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「脳卒中と脳梗塞の違い」はご存知ですか?前兆となる症状・予防法も医師が解説!

 公開日:2023/10/24
「脳卒中と脳梗塞の違い」はご存知ですか?前兆となる症状・予防法も医師が解説!

脳卒中と脳梗塞の違いとは?Medical DOC監修医が脳卒中と脳梗塞の違い・前兆・予防法や何科へ受診すべきかなどを解説します。気になる症状がある場合は迷わず病院を受診してください。

村上 友太

監修医師
村上 友太(東京予防クリニック)

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医師、医学博士。福島県立医科大学医学部卒業。福島県立医科大学脳神経外科学講座助教として基礎・臨床研究、教育、臨床業務に従事した経験がある。現在、東京予防クリニック院長として内科疾患や脳神経疾患、予防医療を中心に診療している。
脳神経外科専門医、脳卒中専門医、抗加齢医学専門医。日本認知症学会、日本内科学会などの各会員。

「脳卒中」とは?

脳卒中とは、脳血管障害ともいいますが、脳の血管が詰まったり破れたりすることで脳への血流が滞り、脳の神経細胞が障害される病気の総称です。
2022年のデータでは、脳卒中は癌や心臓病、老衰に次いで死因の4位ですが、寝たきりなどの介護を要する原因の1位となっている病気です。
近年では、脳卒中のうち特に脳梗塞の急性期治療の進歩があり、発症から早く治療を行うことによって後遺症を軽くすることが期待できるようになっていますが、発症を予防することが何よりも重要です。今回は、前兆や予防法を中心に解説します。

脳卒中の3つのタイプ

脳卒中には、血管が詰まって発症する虚血性脳卒中と、血管が破れて発症する出血性脳卒中との2つのタイプに大別されます。虚血性脳卒中の代表格は脳梗塞で、出血性脳卒中の代表格は脳出血(脳内出血)やくも膜下出血です。

脳梗塞

脳梗塞は、脳の動脈が閉塞するために脳細胞への血流が不足することで発症します。脳卒中の中で最も多く、60%程度を占める病気です。
脳の血管の詰まり方によって脳梗塞には、ラクナ梗塞、アテローム血栓性脳梗塞、心原性脳梗塞、その他の脳梗塞(脳動脈解離など)という種類があります。
歩いて病院を受診する方もいれば動けなくなって救急搬送される方もいますが、これは動脈が閉塞した部位によってダメージを受ける脳細胞の領域が異なるために、脳梗塞の症状やその程度は人それぞれだからです。ダメージを受けた脳細胞は回復することはないため、手足の運動麻痺や嚥下障害(喉の麻痺)などの後遺症が残ることがあります。
主な発症原因は、高血圧や糖尿病、喫煙などによる動脈硬化や不整脈などです。再発リスクが高い病気であるため、原因に応じて生活習慣の改善や抗血栓薬を用いた治療で、脳梗塞の進行・再発予防を行います。

脳出血

脳出血(脳内出血)は、脳の血管が破れて出血するために、脳組織内に出血を起こしてしまい、その部分の脳組織がダメージを受ける病気です。脳卒中の中では30%程度を占める病気です。
出血そのものによる脳組織への影響だけではなく、血腫(血の塊)ができるために周囲の脳組織を圧迫したり、脳が浮腫んでしまったりすることでさまざまな症状が現れます。ダメージを受けた脳の部位によって症状はさまざまであり、出血の大きさによって症状の程度が異なるという特徴があります。

くも膜下出血

くも膜下出血は、脳卒中の中では10%程度の割合ですが、発症すると半数以上の方は介護を要するか致命的になるという重篤な病気です。くも膜下出血は、最善の治療を行なっても、3人に1人は死亡してしまいます。残り2人のうち1人は、麻痺や言語障害、寝たきりなどの後遺症を残します。最後に残った1人(つまり、くも膜下出血を発症した人の約33%)しか社会復帰できない、といわれています。
大人のくも膜下出血の原因は、ほとんどが脳動脈の一部が膨らんで形成された瘤(こぶ;脳動脈瘤)の破裂です。比較的女性に多く、40歳以降でみられやすく加齢に従って増加します。くも膜下出血や脳動脈瘤の家族歴があれば、動脈瘤発生の頻度が高まることが知られています。また、高血圧や喫煙という生活習慣が動脈瘤破裂の頻度を高めることも知られています。
小児や若年者もくも膜下出血を発症することがありますが、その原因は、脳動静脈奇形という生まれつきの脳血管異常の破裂が多いといわれています。

脳卒中の代表的な症状

脳卒中の症状はさまざまありますが、どんな症状も急に起こるという特徴があります。
また、脳梗塞と脳出血は、脳機能の一部を突然失うためほぼ同じ症状が見られますが、くも膜下出血は脳の表面に出血するため症状は異なります。
以下にあげる脳卒中を疑う症状がある場合には、すぐに脳神経内科や脳神経外科のある病院への受診をしてください。

片麻痺(体の片側の麻痺)

片麻痺とは、体の左右どちらかに麻痺症状(うまく動かない状態)が見られることを言います。
もともと、脳から手足や顔などの神経にむけて指令を送って運動する仕組みがありますが、右側の脳からの運動の指令は左半身へ、左側の脳からの運動の指令は右半身へ伝わります。そのため、右側の脳の損傷によって左半身が、左側の脳の損傷によって右半身が麻痺します。
急に片側の体の動きが悪くなった場合には、すぐに救急病院を受診しましょう。

感覚障害

感覚障害とは、ビリビリとしたしびれやつねっても痛みを感じにくい、足や手の位置が感じにくい、などの症状を指します。筋力低下(麻痺症状)を伴っていることもありますが、筋力がしっかりある状態でも、足の位置感覚がないと歩きにくいというケースもあります。感覚を司る脳領域がダメージを受けることによって神経症状が現れますので、片麻痺と同じように、体の左右どちらかの感覚障害が起こることがほとんどです。急に顔の片側に違和感が出現したり、同じ側の手足にしびれを感じた場合には、すぐに救急病院を受診するようにしてください。

言語障害

脳卒中で見られる言語障害には、失語症と構音障害の二つに大きく分けられます。
失語症を大まかに説明すると、話している内容がかみ合わず会話が成立しない状態のことです。
脳卒中によって言語機能を司る領域や神経線維がダメージを受けると、言葉の理解や、言葉を発することが難しくなるという症状が起こります。意味不明なことを喋るとか、こちらからの問いかけは理解できているけれども答えられない、というものが失語症の典型例です。
一方で、構音障害は、会話は成立するものの舌や唇の動きが悪いために聞き取りづらい状態のことです。構音障害は喉の動きも悪いこともあり、その場合には唾を飲み込むことがうまくできなくなります。
口や舌などの動きを直接コントロールする領域が脳梗塞になった場合や、左右両側や脳の広い範囲に脳梗塞が起こった場合、体の動きをスムーズに動かす機能を有する領域が脳梗塞になった場合などにも構音障害が起こります。
失語症の場合には気がつきやすいのですが、喋りづらさとか発音に軽く違和感を持つ場合にも早めの受診が勧められます。

めまい、ふらつき

​​平衡感覚を司る領域にダメージがあると、視界がぐるぐるしたり力があるのに立てずにバランスが取れなくなったりします。意識状態の悪化や吐き気や嘔吐を伴うこともあります。
めまいやふらふらする症状は耳の病気や貧血などの他の病気が原因で起こることもありますが、脳卒中の場合には、急に症状が現れて安静にしていても改善しないことが特徴的です。

激しい頭痛

くも膜下出血の典型的な症状は、これまでに経験したことのない突然の激しい頭痛です。バットに殴られたような頭痛とか、雷が落ちたような頭痛などと表現されることもあります。「何時何分に頭痛がした」と痛みのあった時刻を明確に覚えている患者さんもいます。
頭痛のほかに、嘔気・嘔吐を伴うことや、頭痛に次いで意識消失をきたすこともあります。
非常に激しい頭痛症状であり、市販の痛み止めや吐き気止めは効かないことがほとんどですので、このような症状があれば、すぐに救急病院を受診してください。

脳卒中の前兆となる症状

脳卒中は、前ぶれもなく突然発症することが多いのですが、脳梗塞とくも膜下出血では前兆となる症状が現れることがあります。
前兆となる症状だと気がついたら、早めに脳神経内科や脳神経外科を受診してください。脳梗塞やくも膜下出血の発症を防ぐことができる可能性があります。
なお、脳出血では前兆が現れることはないため、発症予防に努めるしかありません。

手足の筋力低下や痺れ、呂律がまわらない

突然手足に力が入りづらくなる、痺れが起こる、言葉をうまく発することができなくなる、会話が成り立たなくなるなどの症状がある場合は、脳梗塞や脳出血の症状が疑われます。
これらの症状がしばらくして改善する場合でも、一過性脳虚血発作(TIA)という脳梗塞の前兆であることが疑われます。
一過性脳虚血発作は、脳梗塞には至っていないもののその症状が24時間以内に消失する病気であり、その後に脳梗塞を起こす確率が高いことから、脳梗塞の発症を予防する治療が必要です。

頭痛や吐き気

くも膜下出血の発症前に、軽い頭痛、嘔気・嘔吐、めまいなどを自覚される場合があります。これは微小出血といって、脳動脈瘤から少しだけ出血したために起こると考えられており、結果的にはくも膜下出血の前兆の症状と言われています。親戚にくも膜下出血を発症した方がいる場合や、これまで風邪や疲れなどで経験したことのある頭痛とは雰囲気の異なる頭痛である場合には、早めに受診することをお勧めします。

ものが二重に見える、目が開かない

未破裂脳動脈瘤のサイズが大きくなった場合に、その動脈瘤のできた部位によっては、目の神経を圧迫することがあります。すると、ものが二重に見える、目が開かない(瞼が重くてあがらない)などのような症状が現れることがあります。この場合には、目の神経へのダメージを和らげる目的と、脳動脈瘤の破裂(くも膜下出血の発症)を予防する目的で、すぐに手術治療を行う必要があります。

脳卒中を予防する方法

高血圧症や脂質異常症、糖尿病には気を付ける

生活習慣病である高血圧症や脂質異常症、糖尿病などが持病にある場合は、動脈硬化の原因となり、脳卒中の発症につながりやすいため注意しましょう。普段の食習慣や運動習慣などを見直すことが病気の悪化を防ぐことにつながります。
健康診断で血圧やコレステロール、血糖などが高いことを指摘されている場合には、放置せず、一度内科を受診して相談をすることをお勧めします。
病気になったら薬を服用すれば安心ということではなく、発症しないように努力し続けることが大事です。

禁煙

タバコを吸うとニコチンの作用によって血管に炎症や収縮が起こり、やがて動脈硬化を引き起こします。喫煙者は禁煙者に比べて脳卒中の発症率が2−3倍高いと言われています。
禁煙することで脳卒中の発症を予防できるため、すぐにでも実行しましょう。
禁煙を行うためのポイントは、

  • ・減らす、軽くする、加熱式タバコへの変更はしないこと
  • ・日程を決めて一気に禁煙を開始すること
  • ・禁断症状は覚悟して臨むこと(禁煙開始後3―7日後が辛い)
  • ・喫煙と関連する生活パターンを変えること(コーヒーや飲酒を控える、食後はすぐに歯磨きをする、など)

などがあります。自力で難しい場合には、禁煙外来で相談することをお勧めします。

脳卒中を疑う症状を知る

発症から治療に早く繋げられると、脳卒中からの回復を早める可能性が高まります。
そのため、脳卒中を疑う症状を知ることは重要です。
数多くある脳卒中の症状のうち、現在救急の現場でもよく用いられている脳卒中を疑う3つのサイン(と時間)であるFASTをぜひ覚えてください。

  • 片方の顔に麻痺がある(Face)
  • 片方の手や腕に麻痺がある(Arm)
  • 言葉の障害がある(Speech)
  • 発症時刻(Time)

それぞれの頭文字をとってFASTです。これらの症状が一つでも出現したら救急車を呼ぶか、救急病院を受診してください。

脳ドック

これまでの日本人の膨大な臨床データから、脳動脈に5-7mm以上のサイズで凸凹しているような動脈瘤があると、破裂する危険性が高くなることが知られています。
そのため、定期的に脳ドックを受けて、頭部MRI/MRA検査を行い未破裂脳動脈瘤がないかどうかを確認するのが良いでしょう。
もし脳動脈瘤が見つかったら、予防的な処置として外科治療を行うことも検討する必要があります。頭に時限爆弾を抱えているような気分で不安が募るところだと思いますが、手術には合併症の危険性もあることから、脳神経外科専門医から十分に説明を聞いてください。本人も家族もみんなで治療を受けるかどうか決断することが重要です。セカンドオピニオンとして、他院の脳神経外科専門医に意見を聞くこともお勧めします。

「脳卒中と脳梗塞の違い」についてよくある質問

ここまで脳卒中と脳梗塞の違いなどを紹介しました。ここでは「脳卒中と脳梗塞の違い」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。

脳卒中や脳梗塞は完治するのでしょうか?

村上 友太(むらかみ ゆうた)医師村上 友太(むらかみ ゆうた)医師

いいえ、完治しません。
言葉の使い方の問題かもしれませんが、「完治(完全に治る)」ではなく、「回復」という表現を用いることが多いかと思います。
脳卒中は、脳血管が詰まったり出血したりして神経細胞に不可逆的なダメージを与えてしまう病気であるため、そもそも完全に治るということが難しい病態です。このダメージによる神経症状が軽く、後遺症もほとんどないケースもありますが、細胞レベルでダメージを負っていることには変わりません。
脳卒中は一度発症すると再発する可能性が高まるので、しっかりと再発予防策を日常的に進めていくことが重要です。

脳梗塞や脳出血、くも膜下出血は同時に起こることがあるのでしょうか?

村上 友太(むらかみ ゆうた)医師村上 友太(むらかみ ゆうた)医師

はい、あります。発症時点で同時に起こる(合併している)こともあれば、治療を行っている経過の中で合併してしまうこともあります。
例えば、動脈瘤の破裂によるくも膜下出血では、くも膜下腔という脳の表面の空間に向かって出血することが多いのですが、動脈瘤の形状によっては脳内の出血してしまうこともあります。この場合には、くも膜下出血と脳出血を合併している状態で、激しい頭痛というくも膜下出血の症状だけではなく、手足の麻痺や痺れなどの脳出血の症状も同時に出現します。また、脳梗塞は血管が詰まる病気であるため、脳梗塞の発症を予防する目的で血液をサラサラにする薬(抗血小板薬や抗凝固薬)を使って治療しますが、脳の血管が脆くなった部分では出血してしまい、脳出血を合併することがあります。

編集部まとめ

脳卒中は発症してしまうと、その後遺症によって最も介護が必要になる病気として知られています。近年、脳卒中は発症時刻から早く行う治療法の発達によって、後遺症が軽くなる可能性が出てきています。
この記事でさまざまな脳卒中の症状を解説しましたが、脳卒中は発症を疑うことが大事であり、ぜひFASTは覚えてほしいと思います。片方の顔の麻痺(Face)、片方の手や腕の麻痺(Arm)、言葉の障害(Speech)、および発症時刻(Time)です。
また、脳卒中を発症しないように予防することも非常に重要です。日頃から体への負担を減らすような生活習慣を心がけることや、定期的な脳ドックや人間ドック・健康診断などでチェックすることも続けていただければと思います。

「脳卒中と脳梗塞の違い」と関連する病気

「脳卒中と脳梗塞の違い」と関連する病気は6個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

脳の病気

脳卒中を発症する原因は、脳の血管の異常だけではなく、高血圧や糖尿病などの生活習慣病や喫煙などによる全身の病気、不整脈などの心臓の病気、遺伝性の病気など多岐にわたります。

「脳卒中と脳梗塞の違い」と関連する症状

「脳卒中と脳梗塞の違い」と関連している、似ている症状は14個ほどあります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

関連する症状

  • 片側の手足が動かない
  • 片側の手足のしびれ
  • 片側の顔が動かない
  • 視野が欠ける
  • ダブって見える
  • 目が開かない
  • 喋りづらい、聞き取りづらい
  • 会話が成立しない
  • 激しい頭痛
  • 意識が悪い

上記のような症状が急に出現した場合には、脳卒中を疑う必要があります。早めに医療機関を受診するようにしましょう。

この記事の監修医師