬化性胆管炎や胆石症などは、胆管がんのリスクを高める可能性があります。これらの状態を持つ人々は、医師の指導のもとで定期的なフォローアップや検査を受けることが推奨されます。
血液検査:肝機能テストは、肝臓や胆管の問題を示唆する異常値を検出できます。
MRIやCTスキャン:これらの高度な画像診断技術は、胆管領域の異常や小さな腫瘍を発見するのに役立つことがあります。
内視鏡検査:既に述べたように、胆管や消化器系の内視鏡検査は、胆管領域の問題をより詳しく調べるために使用されることがあります。
しかし、これらの方法も100%の早期発見を保証するものではありません。そのため、自身の健康状態やリスク要因について医師と相談し、適切なスクリーニング方法や頻度を決定することが重要です。
編集部まとめ
ここまで胆管がんの症状についてお伝えしてきました。胆管がんの症状の要点をまとめると以下の通りです。
⚫︎まとめ
- ・胆道がんは、胆道(肝臓と小腸をつなぐ管)に発生する悪性腫瘍の総称です。胆道がんは、がんが発生した場所によって分類される。
- ・最も一般的に観察される症状は黄疸で、これは皮膚や眼の白部が黄色く変色する現象。
- ・がんが進行していくと、腹部の痛みや食欲減退、体重の減少などの一般的な症状が出現することが多くなる。
胆管がんと関連する病気
「胆管がん」と関連する病気は3個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
婦人科の病気
- 先天性胆道拡張症
- 膵胆管合流異常症
- 原発性硬化性胆管炎
具体的な症状や治療法については、担当の医師と相談しましょう。
「胆管がん」と関連する症状
「子宮肉腫」と関連している、似ている症状は7個ほどあります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
これらの症状が持続する場合、または新たに現れた場合、医師の診察を受けることが大切です。