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「子宮体がんの手術方法」はご存知ですか?症状や合併症についても解説!【医師監修】

 更新日:2023/12/27
「子宮体がんの手術方法」はご存知ですか?症状や合併症についても解説!【医師監修】

子宮体がんは、子宮頸がんよりなじみのない病名かもしれません。しかし、2つの子宮がんを比較すると、1年間に診断される患者数が多いのは子宮体がんです。

今回の記事では、この子宮体がんについて概要・主な症状・手術方法などを詳しく解説します。

記事の後半では、手術の後に見られる合併症についても紹介しますので、ぜひ治療後の生活の参考になさってください。

馬場 敦志

監修医師
馬場 敦志(宮の沢スマイルレディースクリニック)

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筑波大学医学群医学類卒業 。その後、北海道内の病院に勤務。 2021年、北海道札幌市に「宮の沢スマイルレディースクリニック」を開院。 日本産科婦人科学会専門医。日本内視鏡外科学会、日本産科婦人科内視鏡学会の各会員。

子宮体がん(子宮内膜がん)とは?

子宮体がんは、子宮の内側にある「子宮内膜」にできるがんです。子宮体がんの発症者数は更年期を迎える40代以降に増加するため、中高年の女性は特に発症リスクが高いといえるでしょう。
しかし、20〜30代でも不妊治療・別の婦人科疾患での受診をきっかけに子宮体がんが発見されるケースがあります。年齢にかかわらず、気になる症状がみられたら産婦人科へ相談することが早期発見のカギとなります。

子宮体がんの症状

子宮体がんと同じく子宮のがんである「子宮頚がん」は、市町村などが行う子宮がん検診で定期的に検査を受けられます。
しかし、子宮体がんについては健診項目には入らない場合が多いため、患者さん自身が症状をきっかけに受診をする必要があります。産婦人科に相談するべき、子宮体がんが疑われる症状にはどのようなものがあるのでしょうか。

出血

子宮体がんの代表的な症状として不正性器出血(不正出血)があります。不正性器出血とは、月経ではないにもかかわらず性器からの出血がみられる症状です。
不正性器出血が起こる原因には、子宮体がんのほか下記のようなものがあります。

  • 炎症
  • 外傷
  • 妊娠
  • 閉経
  • 無排卵周期症

原因の中には緊急性が低いものもありますが、緊急性・治療の必要性を確認するためにも不正性器出血がみられたら早めに産婦人科を受診しましょう。

排尿時痛

子宮体がんが進行して腫瘍が大きくなると、尿道が腫瘍で圧迫されることによりスムーズに排尿できなくなることがあります。尿道が狭くなった状態で排尿すると痛みを感じることがあるでしょう。
また、腎臓・尿道は女性器と位置が近いので、子宮体がんが転移しやすいといわれています。こうした泌尿器系の臓器にがんが転移した場合に見られる代表的な症状が排尿時痛・血尿です。

下腹部痛

腎臓・尿道以外に子宮体がんが転移しやすい部位としては膣・骨盤壁などが挙げられます。子宮体がんがこうした部位へ広がっていくと、強い下腹部痛・腰痛を感じる患者さんもいるでしょう。

排尿のしにくさ

子宮体がんが増大して尿道を圧迫したり腎臓にがんが転移したりすると、先ほど紹介した排尿時痛のほかに尿が出にくくなる可能性もあります。

腹部膨満感

子宮体がんの増大により、腹部膨満感(お腹の張り)を感じることがあるでしょう。また、子宮体がんが子宮の外まで広がると腹水が溜まることもあり、腫瘍でなく腹水によりお腹が圧迫されるように感じる方もいます。

子宮体がんの治療方法とは?

ここまで、子宮がんのサインと考えられる症状をいくつか紹介してきました。このような症状をきっかけに受診して「子宮体がん」と診断された場合、どのような治療を受けるのでしょうか。
子宮体がんの治療には、大きく分けて下記の4種類があります。

  • 薬物療法(化学療法)
  • 放射線治療
  • 内分泌療法(ホルモン療法)
  • 手術

1つめの薬物療法は、がんに対して「抗がん剤」を投与することで、病巣の縮小を目指す治療法です。薬物療法は特定の病巣だけでなく全身に効果が期待できる治療法のため、手術後の再発防止のため術後に使用することが多いでしょう。
また、手術で癌の病変を切除し切れなかった場合や手術では切除できない部位に病変が残存している場合等に用いられることもあります。
また、子宮体がんが進行して範囲が広がり手術できない場合は、抗がん剤でがんを小さくしてから手術を行う場合があります。
2つめの放射線治療は、高エネルギーのX線・ガンマ線などを病巣に照射することでがん細胞を攻撃し、小さくする治療法です。がんによる痛み・出血を緩和するほか、手術ができない場合の治療法として選択されることもあります。
3つめの内分泌療法は、女性ホルモンを用いた治療法です。子宮体がんは女性ホルモンの一つであるエストロゲンの作用で増大するといわれていますが、もう1つの女性ホルモン「プロゲステロン」は子宮体がんを縮小させる可能性がある物質です。
化学療法を行うメリットが低いと判断された場合に、手術後の再発防止などを目的として内分泌療法を行うことがあります。
さらに、患者さんがこれから結婚・出産を考えている場合は妊孕性(にんようせい)を保つために、手術による女性器の摘出は行わず内分泌療法を検討する医療機関もあります。4つめの手術については、次の見出しで詳しく解説しますので、手術の方法について知りたい方は参考になさってください。

子宮体がんの手術方法

子宮体がんといわれたら、がんが進行している・持病があるなどの理由で手術ができない場合を除いて治療方法の第一選択は手術になるでしょう。
子宮体がんの手術は、切除の範囲により大きく3種類に分けられます。それぞれ、どれくらいの切除を行うのかみてみましょう。

単純子宮全摘出術

子宮体がんの手術の基本的な内容は、下記の臓器の摘出です。

  • 子宮頚部を含む子宮全体
  • 両側付属器 (左右の卵巣・卵管)

子宮体がんの手術のうち、こうした女性器のみを摘出する手術が単純子宮摘出術です。 単純子宮摘出術は開腹手術で行うことが多いですが、2014年から腹腔鏡下手術にも医療保険が適用されるようになり、現在では腹腔鏡下手術が可能な医療機関が増えています。
がんの広がり・病気の進行度・医療機関の設備などの条件が揃えば腹腔鏡手術のほかロボット手術の適応となる場合もあります。

準広汎(こうはん)子宮全摘出術

がんが進行し、女性器の周りにまで広がっている可能性があるときに選択される術式が準広汎子宮全摘出術です。準広汎子宮全摘出術は単純子宮全摘出術よりも範囲を拡大して、子宮を支えている組織の一部も切除します。

広汎子宮全摘出術

手術前の検査で子宮体がんが子宮頸部(子宮の入口)まで広がっていると確認された場合、準広汎子宮全摘出術よりもさらに広い範囲を切除する広汎子宮全摘出術を行うことがあります。
広汎子宮全摘出術は、子宮・付属器だけでなく、膣や女性器を支えている組織を広範囲に切除する手術です。

手術後の合併症

手術による子宮・付属器・周囲の組織の切除は必要性があって行うことです。しかし、切除を行ったことにより手術後の生活で不便・不調を感じることもあるでしょう。
ここからは、術後に起こる可能性のある合併症をいくつか紹介します。

排尿のトラブル

手術の際に臓器だけでなく周囲の組織を切除した場合、排尿に関わる神経・筋肉などが傷つくことがあります。こうした場合に現れるのが、下記のような排尿トラブルです。

  • 排尿のしにくさ
  • 尿意を感じない・感じにくい
  • 尿漏れ

また、手術による傷が治癒するまでは痛み・違和感によりお腹に力が入りにくくなります。そのため、神経などに異常がない方でもトイレへの移動・排尿・排便に困難を感じる患者さんが多いでしょう。また、手術と合わせて放射線治療を行うと、放射線の影響により膀胱炎が起こる場合があります。

便秘

手術後は、排尿トラブルと同じく神経・筋肉の損傷により排便の調節が難しくなったり、術後の痛みによりいきむことが出来なかったりするため便秘になる場合があります。
また、手術に伴い補助的に放射線治療を行う方は放射線による副作用にも注意が必要です。副作用は腸の症状として表れることも多く、便秘のほか直腸炎腸閉塞・下痢などがあります。

足がむくむ

手術の際に、子宮付属器だけでなく骨盤内腹部大動脈周囲のリンパ節を郭清することがあります。これは、リンパ節への転移が見られたり、その可能性が高いと判断されたりした場合に行う方法です。リンパ節が覚醒されても身体に大きな影響はないとされていますが、リンパ節を郭清するとリンパ液が十分に循環せず皮膚の下に溜まり、手術した付近がむくむことがあります。
このような浮腫を「リンパ浮腫」と呼びますが、手術後すぐではなく数年後に急に現れることもあるため注意が必要です。リンパ郭清をしたことがある方にリンパ浮腫が見られたら、自己判断でマッサージなどはせずに一度医療機関に相談することをおすすめします。

子宮体がんについてよくある質問

ここまで子宮体がんの手術について紹介しました。ここでは「子宮体」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。

子宮体がんは再発しますか?

馬場 敦志医師

子宮外にがんが広がっていない早期の状態で手術した場合、子宮体がんの再発率は10%前後です。手術後に再発が見られる部位としては膣・骨盤内・腹腔内・遠隔臓器などが多いでしょう。治療の際は、再発を防ぐために手術だけでなく化学療法などを併用することもあります。

子宮体がんの予後について教えてください。

馬場 敦志医師

がんの予後や治療効果の指標として頻繁に用いられるのが「5年生存率」です。この指標では、診断から5年後に対象とした集団の何割の方が生存しているかがパーセンテージで示されています。子宮体がんの5年生存率は84.5%と、がんの中では予後が良好な部類です。このように5年生存率が高い理由としては、自覚症状により早期発見しやすいがんであることが挙げられます。しかし、がん細胞には複数のタイプがあり、種類ごとに悪性度が異なります。子宮体がんに見られるがん細胞のタイプは類内膜(るいないまく)がん・漿液性(しょうえきせい)がん・明細胞(めいさいぼう)がんの3つで、このうち漿液性がん・明細胞がんは悪性度の高い細胞です。どのタイプのがんになったかにより、予後は異なります。細胞型ごとの5年生存率は下記の通りです

  • 1期の類内膜がんは95%
  • 2期の類内膜がんは90%
  • 3期の類内膜がんは77%
  • 漿液性がん・明細胞がんは66~65%

もし、罹患した子宮体がんが悪性度の高いがん細胞によるものだった場合は、子宮体がん全体のデータよりも5年生存率や治療成績が低くなる可能性があります。

編集部まとめ

子宮体がんは、がんの中では予後が良い病気とされています。しかし、他のがんと同様に手術の後も再発の可能性があります。

再発を可能な限り減らすためには、気になる症状があれば早期に受診して検査を受けることと、病期に合った治療を行うことが大切です。

手術には大きく分けて3種類あり、転移したがんへの対応・再発予防のために子宮や付属器の周りを大きく切除することもあります。

切除する部分が大きければ転移や再発のリスクが下がる可能性はありますが、術後に合併症が起こるリスクは上がります。

納得できる治療を受けるためにも、治療内容を決める際には医師とよく相談して、分からないことはしっかりと事前に質問しておきましょう。

子宮体がんと関連する病気

「子宮体がん」と関連する病気は3つあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

関連する病気

  • 子宮内膜増殖症
  • 尿路がん
  • 腹膜播種

子宮内膜増殖症は、子宮内膜が異常に増える病気です。子宮内膜増殖症の検査をきっかけに子宮体がんが見つかることがあります。また、子宮体がんが進行して子宮の外まで広がることで、尿路がん・腹膜播種などになることがあります。

子宮体がんと関連する症状の症状と関連する症状

「子宮体がん」と関連する症状は3つあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

関連する症状

不正出血は子宮体がんの代表的な症状です。月経ではない出血が気になったら、早期に医療機関を受診することをおすすめします。また、子宮体がんが大きくなったり周りに転移し始めると排尿のしにくさ・腹部の張りを感じる方もいます。

この記事の監修医師