「脳溢血(脳出血)の前兆となる初期症状」はご存知ですか?予防法も医師が解説!
脳溢血(脳出血)の前兆となる初期症状とは?Medical DOC監修医が脳溢血(脳出血)の前兆となる初期症状・原因・予防法や何科へ受診すべきかなどを解説します。気になる症状がある場合は迷わず病院を受診してください。
監修医師:
村上 友太(東京予防クリニック)
脳神経外科専門医、脳卒中専門医、抗加齢医学専門医。日本認知症学会、日本内科学会などの各会員。
目次 -INDEX-
「脳溢血(のういっけつ)」とは?
脳溢血とは、現在あまり使われることが少ない用語です。脳の血管に血が溢れて脳内に出血することを指すことから、現在は脳出血と同じ病態として扱われる用語です。
一方で、病気の説明を行う場面で、高齢の方の中には脳溢血という言葉の方がしっくりくるという方もいます。CT検査は1970年代以降に、MRIは1980年代以降に普及しはじめているので、その時期以前には脳梗塞と脳出血は区別が難しいため、脳溢血という用語が脳卒中と同じ意味合いで扱われていたという説もあるようです。
今回の記事では、脳溢血=脳出血として扱って解説していきます。
「脳溢血」と「脳梗塞」の違いとは?
脳溢血は、脳の血管が破れて出血してしまう脳出血と同じような意味合いのものであることから、脳の血管が詰まってしまう脳梗塞とは異なります。
「脳溢血」と「脳卒中」の違いとは?
脳卒中とは、脳梗塞と脳出血、くも膜下出血などの脳血管障害のことです。
脳溢血は、脳出血と同じような意味合いのものであることから、脳卒中に含まれます。
脳溢血の前兆となる初期症状
脳溢血(脳出血)は血管が破れて脳内に出血が起こった状態のことを指します。
一般的に、脳出血は前兆がないと言われています。初期症状が出現した時点で脳出血を発症しているため、前兆が現れた時点で治療介入をすることで脳出血を予防するということは残念ながら不可能です。
発症後に様子を見ていて病状が悪化していくということは避けたいものです。自分自身で対処することは難しいため、以下のような初期発症がある場合には脳出血を含めた脳卒中を疑い、救急車を呼んですぐに脳神経内科や脳神経外科のある病院を受診してください。
筋力低下
脳出血によって運動機能を担当する脳領域がダメージを受けると、筋力低下・麻痺症状が出現します。急に半身の動きが悪化するため、自分の体を支えられなくなります。手足のしびれだけではなく、顔の動きが悪くなったり、喋りづらくなったりする症状も現れることがあります。
しびれや感覚の異常
感覚機能を担当する脳領域にダメージが及ぶと、体の感覚が低下します。
突然、半身のしびれや感覚の鈍さなどの症状が出現します。手足のしびれとともに口周囲など顔の症状が出現することもあります。筋力低下もしびれについても、左右どちらか片側の症状が出現することが脳出血の症状として特徴的です。
めまいや嘔吐
平衡感覚を担う小脳に出血が生じるとめまいを起こすことがあります。
小脳出血によるめまいの特徴は、安静にしていても改善しないことです。嘔吐を繰り返すことも多く、動けなくなってしまう状態に陥ります。
意識障害
意識状態を制御する脳幹部に出血した際に多く見られる症状です。
意識障害は、脳幹部だけではなく脳内の広範囲に脳出血が及ぶ場合にも起こります。小脳出血のような脳幹部に近い部分に出血があり、その出血量が徐々に増えた場合にも、小脳出血が脳幹部を圧迫してしまうために意識障害を引き起こすこともあります。
脳溢血の主な原因
高血圧
脳出血の最大の発症原因は高血圧です。
長期間にわたって血圧の高い状態が続くと、血圧による脳血管の壁へのダメージがたまっていきます。これが動脈硬化を引き起こし、本来血管に備わっている弾性(柔軟性)を損ない、血圧の上昇によって破れやすくなってしまうのです。
健康診断で血圧の値が高めであると指摘された場合にはもちろん、睡眠時に無呼吸状態があり睡眠時無呼吸症候群が疑われる場合や肥満である場合には注意が必要です。今は問題ないから、と甘く見るのではなく、日中に時間を作って内科を受診して高血圧対策を相談するのが良いでしょう。
脳血管の異常
脳血管の異常も脳出血の原因として考えられます。脳動静脈奇形や海綿状血管腫、硬膜動静脈瘻などの病気は生まれつき有していることもあり、若い人に起こることが多いという特徴があります。これらの病気の大きさや発生部位は多種多少であるため、脳内に出血することだけではなく、くも膜下出血を発症することもあります。
すぐに病院へ行くべき「脳溢血の前兆」
ここまでは脳溢血の前兆となる症状を紹介してきました。
以下のような症状がみられる際にはすぐに病院に受診しましょう。
急に体半身の動きや感覚に異常がみられた場合は、脳神経内科、脳神経外科へ
脳出血の症状の多くの特徴は、体の片側の異常です。急に手足がしびれた、動きが悪くなった場合には、片側の症状であると脳卒中である可能性が否定できません。
少し似たような症状で、昼寝から起きたら親指だけあるいは指先だけ痺れていた、というようなエピソードであれば脳卒中ではなく腕の神経の圧迫症状である可能性が高いかと思います。どのようなエピソードがみられたのか、あるいは発見された状況についての内容を病院受診時に伝えていただければと思います。
受診・予防の目安となる「脳溢血の前兆」のセルフチェック法
- ・急に意識が悪くなった場合
- ・急にめまいや嘔吐が出現した場合
- ・急に手足の動きが悪くなった場合
- ・急に手足の感覚が悪くなった場合
脳溢血を予防する方法
血圧管理
脳出血の最大の原因は高血圧なので、この対策をしっかりやることに尽きます。
食事では塩分を控えるように心がけることが大事です。
また、肥満であると血圧が高くなりやすいことが知られていますので、体重管理をしっかり行うことも重要です。20歳前後での体重と比べて10kg以上増えているようであれば、注意して健康的な減量も考慮しましょう。
また睡眠時無呼吸症候群がある場合にも血圧が高くなる要因として重要視されています。睡眠検査を行なっている内科や睡眠科などを受診して睡眠検査を行なって、必要に応じてマウスピースやCPAP治療などを行うことで対策を行うことが重要です。
禁煙
喫煙は高血圧や動脈硬化を進行させるものとして知られています。そのため脳出血の予防に禁煙は不可欠です。喫煙は、吸うタバコの量が多いと良くないのは想像しやすいと思いますが、タバコの本数は1本でも有害であり0本=禁煙を目指すことが重要と言われています。現在喫煙している人がすぐにでも禁煙を行うことで、血管状態は改善し動脈硬化のリスクを下げることが可能です。
また、喫煙は脳出血をはじめとした血管の病気以外にも肺がんをはじめとした悪性腫瘍の危険性を高めます。できるだけ早めに禁煙するようにしましょう。
健康的な生活習慣
食事や禁煙以外にも、定期的な運動を行うことや睡眠をしっかりととることも重要です。運動を行うことで、体重増加を防ぐとともに高血圧や脂質異常症、糖尿病などを適切に管理することができます。また、ストレス改善効果も期待できます。1日30分間程度の有酸素運動を継続的に行うことが推奨されています。
睡眠不足や睡眠時無呼吸群は脳卒中のリスクを増やします。そのため、睡眠時間を確保するべく不規則な生活習慣を改善させることや、睡眠時無呼吸があれば治療することが勧められます。
「脳溢血の前兆」についてよくある質問
ここまで脳溢血の前兆となる症状などを紹介しました。ここでは「脳溢血の前兆」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。
脳溢血を疑う危険ないびきの特徴について教えてください。
村上 友太(むらかみ ゆうた)医師
寝ている時にいびきをかくことがあると思いますが、これは、空気の通り道である気道に舌根が落ち込むなどで気道が塞がれて、呼吸の際に周囲が振動することで音が発生するものです。気道は就寝時には覚醒時よりも狭くなるという特徴があります。
脳溢血(脳出血)を発症した際に意識障害がみられた場合には、寝ている状態と似たような状況になります。そのため、いびきを発生することがあるのですが、脳出血は突然発症するため、いつもいびきをかかない人が突然いびきをかいた場合には注意した方が良いと思います。
脳溢血の前兆となる初期症状にめまいや頭痛はありますか?
村上 友太(むらかみ ゆうた)医師
あります。小脳出血の場合にはめまいの症状がよくみられます。
なお、脳内出血の場合には頭痛は見られることが少ないのですが、くも膜下出血も一緒に発症した場合には頭痛も見られることがあります。
編集部まとめ
脳溢血(脳出血)は、高血圧が原因で起こる脳の病気です。血圧を下げる努力を行うことで発症を予防することができます。
脳出血をはじめ脳卒中は死亡原因としても介護原因としても上位にある病気であり、いずれにしても発症したらすぐに治療を開始することが大事です。体の片側が急な筋力低下やしびれなどの感覚異常、めまいや嘔吐、意識障害などが起こった場合には、脳卒中の可能性があるので、すぐに病院を受診するようにしてください。
「脳溢血の前兆」と関連する病気
「脳溢血の前兆」と関連する病気は7個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
脳出血の原因は高血圧と言われています。他にも脳血管の異常なども原因となりますが、血圧を高くしないようにすることは自分自身で予防可能です。生活習慣の見直しと改善から取り組んでみてはいかがでしょうか。
「脳溢血の前兆」と関連する症状
「脳溢血の前兆」と関連している、似ている症状は5個ほどあります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
これらの症状が急に現れた際には脳出血の可能性があります。疑った際にはすぐに救急車を呼んで医療機関を受診してください。