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「ユーイング肉腫の初期症状」はご存知ですか?治療法も解説!【医師監修】

 公開日:2023/12/22
「ユーイング肉腫の初期症状」はご存知ですか?治療法も解説!【医師監修】

ユーイング肉腫とは、小児~若年にかけて年齢の若い人に発症する肉腫のことです。主な発症部位は骨ですが、それ以外の軟部組織にも発生します。

ただし発症する部位によってはわかりにくいため、診断が遅れるかもしれません。

ここでは、ユーイング肉腫の初期症状について解説します。原因・検査・治療方法についてもあわせて紹介するので、参考にしてください。

甲斐沼 孟

監修医師
甲斐沼 孟(上場企業産業医)

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大阪市立大学(現・大阪公立大学)医学部医学科卒業。大阪急性期・総合医療センター外科後期臨床研修医、大阪労災病院心臓血管外科後期臨床研修医、国立病院機構大阪医療センター心臓血管外科医員、大阪大学医学部附属病院心臓血管外科非常勤医師、大手前病院救急科医長。上場企業産業医。日本外科学会専門医、日本病院総合診療医学会認定医など。著書は「都市部二次救急1病院における高齢者救急医療の現状と今後の展望」「高齢化社会における大阪市中心部の二次救急1病院での救急医療の現状」「播種性血管内凝固症候群を合併した急性壊死性胆嚢炎に対してrTM投与および腹腔鏡下胆嚢摘出術を施行し良好な経過を得た一例」など。

ユーイング肉腫とは?

ユーイング肉腫という病気をご存じでしょうか。初めて聞いたという人もいるかもしれません。主な特徴としてあげられるのは下記の2つです。

  • 若い人に発症
  • 主な発症部位は骨

それぞれの特徴について解説するので、参考にしてください。

小児から若年成人に発症

ユーイング肉腫は子どもの骨・軟部組織に発生する肉腫で、悪性の場合は「がん」と診断されます。多くの症例では10代に集中しており、中学生・高校生くらいの年齢に発症しやすいとされている骨腫瘍です。
小児の間に発症する骨腫瘍の代表的なものとして骨肉腫がありますが、ユーイング肉腫は2番目に多く発症しています。年齢の中央値とされているのは15歳で、10代は発症例の3分の2を占めているのが現状です。
ただし乳児・40代以上の発症例も報告されているため、10代を超えれば発症しなくなるとはいえません。なお男性と女性の比率は1.6:1となっており、男性のほうが発症する確率が高いといえるでしょう。

主な発症部位は「骨」

主な発症部位は骨で、原発部位の75~80%を占めています。
しかし、骨のみに発症するとは限定できません。実際には体中の軟部組織での発症例もかなり多いのが現状です。ユーイング肉腫は骨の中でも幹部に多く発症することが知られています。人間には多くの骨がありますが、その中でも骨盤・大腿骨・脛骨・腓骨・胸壁・脊椎に発症が集中しているようです。
ただし、これらの部位に多くみられるというわけで限定されているわけではありません。ほかの骨に発症する可能性もあるので注意してください。多くのがんは転移しますが、ユーイング肉腫も同様です。その場合は骨に転移がみられることが多く、リンパ節・内臓などへの転移はまれとされています。
ただし、これも絶対とは言い切れないので注意してください。

ユーイング肉腫の初期症状

ユーイング肉腫の主な初期症状として知られているのは下記の2つです。

  • 病変部位の痛み・腫れ
  • 発熱

これらだけ見ると、ほかの病気・怪我と勘違いしてしまう人もいるかもしれません。症状がわかりにくいと思う人もいるでしょう。それぞれの症状について解説するので、参考にしてください。

病変部位の痛み・腫れ

ユーイング肉腫に罹患すると、病変部位に痛み・腫れがみられることがあります。痛みは長期間にわたって続くものではなく、一定時間をおいて再発する種類です。夜中に強く出ることもあります。痛みを感じることもあれば感じない期間もあるため、わかりにくいかもしれません。
また若年者に多い病であるため、成長痛・運動などが原因の外傷と診断されてしまうこともあります。一方の腫れについても初期症状の場合はほとんど確認できないかもしれません。発症部位が脛骨のような場所の場合は、指で触ってわかることもあるでしょう。
しかし骨盤などに発症した場合には触診では見つけにくいこともあります。結果的に診断が遅れてしまうので、注意が必要です。

発熱

病状が進むと、発熱を伴います。しかし、必ず熱が出るわけではありません。発症部位や病状によっては、発熱を伴わないケースもあります。これは言い換えるなら、熱が出ればユーイング肉腫を疑ったほうが良いともいえるでしょう。
脛骨・腓骨・骨盤などのような部分的な箇所における熱感を呈する状態から全身性の発熱症状へと変化 した場合には、注意してください。
内科でも良いですが、整形外科でも診断してくれるのでどちらかを受診しましょう。

ユーイング肉腫の原因

原因は染色体が関係しているといわれています。言い換えるなら、遺伝が関係しているということです。
しかし、なぜ発症するのかについては明らかになっていません。ユーイング肉腫の症例の多くでは、キメラ遺伝子が形成されていることが確認されています。キメラ遺伝子とは、2つの異なる遺伝子が融合した遺伝子のことです。白血病の原因の一つといわれています。
キメラ遺伝子は、母体の中で人間として形成される際には形成されるはずのないものです。いわゆる異物であり、場合によっては体に悪影響を及ぼすことがあります。ユーイング肉腫もこのパターンの一つといえるでしょう。しかし、詳しい原因については現在も研究が続いており、確かなことはわかりません。

ユーイング肉腫の検査法

初期段階では診断が難しいユーイング肉腫ですが、病院ではどのような検査を行って診断するのでしょう。主な検査方法は下記の3つです。

  • 画像検査
  • 血液検査
  • 病理検査

それぞれの検査でどのようなポイントに注目して診断を行うのか解説します。参考にしてください。

画像検査

画像検査にはさまざまな方法がありますが、ユーイング肉腫で行われるのは主に下記の4つです。

  • X線
  • CT
  • MRI
  • 骨シンチグラフィ

その目的は、原発の病巣を見つけることと転移の有無を調べるためです。
初期段階では触診による発見が困難なケースが多くあります。これらの画像検査を行うことで、小さな病巣も発見できるので早期発見もできるでしょう。また、転移を疑う場合にはあわせて骨髄検査も実施されることがあります。
ユーイング肉腫では、骨髄に転移するケースが多いからです。画像検査だけでは判断が難しいこともあるので、骨髄検査も実施されます。ただし、これは転移が疑われる場合のみです。転移の可能性が極めて低いと診断されれば実施されません。

血液検査

がんの診断を行うにあたって、多くのケースで用いられるのが腫瘍マーカーです。
血液検査の中でもがん罹患の判断に特化しているため、実施する病院は多いでしょう。しかし、ユーイング肉腫の場合は特定の腫瘍マーカーがありません。その代わり、LDH・血沈などに変化がみられることがあります。これらはほかの病気でも変化することがあるので、決定打にはなりません。しかし、疑うための材料にはなるので実施します。
ただし、今後の治療に際して薬剤に対するアレルギーなどを確認するためには血液検査が必要です。ユーイング肉腫が疑われる場合には血液検査を行うことが多くありますが、これは罹患の有無を調べるというよりは今後の治療のことを考えた術前検査といえるでしょう。

病理検査

ユーイング肉腫と診断するためには、病理検査が必須です。病巣の組織を採取して検査をし、確定診断を行います。目的はキメラ遺伝子の発見です。
ユーイング肉腫の多くのケースでみられる特徴的なキメラ遺伝子が発見されれば診断が確定され、本格的な治療がスタートします。仮にキメラ遺伝子が発見されない場合は他の病気が疑われます。ただし、罹患していないとも言い切れないので追加治療と並行してさらなる検査が行われるでしょう。

ユーイング肉腫の治療法

ユーイング肉腫に罹患した場合、どのような治療をするのでしょう。がんは怖い病気なので、先にその方法を知っておきたいと思う人もいるかもしれません。現在、多くの病院で行われている治療法は下記の3つです。

  • 化学療法
  • 外科療法
  • 放射線治療

これらだけで見ると、ほかのがんとあまり変わらないと思う人もいるでしょう。それぞれの治療法について解説するので、参考にしてください。

化学療法

ユーイング肉腫は、確定診断時に発症部位が限定されるケースが多くあります。
しかし、これは限定された部分のみに発症していると確定されているわけではありません。初期段階ではさまざまな検査をしても見つけにくい場合も多くあります。
限定的な治療をしている間に他部位の病巣が成長してしまうこともあるかもしれません。そのため、例えば脛骨のみに病巣が発見されても全身に転移していると考えて化学療法を行います。
治療法としては、4~6剤の多剤併用が一般的です。この方法を行った結果、5年間の無病率は69%という報告があるので効果があるといえるでしょう。

外科療法

発症部位によっては外科療法が行われることがあります。脛骨のような四肢に発症がみられた場合には手術によって病巣部分を取り除いたほうが良いといわれていますが、必ず行われるわけではありません。
また、脊椎のような場所に発症した場合は切除が難しいでしょう。外科療法の有無は、発症部位や病状によって判断がわかれるところです。
発症部位が四肢であっても必ず手術が行われるとはいえないので注意してください。

放射線治療

ユーイング肉腫は、放射線治療の効果が高いといわれています。近年では医学が進んでさまざまな薬剤が開発されたこともあり、化学療法が主体になってきました。
しかしそれ以前は、放射線が標準治療の一環として用いられてきた歴史があります。現在は、薬剤療法と並行して行う病院もあるようです。抗がん剤の効果によって放射線量を変更して行います。

「ユーイング肉腫の初期症状」についてよくある質問

ここまでユーイング肉腫の初期症状・検査法・治療法などについて紹介しました。ここでは「ユーイング肉腫の初期症状」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。

誰でも発症する可能性はありますか?

甲斐沼孟医師甲斐沼 孟(医師)

一般的には10代の男性の発症が多いようです。しかし、40代を過ぎてから罹患した報告もあります。さらに男性と女性の発症比率は1.6:1なので、女性は発症しないとは言い切れません。原因は遺伝が関係しているため、誰でも発症する可能性があるといえるでしょう。

早期発見の場合は完治は可能ですか?

甲斐沼孟医師甲斐沼 孟(医師)

(先生のご回答)早期発見の場合、完治は可能です。しかし、初期段階では見つけにくいので注意してください。一定の間隔で同じ個所に限定的な痛みがあったり、部分的な熱感所見が全身性の発熱症状に変化して悪化傾向を認めるという場合には病院へ行きましょう。早期発見につながります。

編集部まとめ

ユーイング肉腫について解説してきました。

初期段階では目立った症状がない病気です。そのため、病院で診察を受けても見逃されてしまうケースもあります。

一定の間隔で同じ部位に痛みがある、部分的な熱感が全身に広がって発熱を呈するなどの症状 がある場合は病院に行きましょう。

診察では、どのような症状がどれくらいの期間であったかなど詳しく伝えることが重要です。正確な自己申告が早期発見につながるでしょう。

「ユーイング肉腫」と関連する病気

「ユーイング肉腫」と関連する病気は3個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

関連する病気

  • 骨外ユーイング肉腫
  • 末梢性原始神経外胚葉性腫瘍
  • 胸壁アスキン腫瘍

これらは骨原発ユーイング肉腫と特徴が一致している点から、ユーイング肉腫ファミリー腫瘍と呼ばれています。

「ユーイング肉腫」と関連する症状

「ユーイング肉腫」と関連している、似ている症状はいくつかあります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

関連する症状

  • 病変部位の痛み・腫れ

ただし、初期段階ではこれらの症状がみられないケースもあります。必ずしも上記2つの症状がみられるわけではないので注意してください。

この記事の監修医師