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「膵臓がんの原因」はご存知ですか?なりやすい人の特徴・症状も医師が解説!

 公開日:2023/11/15
「膵臓がんの原因」はご存知ですか?なりやすい人の特徴・症状も医師が解説!

膵臓がんの原因とは?Medical DOC監修医が膵臓がんの原因・なりやすい人の特徴・症状や何科へ受診すべきかなどを解説します。気になる症状がある場合は迷わず病院を受診してください。

伊藤 陽子

監修医師
伊藤 陽子(医師)

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浜松医科大学医学部卒業。腎臓・高血圧内科を専門とし、病院勤務を経て2019年中央林間さくら内科開業。相談しやすいクリニックを目指し、生活習慣病、腎臓病を中心に診療を行っている。医学博士、産業医、日本内科学会総合内科専門医、日本腎臓学会腎臓専門医、日本透析医学会透析専門医、日本東洋医学会漢方専門医、日本医師会認定産業医、公認心理師。

「膵臓がん」とは?

膵臓がんとは、膵臓に発生したがんであり、多くは膵管から発生します。50~70才、特に高齢の男性に多いがんです。膵臓がんは初期では症状が出にくく、早期の発見は非常に困難です。膵臓がんが進行すると、上腹部痛や背部痛、体重減少などの症状が起こります。診断と治療が非常に難しいがんであり、診断がついた時点ですでに進行していることが多いです。手術ができる患者さんはわずか20%程度で、術後の5年生存率は20~40%と非常に低いです。まず、どのようなことが危険因子となるのかを考え、なるべく病気とならないように気を付けましょう。また、どのような症状が起こり得るのか理解し、気になる症状があれば早めに医療機関を受診することが大切です。

膵臓がんの主な原因

膵臓がんの発生の危険因子は、いくつか報告されています。この危険因子について、解説します。

家族歴

家族に膵臓がんの方がいる場合には、膵臓がんになるリスクは1.5~1.7倍となると言われています。兄弟や姉妹に2人以上膵臓がんの方がいる場合には、家族性の膵臓がんと定義され、膵臓がんの人数が多いほどリスクは高くなります。また、膵臓がんになりやすい遺伝的な病気もあります。家族の中で膵臓がんの人が多い場合には、定期的に検査を受けて、早期に発見できるようにしましょう。

糖尿病、肥満

糖尿病の患者さんは、糖尿病でない方と比較すると約2倍膵臓がんになりやすいと言われています。初めて糖尿病になった時や、糖尿病のコントロールが急に悪くなった場合には特に注意が必要です。膵臓がんが起こったことで、血糖値が上昇しやすくなっているのかもしれません。主治医と相談して、膵臓がんの合併がないか調べることが大切です。また、肥満は膵臓がんのリスクを高めます。肥満がある場合には、減量が必要です。特に、20代でBMIが30/m2以上の男性では、正常のBMIの方の3.5倍膵臓がんのリスクが増えると我が国の研究で示されました。気をつけましょう。

慢性膵炎

日本人の慢性膵炎の患者さんに膵臓がんが発生する頻度は約5%です。また、慢性膵炎の方が膵臓がんを発症するリスクは、慢性膵炎のない方と比較し約13倍高まると言われています。特に、慢性膵炎と診断されてから2年以内は膵臓がんの発見の頻度が高まると言われています。また、遺伝性の膵炎の方では一般の方の約60~87倍リスクが高くなると言われ、特に注意が必要です。慢性膵炎の方は、主治医と相談し定期的に膵臓がんの発症がないかチェックをしてもらいましょう。

膵管内乳頭粘液性腫瘍(IPMN)

膵管内乳頭粘液性腫瘍(IPMN)とは、膵管の中に粘液を分泌する腫瘍細胞ができることで、膵管が徐々に太くなり、のう胞状に見える病気です。このIPMNは膵臓がんを合併することが多いと言われています。また、膵のう胞からも膵臓がんが発生することもあり、膵臓がんが合併していないか定期的な検査が必要です。

膵臓がんになりやすい人の特徴

膵臓がんに関係している生活習慣や食べ物がいくつか報告されています。これらに気を付けて、膵臓がんを発症させないように気をつけましょう。

喫煙

喫煙は様々ながんのリスクを上げることは知られていますが、膵臓がんに関してもリスクを増加させます。喫煙によって非喫煙者と比べて1.7~1.8倍増えると言われており、一日に40本以上吸う男性の方では膵臓がんによる死亡率が3.3倍になります。また、他の糖尿病や肥満などの危険因子と重なるとさらにリスクが上昇します。喫煙している人は、まず禁煙から始めましょう。

アルコール多飲

適度な飲酒は問題ありませんが、アルコールを多量に摂取している人は膵臓がんのリスクとなります。アルコール3ドリンク以上(1ドリンク=エタノール12.5g)の飲酒、ビールで約900ml、日本酒約1.7合、焼酎(25%)約1合、ワインハーフボトル(375ml)以上の飲酒をする人は膵臓がんのリスクが1.2倍増加すると言われています。お酒は適量にとどめましょう。

肥満

我が国の研究では、20才代でBMIが30kg/m2以上の男性では、肥満のない人と比べて膵臓がんのリスクが3.5倍増加することが示されました。しかし、他の研究でははっきりとした結論が出ていません。諸外国では、BMIが5kg/m2増えると、膵臓がんのリスクが1.1倍上昇するとの報告があります。女性ではBMI 40kg/m2以上でリスクは2.8倍増加するという報告があります。いずれにしても肥満は、危険因子である糖尿病にも結び付きます。なるべく減量したほうが良いでしょう。

コーヒー

日本の研究でコーヒーを1日に3杯以上飲む男性は、ほとんど飲まない男性と比較して膵臓がんとなるリスクが低いとの報告が出ました。これは、女性では有意な結果は出ませんでした。また、アメリカの報告ではコーヒーが膵臓がんの危険性を高めるとの逆の結論もあり、コーヒーに関しては一概にリスクを減らすとは言えません。今後の報告が待たれます。

膵臓がんの代表的な症状

膵臓がんは、初期では症状が出にくい病気です。進行してくると、いろいろな症状が出ることがあります。この症状について解説いたします。

上腹部痛、背中や腰の痛み

膵臓の周囲には神経がたくさん分布しているため、がんが浸潤すると痛みが起こりやすくなります。上腹部痛は最もよく認められる症状で、食事と関係なく痛みが出ます。背中側に痛みが放散し、背部痛や腰痛があると受診される方もいます。上腹部痛や背部痛のみでは、原因がはっきりしないため、まず医療機関を受診しましょう。消化器内科が良いでしょう。

体重減少、食欲低下

がんが進行すると体重が減っていきます。これは食事がとれないことによる栄養不良や、がんによる消耗(悪液質)などが原因です。食事制限をしていないのに、体重が自然とやせる場合には、膵臓がんのみではなく、さまざまながんの合併が考えられます。まず内科を受診し、体重減少の原因について精密検査を受けましょう。

黄疸

膵臓がんが胆管に浸潤すると、胆汁の排泄が悪くなり黄疸がみられるようになります。また、胆管炎を起こすこともあります。腹痛や黄疸に伴い高熱が出たときには、胆管炎の合併も考えられます。このような症状がある時には、至急消化器内科を受診しましょう。

吐き気、嘔吐

膵頭部は胃や十二指腸に近接しています。このため、この部位に膵臓がんができ、胃や十二指腸に浸潤すると、消化管が狭窄したり、詰まったりすることがあります。この場合には、吐き気や嘔吐の症状が出現し、食事を摂ることが難しくなります。このような症状が出た場合には、早急に消化器内科を受診しましょう。

糖尿病

体で感じる症状ではありませんが、健康診断で急に血糖値が上昇する場合やHbA1cが上昇した場合には、膵臓がんの可能性を考えて医療機関で精密検査を受けましょう。膵臓は血糖値を調整するインスリンというホルモンを分泌しています。膵臓がんにより分泌機能が落ちてしまい、糖尿病を発症したり、悪化させたりすることがあります。急に血糖値が上昇した場合には、一度内科を受診して相談しましょう。

「膵臓がんの原因」についてよくある質問

ここまで膵臓がんの原因を紹介しました。ここでは「膵臓がんの原因」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。

膵臓がんはコーヒーの摂取で予防できるのでしょうか?

伊藤 陽子医師伊藤 陽子(医師)

ある研究では、男性でコーヒーを一日3杯以上飲むと膵臓がんの発症を減らすという報告もありましたが、逆の報告もあるため、現在のところはっきりとした答えは出ていません。コーヒーとがんの関係性については、肝臓がんや子宮体がんでリスクを減らす報告もあります。現在のところ膵臓がんとの関連ははっきりしませんので、今後の研究結果を待ちましょう。

女性で膵臓がんを発症する原因について教えてください。

伊藤 陽子医師伊藤 陽子(医師)

膵臓がんは男性の方が多く診断されていますが、日本人女性の死亡数の3位となっており、女性でも注意しなければならない病気です。膵臓がんの原因ははっきりしていませんが、膵臓がんのリスクを上昇させるものはいくつかわかってきています。女性でも男性と同様に、家族歴のある方、喫煙している方、アルコールを多く飲む方、肥満のある方、慢性膵炎の方、IPMNと診断されている方、糖尿病の方などでは危険因子となるため注意が必要です。

膵臓がんの原因となる食べ物を教えてください。

伊藤 陽子医師伊藤 陽子(医師)

アルコールの多飲は膵臓がんのリスクとなるため、アルコールは適量にとどめましょう。そのほか、膵臓がんのリスクとなる食べ物についてははっきりとしているものはありません。しかし、糖尿病や肥満が膵臓がんのリスクとなっているためご自身にとって適したカロリー摂取、バランスの良い食事が勧められます。また、国立がんセンターから、魚介類に多く含まれるn-3多価不飽和脂肪酸(EPA、DPA、DHA)の摂取が膵臓がんのリスクを低下させたとの報告がされています。魚介類の積極的な摂取がお勧めです。

編集部まとめ

膵臓がんは症状が出づらい病気です。このため、危険因子を持つ人では症状出現の有無や、糖尿病のコントロールの悪化がないかを注意することが大切です。また、予防のために禁煙、節度のある飲酒、バランスの良い食事、適切な体重、体形の維持、運動などが必要です。これらの予防は、他のがんにも全般的に言えることであり、がんを予防するために気を付けていきましょう。また、血縁者で2人以上膵臓がんになった人がいる場合には、家族性膵臓がんといい、一般の人より膵臓がんが発生する危険性が高いことが分かっています。この場合には、医療機関で相談をしましょう。
膵臓がんは診断と治療が非常に難しいがんであり、診断がついた時点ですでに進行していることが多いです。気になる症状がある場合には、早めに医療機関を受診し、相談をしましょう。

「膵臓がんの原因」と関連する病気

「膵臓がんの原因」と関連する病気は9個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

消化器科の病気

腎・泌尿器科の病気

内分泌・代謝系の病気

上腹部痛や嘔気、食欲不振などからは消化管、肝・胆道系の病気が考えられ、また体重減少からは甲状腺機能亢進症やがん全般が疑われます。また、耐糖能異常を合併することより糖尿病との鑑別も重要です。膵臓がんははっきりとした特定の症状がないため、気になる症状が出た場合には、早めに医療機関を受診しましょう。早期での診断が大切です。

「膵臓がんの原因」と関連する症状

「膵臓がんの原因」と関連している、似ている症状は7個ほどあります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

関連する症状

  • 背中の痛み
  • 上腹部痛
  • 食事がとれない
  • おなかが張る
  • 体や目が黄色い
  • 急に血糖値が上がった

膵臓がんで一番多い症状は、上腹部の痛みです。そのほか背中の痛みが出ることもあります。がんができる部位によっては、嘔気や嘔吐の症状が出ることで、食事がとれなくなることもあります。黄疸の症状や検査での血糖値のコントロールの悪化も膵臓がんを疑わせる症状です。これらの症状がある場合には、早めに医療機関を受診しましょう。

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