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「外傷性くも膜下出血の後遺症」が残りやすい原因は?合併症や後遺障害等級も医師が解説!

 公開日:2026/02/26
「外傷性くも膜下出血の後遺症」が残りやすい原因は?合併症や後遺障害等級も医師が解説!

外傷性くも膜下出血の後遺症とは?メディカルドック監修医が外傷性くも膜下出血の後遺症・入院期間・寿命・生存率・治療法・リハビリ法なども解説します。

佐々木 弘光

監修医師
佐々木 弘光(医師)

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医師、医学博士。香川大学医学部卒業。奈良県立医科大学脳神経外科に所属し、臨床と研究業務に従事している。現在、市立東大阪医療センターに勤務。脳神経外科学会専門医、日本脳神経血管内治療学会専門医、脳卒中学会専門医、の資格を有する。

「外傷性くも膜下出血」とは?

外傷性くも膜下出血とは、転落や転倒、交通事故などの外的な影響で頭部へ強い衝撃が加わったことで生じる疾患です。具体的には、脳の中にある3層の膜のうちの「くも膜」という箇所に出血を生じる病気です。くも膜下出血というと、一般的には脳の血管にできた瘤(脳動脈瘤)が破裂することで生じる疾患を指しますが、ここでは外傷に伴うくも膜下出血に限定して説明します。

外傷性くも膜下出血の後遺症

少量の外傷性くも膜下出血のみでは、一般的には後遺症となることは少ないです。しかし強い衝撃があってくも膜下出血の量が多い場合や、硬膜外血腫、硬膜下血腫、脳挫傷といった脳自体が直接損傷するような、他の頭部外傷が併発してしまった場合は、より重篤な後遺症が残ることもあります。そして後遺症が重症であるほど、その後の入院期間やリハビリ期間も長期化します。

主な後遺症の種類

  • 麻痺:手足の麻痺や感覚障害、呂律困難、嚥下障害などが生じ、日常生活が阻害されることがあります。
  • 意識障害:脳挫傷や「軸索損傷(神経細胞の細かな破壊)」が広範囲に及ぶと、寝たきりになる可能性もあります。
  • 高次脳機能障害・性格変化:出血が消えた後も、記憶力・集中力の低下、うつ、認知機能の低下、性格の変化が残ることがあります。
  • 視野障害:後頭葉や視神経が障害されると、視野が欠けたり、物にぶつかりやすくなったりします。
  • 外傷性てんかん:損傷部位を起点として痙攣発作が出現することがあり、抗てんかん薬の服用が必要になる場合があります。

後遺症は完治するか・発症後の注意点

軽微な出血であれば自然に吸収され、症状が消失することも多いですが、脳挫傷などを合併した重度の神経損傷は完治が難しく、一生付き合っていく必要があるものもあります。発症後は、脳の回復を妨げないよう医師の指示に従い、勝手にリハビリを中断したり、薬(抗てんかん薬など)の内服を止めたりしないことが極めて重要です。

外傷性くも膜下出血が原因で引き起こす合併症

脳腫脹・脳挫傷

脳自体に強い損傷があると、遅れて脳挫傷(脳内に出血すること)や脳腫脹(脳が腫れてくること)が生じます。これにより昏睡状態が続いて致命的な状態になったり、特定の脳神経症状が出現したりする可能性があります。

脳血管攣縮

頻度は少ないですが、出血した血液が脳の血管を痙攣させ、血管が詰まって脳梗塞を生じることがあります。一度脳梗塞を生じると、重度の麻痺や意識障害を残す危険性が高まります。

外傷性脳動脈瘤・血管解離

衝撃によって動脈の壁が裂け(解離)、脳梗塞になったり、壁が膨らんで動脈瘤となり、後に破裂して再出血を起こしたりする稀ながら致命的な合併症です。

慢性硬膜下血腫

特に高齢者は、外傷から数か月して硬膜の下に血液が溜まる「慢性硬膜下血腫」を起こすことがあります。歩行障害や認知症のような症状が出現し、手術(穿頭術)が必要になることもあります。

外傷性くも膜下出血の入院期間

軽度の場合

外傷性くも膜下出血のみで他の損傷がない場合は手術は必要ありません。安静と血圧の管理を行い、経過に問題がなければ数日から1週間程度で退院することが多いです。

重症の場合

重症の場合、全身状態や併発する合併症により経過が様々であるため、一律の期間を明示することは困難です。急性期治療後のリハビリ期間を含めると、半年から1年以上の長期入院を要する場合もあります。

外傷性くも膜下出血の寿命・生存率

頭部外傷全体の統計では、医療技術の向上により死亡率は低下傾向にあります。一方で、後遺症により社会復帰が困難となる患者さんは増加しています。特に60~70歳以上の高齢者ほど、死亡率や重篤な後遺症を残す確率が上がるとされています。生存率は、受傷時の意識状態や併発する脳挫傷の範囲に大きく左右されます。

外傷性くも膜下出血の治療法・リハビリ

治療法

基本的には安静、血圧管理、出血拡大の予防薬の点滴などを行う保存的加療が中心です。救急科や脳神経外科で治療されます。ただし、硬膜下血腫などの合併により脳が圧迫(脳ヘルニア)されている場合は、救命のための緊急手術が行われます。

運動麻痺に対するリハビリ

平行棒や階段を用いた歩行訓練、作業療法による手先の訓練、嚥下訓練などを行います。退院後も通所や訪問リハビリを継続し、装具や杖を活用して生活の質を維持・向上させます。

高次脳機能障害に対するリハビリ

記憶障害や注意障害に対し、メモの活用や作業の簡略化といった代償手段の訓練を行います。言語療法を通じて機能回復を図るとともに、性格変化やうつ症状にはカウンセリングや精神科受診を検討することもあります。

頭部外傷に伴う後遺障害等級

交通事故などで後遺症が残った場合、その程度に応じて後遺障害等級が認定されます。

  • 遷延性意識障害(寝たきり):常時介護が必要な場合、第1~2級に該当し得ます。
  • 半身麻痺:麻痺の程度や自立度によりますが、重度の場合は4級以上、片麻痺であれば5~6級以上となる可能性があります。
  • 高次脳機能障害:就労能力への影響が大きく、重度なら3~4級、軽度でも5級以上などの認定を受ける場合があります。
  • 視力・視野障害:両目の半分が見えなくなる半盲は9級相当ですが、視力低下の程度により等級が上がることがあります。
  • 外傷性てんかん:発作の頻度や抑制状況により、5級から12級の間で認定される可能性があります。

外傷性くも膜下出血の後遺症を軽減するリハビリ

リハビリテーション科や脳神経外科の指導のもと、理学療法(PT)、作業療法(OT)、言語聴覚療法(ST)を組み合わせて行います。

リハビリの期間とサポート

回復期リハビリテーション病棟では最大150~180日程度の集中訓練が可能です。社会復帰までは数か月から年単位を要することもあります。家族は、本人の「以前との違い」を否定せず、障害を受け入れながら小さな回復を共に喜ぶサポートが求められます。

「外傷性くも膜下出血の後遺症」についてよくある質問

ここまで外傷性くも膜下出血の後遺症を紹介しました。ここでは「外傷性くも膜下出血の後遺症」についてよくある質問に、メディカルドック監修医がお答えします。

外傷性くも膜下出血の再発率はどれくらいでしょうか?

伊藤 陽子医師伊藤 陽子(医師)

外傷性くも膜下出血は強い衝撃によって生じるため、脳動脈瘤破裂のような「自然な再発」は考えにくいです。ただし、転倒しやすい環境やスポーツ、体質などが変わらなければ、再び頭部を打撲して同じ病気やさらに重篤な脳損傷を起こす危険性は常にあります。

まとめ

外傷性くも膜下出血は頭部外傷によって生じ、合併する脳損傷の程度によっては多彩で重篤な後遺症を残す危険性があります。交通事故やスポーツだけでなく、高齢者の転倒による打撲も軽視できません。頭を強く打った場合は、症状が軽く見えても速やかに医療機関(救急科や脳神経外科)を受診するようにしましょう。

「外傷性くも膜下出血」と関連する病気

「外傷性くも膜下出血」から医師が考えられる病気は12個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからメディカルドックの解説記事をご覧ください。

脳神経系の病気

  • びまん性軸索損傷
  • 急性硬膜下血腫
  • 脳ヘルニア
  • 脳震盪
  • 頭蓋骨骨折
  • 外傷性てんかん
  • 慢性硬膜下血腫
  • 外傷性脳動脈瘤
  • 外傷性血管解離
  • 脳血管攣縮

頭部外傷に伴うこれらの病気は、単独ではなく複数併発することで重症化しやすくなります。

「外傷性くも膜下出血」と関連する症状

「外傷性くも膜下出血」から医師が考えられる症状は9個ほどあります。
各症状の詳細についてはリンクからメディカルドックの解説記事をご覧ください。

頭部外傷のサイン

  • 嘔気
  • 痙攣
  • 意識障害
  • 運動麻痺
  • 感覚障害
  • 呂律困難
  • 高次脳機能障害

頭のケガの後にこれらの症状が一つでも出現した場合は、直ちに専門医の診察を受けてください。

参考文献

この記事の監修医師