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~実録・闘病体験記~ ある日突然ペンが持てなくなった… 多発性硬化症と向き合う日々

公開日:2022/08/07  更新日:2022/08/05
~実録・闘病体験記~ 突然ペンが持てなくなった。多発性硬化症と向き合う日々

多発性硬化症」という疾患をご存知でしょうか。わが国では比較的まれな疾患で、10万人あたり14~18人程度、全国で約1万7000名の罹患者がいると推定されています。緯度や日照時間、ビタミンD不足、喫煙などが原因ではないかといわれていますが、いまだ明らかになっておらず、「指定難病」に定められています。今回は、多発性硬化症をご経験されたキズカさんに、体験談を語っていただきました。

※本記事は、個人の感想・体験に基づいた内容となっています。2021年10月取材。

キズカさん

体験者プロフィール
キズカさん(仮称)

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大阪府在住、1984 年生まれ。診断時の職業は幼稚園教諭。2008 年、右手でペンが持てなくなくなったことをきっかけに、多発性硬化症と診断されて入院する。最初は手だけが動かなかったが、徐々に右半身全体が全く動かせなくなる。ステロイドパルス療法とリハビリにより、3か月ほどで退院。その後、大阪の多発性硬化症の専門医に診てもらっている。現在、最も効果があるとされる点滴薬を月に一度投与することで、右半身はだいぶ回復。日常生活を送る上での支障はなく、仕事や趣味に励んでいる。

村上 友太

記事監修医師
村上 友太
※先生は記事を監修した医師であり、闘病者の担当医ではありません。

急にペンが持てなくなったのが病気に気づいたキッカケ

急にペンが持てなくなったのが病気に気づいたキッカケ

編集部編集部

最初に気づいた症状、多発性硬化症が判明した経緯について教えてください。

キズカさんキズカさん

最初は高熱が出て、その熱が下がったと思ったら、急に右手でペンが持てなくなりました。心配で病院に行ったのですが、「ストレスですね」と片付けられ、帰宅することになりました。ただ、診断に納得できなかったので、別の病院でも診てもらったところ、「多発性硬化症」と診断されました。

編集部編集部

多発性硬化症とはどんな病気ですか?

キズカさんキズカさん

多発性硬化症は、脳の中にあるシナプスという部分にある膜が剥がれる病気と説明されました。この膜が剥がれる部分によって症状は異なるそうですが、運動神経や視神経に症状が出ることが多いそうです。

編集部編集部

病気が判明した時、どんな心境でしたか?

キズカさんキズカさん

私はこれまで大きな病気とは無縁で、健康に生きてきました。また、家族にも多発性硬化症を患った人はいません。そんな私が「どうしてこの病気にかかったのか?」と単純に疑問を抱きました。

多発性硬化症の専門医による治療で救われた

多発性硬化症の専門医による治療で救われた

編集部編集部

どのような治療をおこないましたか?

キズカさんキズカさん

血液検査とMRIで詳しく調べました。多発性硬化症を専門に診ている先生のもと、「国内の薬の中で、一番効果が出ているものを試してみましょう」とのことで、それに私も承諾しました。詳しくはわかりませんが、海外ではもっと効果が出ている薬があるそうで、「早く日本でも使えたら」と思ったのを覚えています。

編集部編集部

具体的には、どのような薬を服用しているのですか?

キズカさんキズカさん

現在は、「タイサブリ(ナタリズマブ)」という薬を使っています。最初は、「アボネックス」で、次に「ベタフェロン」、「テクフィデラ」、「イムセラ」の順に服用していました。いずれも、多発性硬化症の治療薬です。

編集部編集部

いろいろな種類の薬を飲んだのですね。発症後、日常生活にどのような変化がありましたか?

キズカさんキズカさん

右半身に違和感は残り、細かい作業は全て左側でするようになりました。いまだに右足を少し引きずってしまうため、大好きだったサッカーをするのが困難です。好きなことができなくなったのは心苦しいです。

編集部編集部

仕事にはどのような影響がありましたか?

キズカさんキズカさん

病院に通院しなければならないため、平日に休みが取れる仕事しかできなくなりました。加えて、力仕事もできなくなりましたね。

編集部編集部

治療中の心の支えとなったものは、何でしたか?

キズカさんキズカさん

家族や彼女など、自分が苦しい時に支えてくれた周囲の人たちにはとても感謝しています。また、ジャンルを問わず色々な本を読んでいたときは、心が軽くなりました。

編集部編集部

もし昔の自分に声をかけることができたら、どんな助言をしたいですか?

キズカさんキズカさん

「ストレスをためずに、もっと自分の健康を気遣って」と言いたいです。自分自身に対して、知らず知らずのうちに無理をさせすぎていたのだろうと思います。

難病だからこそ、正しい情報と正しい治療が必要

難病だからこそ、正しい情報と正しい治療が必要

編集部編集部

多発性硬化症の存在を知らない人に一言お願いします。

キズカさんキズカさん

多発性硬化症は「すぐ重症化する恐ろしい病気」といった、重症者にスポットを当てた記事がネット上で散見されます。しかし、早期に発見して正しく治療し、再発を防ぐことができれば、そこまで恐れる病気ではないのです。ネット上に流れている情報の全てを鵜呑みにはしないでいただきたいと思います。

編集部編集部

医療や医療関係者に望むことや、伝えたいことはありますか?

キズカさんキズカさん

海外では効果的な薬がすでに多数承認されています。日本においても、少しでも早く、より効果的な薬の承認を期待します。もちろん、完治する薬も早くできることを願っています。

編集部編集部

最後に、読者に向けてのメッセージをお願いします。

キズカさんキズカさん

多発性硬化症は持病の有無と関係なしに誰でも突然発症する可能性があります。再発を繰り返して悪化する病気のため、いかに症状を抑えて再発を予防する治療をおこなえるかが大切です。これらを早期にかつ適切におこなえば、重症化はしない病気だそうです。もちろん、感染することもありませんし、必要以上に恐れることもありません。この病気で苦しんでいる人がいることを、この機会に知っていただけたらと思います。

編集部まとめ

今回は、難病に指定されている多発性硬化症との向き合い方について、お話を聞くことができました。自分自身は深刻な悩みを「原因は、ただのストレスです」で済まされるような、言わば無気力だとも感じ取れてしまう診療をする先生に当たると患者さんも悲しい思いをします。今回の難病に限ったことではありませんが、やはり親身になってくれる専門医に診察してもらいたいのが患者側の本音です。