「咽頭がんの進行速度」はご存知ですか?ステージ分類についても解説!【医師監修】
咽頭がんを発症すると進行速度はどのくらいかご存じでしょうか。
この記事では、咽頭がんの進行速度・ステージ分類・種類・転移について詳しく解説し、咽頭がんについてよくある質問にも答えていきます。
また、咽頭がんと関連する病気や症状についても触れていきますのでこの病気についての理解を深め、早期発見・早期治療に役立てていただければと思います。
監修医師:
渡邊 雄介(医師)
所属
国際医療福祉大学 教授
山王メディカルセンター副院長
東京ボイスセンターセンター長
目次 -INDEX-
咽頭がんとは?
咽頭がんは、のどの奥や口腔と食道の間に位置する咽頭に発生する悪性腫瘍です。このがんは、上咽頭・中咽頭・下咽頭の3つの部分に分けられ、発生する場所によって症状や治療法が異なります。
男性に多く見られ、特に50歳以上の年齢層で発症することが多いこの病気は、初期段階では症状がほとんど現れないため進行してから発見されることが多いです。
しかし、のどの痛み・声のかすれ・飲み込みにくさなどの症状が現れたら、早めに医療機関での受診が必要です。
咽頭がんの進行速度
一般的に、咽頭がんは進行が早いとされており、早期発見・早期治療が非常に重要です。咽頭がんの進行速度を抑えるためには、早期発見が鍵となります。初期の段階では症状がほとんど現れないことが多いため、定期的な健康診断や自己検診が重要です。特に、のどの違和感・声のかすれ・飲み込みにくさなどが2週間以上続く場合は、速やかに医療機関を受診しましょう。
咽頭がんの進行速度を抑え、生存率を向上させるためには、早期発見と適切な治療が不可欠です。また、タバコの使用を避け、アルコールの摂取を控えるなどの予防策も重要です。
咽頭がんのステージ分類
咽頭がんは、がんが発生する場所によって上咽頭がん・中咽頭がん・下咽頭がんに分けられ、それぞれの進行度は0期からIV C期までの分類で評価されます。ここでは、0期からIV C期までのそれぞれのステージについて詳しく解説をします。
0期
0期は非常に初期の段階で、上咽頭がん・中咽頭がん・下咽頭がんのいずれにおいてもがんが発生した部位にがん細胞が限られている状態です。早期発見と治療が可能であれば、予後は非常に良好です。
I期
I期では、上咽頭がんの場合、上咽頭にとどまっているか、中咽頭や鼻腔にまで広がっているものの咽頭内にとどまっている状態です。中咽頭がんと下咽頭がんの場合はいずれもがんの最大径が2cm以下である状態がI期となります。
II期
II期は、がんが咽頭の外側にまで広がり始める段階です。上咽頭がんでは、咽頭を超えた外側へ広がっていたり、顎を引き上げる筋肉などに広がっていたりします。中咽頭がんではがんの最大径が2cmを越えて4cm以下である場合がII期です。
また、下咽頭がんでは片側の咽頭の動きは正常であるものの、下咽頭の一部をがんが越えている場合・隣接部に広がっている場合・がんの最大径が2cmを越えて4cm以下である場合がII期となります。
III期
III期の咽頭がんは、がんの大きさが4cmを超えるか近くのリンパ節に転移しているが、遠隔転移はない状態です。上咽頭がんでは、頭の下部にまで広がっていたり、副鼻腔にまで広がったりしている状態を指します。中咽頭がんでは、気管の入り口である咽頭蓋の舌側にまで広がった状態です。
また、下咽頭がんでは、片側の咽頭の動きが悪くなっていたり、がんが食道粘膜にまで広がっている状態を指します。このIII期の咽頭がんでは、化学放射線療法が選択されることが多くなってきています。
IV A期
IV A期では、がんが周囲の組織や器官に広がっているか複数の近くのリンパ節に転移しているが、遠隔転移は見られない状態を示します。上咽頭がんでは頭の中にまで広がってしまっており、顎を引く筋肉の外側表面を越えて広がっている状態です。中咽頭がんでは、がんと同じ側のリンパ節にがんが広がってたり、下記の部位にまでがんが広がっている状態を指します。
- 咽頭
- 下の深部の筋肉
- 顎を引き上げる筋肉
- 硬口蓋
- 顎の骨
下咽頭がんのIV A期では、がんと同じ側のリンパ節にがんが広がってたり、喉仏の軟骨・舌を支える骨・甲状腺・食道や頸部の周りの組織などに広がっている状態です。
IV B期
IV B期の咽頭がんは、がんがさらに広範囲に広がり、遠隔転移はないものの周囲の大きな血管などの重要な構造に広がっている状態を指します。
IV C期
IV C期は、がんがどの程度広がっているかに関係なく、遠隔転移を伴う状態を指します。遠隔転移は、肺・骨・肝臓などの遠くの部位にがんが広がっている状態です。
咽頭がんの種類
咽頭は上咽頭・中咽頭・下咽頭の3つに分けられ、発生する場所によって咽頭がんも3つの種類に分けられます。ここではその3つのがんについて詳しく解説をしましょう。
上咽頭がん
上咽頭がんは、咽頭の最も上部、鼻の奥や口の奥に近い部分で発生するがんを指します。この部分には、鼓室・耳管・扁桃腺などがあります。上咽頭がんは、これらの部位の粘膜から発生することが多いです。初期の症状としては、耳の痛み・聴覚異常・嚥下時の痛みなどが挙げられます。この上咽頭がんの5年生存率は下記のとおりです。
- I期:90%
- II期〜III期:60%〜80%
- IV期:40%〜50%
また、上咽頭がんの治療は放射線治療が主な治療方法となり、ステージが進んでいる場合には科学放射線治療が行われます。
中咽頭がん
中咽頭がんは、咽頭の中央部分で発生するがんです。この部分は、口腔の奥から声帯の上部までが含まれており、この部分の粘膜から中咽頭がんが発生することが多いです。症状としては、嚥下時の痛み・声の変化・咽頭の奥の痛みなどが挙げられます。この中咽頭がんの5年生存率は下記のとおりです。
- I期:83%
- II期:79%
- III期:73%
- IV期:69%
また、中咽頭がんの治療では、内視鏡切除や放射線治療が行われることが一般的です。
下咽頭がん
下咽頭がんは、咽頭の最も下部、声帯の下から食道の入り口にかけての部分で発生するがんです。この部分は、食物や液体が食道に流れる役割を持っています。症状としては、嚥下困難・嚥下時の痛み・声の変化などが挙げられます。この下咽頭がんの5年生存率は下記のとおりです。
- I期:90%
- II期:80%
- III期:70%
- IV期:50%
また、下咽頭がんの治療では、中咽頭がんと同様に内視鏡切除や放射線治療が行われることが一般的です。
咽頭がんの転移
咽頭がんの転移は、主にリンパ節を経由して行われることが多いです。特に、首のリンパ節への転移がよく見られます。首の腫れやしこりを感じた場合は、咽頭がんの転移の可能性を疑い、医師の診察を受けましょう。実際に、この首のリンパ節への転移による首のしこりがきっかけで咽頭がんに気づく場合も多いです。
また、咽頭がんは、進行すると遠隔転移を起こすこともあります。遠隔転移とは、がんが元の部位から遠く離れた部位に転移することを指します。咽頭がんの場合、肺・肝臓・骨などへの遠隔転移には注意が必要です。
転移を早期に発見するためには、定期的な検査やフォローアップが必要となります。特に、治療後も再発や転移のリスクは残ります。そのため、医師の指示に従い、定期的な検査を受けることが大切です。
咽頭がんについてについてよくある質問
ここまで症状の特徴や対処法などを紹介しました。ここでは咽頭がん症状についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。
咽頭がんは再発しますか?
渡邊 雄介(医師)
治療後に再診で経過観察が行われます。画像診断などで再発をしていないかを確認しますが、患者さんの年齢・生活環境・ステージも含めて再発する可能性はあります。
咽頭がんは予防できますか?
渡邊 雄介(医師)
咽頭がんは男性に多く見られ、一番の原因はタバコとアルコールといわれています。心当たりのある人は術後や治療後の生活など見直しが必要でしょう。
編集部まとめ
咽頭がんは、咽頭の粘膜細胞が異常に増殖することで発生する悪性腫瘍です。
このがんの進行速度は、発見の時期・がんの種類・位置によって異なります。
咽頭がんは、0期からIV C期までの7つのステージに分類され、進行の度合いによって症状や治療方法が変わります。
主な症状は、のどの痛みや違和感・耳の痛み・声のかすれ・嚥下困難などです。これらの症状に心当たりがあれば、すぐに病院で診察を受けましょう。
病院での診断にはMRI・CT・超音波検査などの画像診断や内視鏡検査・血液検査が用いられます。
咽頭がんは他の疾患との関連もあり、早期発見と適切な治療が重要です。
咽頭がんと関連する病気
「咽頭がんの原因」と関連する病気は5個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
ウイルス感染症と関連する病気
- HPV感染症
- EBウイルス感染症
咽頭がんのリスクを高める要因として、上記のような病気や感染症が考えられます。特にHPV感染は、近年、咽頭がんの原因として注目されています。定期的な健康診断や自己チェックを行い、早期発見・早期治療を心がけましょう。
咽頭がんと関連する症状
「咽頭がんの原因」と関連している、似ている症状は5個ほどあります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
関連する症状
- のどの痛みや違和感
- 耳の痛み
- 声のかすれや変声
- 嚥下困難
- 持続的な咳
咽頭がんの初期症状としては、のどの違和感や嚥下困難を感じることがあります。これらの症状が持続的に続く場合、専門の医師の診察を受けることをおすすめします。早期発見が治療を成功に導く鍵です。