「パーキンソン病の症状」はご存知ですか?初期症状・末期症状も医師が徹底解説!
パーキンソン病の症状とは?Medical DOC監修医がパーキンソン病の症状・初期症状・末期症状・進行度や何科へ受診すべきかなどを解説します。気になる症状がある場合は迷わず病院を受診してください。
監修医師:
村上 友太(東京予防クリニック)
脳神経外科専門医、脳卒中専門医、抗加齢医学専門医。日本認知症学会、日本内科学会などの各会員。
目次 -INDEX-
「パーキンソン病」とは?
パーキンソン病とは、50-60歳代に多く発症する神経変性疾患です。
異常構造型のα-シニクレイン(アルファ-シヌクレイン)というタンパク質が脳や自律神経に蓄積して神経細胞が障害されることで発症すると考えられており、動作が遅くなったり、安静時に手が震えたり、小刻みな歩き方になったりします。日本での有病率は1000人に1~2人程度で、そのほとんどが50歳以上で発症します。加齢とともに発症しやすくなり、65歳以上では有病率は100人に1人程度となります。そのほとんどは、親族にパーキンソン病の方がいなくても発症します。
パーキンソン病は病気の進行とともに動きが緩慢になって、歩くことも困難になります。しかし、症状を抑える治療薬が数多く存在し、適切な診断・治療を受けることで普通の人と同じような生活ができることも少なくありません。パーキンソン病が心配な方は脳神経内科に受診しましょう。
パーキンソン病の代表的な症状
パーキンソン病には、日常動作や歩行などの動きに関わる症状である「運動症状」とそれ以外の「非運動症状」があります。
「運動症状」では、無動・寡動、安静時振戦、固縮、姿勢反射障害が代表的な症状です。「非運動症状」は多彩であり、夜間の不眠や入眠中に体が動いてしまうレム睡眠行動異常などの睡眠に関わる症状、起立性低血圧や便秘、排尿障害などの自律神経に関わる症状、幻覚(幻視)や認知機能低下、うつ傾向などの精神や認知機能に関わる症状があります。
無動・寡動
無動・寡動とは、動作の開始がしづらくなり、動作が遅くなったり、小さくなったりする症状を指します。具体的には、動きがぎこちなくなって細かい動作が出来なくなる、字が小さくなる、歩く際に最初の一歩が出ない、歩行時に手の振りがなくなる、表情が乏しくなるなどの症状がみられます。動き出しのしづらさは、音楽や手拍子などのリズムに合わせて動く、足元に目印をつけるなどの対応で改善することがあります。字の大きさなどに関しては大きな字を心がけるなど意識的に行動することで対応できる場合があります。
このような症状は加齢とともに徐々に出現することもありますが、数か月間という早い経過で症状が悪化する場合には脳神経内科に受診してください。
安静時振戦
安静時振戦とは、手足の動きを意識していない安静時に手や足に震えが起きる状態を指し、パーキンソン病に特徴的な症状です。手足の震えは安静時にのみ出現し、コップを持つなど何かの動作をするときには震えが止まります。動作時には震えは止まるため、日常生活の支障となることは少なく、安静時でも意識的に姿勢を維持することで震えを止めることができます。
なお、動作を行う時にも震えがある場合には、本態性振戦などのその他のふるえを生じる病気である可能性も考えられます。手足の震えで困る場合には脳神経内科に受診してください。
固縮
固縮とは、関節の動きが硬くなる症状で、他人が関節を曲げ伸ばしした場合に抵抗を感じるようになる症状を指します。自覚症状はありませんが、寝転んだ際に首が枕につくまで時間がかかるなどの症状で自覚する場合があります。関節をあまり動かさなくなることで関節の可動域が小さくなり、十分に関節を曲げ伸ばしできなくなるため、普段からストレッチなどを行うことが大切です。
姿勢反射障害
姿勢反射障害とは、パーキンソン病の症状がある程度すすんでから出現する症状の一つです。体が傾いたときにすぐに姿勢を戻すことが出来ず、姿勢を戻すために数歩足を出す必要があったり、そのまま倒れてしまったりしてしまう状態を指します。とっさの動きができないため、倒れる際に手が出ず、頭をぶつけるなど重症な外傷につながることもあります。手すりを持ちながら歩くなどである程度の転倒の予防は出来ますが、転倒するリスクが高く、骨折などをきっかけに寝たきりとなってしまう可能性もあるため、よく転ぶようになった場合には脳神経内科を受診して下さい。
非運動症状
非運動症状は睡眠の障害、自律神経の異常、精神的な障害、認知機能低下などさまざまなものがあります。症状ごとに対応や治療法が異なりますが、非薬物的な対応は、生活リズムや睡眠環境を整えることや、水分を多めにとって排泄前後、入浴時、起立時などの血圧低下に注意することなどです。
パーキンソン病に特徴的な症状ではないですが、パーキンソン病の方によくみられる症状であり、これらの症状で困った際には総合内科や脳神経内科、精神科、心療内科でご相談ください。
パーキンソン病の前兆となる初期症状
パーキンソン病は、動作緩慢などの運動症状が出現する前に便秘や嗅覚障害、レム睡眠行動異常症などの症状が出現することが知られています。ここではこれらの前兆となる症状について解説します。
便秘
便秘はパーキンソン病で最も早く出現する症状で、運動症状が出現する10年以上前からみられます。非特異的な症状で、食物繊維の少ない食生活や腸内細菌叢の異常など、健康な方でもさまざまな要因で出現します。
この便秘症状に対しては、まずは、水分を多めにとる、食物繊維の多い食事をとる、適度な運動を行うなどの生活習慣の改善を行いましょう。生活改善で十分な改善が得られない場合には、消化器内科を受診しましょう。
嗅覚障害
嗅覚障害は便秘に次いで早期から出現しますが、自覚しづらく、診察を受けて初めて自覚することも多い症状です。緊急性はありませんが、症状が気になる場合には耳鼻咽喉科を受診しましょう。
レム睡眠行動障害
レム睡眠行動障害は睡眠中に体が動いてしまい、大きな寝言を言ったり、寝相が悪くなったりする症状を指します。異常行動中は夢を見ていることが多く、簡単な刺激で目を覚まし、夢の内容を話すことができます。
早期のパーキンソン病で特徴的な症状であるため、40歳を超えてからこの症状が出現する場合には、脳神経内科や精神科、睡眠外来を受診しましょう。症状が出ている場合には、けがを避けるためにベッドの周りにはものを置かないようにしましょう。
パーキンソン病の末期症状
パーキンソン病は進行すると運動症状が悪化して歩行や日常生活動作が困難になるだけでなく、幻視や認知機能低下、不安などの非運動症状も出現します。
運動症状
代表的な症状で解説した無動・寡動、安静時振戦、固縮、姿勢反射障害が悪化し、細かい動作だけでなく、起き上がる、立ち上がるなどの動作も困難となります。また、体が傾いたら姿勢を戻せず、転倒を繰り返したり、嚥下や発声にかかわる筋の動きも悪くなることで嚥下障害や嗄声が出現したりします。
薬剤により症状は改善しますが、進行すると薬が効きすぎたり、すぐに効果がきれてしまったりと調整が困難となることもあります。薬を複数回に分けて服用することや、深部能刺激療法やデバイスを使用して薬剤を持続投与することなど侵襲性の高い治療が必要となることもあります。
幻視・認知機能低下・不安
運動症状だけでなく、精神症状や認知機能低下も問題となります。幻視は子供や知らない人の姿を見ることが多く、自宅内や庭などに知らない人が見えたりするようになります。認知機能低下が進行する前から症状が出現するため、本人が幻覚であると自覚していることも多いです。認知機能低下が進行するとその判断も困難となります。また病気の進行に伴って不安が強くなり、落ち込んで鬱状態となる、怒りっぽくなることも少なくありません。本人の訴えを否定せずに寄り添った対応をすることで、落ち着いた生活を送れることもありますが、家族と頻回に衝突するなど生活に支障がある場合には、脳神経内科、精神科、心療内科で相談しましょう。
パーキンソン病の進行度を示すホーン&ヤール分類とは?
パーキンソン病の重症度を表す評価手法にホーン・ヤール分類というものがあります。簡易に行える評価方法で、難病申請を行う際の重症度の指標にもなります。重症度がⅢ度以上であれば、難病申請を行うことができます。
Ⅰ度
左右のどちらかのみに安静時の震えや手足の動かしにくさがある状態です。細かい動作が難しい、動きに違和感があるなどの症状の自覚はあっても生活にほとんど支障がない程度の症状です。
Ⅱ度
両側に手足の動かしにくさなどの運動症状があるものの、姿勢反射障害はない状態です。全体的に動作が遅く、歩く際には小刻みな歩行となるなど、普段の生活に支障がでるようになり、可能な仕事の内容も限られるようになります。家事や買い物などの日常生活動作は大きな問題なく行うことができます。
Ⅲ度
体が傾いたら姿勢を戻せずに倒れてしまう、歩き出したら止まれないなどの姿勢反射障害はあるものの、自宅内での生活はなんとか一人で行える状態です。自宅内でも転びやすく、すべての動作に時間がかかり、外出が困難であるなど生活に大きな支障が生じます。
Ⅳ度
自力での生活は困難で食事やトイレなどに介助が必要となりますが、何とか一人で歩ける状態です。
Ⅴ度
立っていることも不可能となり、車いすやベッド上での生活を余儀なくされる状態です。
すぐに病院へ行くべき「パーキンソン病の症状」
ここまではパーキンソン病の症状を紹介してきました。
以下のような症状がみられる際にはすぐに病院に受診しましょう。
前傾姿勢で小刻みな歩行をしている場合は、脳神経内科へ
パーキンソン病では首が下がったり、腰が曲がったりしやすく、歩行時に前傾姿勢になりがちです。また歩幅が小さくなり、小刻みな歩行となります。このような歩き方はパーキンソン病に特徴的なので、このような症状がある場合には脳神経内科に受診してください。
受診・予防の目安となる「パーキンソン病の症状」のセルフチェック法
- ・安静時に手や足にふるえがある場合
- ・歩く際に一歩目が出しにくいなど、動作の開始がしづらくなった場合
- ・方向転換時に足がすくんでしまう場合
「パーキンソン病の症状」についてよくある質問
ここまでパーキンソン病の症状などを紹介しました。ここでは「パーキンソン病の症状」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。
パーキンソン病を発症した場合、どのような精神疾患が現れますか?
村上 友太(むらかみ ゆうた)医師
パーキンソン病になると不安を感じやすくなり、うつ病を発症しやすくなります。不安により落ち着かなくなったり、気分が落ち込んでしまったり、何にも興味を示さず、楽しみも感じられなくなったりします。治療は抗うつ薬などによる薬物療法が中心となりますが、パーキンソン病に対しては、薬剤調整や認知行動療法などの非薬物的治療でも症状が改善することがあります。
編集部まとめ
パーキンソン病は、65歳以上では100人に1人の割合で患者がいると言われ、神経変性疾患の中では有病率の高い病気です。現時点で病気の進行を止めることはできませんが、症状を抑える治療への反応性は良好で、適切な治療により発症後も数年、長い方では10年を超えて、普通の人と変わらない生活ができることも少なくありません。初期症状は年のせいと思ってしまうようなものもありますが、安静時に手が震えたり、動きが遅くなったり、歩幅が小さくなったりした場合には脳神経内科に受診するようにしましょう。
「パーキンソン病の症状」と関連する病気
「パーキンソン病の症状」と関連する病気は8個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
脳神経科の病気
- 本態性振戦
- 進行性核上性麻痺
- 多系統萎縮症
- 大脳基底核変性症
- 脳血管性パーキンソニズム
- 薬剤性パーキンソニズム
- レビー小体型認知症
- 正常圧水頭症
体の動きの悪化は加齢とともに徐々に悪化することもあるため、病的かどうかについては自己判断が難しい可能性があります。数ヶ月くらいの早い経過で症状が悪化する場合には、検査することをお勧めします。
「パーキンソン病の症状」と関連する症状
「パーキンソン病の症状」と関連している、似ている症状は11個ほどあります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
ふるえの症状をはじめとして体の動きに気になる場合だけではなく、便状や嗅覚の睡眠時の異常などが持続している場合には、早めに医療機関で相談することをお勧めします。
参考文献