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「慢性骨髄性白血病に初期症状」はあるの?検査法・治療法も解説!【医師監修】

 更新日:2024/01/05
「慢性骨髄性白血病に初期症状」はあるの?検査法・治療法も解説!【医師監修】

慢性骨髄性白血病とは血液をつくる造血幹(ぞうけつかん)細胞に異常が起こり、白血球などが増殖する病気です。

慢性骨髄性白血病は発症してもすぐに気づかず、健康診断などの検査でたまたま見つかるというケースが多いとされます。

今回の記事では慢性骨髄性白血病の初期症状について解説します。また慢性骨髄性白血病の症状・検査方法・治療法・血液内科の主な疾患もご紹介しますので、参考にしてください。

甲斐沼 孟

監修医師
甲斐沼 孟(上場企業産業医)

プロフィールをもっと見る
大阪市立大学(現・大阪公立大学)医学部医学科卒業。大阪急性期・総合医療センター外科後期臨床研修医、大阪労災病院心臓血管外科後期臨床研修医、国立病院機構大阪医療センター心臓血管外科医員、大阪大学医学部附属病院心臓血管外科非常勤医師、大手前病院救急科医長。上場企業産業医。日本外科学会専門医、日本病院総合診療医学会認定医など。著書は「都市部二次救急1病院における高齢者救急医療の現状と今後の展望」「高齢化社会における大阪市中心部の二次救急1病院での救急医療の現状」「播種性血管内凝固症候群を合併した急性壊死性胆嚢炎に対してrTM投与および腹腔鏡下胆嚢摘出術を施行し良好な経過を得た一例」など。

慢性骨髄性白血病の初期症状とは?

慢性骨髄性白血病の初期症状はほとんどないといわれています。慢性骨髄性白血病は血液がんのなかでもゆっくりと進行する病気です。また発症して早期の段階では、白血球が増加してもほぼ正常に働きます。このことから慢性骨髄性白血病は、発症してもすぐに自覚できる症状はないと考えられます。

慢性骨髄性白血病の症状

慢性骨髄性白血病の症状には次の6つがあります。

  • 脱力感
  • 疲労感
  • 食欲不振
  • 体重減少
  • 腹部膨満感
  • 発熱

以下でそれぞれ詳しく見ていきましょう。

脱力感

慢性骨髄性白血病になると正常に白血球が作られなくなるため、貧血症状として脱力感が現れることがあります。脱力感は体に力が入らなかったり力が抜けたような感覚になる状態です。脱力感になると何もする気にならないといったようにメンタルにも影響を及ぼし、日常生活に支障を来す場合があります。

疲労感

疲労感も貧血症状として現れるものです。なんとなく疲れ・だるさを感じ、いつものように生活を送りにくくなります。
一般的に仕事・家事で忙しくて疲れた場合に現れますが、休養を取っても疲労感が取れなかったり疲れるほど仕事していなかったりしても疲労感がある場合は慢性骨髄性白血病のように病気を発症している可能性があります。

食欲不振

食欲不振とは一般的に食べてないのにも関わらず、食欲がない状態のことを意味します。通常はしばらく食べていないと、血糖値が下がり胃が収縮することで脳が刺激されお腹が空いたと感じます。
しかし病気・薬の服用などによって、脳が食欲を感じにくくなるのが食欲不振です。慢性骨髄性白血病による食欲不振は左脇腹にある脾臓が大きくなることによって引き起こされていると考えられます。

体重減少

慢性骨髄性白血病になると体重が減少することがあります。白血球などが必要以上につくられるため、その分消費エネルギーが増加します。その消費エネルギー量が食事から摂取したエネルギー量よりも上回ると体内の脂肪が消費され、その結果として体重減少につながるのです。

腹部膨満感

腹部膨満感とはお腹全体が張って苦しいと感じる状態です。主な原因としては病気・ストレスなどによって腸にガスがたまる・腸がむくむ・お腹に水がたまるといったことが挙げられます。慢性骨髄性白血病の場合は脾臓が大きくなることで症状が現れると考えられています。

発熱

慢性骨髄性白血病では発熱を伴う場合もあります。発熱は急性転化期に現れやすい症状の一つです。発熱も脾臓が大きくなることで生じるとされます。

症状が現れないこともある

慢性骨髄性白血病は慢性期・移行期・急性転化期といった順で進行していきます。慢性期ではほとんど症状が現れないまま数年経過することもあります。そのため、健康診断等の検査で偶然見つかるといったケースが多いとされるのです。移行期・急性転化期になると急に症状が現れます。
急性転化期では感染症にかかりやすくなったり出血しやすくなったりすることもあります。また治療が困難になる場合があるため注意が必要です。

慢性骨髄性白血病の治療方法

慢性骨髄性白血病の主な治療方法は「化学療法」と「造血幹細胞移植」です。以下でそれぞれ詳しく解説します。

化学療法

化学療法は薬物療法の一種です。薬物療法には化学療法・内分泌療法・分子標的療法などがあり、一般的に化学療法という言葉がよく使用されます。慢性骨髄性白血病の治療で使用されている薬はチロシンキナーゼ阻害薬という分子標的薬です。分子標的薬とは慢性骨髄性白血病の原因とされる遺伝子の機能を抑制する薬です。
チロシンキナーゼ阻害薬にはイマチニブ・ニロチニブ・ダサチニブといった種類があり、特にイマチニブは治療効果が高い可能性があることが分かっています。これらの薬はそれぞれ服用方法・副作用などの特徴が異なります。主な副作用はむくみ・発疹・胸水です。薬の吸収を阻害する食品があるため、服用する際は専門の医者に確認する必要があります。
また妊娠中に服用すると胎児に影響を及ぼす場合があるため、服用中は避妊することが望ましいです。なお、チロシンキナーゼ阻害薬は主に慢性期の治療に使用されます。

造血幹細胞移植

チロシンキナーゼ阻害薬で十分な治療効果が得られなかったり移行期・急性転化期に移行したりした場合は、造血幹細胞移植を行うことがあります。造血幹細胞移植とは自分または造血幹細胞を提供してくれるドナーから事前に採取した造血幹細胞を移植する治療法です。
この治療法は移植前に化学療法・放射線治療を行います。これらを行うことでがん細胞を根絶する可能性が高いですが、血液を作る臓器である骨髄に悪影響を及ぼし正常に血液がつくられなくなるリスクがあります。そのため造血幹細胞を採取し移植できるようにする方法が造血幹細胞移植なのです。
ただし、この治療は強い副作用・合併症を招く場合があるため注意が必要です。

慢性骨髄性白血病の診断のために行う検査

慢性骨髄性白血病を診断する際には以下のような検査が行われます。

  • 血液検査
  • 染色体分析

以下にそれぞれの検査を詳しく解説します。

血液検査

慢性骨髄性白血病の検査ではまず血液検査を行います。血液検査とはその血液に含まれる細胞・酵素・抗体の数を数値化することで病気の診断をする検査のことです。慢性骨髄性白血病は主に白血球・血小板の数値を調べます。白血球・血小板の数値が増加していたことが分かっても慢性骨髄性白血病とは診断できないため、さらに染色体分析を行います。

染色体分析

染色体分析は慢性骨髄性白血病を診断するのに欠かせない検査です。染色体とは細胞のなかに含まれるものです。染色体分析では採取した細胞を分解して出てきた染色体を染色体の数と構造に異常がないか調べます。慢性骨髄性白血病になるとフィラデルフィア染色体という染色体が検出されます。

血液内科の主な疾患について

慢性骨髄性白血病は血液内科にて治療を行います。血液内科とは悪性・良性にかかわらず、赤血球や白血球などの血液細胞の異常やリンパ節などの血液に関連する疾患を診る専門の診療科です。血液内科の主な疾患は慢性骨髄性白血病を含めて10個ほどあります。

  • 急性骨髄性白血病
  • 骨髄異形成症候群
  • 慢性骨髄性白血病
  • 慢性骨髄増殖性疾患
  • 急性リンパ性白血病
  • 慢性リンパ性白血病
  • 悪性リンパ腫
  • 多発性骨髄腫
  • 再生不良性貧血
  • 特発性血小板減少性紫斑病

慢性骨髄性白血病についてよくある質問

ここまで慢性骨髄性白血病の初期症状・検査方法・治療法などを解説しました。ここでは「慢性骨髄性白血病」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。

急性骨髄性白血病と慢性骨髄性白血病の違いについて教えてください。

甲斐沼孟医師甲斐沼 孟(医師)

急性骨髄性白血病と慢性骨髄性白血病の違いは異常が起こる細胞の種類・進行スピードが挙げられます。急性骨髄性白血病は白血球の元となる細胞である骨髄芽球に異常が起こる病気です。一方で慢性骨髄性白血病は白血球・赤血球・血小板の大元となる造血幹細胞に異常が起こります。
またどちらも同じような症状が現れますが、進行スピード・症状が現れるタイミングが大きく異なります。慢性骨髄性白血病は進行がゆるやかであるため、発症してもすぐに症状が現れません。一方で急性骨髄性白血病は進行が早いため、急に症状が現れることが多いとされます。

慢性骨髄性白血病の予後について教えてください。

甲斐沼孟医師甲斐沼 孟(医師)

慢性骨髄性白血病の慢性期ではチロシンキナーゼ阻害薬の服用により改善するケースが多いですが、急性転化期に移行すると治療が困難になり見通しが立たなくなる可能性があります。

編集部まとめ

慢性骨髄性白血病は慢性期・移行期・急性転化期と進行する病気です。ゆっくり進行するため、慢性期ではなかなか症状が現れません。

移行期・急性転化期では疲労感・体重減少・腹部膨満感といった症状が現れますが、症状から慢性骨髄性白血病を疑うのは難しいと考えられます。

慢性骨髄性白血病は健康診断等でたまたま見つかったというケースが多いといわれています。そのため、定期的に健康診断等を受けて早期発見につなげることが望ましいでしょう。

慢性骨髄性白血病の診断では、血液検査で白血球の数に異常が見られた場合に染色体分析を行います。

また慢性骨髄性白血病の治療方法は、チロシンキナーゼ阻害薬を使用した化学療法です。チロシンキナーゼ阻害薬で十分な治療効果が見られなかったり病気が進行したりした場合は、造血幹細胞移植を行います。

ただし造血幹細胞移植は副作用・合併症のリスクがあるため、行うかどうかは十分に検討することが必要です。

慢性骨髄性白血病と関連する病気

慢性骨髄性白血病と関連する病気は5個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

関連する病気

  • 真性多血症
  • 本態性血小板血症
  • 原発性骨髄線維症
  • 慢性好中球性白血病
  • 慢性好酸球性白血病

慢性骨髄性白血病と関連する症状

慢性骨髄性白血病と関連している症状は10個ほどあります。
各症状・原因・治療法などの詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

関連する症状

これらの症状は病気が進行した場合に現れるものです。気になる症状があったりなかなか改善しなかったりする場合は、早めに病院を受診してください。

この記事の監修医師