「大腸がんを疑う便の特徴」はご存知ですか?初期症状も解説!【医師監修】
大腸がんに罹患したら、痛みや症状があると感じている方も多いのではないでしょうか。実は、進行するまで無症状なことが多い病気です。
大腸がんに気づくためには、便の状態を知ることも大切です。血便・便の硬さなどに変化が現れること以外にも、貧血・嘔吐などのその他症状が現れるようになります。
今回は大腸がんの症状や便の状態を解説していきますので、病気を見逃さないためのヒントにして頂けましたら幸いです。
監修医師:
甲斐沼 孟(上場企業産業医)
目次 -INDEX-
大腸がんとは?
大腸表面の粘膜に発生する悪性腫瘍のことです。結腸・直腸・肛門の中でも、S状結腸と直腸にがんができやすいといわれており、これは便が滞在する時間が長いことが関係しています。
日本では男性の10人に1人、女性の12人に1人の割合で大腸がんと診断されており、女性のがんによる死亡者数第1位となっています。50歳代から年齢とともに罹患率の上昇がみられ、原因として運動不足や野菜・果物不足・特に食の欧米化が大きく関与しており、この20年で大腸がんによる死亡者数は約1.5倍と増加傾向です。
罹患しないように食生活を見直すこと、毎年がん検診を受けることで早期発見ができ進行のリスクを下げることが可能です。
大腸がんの便の特徴とは?
初期症状はほとんどありませんが、進行すると以下のような便の特徴がみられるようになります。
- 血便
- 便が細くなる
- 便秘
- 下痢
- 残便感
血便は、出血量によっては肉眼で気づかないこともよくあります。このような便の変化がみられた場合でも、大腸がんと決まったわけではないため、まずは検査を受けることが大切です。
他にも、下痢と便秘を繰り返す・肛門痛・治りにくい痔がみられる場合もあります。また、大腸ポリープがみつかったことがある・10年以上潰瘍性大腸炎に罹患している・家族に大腸がん患者がいる場合も大腸がんになるリスクがありますので注意が必要です。
大腸がんの検査
便に答えが詰まっているといっても過言ではないほど、便潜血反応検査は重要です。まずは体内で起きている異変に気づけるかどうかが大切ですので、大腸がんにおける検査と、がんの広がりや転移などを調べる検査についてご紹介していきます。
病理検査
内視鏡検査の際に病変部の一部を採取し、プレパラートにのせ顕微鏡で観察する検査です。この病理検査により、がんであるかどうか正確な診断が下され、以下の状態を確認します。
- がんが取り切れているか
- がんの深達度
- 静脈・リンパ管への浸潤
- がん組織の種類
これらを踏まえ、外科治療の必要性を判断していきます。
CT検査
腹部のCT検査は肝臓への転移や、がん発生箇所の周辺臓器への病変状態を調べる検査です。胸部CT検査は、肺への転移を調べます。
妊娠中の方にはX線を用いるCT検査ができませんが、大腸内視鏡では確認しにくい大腸のヒダの外部の組織に転移があるかどうかを観察できることや体への負担が軽いことがメリットです。
大腸内視鏡検査
便潜血反応検査で陽性が出た場合に、詳しく検査するための精密検査のひとつです。肛門から内視鏡を挿入し、大腸全体を観察しながら病変部位やその周辺を採取して、病理検査にて確定診断をします。
検査中はやや痛みを感じることもありますが、がん細胞が大腸表面や粘膜の浅い部分にある場合はこの内視鏡検査で除去が可能です。このように診断から病変部の切除まで行えるので、がんを疑う場合は大腸内視鏡検査を行います。
便潜血反応検査
腫瘍やポリープからのわずかな出血をみつけるための検査で、がんを見逃さないように通常2日に分けて便を採取します。この結果で要精密検査になった場合は大腸内視鏡検査へ進みます。
便の検査をすることに恥ずかしさや躊躇いがあり、便潜血反応検査をしばらく受けていない方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、女性のがん死亡率第一位は大腸がんです。この便検査を毎年受診すると33%、2年に一度受診すると20%もの死亡率が減少することがわかっています。
特に初期は無症状な大腸がんですので、病気に気づくための大切な第一歩となります。年に一回、便潜血反応検査を受けましょう。
注腸検査
大腸の粘膜にできた病変・がんの大きさや形・腸の位置やポリープ・がんの発生箇所を診断するための検査です。
肛門から空気と造影剤(バリウム)を入れて大腸全体をX線撮影します。注腸検査ではがんの組織診断やポリープの切除はできません。ただし過去に手術経験があり、その際の癒着等で内視鏡が届かず検査がしにくい位置にある盲腸なども検査が可能です。
大腸がんの初期症状
早期がんの場合、痛みや肉眼で確認できるような自覚症状がありません。検診で偶然発見される例がほとんどです。
早期がんは大腸粘膜表面から粘膜下層までの浸潤とされており、がん細胞が粘膜内に留まっている場合はほとんどリンパ節への転移は心配ありません。
大腸がんの主な症状
大腸は右下腹部からスタートし、時計回りに1周する全長約1.5~2mの臓器です。S状結腸のようにカーブしている部分など、腫瘍ができる位置によっても症状が異なります。
例えば左側結腸・直腸に腫瘍がある場合は固形の便で、肛門に近いため血便・粘血便になりやすいです。排便習慣の変化で便秘と下痢を繰り返す場合や、便意があるのにほとんど排便しないような、しぶり便になる傾向があります。右側結腸に腫瘍がある場合は、液状の便になりやすいため腸内の通過障害が起きにくく、病気が進行してから病変に気づくといったケースが多くみられます。
血便
がんが進行していくと、やがて大きくなった腫瘍の表面が削れて出血が起き、血の混じった便・黒い便が出るようになります。少量の出血では便が多少黒っぽくなる程度ですが、黒い便が続くようでしたら注意が必要です。
トイレで便器の水が真っ赤になったと驚いて受診されるケースもあり、血便の原因は痔や腸炎の場合もありますが、大腸がんの可能性も視野に入れ早めに受診をすることをおすすめします。
下痢
大きくなった腫瘍により腸の内側が狭くなると、便が通りにくくなり下痢や便秘を繰り返すといった便通異常を起こしやすくなります。さらに腫瘍が大きくなると、食べ物が通れなくなり腹痛の症状が現れやすくなります。
貧血
消化管からの慢性出血が起こることで、大量の鉄分が失われるため貧血になります。大腸がんの進行により表面から血液がじわじわとにじみ出てきますが、長期間出血が続くことでヘモグロビンを作るための鉄が不足し、貧血の症状が出るようになるのです。
貧血の症状としては個人差があり、少しでも酸素を運ぼうと心拍数が上がる動悸や、疲労感・倦怠感として現れる方もいらっしゃいます。
また、顔色が悪い・爪が割れたり反り返ったりする・味覚症状や舌がヒリヒリするといった症状が現れるケースもあります。
便が残っている感じがする
ある程度、腫瘍が大きくなってくると腸の内側の空間が狭くなり便痛が悪くなりますので、残便感などの便通異常が起きやすくなります。
腹痛
腫瘍が大きくなると食べ物が通りにくくなり、腹痛が起きやすくなります。また、腫瘍のある位置によっても症状が異なり、下行結腸・S状結腸・直腸のがんは便通が悪くなることで腹痛や嘔吐の症状が出やすいといわれています。
嘔吐
嘔吐も、大腸が大きくなった腫瘍で内側が狭くなり現れる症状のひとつです。こちらも早期がんではみられないため、ステージが進行し腸閉塞が起こると嘔吐・膨満感・吐き気といった症状が出るようになっていきます。
大腸がんについてよくある質問
ここまで大腸がんの便と特徴などを紹介しました。ここでは「大腸がんの排便の変化とステージ」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。
大腸がんが進行すると排便に変化はありますか?
甲斐沼 孟(医師)
初期症状はほとんどみられませんが、進行すると排便に変化がみられるようになります。大腸がんの腫瘍は便とこすれるだけで出血しますので、出血量によっては排便の際に便器の水が赤くなるほど変化がわかる場合があります。その他にも酸化して黒くなった血が混じり黒っぽい便が出る、便秘・下痢・便が細くなるといった症状です。
大腸がんの治療方法について教えてください。
甲斐沼 孟(医師)
大腸がんのステージは0~4期まであります。ステージ0~1期は下部消化管内視鏡または手術による治療を行い、ステージ2~3期は手術を中心とした治療を行います。4期は必要に応じて手術を行い、抗がん剤治療が中心です。主な治療法は以下の4種類です。
- 手術
- 抗がん剤治療
- 放射線治療
- 免疫療法
手術療法には腹腔鏡手術・開腹手術・ロボット支援手術・下部消化管内視鏡があります。進行中のがんに対して有効な手段です。いずれの手術方法も、それぞれメリットとデメリットが存在しますので、患者さんに合わせた方法を相談して決めていきます。抗がん剤治療は、がんが進行し手術では取り除くことが難しいステージ4期の患者さんに対して有効で、薬剤が全身に行き渡るためがんの発生箇所に関わらず効果が期待できます。放射線療法は、腫瘍を小さくする・疼痛緩和の効果があり、免疫療法は抗がん剤の効果が認められない方へ行う治療法です。
編集部まとめ
大腸がんの便について解説しました。特徴を理解しておくと、今後ご自身の身を守るためのヒントにもなり、大切な方をサポートできるかもしれません。
また、便に異常が出たからといって心配しすぎるのもよくありません。ご自身だけで判断せず、まずは医師に相談してみてください。
初期症状がない病気ですので、進行してから手遅れになる前に気づくことが大切です。年に一度は便潜血反応検査を必ず受診しましょう。
「大腸がん」と関連する病気
「大腸がん」と関連する病気は7個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
ポリープが多発する大腸ポリポーシスは、家族性ポリポーシスの場合親から子へ遺伝することがわかっています。がん化するケースが多くみられるため、早めに治療することが大切です。
「大腸がん」と関連する症状
「大腸がん」と関連している、似ている症状は5個ほどあります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
関連する症状
- 血便(便通異常
- 腹痛
- 腹部のはり
- 貧血症状
- 食欲不振
- 体重減少
ゆっくりと進行するがんですので症状も徐々に現れてきます。少しでも異変に気づくためにも、定期的に検診を受けることが何より重要な対策になります。