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「コーヒーが原因で胃ポリープ」ができることはあるの?医師が徹底解説!

 更新日:2025/11/27
「コーヒーが原因で胃ポリープ」ができることはあるの?医師が徹底解説!
コーヒーが原因で胃ポリープができることはあるの?Medical DOC監修医が胃ポリープができやすい人の食生活・特徴・予防する食べ物や何科へ受診すべきかなどを解説します。
和田 蔵人

監修医師
和田 蔵人(わだ内科・胃と腸クリニック)

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佐賀大学医学部卒業。南海医療センター消化器内科部長、大分市医師会立アルメイダ病院内視鏡センター長兼消化器内科部長などを歴任後の2023年、大分県大分市に「わだ内科・胃と腸クリニック」開業。地域医療に従事しながら、医療関連の記事の執筆や監修などを行なっている。医学博士。日本消化器病学会専門医、日本消化器内視鏡学会専門医、日本肝臓学会肝臓専門医、日本医師会認定産業医の資格を有する。

「胃ポリープ」とは?

「胃ポリープ」は、胃の内側をおおっている粘膜(ねんまく)が、部分的にイボのように盛り上がった「できもの」のことを指します。健康診断や人間ドックなどで胃カメラ(内視鏡)検査を受けた際に、偶然見つかることも少なくありません。 胃ポリープにはいくつかの種類があり、その多くは良性で、特に治療を必要としないものが多いとされています。しかし、種類によっては大きくなったり、まれにがん化する可能性が指摘されたりするものもあるため、どのような種類のポリープなのかを正確に診断してもらうことが大切です。

胃ポリープの種類

胃ポリープは、主に「胃底腺(いていせん)ポリープ」と「胃過形成性(いかけいせいせい)ポリープ」の2つのタイプに分けられます。

胃底腺ポリープ

胃底腺ポリープは、胃ポリープの中で最も多く見られるタイプです。胃酸などを分泌する「胃底腺」という組織が、部分的に増えることによって形成されると考えられています。 このポリープは、ヘリコバクター・ピロリ(ピロリ菌)に感染していない、比較的きれいな胃の粘膜にできることが多いのが特徴です。基本的には良性であり、がん化することは極めてまれとされています。 そのため、多くの場合、特別な治療は必要とせず、経過観察となることがほとんどです。症状が出ることもほとんどなく、胃カメラ検査で偶然発見されます。

胃過形成性ポリープ

胃過形成性ポリープは、胃の粘膜が炎症などによってダメージを受け、それを修復しようとする過程で細胞が過剰に増殖してできるポリープと考えられています。 こちらは胃底腺ポリープとは対照的に、ピロリ菌感染によって引き起こされる慢性的な胃の炎症(慢性胃炎)と深い関連があるとされています。 小さい場合は症状がないことが多いですが、ポリープが大きくなると、その表面がもろくなって出血しやすくなることがあり、注意しなければなりません。出血が続くと、貧血(ふらつき、めまい、動悸など)の原因となる場合もあります。 また、ごくまれではありますが、ポリープが大きくなるにつれて、がん化する可能性も指摘されています。そのため、このタイプのポリープが見つかった場合は、ピロリ菌の検査や除菌治療が推奨されたり、定期的な胃カメラ検査での経過観察が必要です。

コーヒーが原因で胃ポリープができることはあるの?

「コーヒーをよく飲むと胃ポリープができるのではないか」と心配される方がいらっしゃるかもしれません。しかし、現時点において、コーヒーの摂取が直接的に胃ポリープ(胃底腺ポリープや胃過形成性ポリープ)の発生原因になるということを示す、明確な科学的根拠は確立されていません。ただし、コーヒーに含まれるカフェインには、胃酸の分泌を促す作用があることが知られています。そのため、人によっては、特に空腹時や一度に多量に飲んだ場合に、胃がもたれたり、胸やけがしたりといった不快な症状を感じることがあるかもしれません。もしコーヒーを飲んで胃の調子が悪くなるように感じる場合は、飲む量を控える、食後に飲むようにする、カフェインレスのコーヒーを選ぶなどの工夫をしてみるのも一つの方法です。 胃ポリープの発生には、コーヒー単体の影響というよりも、ピロリ菌への感染や、後述する食生活全体、喫煙、遺伝的な要因などが、より複雑に関わっていると考えられています。

胃ポリープができやすい人の食生活

胃ポリープ、特にピロリ菌感染と関連する胃過形成性ポリープは、胃の粘膜に慢性的な炎症や負担をかける食生活と関連がある可能性が指摘されています。

塩分の多い食事

塩分の多い食事は、胃の粘膜を直接刺激し、荒らす原因になると考えられています。塩分濃度の高い環境は、ピロリ菌が胃にすみつきやすくなる一因とも言われています。 漬物、塩辛、干物、インスタントラーメンや加工食品など、塩分を多く含む食品の摂りすぎには注意が必要かもしれません。

刺激物が多い食事

唐辛子などの香辛料を多く使った極端に辛い食べ物や、熱すぎるもの、冷たすぎるものも、胃の粘膜にとっては刺激となります。 これらの刺激物が慢性的に胃に加わることで、胃粘膜の防御機能が弱まり、炎症が起きやすくなる可能性があります。

油物が多い食事

揚げ物や脂身の多い肉類など、脂肪分の多い食事は、消化されるまでに時間がかかります。そのため、胃の中に留まる時間が長くなり、胃酸の分泌も促されるため、胃に負担がかかりやすいと言えます。 胃もたれなどを感じやすい方は、高脂肪食を控えるようにしましょう。

食品・食生活

食事の時間が不規則であったり、夜遅い時間に食事をしたり、早食いや「どか食い」をしたりする習慣も、胃腸のリズムを乱す原因となります。 一度に大量に食べると胃が急激に引き伸ばされ、胃酸も多く分泌されるため、胃に大きな負担がかかります。

過度なアルコール摂取

食生活と密接に関連する生活習慣として、アルコール(お酒)の過剰な摂取も挙げられます。高濃度のアルコールは、胃の粘膜を直接傷つける可能性があります。 また、喫煙も胃の血流を悪化させ、胃粘膜の防御機能を低下させると考えられており、胃の健康にとっては避けるべき習慣の一つです。

胃ポリープができる原因

胃ポリープができる背景には、食生活以外にもいくつかの原因が考えられています。

ヘリコバクター・ピロリ菌

胃ポリープの原因として、最も重要視されているものの一つが「ヘリコバクター・ピロリ(ピロリ菌)」の感染です。 特に胃過形成性ポリープは、ピロリ菌感染による慢性胃炎(萎縮性胃炎)を背景に発生することが多いとされています。ピロリ菌が胃の粘膜にすみつくことで慢性的な炎症が起こり、その結果、粘膜の細胞が増殖してポリープが形成されると考えられています。 胃の不快感、胃痛、もたれなどの症状がある場合や、健康診断でピロリ菌感染を指摘された場合は、消化器内科を受診し、検査や(必要であれば)除菌治療について相談してみましょう。

加齢

年齢を重ねることも、胃ポリープの発生に関係する要因の一つです。 ピロリ菌感染による慢性胃炎が長く続くと、胃の粘膜が薄くやせてしまう「萎縮(いしゅく)」という状態に進行することがあります。胃過形成性ポリープは、このような萎縮した粘膜に発生しやすいです。 一方で、胃底腺ポリープは、ピロリ菌に感染していない、年齢とともに変化した胃粘膜に見られることもあります。

遺伝的な要因

まれなケースですが、遺伝的な病気(例えば「家族性大腸腺腫症(FAP)」など)が原因で、胃にポリープ(主に胃底腺ポリープ)が多数発生することがあります。 また、一部の胃薬を長期間服用していると、胃底腺ポリープが発生しやすくなる可能性が指摘されていますが、多くは良性であり、服薬の中止で小さくなることもあると報告されています。 胃ポリープを指摘された場合は、自己判断せず、まずは消化器内科などの専門医に相談し、胃カメラ(内視鏡)検査でポリープの種類や胃の状態をきちんと調べてもらうことが大切です。

胃ポリープを予防する食べ物・食生活

ポリープの発生を完全に防ぐ特定の食べ物はありませんが、胃の健康を保ち、胃粘膜への負担を減らす食生活を心がけることが予防につながると考えられます。

バランスの取れた食事

特定の食品に偏るのではなく、まずは栄養バランスの取れた食事を基本とすることが重要です。 主食(ごはん、パン、麺類)、主菜(肉、魚、卵、大豆製品など)、副菜(野菜、きのこ類、海藻類など)をそろえ、多様な食品から必要な栄養素を摂るように心がけましょう。

胃粘膜保護作用のある食品をとる

胃の粘膜を保護したり、修復を助けたりする可能性があるとされる食品を意識的に取り入れるのもよいでしょう。 例えば、キャベツに含まれるビタミンU(キャベジン)や、オクラや山芋、なめこなどのネバネバした食品に含まれる「ムチン」という成分は、胃の粘膜を保護する働きがあると言われています。 また、粘膜の材料となる良質なたんぱく質(豆腐、白身魚、ささみなど)も適度に摂ることが大切です。ただし、これらだけを食べていればポリープができないというわけではありません。

よく噛んで、刺激物を避ける食生活

食事の内容だけでなく、食べ方や生活習慣も見直しましょう。 食事はなるべく決まった時間に、ゆっくりとよく噛んで食べることを意識してください。腹八分目を心がけ、胃に負担をかけないようにしましょう。 前述の通り、塩分や刺激物、高脂肪食を控えること、禁煙やアルコールの量を控える(節酒)ことも、胃の粘膜を守るためには非常に重要です。 また、ストレスも胃酸の分泌に影響を与えることがあるため、自分なりのリラックス方法を見つけることも大切です。

「胃のポリープとコーヒー」についてよくある質問

ここまで胃のポリープとコーヒーについて紹介しました。ここでは「胃のポリープとコーヒー」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。

胃カメラ前日はコーヒーを控えた方がいいのでしょうか?

和田 蔵人和田 蔵人 医師

はい、検査前日はコーヒーを控えるよう指示されることが一般的です。 コーヒーに含まれるカフェインが胃酸の分泌を促す可能性があり、胃の中の状態に影響を与えることが考えられます。 また、コーヒーの色素が胃の粘膜に付着してしまい、病変の観察がしにくくなる恐れもあります。特に、ミルクや砂糖を入れたカフェオレなどは、胃の中に残りやすいため避けるべきです。 胃カメラ検査の前日の食事や飲み物に関するルールは、検査の精度を高めるために非常に重要です。検査を受ける医療機関からの指示(例えば「前日の夜9時以降は絶食」や「飲んで良いのは水かお茶だけ」など)に必ず従ってください。

まとめ

胃ポリープにはいくつかの種類があり、最も多い「胃底腺ポリープ」はピロリ菌がいないきれいな胃にでき、基本的には良性で心配のないものがほとんどです。一方で、「胃過形成性ポリープ」はピロリ菌感染による慢性胃炎と関連があり、経過観察や治療が必要となる場合があります。 コーヒーが胃ポリープの直接的な原因になるという明確な証拠はありませんが、カフェインが胃酸分泌を促すため、胃の不快感がある方は摂取を調整してみるとよいかもしれません。 胃の健康を守るためには、コーヒー単体よりも、塩分や刺激物を控えたバランスの良い食生活、禁煙、節酒といった生活習慣全体を見直すことが大切です。 そして、胃過形成性ポリープや胃がんの予防において、ピロリ菌に感染しているかどうかを調べ、もし感染していれば除菌治療を受けることが非常に重要と考えられています。 健康診断などで胃ポリープを指摘された場合や、胃痛、胸やけ、もたれといった胃の不快な症状が続く場合は、自己判断せずに消化器内科などの専門の医療機関を受診し、胃カメラ(内視鏡)検査を受けて、ご自身の胃の状態を正確に確認することをお勧めします。

「胃のポリープ」と関連する病気

「胃のポリープ」と関連する病気は7個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

消化器系

  • 胃底腺ポリープ
  • 胃過形成性ポリープ
  • 胃腺腫
  • 慢性胃炎(萎縮性胃炎)
  • ヘリコバクター・ピロリ感染症
  • 胃がん
  • 家族性大腸腺腫症(FAP)
胃ポリープが見つかる背景には、胃の炎症やピロリ菌感染が隠れていることがあります。気になることがあれば医療機関にご相談ください。

「胃のポリープ」と関連する症状

「胃のポリープ」と関連している、似ている症状は6個ほどあります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

関連する症状

  • 胸やけ
  • 胃痛
  • 貧血(めまい、立ちくらみ)
  • 黒い便(タール便)
  • 食欲不振
これらの症状が複数当てはまる、あるいは長期間続く場合は、放置せずに医療機関で医師にご相談ください。

この記事の監修医師