「白血病の血液検査」にはどのような項目があるかご存知ですか?【医師監修】
血液検査をした際、どの数値が白血病に関係するか、知らない方も多いのではないでしょうか。本記事では白血病の血液検査について以下の点を中心にご紹介します。
- ・白血病とは
- ・白血病の検査
- ・白血病の血液検査の検査項目
白血病の血液検査について理解するためにもご参考いただけますと幸いです。ぜひ最後までお読みください。
監修医師:
竹内 想(名古屋大学医学部附属病院)
目次 -INDEX-
白血病とは?
白血病は、血液のがんとして知られる疾患で、白血球系細胞が異常に増加する特徴を持っています。白血球は、私たちの体内で感染症から身を守る役割を果たしており、血液中に主に存在します。しかし、白血球は単一の細胞ではなく、骨髄球系細胞やリンパ球系細胞など、さまざまな形態や機能を持つ細胞の集合体として存在します。白血病の発症は、これらの細胞ががん化することにより起こります。
具体的には、骨髄性白血病やリンパ性白血病などの種類に分けられます。さらに、白血病細胞の増殖の速さによって、急性白血病と慢性白血病に大別されます。
急性白血病では、白血病細胞が急速に増加し、その結果、正常な血球の産生が低下することが特徴です。このため、貧血や出血、感染症のリスクが高まることが知られています。白血病の診断や治療には、専門的な知識や技術が求められるため、早期の発見と適切な治療が重要です。
白血病の症状
ここからは、白血病の症状を解説します。
白血病の症状の発現は、骨髄中の白血病細胞が増加し、正常な血液細胞の生成が妨げられること、および白血病細胞が体の様々な臓器に侵入することによって引き起こされます。
具体的な症状としては、貧血による疲れやすさ、顔色の悪さ、めまい、息切れ、頭痛が挙げられます。さらに、白血球の減少により感染症のリスクが高まり、発熱やのどの腫れが生じることがあります。また、血小板の減少は出血傾向を引き起こし、歯肉出血や鼻出血、皮下出血などの症状が現れることがあります。
白血病の進行は急速であり、早期の診断と治療が非常に重要です。症状の発現や進行の度合いは、白血病の種類によっても異なるため、専門の医師の診断とアドバイスが必要です。
白血病の検査方法
白血病はどんな検査で判明するのでしょうか。血液検査も含め、解説していきます。
血液検査
白血病は「血液のがん」とも称され、その診断の第一歩として血液検査が行われます。
血液検査は、体内のさまざまな情報を示す指標を通じて、白血病の存在やその進行度を評価するための重要なツールとなります。
血液検査により、白血球、赤血球、血小板の数や形態、ヘモグロビンの量などの基本的な血液成分のバランスを確認します。白血病の場合、特に白血球の数や形態に異常が見られることが多いです。正常な白血球とは異なる形や大きさの白血病細胞が増加している場合、それは白血病の兆候となる可能性があります。
また、血液検査だけでは確定的な診断は難しいため、異常が見られた場合はさらに詳しい検査が推奨されます。しかし、血液検査は白血病の早期発見や進行度の評価、治療の判定などにおいて、非常に有用な方法となります。
骨髄検査
骨髄検査は、白血病の診断や進行状況を詳しく知るための重要な検査方法の1つです。白血病は、骨髄内で白血球が異常に増殖する疾患であり、骨髄検査を行うことで、骨髄内の細胞の状態や種類、数を直接確認できます。
具体的には、大腿骨や腸骨から骨髄を採取し、顕微鏡でその細胞を観察します。この検査により、白血病細胞の存在やその比率、形態などの詳細な情報を得られます。また、異常な染色体や遺伝子の変異も確認できます。
骨髄検査は、白血病の種類やステージ、治療の判定、再発の確認など、治療方針を決定する上で非常に重要な役割を果たします。ただし、採取時に痛みを伴うことがあるため、適切な鎮痛や局所麻酔が行われることが一般的です。
染色体検査
白血病の診断において、染色体検査は非常に重要な役割を果たします。この検査は、白血病細胞の染色体に異常があるかどうかを調べるためのもので、特定の染色体異常が確認されると、それに基づいて白血病の種類や予後、治療方針を判断する手助けとなります。
具体的には、骨髄や末梢血から採取された細胞を培養し、その後染色して顕微鏡で観察します。この過程で、染色体の数や形、位置の異常などが明らかになります。例えば、特定の染色体の部分が欠けている、または他の染色体と結合しているなどの異常が見られることがあります。
白血病の中には、特定の染色体異常を持つものがあり、その異常が予後に大きな影響を与えることが知られています。したがって、染色体検査は白血病の診断や治療戦略の決定において、欠かせない検査となっています。
遺伝子検査
遺伝子検査は、白血病細胞の遺伝子に異常があるかどうかを特定するためのもので、これにより白血病の種類や予後、治療方針をより正確に判断することが可能となります。
具体的には、骨髄や末梢血から採取された細胞のDNAを解析し、特定の遺伝子変異や融合遺伝子の存在を確認します。これらの遺伝子変異や融合遺伝子は、白血病の発症や進行に関与していることが知られており、特定の治療薬の働きを予測する手助けともなります。
また、遺伝子検査により、標的治療薬の適応や、予後の良い・悪いを示す遺伝子変異の有無も確認できます。これにより、患者ごとの適切な治療戦略を立てることが可能となり、より意義のある治療を進められます。
血液検査の検査項目と数値
では、血液検査にて重要である検査項目とその数値について、以下で見ていきましょう。
赤血球
赤血球の数値は、白血病の有無を示唆する重要な指標となります。
基準値は、男性の場合は430〜570万/µl、女性の場合は390〜520万/µlとされています。この基準値よりも低い数値が示される場合、鉄分の欠乏や貧血の可能性が高まります。さらに、数値が著しく低下している場合、白血病の可能性も考えられます。
赤血球は酸素や栄養を体内に運ぶ役割を持っており、その数が減少すると体全体の機能に影響が出る可能性があります。したがって、定期的な血液検査を受けることで、早期の段階での白血病の発見や治療が可能となります。
ヘモグロビン
ヘモグロビンは、私たちの血液中に存在するタンパク質で、酸素を運ぶ役割を持っています。このヘモグロビンの正常な値は、男性で平均13.0〜16.6g/dl、女性では11.4〜14.6g/dlとされています。白血病の疑いがある場合、血液検査の結果としてヘモグロビンの値が大きく低下することが考えられます。
赤血球の数が減少すると、それに伴いヘモグロビンの値も低下します。これは、赤血球の主要な成分であるヘモグロビンが、酸素を体の各部位に運ぶ役割を果たしているためです。ヘモグロビンの値が低下すると、貧血の症状が現れることが多く、特に値が平均を大きく下回る場合、白血病の可能性も考えられます。
網状赤血球数
白血病の検査方法として、網状赤血球数の検査が行われます。網状赤血球は、成熟した赤血球になる一歩手前の赤血球を指します。この数値は、血液を生成する場所である骨髄の機能や状態を示すもので、骨髄に関連する疾患、特に白血病の有無を調べる際に非常に重要です。
基準値は、男性の場合は8000〜11万/µl、女性の場合は8000〜12.5万/µlとされています。この基準値よりも低い場合、造血機能が低下している可能性が考えられ、白血病の疑いが高まります。白血病の診断には、この他にも多くの検査項目がありますが、網状赤血球数はその中でも特に注目される項目の1つとなっています。
白血球数
白血球は私たちの体を守るための重要な役割を果たしています。感染症や他の病気に対する体の反応として、白血球の数は増減します。通常、成人の白血球数の基準値は3300〜9000/µlとされています。また、新生児や幼児ではこの数値は成人よりも高くなります。
そして、1日の間に数値は変動することがあり、喫煙やアレルギーの影響も受けることが知られています。白血球数が3,000個以下に急激に減少する場合や、逆に急激に増加する場合、それは白血病の可能性を示唆することがあります。
白血病の血液検査について
ここからは、白血病における血液検査について深堀りしていきます。
白血球が増加し赤血球が減少していると白血病の疑いがある
自覚症状がない白血病患者の多くが、健康診断などでの血液検査を通じて初めて白血病の可能性に気づくことが多いです。
前述した通り、血液検査では、白血球の数値だけでなく、白血球の種類や形態、さらには白血病細胞の有無まで詳しく調べられます。特に、白血球が増加し、赤血球や血小板が減少している場合、白血病の疑いが高まります。
血液検査だけで白血病は判断できない
白血病の診断において、血液検査は初期の手がかりとして役立つとされていますが、それだけで白血病であると確定することは難しいです。
血液検査では、白血球の数や形態、さらには異常な細胞の存在などを確認できます。しかし、これらの異常値は白血病だけでなく、他の疾患や状態でも見られることがあります。そのため、白血病の疑いがある場合、血液検査の結果だけを頼りにするのではなく、さらに詳しい検査、例えば骨髄検査などが必要となります。
これにより、より正確な診断が可能となり、適切な治療を開始できます。
「白血病」についてよくある質問
ここまで症状の特徴や対処法などを紹介しました。ここでは「白血病」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。
白血病にステージはありますか?
竹内 想 医師
慢性骨髄性白血病の場合、病状の進行の程度(段階)により、慢性期、移行期、急性転化期の3つのステージに分けられます。これらのステージは、病気の進行や治療の方針を決定する上で非常に重要です。
慢性期は、病気がゆっくりと進行する段階を指し、多くの患者はこの段階で診断されます。移行期は、慢性期から急性転化期へ移行する過渡的な段階を示します。急性転化期は、病気が急速に進行し、症状が悪化する段階を指します。
これらのステージごとに、治療のアプローチや予後が異なるため、正確なステージングは治療計画の策定において極めて重要です。
白血病になりやすい人はどんな人ですか?
竹内 想 医師
白血病になりやすい人には、いくつかの特徴やリスク要因が考えられます。
まず、放射線治療やがん化学療法を受けた人は、正常な細胞の遺伝子も傷つける可能性があり、数年後に白血病を発症するリスクが高まることが知られています。このような白血病は“二次性白血病”と呼ばれます。
また、特定のウイルス、特にヒトT細胞白血病ウイルス1型(HTLV-1)に感染している人も、白血病のリスクが高まります。化学物質、特にベンゼンやトルエンに曝露された人も、白血病のリスクが高まるとされています。
さらに、生まれつきの免疫不全症や染色体異常を伴う病気を持つ人も、白血病を合併しやすいとされています。白血病の発症リスクを高める生活習慣として、喫煙が挙げられます。喫煙は遺伝子変異の原因となり、白血病のリスクを高める可能性があります。
編集部まとめ
ここまで白血病の血液検査についてお伝えしてきました。白血病の血液検査の要点をまとめると以下の通りです。
- ・白血病とは、血液のがんとして知られる疾患で、白血球系細胞が異常に増加する特徴を持っている。
- ・白血病の検査は、血液検査、骨髄検査、染色体検査、遺伝子検査などがある。
- ・白血病の血液検査の検査項目は、赤血球、ヘモグロビン、網状赤血球数、白血球数が重要。
「白血病」で考えられる病気と特徴
「白血病」と関連する病気は3個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
これらの病気は、白血病と同様に血液や骨髄に関連する疾患であり、適切な診断と治療が必要です。白血病は、自覚症状がない時に診断される可能性もある病気のため、年に1回でも健康診断を受けることが非常に重要です。
「白血病」と関連する症状
「白血病」と関連している、似ている症状は11個ほどあります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
白血病になると、正常な白血球、赤血球、血小板の産生が低下することがあります。この結果、疲れやすさ、顔色の悪さ、めまい、息切れ、頭痛などの症状が現れることがあります。白血病の進行は速く、症状が急速に悪化することもあるため、早期の診断と治療が重要です。
参考文献