「アルツハイマー型認知症の症状」はご存知ですか?初期症状・予防法も医師が解説!
アルツハイマー型認知症の症状とは?Medical DOC監修医がアルツハイマー型認知症の症状・前兆・予防法や何科へ受診すべきかなどを解説します。気になる症状がある場合は迷わず病院を受診してください。
監修医師:
木村 香菜(医師)
目次 -INDEX-
「アルツハイマー型認知症」とは?
認知症とは、「記憶障害」や「見当識障害」、「判断力の低下」を引き起こす脳の認知機能障害によって日常生活に支障が出るようになった病気のことです。そして、認知症にはさまざまな種類がありますが、最も多いのがアルツハイマー病によって認知症を発症したアルツハイマー型認知症です。
アルツハイマー病は、神経原線維の変化(タウオパチー)、アミロイドの神経細胞への沈着といった病理学的な変化を特徴とする病気です。症状が現れるまでには長い年月がかかるとされています。アルツハイマー型認知症の主な症状としてまず現れるのは、最近の出来事を覚えられないということです。この出来事は記憶障害から始まり、次第に記憶と学習の障害も起こってきます。病気が進行すると、失語や人格変化なども伴うようになります。アルツハイマー型認知症では、初期から、てんかんやけいれん発作などの神経症状を認めることは少ないとされています。
アルツハイマー型認知症と診断されると、その後の寿命は認知症を合併しない場合と比べて半分ほどになるという研究があります。具体的には、診断を受けてからの平均予命は、男性で4.2年、女性で5.7年となっています。
アルツハイマー型認知症の治療法としては、コリンエステラーゼ阻害薬とNMDA受容体拮抗薬という薬が用いられます。
アルツハイマー型認知症の代表的な症状
それでは、まずはアルツハイマー型認知症の代表的な症状を説明します。
記憶障害
アルツハイマー型認知症の中核をなす症状は、記憶障害です。特に、最近の出来事が覚えられなくなるのが特徴です。
具体的には、約束を忘れる、物の置き場所がわからなくなる、話したことを忘れて同じ話を繰り返す、ということがあります。また、ヒントを与えられてもなかなか正解が出にくい、という点も特徴的です。一方で、昔のことは比較的覚えています。
見当識障害
アルツハイマー型認知症では、記憶障害に引き続いて見当識障害(けんとうしきしょうがい)が起こります。見当識とは、現在の年月や時刻、そして自分が今どこにいるか、などの基本的な状況を把握することです。
最初に時間や季節感の感覚が薄れ、進行すると家までの道がわからなくなり迷子になったり、遠くまで歩いていったりしてしまいます。病気が進行すると、自分の年齢や人の生死に関わる記憶もなくなり、周囲と自分との関係がわからなくなります。
遂行機能障害
遂行機能障害(すいこうきのうしょうがい)とは、計画をたて、物事を行えなくなることです。例えば、食事の準備をする際に、ご飯を炊いて、味噌汁を作ってということを同時進行することが求められます。しかし、こうしたことは、アルツハイマー型認知症の方にとっては難しいのです。
アルツハイマー型認知症では、遂行機能障害は比較的初期から認められることが多いとされています。そして、仕事や家事などの日常の仕事に支障が出てしまいます。
視空間障害
アルツハイマー型認知症では、視空間障害(しくうかんしょうがい)のために、図形を書き写す模写が難しくなり、空間認識が困難となるために近所でも迷子になるという症状が現れます。
失行・失語
アルツハイマー型認知症が進むと、失行(しっこう)という、物を上手く使えないという症状もはっきりと現れてきます。また、言語の面でも物の名前がわからなくなってしまう健忘失語(けんぼうしつご)が出現し、つくろうような話し方をするようになり、言語の理解が困難となってきます。
アルツハイマー型認知症の前兆となる初期症状
では、アルツハイマー型認知症の前兆となるような初期症状について解説していきます。
最近のことを忘れる
アルツハイマー型認知症では、最近の出来事を忘れてしまうという初期症状が現れます。
また、MCI(軽度認知障害)というアルツハイマー病の前触れとなるような症状が知られています。MCIの症状には以下のようなものがあります。
- ・自分自身あるいは周りから見た記憶力の低下
- ・同じ年齢や教育水準の人と比べた時の記憶力の低下
- ・全体的な知能は正常
- ・日常生活は問題なし
- ・認知症とは言えない
このMCIから年間10〜15%の方が認知症、またはアルツハイマー病に移行するという報告もあります。そのため、同年代の周りの人よりも記憶力が下がっていると感じた場合には、認知症の前触れの可能性もあります。念のため、認知症の専門医を受診するようにしましょう。
同じことを周囲の人に何回も尋ねる
アルツハイマー型認知症の初期症状として、話したことを忘れて何回も同じ話を繰り返すということも特徴的です。
感情的になる、怒りっぽくなる
アルツハイマー型認知症に伴う、行動や心理症状の一つとして、以前と性格が変わってしまうということがあります。怒りっぽくなる他にも、以前は好きだった趣味に興味を示さなくなるという症状も現れることがあります。
アルツハイマー型認知症の末期症状
アルツハイマー型認知症が進行し、病気の末期になると以下のような重度の症状が現れます。
周囲が認識できなくなる
アルツハイマー型認知症が進行すると、全般的な知的機能が損なわれてしまいます。すると、周囲に対する認知ができなくなり、人と会っても誰なのかわからなくなります。
無言になる
アルツハイマー型認知症の末期には、言語能力も失われ、言葉の理解や自分で言葉を発することもできなくなります。
寝たきりになる
アルツハイマー型認知症では、最終的には身支度や食事、トイレ、入浴などのセルフケアもできなくなります。また、歩いたり立ったり座ったりするといった基本的な運動能力も失われ、寝たきり状態となります。
最終的には、低栄養状態や脱水、誤嚥性肺炎といった感染症などの合併により死亡するという経過をたどります。
すぐに病院へ行くべき「アルツハイマー型認知症の症状」
ここまではアルツハイマー型認知症の症状を紹介してきました。
以下のような症状がみられる際にはすぐに病院に受診しましょう。
自覚がない物忘れの症状が出ている症状の場合は、脳神経内科へ
加齢による物忘れとアルツハイマー型認知症の違いは、体験したことを全て忘れてしまう(例として、食事のメニューを忘れるのではなく、食事をとったこと自体を忘れてしまう)、物忘れの自覚がない、また日常生活への支障がある、といったことがあります。
こうした症状が出ている場合には、まずは脳神経内科や脳神経外科、物忘れ外来、認知症外来を受診してみると良いでしょう。
受診・予防の目安となる「アルツハイマー型認知症の症状」のセルフチェック法
- ・最近の出来事が覚えられない場合
- ・料理などの家事の段取りがうまくいかなくなる場合
- ・身だしなみに無頓着な場合
アルツハイマー型認知症を予防する方法
アルツハイマー型認知症は、生活習慣病と関連があるとされています。
そこで、高血圧や糖尿病、脂質異常症などを防ぐことでアルツハイマー型認知症のリスクを下げることが期待できます。そのためには、まず塩分や糖質、脂質の摂りすぎに注意することが大切です。
また、その他にも以下のような予防方法が報告されていますので、ぜひ参考にしてみてください。
食生活を改善する
野菜や果物を積極的にとるようにしましょう。野菜や果物の中に含まれるビタミンEやビタミンC、ベーターカロテンなどが、アルツハイマー型認知症の発症リスクを下げる効果を生んでいるのではないかと考えられています。
適度に運動する
運動習慣もアルツハイマー型認知症のリスクを下げることが報告されています。運動は週に3回以上、ウォーキング程度の強度のものを行うと良いでしょう。有酸素運動が脳内の血流を増やし、高血圧を改善したりコレステロール値を下げたりする効果を発揮し、認知症の予防に効果があるのではないかと推察されています。
知的な生活習慣を取り入れる
文章を読んだり、知的なゲームをしたりするなどの知的な生活習慣もアルツハイマー型認知症のリスクを下げるという研究結果があります。中でも、トランプやチェスなどのゲームには認知症の発症リスクを下げる効果があるようです。
また、アルツハイマー型認知症の発症には、人と会う頻度も関係があるとされています。他人と会う人の方が、全く人と会わないような生活をしている人よりもアルツハイマー型認知症のリスクが低いという報告があります。
「アルツハイマー型認知症の症状」についてよくある質問
ここまでアルツハイマー型認知症の症状・予防法などを紹介しました。ここでは「アルツハイマー型認知症の症状」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。
アルツハイマー型認知症の症状が進行すると最終的にどうなりますか?
木村 香菜(医師)
アルツハイマー型認知症の終末期には、全般的な知的機能が損なわれ、次第に周囲のことが認知できなくなり、会話も通じなくなります。そして、運動機能も失われ、寝たきりの状態となります。
アルツハイマー型認知症に顔つきが変わる症状はありますか?
木村 香菜(医師)
アルツハイマー型認知症になると、顔つきが変わることもありえます。アルツハイマー型認知症の初期症状のひとつに性格の変化があります。例えば、以前はおだやかだった人が怒りっぽい性格になる、というものがあります。そのため、顔つきも変わる可能性があります。
アルツハイマー型認知症になりやすい人の特徴を教えてください。
木村 香菜(医師)
アルツハイマー型認知症の発症の原因ははっきりとはわかっていません。しかしながら、生活習慣病である高血圧や糖尿病、脂質異常症が関係しているといわれています。そのため、こうした病気をもつ人においては、アルツハイマー型認知症になりやすい可能性があります。
編集部まとめ
この記事では、アルツハイマー型認知症の症状の特徴について解説しました。
「なんとなく、普通の物忘れと違う」という症状に気づいたら、認知症の専門医にまず受診することが大切です。認知症には誰でもなる可能性があります。おかしいなと感じたら、早めに専門医を受診しましょう。そして、早期発見・早期治療に繋げていきたいものですね。
「アルツハイマー型認知症の症状」と関連する病気
「アルツハイマー型認知症の症状」と関連する病気は8個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
神経内科の病気
- アルツハイマー型認知症
- 脳血管性認知症
- レビー小体型認知症
脳神経外科の病気
- 慢性硬膜下血腫
- 正常圧水頭症
精神科の病気
- せん妄
- うつ病
- 薬剤性の認知症
アルツハイマー型認知症に関連した病気には様々なものがあります。せん妄などの一時的な症状のこともあります。また、幻視やパーキンソン病のような症状が特徴的なレビィ小体型認知症という病気もあります。
「アルツハイマー型認知症の症状」と関連する症状
「アルツハイマー型認知症の症状」と関連している、似ている症状は4個ほどあります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
関連する症状
- もの忘れがあるが、自分では気づいていない
- 慣れた道でも迷ってしまう、どこに行こうとしていたかわからなくなる
- 物や人の名前が思い出せない
- 物忘れ
アルツハイマー型認知症の他にも、このような症状がでる病気はあります。原因が明らかなものについては、治療を行えば認知機能が改善するものもありますので、「おかしいな」と感じた際には、まずは神経内科や脳神経外科、認知症の専門外来などを受診しましょう。