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「炎症性乳がんの前兆となる初期症状」はご存知ですか?原因についても医師が解説!

 公開日:2025/12/21
「炎症性乳がんの前兆となる初期症状」はご存知ですか?原因についても医師が解説!

炎症性乳がんとは?Medical DOC監修医が炎症性乳がんの症状・原因・生存率・治療法や何科へ受診すべきかなどを解説します。気になる症状がある場合は迷わず病院を受診してください。

山田 美紀

監修医師
山田 美紀(医師)

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慶應義塾大学医学部卒業。初期臨床研修修了後、総合病院や大学病院にて形成外科、外科、乳腺外科の研鑽を積んできた。医学博士。日本外科学会 外科専門医、日本乳癌学会 乳腺認定医、検診マンモグラフィー読影認定医(A判定)の資格を有する。

「炎症性乳がん」とは?

炎症性乳がんとは、乳房の表面に急速に悪化する赤み、腫れや熱感などの症状が現れる特殊な乳がんです。乳がんのうち約0.5%〜2%であり、稀なタイプのがんです。一般的な乳がんのように硬いしこりを触れることが少なく、皮膚の毛穴が目立つようになり凸凹することもあります。進行が早いため、早期の発見と治療がとても重要です。

炎症性乳がんの代表的な症状

炎症性乳がんによくある症状についてご紹介します。

乳房の赤み

乳房の皮膚の広範囲から全体にわたって、急激に赤く変化します。しこりとして触れることは少ないです。細菌による急性乳腺炎でも同じような症状が現れますが、乳房に徐々に悪化する赤みが出た場合は、炎症性乳がんの可能性も否定できないため、早めに乳腺科を受診することをおすすめします。緊急性が高いため、「そのうち治るだろう」と放置しないことが大切です。

乳房の左右差

乳房全体がむくんで大きくなることがあります。左右で乳房のサイズに差が出ることで変化に気がつくことがあります。今までになかった乳房の左右差が出てきた場合は、早期に乳腺科を受診しましょう。

オレンジの皮のような凸凹の皮膚になる

乳房の皮膚が硬く、分厚くなり、毛穴の部分の凹みが目立つことがあります。その状態を「オレンジの皮のような皮膚(peau d'orange)」と表現します。これは、皮膚のリンパ管ががん細胞で詰まり、リンパが鬱滞することで起こります。この症状は進行した炎症性乳がんの典型的なサインの一つであるため、気が付いたら直ちに専門医を受診してください。

炎症性乳がんの前兆となる初期症状

炎症性乳がんは悪化するスピードが速く、初期には炎症に似た急速な変化が現れます。

乳房の急な赤み

乳房の皮膚の広範囲または全体が急に赤くなり、数週間から数ヶ月で急速に広がることがあります。初期の段階では乳腺炎と見分けることが難しい場合もありますが、授乳期でもないのに急な赤みを認めた時には、乳腺科で詳しく調べる必要があります。

乳房の腫れ

乳房全体が腫れて、大きくなることがあります。一般的な乳がんのような「はっきりとしたしこり」を自覚することは少なく、乳房全体の厚み、硬さや重だるさに気がつくことが特徴です。このような違和感があれば乳腺科を受診しましょう。

乳房の熱感

乳房に熱を帯びたような感覚を自覚することがあります。良性の病気である乳腺炎でも同じような症状が出ますが、乳腺炎では抗生剤で症状が改善するのに対し、炎症性乳がんでは改善しません。抗生剤を飲んでも症状が良くならない場合は、速やかに乳腺科に相談しましょう。

炎症性乳がんの原因

炎症性乳がんの直接的な原因はまだ完全には解明されていません。ここでは一般的な乳がんのリスク要因についてご紹介します。

生活習慣

閉経後の肥満は乳がんの原因となると報告されています。また、過度な飲酒や運動不足もリスクを高めることが研究で示されています。食習慣や運動習慣に気をつけ、適正な体重を維持することが予防の観点では重要です。

女性ホルモン(エストロゲン)への長期間の曝露

エストロゲンにさらされている期間が長いほど、乳がんのリスクが高くなります。具体的には「月経のある期間が長い(初経が早い・閉経が遅い)」「出産や授乳経験がない」などが要因となります。また、ホルモン補充療法やピルの長期間使用も、わずかながらリスクを高める可能性があります。

遺伝的要因

乳がん全体の約5〜10%は遺伝性とされています。血縁者に乳がん患者がいる場合、リスクは2倍以上になるというデータもあります。特に「BRCA1/2遺伝子」に病的バリアントがある場合は、乳がんや卵巣がんのリスクが高まります。一定の条件を満たせば、保険適応で遺伝子検査を受けることも可能です。

炎症性乳がんのステージ別・生存率

炎症性乳がんは診断された段階で、すでに周囲に広がっている「局所進行乳がん(ステージ3以上)」に分類されます。

炎症性乳がん・ステージ3の生存率

全乳がんのステージ3の5年生存率は77.3%と報告されています。炎症性乳がんで遠隔転移がなければステージ3Bまたは3Cとなります。急速に進行するため、リンパ節(腋窩や鎖骨上など)への転移を伴うことが多いです。
検査ではマンモグラフィ、エコー、MRI、CT、PET-CTなどの画像診断と針生検を行います。ステージ3では完治を目指した集中的な治療(術前薬物療法、手術、放射線)が行われます。

炎症性乳がん・ステージ4の生存率

全乳がんのステージ4の5年生存率は38.6%と報告されています。ステージ4は乳房から離れた臓器(骨、肺、肝臓など)に転移している状態です。この段階では完治は難しくなりますが、薬物療法によってがんの進行を遅らせ、症状を和らげることを目指します。転移先によって痛み、咳、息苦しさ、食欲不振などの症状が現れます。

炎症性乳がんのステージ別・治療法

炎症性乳がん・ステージ3の治療法

まず、強力な抗がん剤(化学療法)を中心に薬物治療を開始します。がんのタイプにより抗HER2療法や免疫チェックポイント阻害薬を併用します。
約半年間の通院治療でがんが小さくなり、手術が可能と判断された場合、1〜2週間入院して「乳房全切除術」を行うのが一般的です。術後は再発を防ぐために放射線治療が必須となり、さらにホルモン療法などを継続します。

炎症性乳がん・ステージ4の治療法

生活の質(QOL)を保ちつつ、進行を抑えるための薬物治療が主となります。通院での治療が基本で、乳がんのタイプに合わせてホルモン療法、分子標的薬、化学療法などを組み合わせます。特定の遺伝子変異がある場合はPARP阻害薬も検討されます。また、痛みの緩和のために、転移部位への放射線治療を行うこともあります。

「炎症性乳がん」についてよくある質問

ここまで炎症性乳がんについて紹介しました。ここでは「炎症性乳がん」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。

炎症性乳がんの進行スピードは早いのでしょうか?

山田 美紀山田 美紀 医師

炎症性乳がんは一般的な乳がんと比べて、急速に悪化することが多いです。数週間から数か月で悪化することもあります。異変に気がついた場合は、早めに乳腺科を受診することが重要です。

炎症性乳がんは完治しますか?

山田 美紀山田 美紀 医師

ステージ3の場合は完治を目指して治療を行います。遠隔転移がなく、抗がん剤治療がよく効き、手術をすることができれば、炎症性乳がんであっても完治する可能性があります。

まとめ

炎症性乳がんはしこりを触れることが少なく、乳房の赤みや腫れといった症状が出ます。一般的な乳がんと比較して、急に悪化することの多いがんです。良性の病気である乳腺炎と同じような症状であり、診断が難しいこともあります。気になる症状が良くならない場合は、早めに乳腺科を受診することをおすすめします。

「炎症性乳がん」と関連する病気

「炎症性乳がん」と関連する病気は2個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

乳腺科の病気

  • 急性乳腺炎

婦人科の病気

  • 卵巣がん(遺伝性乳がん卵巣がん症候群の場合)

急性乳腺炎は炎症性乳がんとは全く異なる病気ですが、症状が似ているため、自己判断せずに医療機関を受診しましょう。また、BRCA1/2遺伝子の病的バリアントを持つ場合、乳がんだけではなく卵巣がんになるリスクも高くなります。

「炎症性乳がん」と関連する症状

「炎症性乳がん」と関連している、似ている症状は5個ほどあります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

関連する症状

  • 乳房の赤み
  • 乳房の腫れ
  • 乳房の熱感
  • 皮膚のオレンジの皮のような変化
  • 乳房の左右差

炎症性乳がんでは乳房のしこりを触れることは少なく、乳房の皮膚の変化、赤み、腫れなどが急速に進行します。

この記事の監修医師